蒙古を倒したのに恩賞がない!?故に1人の女と出会い、帝王が支配する異世界へと赴く。

オオカミ

文字の大きさ
14 / 65

14 息子を探せ

しおりを挟む
「ルナどの、刀を研ぎたい。良い研師はいるか?」

 この前のメタルタートル戦で太刀の切れ味が少し鈍った気がした。
そういえば蒙古との戦以来、今日まで全く研いでいなかった。

「それでしたら、太刀そのものを強化してみるのはどうですか?」

「太刀そのものを強化?」

「はい、その為にわたしはメタルタートルの素石の一部をハルタアーマーに渡すことなくとっておいたんです」

 確かにメタルタートルを倒した後、ルナどのは素石の半分を別の袋に入れていた。

「この街にハンツさんという凄腕のドワーフの鍛冶屋がいるんです。お店は町外れにあるんですが・・・もしかしたら《俺の人生》でお酒を飲んでるかもしれません!」

「俺の人生?」

「行きましょう!」

 ルナどのはそう言って、俺の人生とやらまで連れて行ってくれた。

 一番通り、最初に門をくぐって歩いた道の裏路地に入った。
 そこにひっそりと一件の店があった。

「あ、これが・・・」

 《俺ノ人生》と漢字で書かれた飯屋だった。
 老舗といった古い感じの店構えで中から良い匂いが漂ってきた。

「いらっしゃいませ!あ、ルナさんー!」

 中に入るとルナどのより背が低く肌の色が濃い若い女子がいた。

「ルビナちゃんお久しぶり!」

「わあ、ルナさんにまた会えたー。こちらの席へどうぞ!」

 ハンツどのを探しに来たのだが、この女子に言われるがまま席についてしまった。
 
「ルナちゃん、久しぶりだね?」

 奥から背の低い男がやって来た。我が国の言葉だったので某と同じ我が国の者かと思ったが違った。
 鼻は高く、顔の彫りは深かった。人間にも見えるが、人間ではないように思える。

「ドワーフのキッツさん、ハンツさんを探しているんです」

「ハンツかい?そういや今日はまだ来てないな。まぁゆっくりしていきなよ。そのうち来ると思うよ」

「虎吉さま、何か頼みましょう!」

 たしかに先ほどから腹が減っていて、この店の匂いで腹がますます減ってきた。

「よし、ルナちゃんとお付きの人にあっしの新作を作ろう!」

 ドワーフのキッツどのは、奥へと戻っていった。
 
 キッツは平べったい鉄の器具を手に取って何かを焼きはじめた。
 一緒に働いている若いドワーフも、サラダの盛り付けをしている。

 キッツどのが焼いているものに何かを振りかけると光り出した。

「どこかで嗅いだことのある臭いだな・・・」

「へい、お待ち!」

 ルビナどのが持ってきたのは肉料理だった。
 その肉の上に何かがかかっていた。

「これはもしかして!」

 置いていた箸を手に取って肉を食べた。

「味噌だ!」

 上にかかっていたのは味噌だった。
 この世界で初めて見る料理を食べて感激したが、日本から来た某にとってやっぱり味噌が一番。

「中に入っているのは何だ?」

 肉の塊の中に、何やら伸びるものが入っていた。初めて食うこの伸びる食べ物も実に旨かった。

「それは秘伝の魔法の調味料を使った秘伝のレシピで作ったチーズ入りハンバーグと味噌のソースをかけてあるからね・・・酒呑めるかい?」

「当たり前だ。ちゃんと元服はしている。ルナどのは?」

「わ、わたしは・・・無理です・・・」

 であろうな。男は元服すれば酒を飲めるが、女はルナどのの年齢ではまだ呑めないだろう。

「これがドワーフ特性の酒だ!」

 キッツどのが鉄瓶に入った酒を持ってきた。

「俺達ドワーフが地下に100年寝かせた最高級の鉄の味だ!」

「はい?」

「ドワーフが保証する鉄板の美酒だ。だから《鉄の味》だ」

「さ、さよか・・・」

 某はキッツどのからその鉄の味が入った升を受け取った。透明な色をした綺麗な、鉄だ。

「ゴク・・・」

 名前はいまいちだが悪くは無い。

「おう、キッツ。酒くれ」

 1人のドワーフが入ってきた。

「ハンツもう酒飲んでるのかよ」

「ばかやろうこんなのはまだ飲んじゃいねぇよ」

「ルナどの、もしかしてこの者が?」

「はい、こちらが最高の鍛冶屋ハンツさんです!」

「ん、お前は何者だ?」

 背は低いが筋骨隆々の男だった。
 持参している瓶子に入った酒を飲みながら、顎と首が見えないほどのヒゲを伸ばした真っ赤な顔を俺に近づけた。

「某の太刀を鍛えて貰いたい」

「おめぇの太刀だぁ?見せてみろぉ~」

 ハンツどのに太刀を見せた。
 ハンツどのの分厚い手が某の太刀を握ったとき、酔っ払っていた目つきが変わった。
 まるで戦人のような眼で刃を眺めていた。

「俺は色々な武器を知っている。もちろんお前の武器だって知っている。良い一振りじゃねぇか」

「いかにも。その太刀をさらに良い一振りに仕上げてもらいたい」

「他をあたれ」

「何だと?」

 ハンツどのは太刀を某に返すと席に座った。

「ハンツ、まだ息子と仲直りしていないのか?」

「うるせぇ、あいつとは親子の縁を切ったんだよ!」

「どいうことだ?」

 何が起きているのか某はキッツどのに尋ねた。

「いやね、実はハンツは一人息子と大げんかしてしまってね。そのせいでいまこうやって昼日中から酒を飲んでるのさ」

「おいキッツ余計なことを言うな!」

「どうすれば太刀を鍛えてもらえる?」

 事情を聞いたとき某は自分の太刀を鍛えてもらいたいだけではなく、別の意味で引き下がれなかった。

「お前、冒険者だろ?それならば、俺の依頼を受けろ。それが太刀を鍛える代金だ」

「その依頼は?」

「息子を、ぷはぁ・・・連れ戻せ」

 色黒の男が顔を真っ赤にしながら代金代わりの依頼を要求した。

「西にあるグロウ街の裏路地にいるだろう。あそこは不良共らのたまり場だ。あのやろう最近不良達とつるんでやがる!」

「よし、承った」

 某は料理の代金を支払って店を出た。

「冒険者さんよ」

 キッツどのが呼び止めた。

「あいつとは幼い頃からの友なんだ。あっしが一流の料理人になるなら、あいつは最高の鍛冶屋目指した戦友だ。あっしからもお願いだ!」

 キッツどのが深々と頭を下げた。

 ルナどのと一緒にグロウ街の裏路地へと向かった。

「虎吉さま・・・」

 ガラの悪い奴らにルナどのがしがみつく。
 ルナどのは怖いようだが、武士にこういった奴らはたくさんいる。
 男は多少の乱暴さは必要だ。

「何の用だ?」

 悪そうな奴ら10人ほどに絡まれ、こいつらの頭であろう奴が顔を近づけてきた。

「ここにドワーフがおらぬか?鍛冶屋ハンツの息子だ」

「あぁ!?おい、ハガネ!こいつはお前に用があるらしいぞ!」

 頭の後ろから背の低い肌の色の濃い奴が現れた。

「何の用だ?ぶん殴られたいのか!?」

 小さな背で某を一生懸命睨み付けていた。

「お主の父上が戻ってこいと申しておる」

「俺は親父のところには戻らねぇぞ!早く消えねえと痛い目見るぞ!」

 何が原因か知らぬが、顔が絶対戻らないと正直に言っている。

 さて、どうしたものか。

「よし、ならば某と喧嘩して負けたら父上のところへ戻れ」

「おもしれぇ、その喧嘩俺が買った!」

 用はないのに、何故か頭が喧嘩を買った。己の強さを見せたいように拳を振っている。

「もちろん素手だぜ。武器なんて卑怯な真似はしねえよな?」

「よし、まずはお主から倒してやる」

 某は太刀と脇差しをルナどのに預けた。相手は拳を握りしめて、足を小刻みに動かし、近づいてきて拳を飛ばしてきた。
 よけて、相手の顔面に一撃を入れた。

「くっなめんな!」

 あいてはむきになって拳を何度もふったが、某には当たらない。こいつらは強者を気取っているだけで、己を何一つ鍛えていない。
 もう一発、相手の顔面に入れた。

「ふざけんな!」

 相手は完全に怒って短刀を抜いた。

「武器は使わないんじゃ無かったのか?」

「うるせぇ!」

 短刀を突いてきた。
 某は短刀を握っている腕を絡め取ると相手の顎を掴んで地面に叩きつけた。

 不良共らの頭は倒した。
 周りの奴らは臆して戦おうとしない。

 結局はそういうことだ。
 奴らは吠えるだけで己を鍛えて勇敢に戦おうという強さなど持ってはいない。

 ハガネを睨んだ。
 ハガネは短刀を抜き、震えながら構えた。

「息子、お主は逃げるなよ」

 ハガネは震えて動けない。

「某は14万の蒙古と戦った。・・・おのれは、某1人にも戦えないのかー!」

「うああああああ!」

 ハガネは眼をつむって某に突進した。
 ハガネの腕を掴むと地面に叩きつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...