ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【3】セブにて

3-22:直居side

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 城崎さんの斜め後ろをくっついて歩く。バーって言ってたけど、外に出てきた。ホテル内のマップを思い出していると、都会的な音楽が聞こえてくる。

「城崎さん、これってもしかして……」
「プールバーだよ」

 プールサイドにバーカウンターやソファ席が並んでいる。青で統一された照明が空間を演出し、音楽はDJがライブでかけてくれているようだ。

 城崎さんは慣れた風にソファ席に座り、店員さんを呼び止めた。

「直居君、どんなの飲みたい?」
「どんなの……?」
「スッキリしたのとか、フルーティなのとか、イメージ教えてくれたら」
「あ、えっと、甘いのがいいです」
「OK」

 店員さんと英語で何往復か話して注文してくれる。英語はまったく聞き取れないわけじゃないけど、お酒のことも分からないし、何より城崎さんの英語が流暢すぎてリスニングが追いつかない。

「城崎さん、TOEIC何点あるんですか?」
「ん?900ちょいだよ」

 900点超え!勉強してようやく750点に到達した僕からすると、異次元だ……。
 さっき出身大学も教えてもらったけど、国内トップクラスの大学だった。大手商社に入れる人って、やっぱり絵に描いたようなエリートだな。

 背も高いし、目鼻立ちもハッキリしていて、英語が得意。

「もしかして、外国の血が入ってたりします……?」
「俺?生粋の日本人だよ」

 お酒を受け取りながら、笑っている。
 この人、持っているものが違いすぎる……。

「はい、乾杯」
「いただきます」

 今更ながら、僕ってすごい人から好かれているんじゃないかと自覚する。

「どうした?そんなに見つめられるとドキッとしちゃうね」
「す、すみません」

 慌てて手元のグラスに視線を落とす。このお酒、甘酸っぱくておいしい。

「城崎さんは何飲んでるんですか?」

 僕のはピンクっぽいけど、城崎さんのグラスは透明に見える。

「飲んでみる?」
「あ、じゃあこっちも」

 グラスを交換して味見する。

「なんだろう、ナッツみたいな風味がします」

 鼻に抜ける香りがナッティで、だけど甘くはなくて、今日飲んだお酒の中で一番度数が高い!
 ちょっと舐めただけなのに、かあっと火照るのを感じた。

「これ、強いですね……」
「ははは、酔ってきた?」
「はい……」

 城崎さんが手を挙げて、お水をもらってくれた。

「ごめんごめん、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」
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