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1 この国からおさらばする
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「もうこ?」
世界を治めた国があると聞いた。幼かった某はその大きさが分からなかった。
幼い頃、馬に乗って従者を従えて、自分の領地を見回っている地頭を見た。
馬の上から頭を下げている某を見下ろしていた。
某の父は地頭の館で奉公をしていた郎党だったので自分の領地など持ってはいない。
幼かった某は願った。
御家人になって地頭として己の領地が欲しい。
これが己が生まれた身分であり、故にこれしか某には見えていなかった。
世界とはどのくらい広いのだ。
どのような人物が世界を治めることが出来るのだ。
「来たのか!?」
7年前、その世界を支配した国が海の向こうからやって来た。
1つの望みを感じた。
「父上、手柄を!」
父上にその望みを託し戦場に向かう父の背中を見送った。
そして3万の蒙古たちに我ら武士団は打ち勝った。
(勝てるのだ・・・我らは、世界を治めた強者より強いのだ!)
「父上、恩賞は?」
父上が帰ってきたとき、真っ先にこれを尋ねた。
竹崎季長(たけざきすえなが)が戦の功績で肥後国海東郷の地頭になることができたという。
父上はどのような恩賞をいただくのだ。
「やはりわしには無理だな、はは・・・」
父上はただ笑っていたが某は悔しかった。
己の人生が変わるまたとない機会に、父上は手柄を立てられなかった。
「蒙古はまた来るのですか?」
「来るやもしれん。虎吉、武士として戦いたいか?」
「戦う!手柄を立てて地頭になりたい!」
まだ子供だった某は、はっきりそう言うと父上は笑った。
父上は当てにはならん。
やはり己の望みは己自身で叶えねば。
「来たか!」
元服した1年後、再び蒙古がやって来た。
父上と共に甲冑に身を包んで、太刀を帯びて弓を持って勇んで戦場に赴いた。
(天がもう一度、機会を与えてくれた。某は絶対に願いを叶えてみせる)
水平線を眺めながら、まだ見ぬ敵を待っていた。
「・・・これが世界を手に入れた軍勢か・・・」
築かれた防塁から海をのぞくと、海を支配したかのように海岸線いっぱいに無数の船が現れた。
この日のために師匠から弓、太刀はもちろん馬までしっかりと鍛錬した。
某は震えを押し殺し防塁の上で迫り来る蒙古どもらに弓を構えた。
「お主の首の先に・・・我が、願いがある!」
弦を充分に、引き絞った。
最初に放った一矢が敵の心臓に突き刺さった。
この戦で父上が討ち死にしたが、代わりに矢で敵を5人討ち取った。
夜討ちの時も、敵が寝ている軍船に我先にと乗り込んだ。
最初の1人を鞘から抜いた太刀で、首を飛ばした。
続いて3人の敵を討ち取った。
「恩賞だ・・・恩賞を手に入れたぞ・・・」
竹崎季長以上に活躍したつもりだ。
3つの首を掴んで、もらえるであろう恩賞の喜びに震えていた。
「竹崎季長も、此度の戦でまた恩賞をもらったじゃねぇか!」
恩賞は無かった。
某は必死に訴えた。
軍忠状に某の名と手柄が書かれていたのは、しかと見た。
だが、地頭は「無い」の一点張りだった。
「この野郎!」
やってしまった。
怒りのあまり地頭を殴ってしまった。
某は逃げるように地頭の館を飛び出した。
「はぁ・・・・・・」
防塁がある浜辺を1人で歩いてた。
母上は10歳の頃に病で亡くなった。
父上も戦で亡くなった。
それでも戦で手柄を立てればどこぞの領地を手に入れ、某の新たな人生が手に入ると信じた。
再び怒りが込み上がってきた某は拳を握り天を見上げた。
「一生、小さいままで終われというのかー!」
突然、夜になった。
いや、太陽は出ているが周りは暗く、おまけに月まで出ている。
「太陽と月が!?」
日食のように太陽が隠れるのでは無く、2つの光が合わさって黄金の輝きを増した。
と思った瞬間、いつも通りの昼に戻った。
「・・・魔物がおる・・・」
幻覚を見た次は、大きなトカゲの魔物が2本足で立っていた。
「何者だ?」
女がいた。
ずいぶんと丈の短い裳袴(もばかま)をはいて、表着であろうか黒い生地に水色の刺繍が入った気品のある衣を羽織っている。
頭には先がとんがった不思議なものをかぶった見慣れぬ装束だ。
そして先端に大きな宝石がついている大きな杖を持っていた。
蒼い髪に金色の瞳からして異国の者か。
どこから現れたか知らんが、見たところ鉞を持って、革の鎧を着たトカゲの魔物に襲われているようだ。
「・・・・・・・おい、そこのトカゲ!」
太刀を抜き、魔物に近づいた。
トカゲの魔物が振り向いた。
「その女襲う気か?くだらねえことしてねぇで早く消えろ!」
「※■!」
トカゲの魔物が何かを言って鉞を振り下ろした。
その振り下ろした腕を斬った。
「逃げるなら今のうちだ。逃げなかったらその首をもらう」
蒙古の戦は、最後は暴雨が吹いて蒙古の船団は無残にも沈んでいた。生き残った奴は、せっかく助かったのに首を討ち取られた者もいた。
この魔物に一応、逃げる機会を与えてやろう。
トカゲの魔物は腰にあったもう一つの鉞を抜いた。
ならば遠慮無く、その首を貰おう。
「☆★○●□■△▲」
何を言っているのか分からんが、口の中から長い舌を出して偉そうに某を罵倒しているのはわかった。
腰を少し落とし、深く息を吸い、静かに吐く。
太刀を鞘に収めると、へそ下辺りに柄を持ってきた。
山の師匠から習ったこの技を出す間をうかがった。
「※◎▽◆!」
トカゲが鉞を振り上げた瞬間、鞘から太刀を抜いた。
ザン。
トカゲが鉞を振り下ろす前に一瞬にして鞘から太刀を抜いて、トカゲの首を飛ばした。
「グァアアアアアア!」
トカゲは光と共に消滅した。
「なんじゃこりゃ?」
トカゲが消滅すると、丸くて茶色の不思議な石が現れた。そういえば魔物を退治すると、お宝が手に入ると聞いたことがある。
遠い地に強力な魔物を倒して作り上げた武器があると、師匠が言っていた。
「あな、た、武士(もののふ)です、ね!」
異国の女が震えながらたどたどしい我が国の言葉で尋ねてきた。
可愛い声だ。
見たことのない金色の瞳を輝かせて、某を見つめている。
「いかにも!」
格好よく、返事をしてしまった。
勇者を気取る気は無いが、ついつい格好をつけてしまった。
「これ、を、飲で、下さ、い」
「はい?」
女が小さく透明な瓶子を小さな木の枝であろうものを程よい長さに切った蓋を開けて差し出した。
中に謎の赤色の水が入っていた。
「・・・・・・」
女と液体を交互に見た。
「ゴク・・・」
苦い味がしたが別に飲んでも何も起きやしなかった。
だが、その様子に女から笑みがこぼれた。
「な、名、は?」
「虎吉・・・」
「とらきちさま。お願い、す。わたしの世界きて、下、い!」
なんだこの女。
突然現れて、自分の世界へ来てほしいと申しておる。
「・・・・・・」
落ちている茶色の石と女を交互に見た。
「よかろう」
断ることが出来なかった。
「して、船はいずこに?」
異国の者ならばどこかに船があるはずだ。
しかしそれらしき船はどこにもなく、某とこの女の2人っきりだった。
「今、と、開けっす・・・」
「はい?」
女が杖を立てて眼を閉じ深呼吸をした。
何かを呟いているが、異国の言葉で何を言っているのかさっぱりわからん。
「!?」
女の周りに風が起き、女の足下が光り出した。そして大きな杖を上にかざすと先端の宝石が輝きだした。
「エタペリアン!」
女が謎の言葉を発すると突然空間が割れ、その向こうに見たことのない世界が現れた。
「お主はいったい!?」
「行き、しょう!」
女が某の袖をつかみ、あの世界へ連れて行こうとしている。
「・・・はい」
断ることが出来なかった。
某は女と共に開かれた扉へと歩いた。
世界を治めた国があると聞いた。幼かった某はその大きさが分からなかった。
幼い頃、馬に乗って従者を従えて、自分の領地を見回っている地頭を見た。
馬の上から頭を下げている某を見下ろしていた。
某の父は地頭の館で奉公をしていた郎党だったので自分の領地など持ってはいない。
幼かった某は願った。
御家人になって地頭として己の領地が欲しい。
これが己が生まれた身分であり、故にこれしか某には見えていなかった。
世界とはどのくらい広いのだ。
どのような人物が世界を治めることが出来るのだ。
「来たのか!?」
7年前、その世界を支配した国が海の向こうからやって来た。
1つの望みを感じた。
「父上、手柄を!」
父上にその望みを託し戦場に向かう父の背中を見送った。
そして3万の蒙古たちに我ら武士団は打ち勝った。
(勝てるのだ・・・我らは、世界を治めた強者より強いのだ!)
「父上、恩賞は?」
父上が帰ってきたとき、真っ先にこれを尋ねた。
竹崎季長(たけざきすえなが)が戦の功績で肥後国海東郷の地頭になることができたという。
父上はどのような恩賞をいただくのだ。
「やはりわしには無理だな、はは・・・」
父上はただ笑っていたが某は悔しかった。
己の人生が変わるまたとない機会に、父上は手柄を立てられなかった。
「蒙古はまた来るのですか?」
「来るやもしれん。虎吉、武士として戦いたいか?」
「戦う!手柄を立てて地頭になりたい!」
まだ子供だった某は、はっきりそう言うと父上は笑った。
父上は当てにはならん。
やはり己の望みは己自身で叶えねば。
「来たか!」
元服した1年後、再び蒙古がやって来た。
父上と共に甲冑に身を包んで、太刀を帯びて弓を持って勇んで戦場に赴いた。
(天がもう一度、機会を与えてくれた。某は絶対に願いを叶えてみせる)
水平線を眺めながら、まだ見ぬ敵を待っていた。
「・・・これが世界を手に入れた軍勢か・・・」
築かれた防塁から海をのぞくと、海を支配したかのように海岸線いっぱいに無数の船が現れた。
この日のために師匠から弓、太刀はもちろん馬までしっかりと鍛錬した。
某は震えを押し殺し防塁の上で迫り来る蒙古どもらに弓を構えた。
「お主の首の先に・・・我が、願いがある!」
弦を充分に、引き絞った。
最初に放った一矢が敵の心臓に突き刺さった。
この戦で父上が討ち死にしたが、代わりに矢で敵を5人討ち取った。
夜討ちの時も、敵が寝ている軍船に我先にと乗り込んだ。
最初の1人を鞘から抜いた太刀で、首を飛ばした。
続いて3人の敵を討ち取った。
「恩賞だ・・・恩賞を手に入れたぞ・・・」
竹崎季長以上に活躍したつもりだ。
3つの首を掴んで、もらえるであろう恩賞の喜びに震えていた。
「竹崎季長も、此度の戦でまた恩賞をもらったじゃねぇか!」
恩賞は無かった。
某は必死に訴えた。
軍忠状に某の名と手柄が書かれていたのは、しかと見た。
だが、地頭は「無い」の一点張りだった。
「この野郎!」
やってしまった。
怒りのあまり地頭を殴ってしまった。
某は逃げるように地頭の館を飛び出した。
「はぁ・・・・・・」
防塁がある浜辺を1人で歩いてた。
母上は10歳の頃に病で亡くなった。
父上も戦で亡くなった。
それでも戦で手柄を立てればどこぞの領地を手に入れ、某の新たな人生が手に入ると信じた。
再び怒りが込み上がってきた某は拳を握り天を見上げた。
「一生、小さいままで終われというのかー!」
突然、夜になった。
いや、太陽は出ているが周りは暗く、おまけに月まで出ている。
「太陽と月が!?」
日食のように太陽が隠れるのでは無く、2つの光が合わさって黄金の輝きを増した。
と思った瞬間、いつも通りの昼に戻った。
「・・・魔物がおる・・・」
幻覚を見た次は、大きなトカゲの魔物が2本足で立っていた。
「何者だ?」
女がいた。
ずいぶんと丈の短い裳袴(もばかま)をはいて、表着であろうか黒い生地に水色の刺繍が入った気品のある衣を羽織っている。
頭には先がとんがった不思議なものをかぶった見慣れぬ装束だ。
そして先端に大きな宝石がついている大きな杖を持っていた。
蒼い髪に金色の瞳からして異国の者か。
どこから現れたか知らんが、見たところ鉞を持って、革の鎧を着たトカゲの魔物に襲われているようだ。
「・・・・・・・おい、そこのトカゲ!」
太刀を抜き、魔物に近づいた。
トカゲの魔物が振り向いた。
「その女襲う気か?くだらねえことしてねぇで早く消えろ!」
「※■!」
トカゲの魔物が何かを言って鉞を振り下ろした。
その振り下ろした腕を斬った。
「逃げるなら今のうちだ。逃げなかったらその首をもらう」
蒙古の戦は、最後は暴雨が吹いて蒙古の船団は無残にも沈んでいた。生き残った奴は、せっかく助かったのに首を討ち取られた者もいた。
この魔物に一応、逃げる機会を与えてやろう。
トカゲの魔物は腰にあったもう一つの鉞を抜いた。
ならば遠慮無く、その首を貰おう。
「☆★○●□■△▲」
何を言っているのか分からんが、口の中から長い舌を出して偉そうに某を罵倒しているのはわかった。
腰を少し落とし、深く息を吸い、静かに吐く。
太刀を鞘に収めると、へそ下辺りに柄を持ってきた。
山の師匠から習ったこの技を出す間をうかがった。
「※◎▽◆!」
トカゲが鉞を振り上げた瞬間、鞘から太刀を抜いた。
ザン。
トカゲが鉞を振り下ろす前に一瞬にして鞘から太刀を抜いて、トカゲの首を飛ばした。
「グァアアアアアア!」
トカゲは光と共に消滅した。
「なんじゃこりゃ?」
トカゲが消滅すると、丸くて茶色の不思議な石が現れた。そういえば魔物を退治すると、お宝が手に入ると聞いたことがある。
遠い地に強力な魔物を倒して作り上げた武器があると、師匠が言っていた。
「あな、た、武士(もののふ)です、ね!」
異国の女が震えながらたどたどしい我が国の言葉で尋ねてきた。
可愛い声だ。
見たことのない金色の瞳を輝かせて、某を見つめている。
「いかにも!」
格好よく、返事をしてしまった。
勇者を気取る気は無いが、ついつい格好をつけてしまった。
「これ、を、飲で、下さ、い」
「はい?」
女が小さく透明な瓶子を小さな木の枝であろうものを程よい長さに切った蓋を開けて差し出した。
中に謎の赤色の水が入っていた。
「・・・・・・」
女と液体を交互に見た。
「ゴク・・・」
苦い味がしたが別に飲んでも何も起きやしなかった。
だが、その様子に女から笑みがこぼれた。
「な、名、は?」
「虎吉・・・」
「とらきちさま。お願い、す。わたしの世界きて、下、い!」
なんだこの女。
突然現れて、自分の世界へ来てほしいと申しておる。
「・・・・・・」
落ちている茶色の石と女を交互に見た。
「よかろう」
断ることが出来なかった。
「して、船はいずこに?」
異国の者ならばどこかに船があるはずだ。
しかしそれらしき船はどこにもなく、某とこの女の2人っきりだった。
「今、と、開けっす・・・」
「はい?」
女が杖を立てて眼を閉じ深呼吸をした。
何かを呟いているが、異国の言葉で何を言っているのかさっぱりわからん。
「!?」
女の周りに風が起き、女の足下が光り出した。そして大きな杖を上にかざすと先端の宝石が輝きだした。
「エタペリアン!」
女が謎の言葉を発すると突然空間が割れ、その向こうに見たことのない世界が現れた。
「お主はいったい!?」
「行き、しょう!」
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「・・・はい」
断ることが出来なかった。
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