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秋野小窓

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本編

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<優太side>

 アラームの音で目が覚めて、パジャマのままリビングに向かう。鹿賀さんもラヴェルも先に起きたようだ。

「おはようございます」
「ああ、おはようございます。眠くないですか?」
「はい」

 今朝は比較的スッキリ起きられた。迷いなく頷くと、「よかった」と鹿賀さんが抱きしめてくれる。
 朝一番のスキンシップに、嬉しくて目を閉じた。瞼の裏に流れる映像。ハッとして体を離した。

「どうしたの?」
「あ、いや……俺、トイレに」
「行ってらっしゃい」

 昨日のいやらしい夢。朝起きたときにはすっかり忘れていたが、鹿賀さんの抱擁で思い出した。
 トイレのドアを閉め、下着の中を確認する。よかった。無事だ。
 あんなに気持ちいい夢なら、また見たいな。

 トイレを出て、着替えと洗顔を済ませてからリビングに戻る。

「おかえりなさい。パン食べますか?」
「いただきます」

 爽やかに微笑む鹿賀さんは、俺がこんなえっちな妄想をしているなんて思いもしないだろう。
 ダイニングテーブルに用意された朝食。すっかり定位置になった鹿賀さんの隣でトーストを頬張る。今日はデザートにヨーグルトまでついている。

「無糖なので優太君には酸っぱいかもしれません。ジャムも使ってくださいね」
「ありがとうございます」

 俺は酸味にあまり強くない。鹿賀さんも甘いものが好きだけど、酸っぱいのも平気みたいだ。ベリーのジャムをスプーン2杯掬って、ヨーグルトに載せる。

「へへ」
「おいしいですか?」
「はい」

 ヨーグルトを食べながら隣の鹿賀さんに笑いかけると、鹿賀さんも目を細める。おいしいのもそうだけど、俺の好みを知ってくれているのが嬉しいんだ。

「出発まで、まだ時間ありますよね。洗濯を回してからでもいいですか?」
「はい。立ち合いは午後なので大丈夫だと思います」

 今日は社宅の退去の日だ。これまで2回に分けて荷物を運び出していて、ほとんど物は残っていない。最後に掃除をして、管理会社と人事の立ち合いのもと鍵を返せば引っ越し完了だ。
 もう俺一人でも十分だろうが、主に精神面の支えを目的として鹿賀さんにもついて来てもらうことになっている。

 家事をしている鹿賀さんを横目に、バケツに掃除用具を突っ込んでいく。途中、スポンジをラヴェルに奪われそうになり、慌てて回収した。

「ごめんな。帰ったら遊ぼうな」
「フゥン……」

 不満そうに鳴かれると申し訳なくなるが、仕方ない。ラヴェルには留守番をお願いして、車に乗り込んだ。

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