ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【6】氷魚とリン

6-6:直居side

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 静かに3人の話を聞いていた。僕は今まで他の人に自分の考えを話したことはなかったが、最初に話したのが城崎さんでものすごく運がよかったのかもしれない。
 傷口に塩を塗りたくられる、そんなことになっていてもおかしくなかったんだから。

「どうしたら、居心地よく過ごせる相手になれますか?」

 城崎さんが真剣な顔で二人に尋ねている。僕、いつも城崎さんといて居心地いいけどな……。

「んー、まず、否定しないであげてほしいかなあ」
「周りから見たら理解しがたい考えでも、必ず理由と理屈があることですし。感じていることも、本人からしたら事実なんで」
「さっきの、俺は否定したつもりじゃなかったんですが、態度悪かったなと反省してます」
「たっ態度悪いなんてことないです!」

 慌てて訂正する。

「ただ、僕の発言で城崎さんを傷つけてしまったんじゃないかって、思いました……」

 僕の発言に返してくれたのは氷魚さんだった。

「多分、本音で会話したら、潤さんの考えが城崎さんの心を傷つけることもあると思います。二人が大事に思えば思うほど、そういうこともあるかと」
「なるほど。できれば、俺のことなんていくらでも傷つけていいから、考えてることを話してほしいなと思うんですが」
「それは難しいかもね~」

 リンさんが遮る。

「こいつもすぐ本音隠すんですよ。一緒に住んでても気づけないくらい、隠すの上手いんです」
「へっへ~」
「リン、褒めてないぞ?」

 たしかに、城崎さんを困らせたり悲しませたりするかもと思ったら、僕も隠してしまうと思う。全部を話せなくても、二人は一緒に住んでいてうまくいっているんだ。すごい。

「リンさんはそれで辛くならないんですか」
「城崎さんは、カッコ悪い自分も全部理解してそれでも好きになって~って思うタイプ?」
「……いや、カッコ悪いところは極力見せたくないですね」

 カッコ悪い城崎さんなんて、想像できないけどな。もしあったとしても、それくらいなくちゃ神様は不平等が過ぎる。

「それと同じじゃない?別に全部丸裸にしなきゃ付き合えないわけじゃないし。見せるところ、見せないところはあって当然だと思うけど」
「なるほど」
「俺はいつも、リンには黒い部分も全部見せてほしいって思ってますけどね」

 氷魚さんが苦笑いしている。そういうものなんだろうか。

「うん。隠れて泣いているくらいなら、俺の前で泣いてほしいよ」

 眼鏡の奥で、一重の目が優しく細められる。リンさんのことを本当に大事に思っているのが伝わってきて、僕まであったかい気持ちになる。
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