ひとりで生きたいわけじゃない

クリスマス番外

26:貴矢side

　寝ぼけ眼の潤。彼が今ここに生きていてくれるのは、まったく当たり前のことではないんだ。愛しさが込み上げてきて、裸の潤を抱きしめる。

「潤。生まれてきてくれてありがとう。今まで生きてくれてありがとう」

　言いながらも、ボロボロと涙が溢れてくる。

「貴矢さん」
「ん？」

　なぜか潤が笑ってる。

「それ、誕生日にも言ってくれましたね」
「ああ、うん」
「ふふっ、あのときと逆ですね」
「逆？」

　何か言い方が逆だったか？

「あのときは、僕が泣いてて。今日は貴矢さんが泣いてます」
「……ホントだ」

　たしか、俺の言葉が嬉しくて泣いてくれたんだ。

「逆だけど、同じだよ」
「え？」
「俺も、嬉しくて泣いてる。潤がいてくれて、嬉しい」

　ぎゅううっと抱きしめる腕に力を込める。だから、どうかこれからも。

「ずっと、一緒にいよう」
「……はい」
「楽しい思い出、もっともっとつくろうね」
「ふふふ。はい！」

　潤も俺の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「そういえば、年末年始の帰省は？」
「一応、年明けに少しだけ顔出そうかと思ってますけど、日帰りで十分かなって」
「じゃあ、年始のご挨拶が終わったら、一緒に温泉でも行こうか」
「温泉！」

　バッと顔を上げて、キラキラした目で見上げてくる。潤は本当に温泉が好きだな。

「群馬の温泉。意外と地元の温泉宿なんか行かないでしょ」
「はい！」
「伊香保？草津？」
「水上もいいですよ！」

　明日も明後日も君といられるように。たくさん約束をしよう。
　俺は絶対に、君を離さないからね。


●おしまい●

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番外編、最後までお読みいただきありがとうございます。
クリスマスのお話なのに、年明けまでかかってしまってすみませんでした。
季節感とは……(笑)

こまど