ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【8】二人の関係

8-3:直居side

 どうしよう。貴矢さんが、僕の気持ちを知りたいと言ってくれた。傷ついてもいいからって。
 だから、なるべく言葉を選んで答えたつもりだったんだけど。

 貴矢さん、泣いてる。僕の、せいで。
 いつも明るくて頼りになる貴矢さんの涙なんて、初めて見た。
 僕が、それだけのことをしてしまったから。

 付き合ってると思ってくれてたから、あんなに優しくしてくれたんだ。
 僕がそんなつもりじゃなかったなんて、知りたくなかった、よな。
 騙されたって、思ったかな。

 ちがう。付き合いたくないわけじゃない。逆だ。
 僕は、一緒にいたい。貴矢さんと、ずっと。
 だけど、そんなことありえないから。

 どうしたら、貴矢さんの誤解が解けるだろう。なんて謝ったらいい?
 何か、言わなきゃって思うのに。
 
 不甲斐ない僕が何もできずにオロオロしているうちに、車はパーキングエリアに停まった。

「貴矢、さ……」

 何も言えないけど、絞り出して名前を呼んだら、貴矢さんはシートベルトを外してぎゅうっと抱きしめてくれた。

「なんで……?」

 僕が全部悪いのに。どうして抱きしめてくれるの?

「潤……俺、潤に酷いことした。ごめんな……」
「え?……貴矢さん?」

 話が噛み合わない。なんで貴矢さんが謝るの?酷いことなんて、何一つされてないのに。

「潤の気持ち考えずに、一方的に突っ走って……」
「そ、なこと……」

 むしろ、僕がお願いしたんだ。もらってほしいって。

「もし、俺のこと、許してくれるなら」

 許すも何も、悪いのは僕だよ?

「もう一回、チャンスが欲しい」
「チャンス……?」

 何のこと?
 貴矢さんは体を離し、僕の目を真正面から見据えて続けた。

「潤。君が好きだよ。俺の一生のパートナーになってほしい」

 えーー…………?

「な………いっ…………え………?」
「一回とかじゃなくて、これからずっと、潤と生きていきたい」

 頭が真っ白になって、意味のある言葉が出てこない。
 貴矢さん、何を言ってるの……?
 
「順番が逆になっちゃった。本当にごめん」

 涙で濡れた瞳で、真剣に言ってくれる貴矢さん。

「プロポーズ、みたい……」
「うん。そのつもりだけど」

 こんなんじゃ、カッコつかないね、と苦笑している。
 そんなことないのに。

「貴矢さんは、世界一、カッコいいです……!」
「ははっ、本当?」

 本当なのに、貴矢さんは笑ってる。

 それから、僕の手を取って、指先にキスしてくれた。セブのときみたいに。

「指輪、ないけど。一生愛するって誓うよ」

 貴矢さんは、やっぱり王子様みたいだ。

「俺じゃダメ、かな?」

 ダメなわけない。だけど、貴矢さんの覚悟に、僕が簡単に頷いていいとも思わない。
 僕が貴矢さんの隣に立つためには、さ。怖いけど、貴矢さんがそうしてくれたみたいに、自分の気持ちをちゃんと自分で言わなきゃいけないんじゃないか?
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