ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【3】セブにて

3-33:直居side

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 泣きやみ、軽く身じろぎすると、城崎さんが名前を呼んでくれる。

「直居君?大丈夫?」
「はい、すみません」
「謝らないで。俺の方こそごめんね。水飲む?」

 ペットボトルを渡してくれる。僕も上体を起こし、喉を潤す。

「ありがとうございます。……あの、さっきのは、違うんです」

 隣に座っている城崎さんは、静かに相槌を打ってくれている。

「僕、嫌だったんじゃなくて。その、嬉しくて」
「え?」
「嬉しすぎて、どうしたらいいか分からなくなっちゃって……すみません」

 言いながら、視界がまたぼやけてくる。泣くな、僕。

「お礼、言いたかったんですけど、うまく言葉にできなくて……だから、あの、ありがとうございます」

 ちゃんと言えた。下げた頭を上げると、城崎さんが抱きしめてくる。押されるまま、二人でベッドに倒れ込んだ。

「よかった……傷つけたかと思った」
「誤解させてしまってすみません。あんな嬉しい言葉、傷つくはずがないです」

 それに僕のことなんて、いくら傷つけてもらってもいいんですよ、と思うが、それは口には出さない。

「来年の誕生日も、予約していい?」
「予約?」
「そう。旅行にって意味じゃなくて、直居君の誕生日を一緒に過ごす権利」

 そんなものに価値があるとは到底思えないが、城崎さんが真面目な顔して言うから、僕は頷くしかなかった。

「あ……」
「ん?やっぱり駄目?」
「いえ、その前に、城崎さんのお誕生日、お祝いしないとと思って。いつですか?」
「俺、4月なんだよ」
「え!」

 もう終わっちゃってる……!

「かなり先になるけど、祝ってくれる?」
「もちろんです!でも、今年の分が……」
「あはは!大丈夫、今年の4月はいいプレゼントがあったからね」

 そうか、僕なんかがプレゼントできるものなんてたかが知れている。こんな豪華な旅行なんて絶対無理だし、僕が買える程度のものは城崎さんなら自分で買えちゃうよな……。

「直居君、何考えてる?」

 顔を覗き込まれる。

「城崎さんに喜んでもらえるプレゼント、用意できる自信がなくて……」
「あははは!」

 城崎さんは吹き出しているけれど、結構真剣な悩みなんですよ!
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