蒙古を倒したのに恩賞がない!?故に1人の女と出会い、帝王が支配する異世界へと赴く。

オオカミ

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16 ルナが虎吉を選んだ理由

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「虎吉さま、一緒に王立図書館に行きましょう!」

 ハンツどのに太刀を作ってもらいハルタアーマーで甲冑を作ってもらっている間我らはノム国でのんびりとしていたある日のこと。
 ルナどのが図書館なるところに行きたいと申した。
 我らは、馬車なるものに乗ってこの国の王宮の側にある王立図書館へと足を運んだ。

「個室をお願いいたします」

 ルナどのが入り口を入ったすぐ側で座っている女に自分のパーセを見せてそう言った。

「かしこまりました・・・こちら7番の鍵になります」

 女は、すぐに鍵を渡した。
 それを持って中に入ると大量の書物が天高く積まれていた。いろんな者達が静かに書物を読み、また書き写していた。

「え・・・っと虎吉さま、あちらの歴史コーナーでこの書物を探してください」

 7と書かれた部屋の鍵を開けるとルナどのが紙を某に渡した。歴史と書かれたところに行ってその書物を探した。

「・・・『ホリー大戦の記録』・・・あっこれか・・・」

 棚の一番奥にすさまじく分厚い一冊の書物があった。それを持って7番の部屋へと戻った。

 部屋に戻るとルナどのが数冊の書物を細長い卓に置いて書物を読んでいた。
 某は、頼まれた分厚い書物をルナどのの側に置くと、ルナどのの後ろで膝をつき、足指を立てて座った。

「何してるんです?そんなとこに座ってないで、ちゃんと椅子に座ってください!」

「え?あっはい・・・」

 いっぱしの冒険者になったとはいえ、ルナどのの前で従者のように振る舞ったら怒られた。
 某はルナどのの斜め向かいの椅子に座った。

「・・・・・・」

 ルナどのの綺麗な瞳が真剣に書物を読み、何かを書き写している。
 時々、ペンと呼ばれる筆を口元に当てて困った顔をしている。そして指で耳元の髪をかき上げながらペンで紙に文字を書いていた。

 それを見て某はどうすれば良いのか。

「虎吉さま、その本から大魔術師サハリさまの魔術に関する事が載っていないか探してください!」

「はっ、仰せのままに!」

 某は己が持ってきた分厚い本をめくった。
 ルナどのが真剣に数冊の書物を読んでいる中、某は大魔術師サハリなる者に関して書かれていないか探した。

「あっあった・・・すごい書かれている。何者だ?」

「ここに全部書き写してください」

 ルナどのが自分が持っていた書物と同じ何も書かれていない書物とペンを某に渡したのでそこに書かれていることを書き写した。

 ラドネック2141ネン、『ホリー大戦』

 初代帝王の最後の戦いとされている戦いでサハリはまず他の魔術師が及ばない魔力の調和魔術でホリー大地の魔力を味方につけ帝国軍を有利にした。
 故にサハリの戦術は全魔術師がお手本としている。

 かなり優れた軍師か。

「ル・・・」

 微妙な距離を感じた。

 何か話したいが、一心不乱に書物を読み書き写しているルナどのを見てるとそれができんという雰囲気があった。
 ただ紙をめくる音とペンで文字を書いている音だけがする静かな空間に某とルナどのの2人だけだ。

 双方何一つしゃべることなく静かな時間が過ぎていった。

「・・・はぁ・・・終わった~」

 ルナどのが両腕を高く上げた。

「某も写し終えたぞ」

 どのくらい経ったか、気がつけば某は大魔術師サハリなるものに関する文書を紙15枚に書き写していた。

 我らは書物を元に戻して図書館を後にした。外は青かった空が橙色へと変わっていた。

「わたしの知り合いに面白い人がいましてね。その人ったらわたしがコップを持ってきて欲しいと言ったらいろんなコップを10個も持ってきて・・・「どれを持ってきたら良いか分からない」なんて言うんですよ。いつか虎吉さまにも会わせたいです!」

「それは面白い!どんな奴か見てみたい」

 ルナどのがいつもの笑顔に戻って面白い話をしだした。
 だが、ルナどのが書物を読んでいたときは、まるで修行を行っていたかのようだった。
 ルナどのはこの笑顔の裏に何を望んで修行しているのだ。

「ルナどのはなぜ某を選んだ?」

「え?」

 思い切って聞いてみることにした。

「あのとき、浜辺でルナどのは某と出会ってこの世界に連れてきて依頼を約束させた。・・・だが、もっと探せば某以上に才のある大きな者が見つかったはずだ。なぜ某を」

「・・・・・・助けてもらったからです」

「ん?」

「虎吉さまの世界に転移したとき、もちろん何名か候補がありました。・・・でも世界中にいるその人達を見たとき、不安になって。
 未来を作れる人を探さなければと思って、それがどういう人か分からない時に目の前にリザードマンが現れ、殺されそうになりました。
 そんなとき虎吉さまに助けてもらって、そのときにこの人を信じたいと思いました」

「某は未来の大物だと?」

「突然、連れてきてごめんなさい。でも、わたしにはあのとき虎吉さましかいなかったのです。どうかわたしと一緒に国を守ってください」

 ルナどのが申し訳なさそうに頭を下げた。

 まいった。

 某は小さい人間にはなる気はない。
 だが、さすがに鎌倉殿のような大物になれる自信など無い。

「お前みたいな女に男の何が分かるんだよ!」

「わ、わたしはそういうつもりで言ったのでは・・・」

 大通りの端っこで、5人の男供らが一人の女を囲っていた。

「あれは、フィーレン!」

「知っておるのか?」

「はい、あの子はこの国の大人気な踊り子です。・・・囲んでいるのはあの子が言った『好きな男の条件』で怒っている人達だと思います」

「ほう・・・」

 様子から見て男共らは女に不満があってそれを言っているようだ。

「ルナどの、そこにおられよ」

 争いを嫌う者がよく口にする言葉がある。

「一応言っておく。止めとけ・・・」

 話し合うことが大切だと。

「その女が”男”に対して何を言ったのか知らぬが、タチが悪いから止めとけ」

「誰だあんたは。いきなりやって来てタチが悪いだと!?我々はこの女に教えてやってんだよ!引っ込め!」

 一人が某の肩をおもいっきり突き飛ばした。

 やはり話など通用しない小さい奴らだった。
 こういう奴らの対処方法は決まっている。

 某はその男の脇腹に一撃を入れ、投げ飛ばした。
 残りの者達は逃げ出した。

「あっありがとうございます!」

 踊り子は深々とお辞儀をすると、小走りで去って行った。
 ルナどのの元に戻ると、ルナどのがアートリアの村の時と同じ嫌そうな顔をしていた。

「嫌なものを見せてしまったか?」

「いえ・・・わたしだってわかってます」

              *       *       *

「・・・これが生まれ変わった某の新しい太刀か!?」

 15日後、『俺の人生』で出来上がった太刀を受け取った。生まれ変わった太刀は白い刃に蒼い波紋が浮かんでいた。

「ルナどの、離れていろ」

  某は太刀を上段に構えた。

「すう・・・」

 一呼吸、そして某は生まれ変わった自分の太刀を振ってみた。

 ヒュン・・・。

 とても軽く、重心が最も良いところにあり、太刀との一体感を強く感じた。
 そうか、ハンツどのに太刀を渡すとき、ハンツどのは俺の一振りを見て、重心をどこにすれば良いのか分かったのか。

「ところで代金だが・・・100万エルーだな」

「ハガネを見つけるのが代金であろう?」

「え、ワシはそんなこと言ったか?」

 ハンツは不思議そうに周りを見た。
 周りの者達はみな頷いた。

 ハンツはしぶしぶ了承した。

「その太刀はワシが保証するぜ。ワシが鍛えて将来有望の奴が磨き上げたからな!」

 某はハンツどのに一礼をすると店出た。
 店から出るとキッツが立っていた。

「その太刀は親父が俺と一緒に作った」

「良い太刀だ」

「そうかな?親父は褒めてないんだよ」

 ハガネは某が褒めたことを受け入れようとしなかった。

「父上も初めは一生懸命作ってもすぐには認められなかったと申しておる。お主も鍛冶屋を始めたばかりだからそういうことなのであろう」

  某が言えることといえばこれぐらいだろう。

「・・・ありがとう」

 ハガネはまだまだ綺麗な手あげて少し笑って、走り去った。

「あの親子きっと仲直りできますよ。ハガネさんは鍛冶職人目指してまた頑張りはじめました。虎吉さまがハガネさんを不良の世界から連れ戻したからです!虎吉さまかっこいいです!」

「・・・実はな、某は本当の親を知らないんだ・・・」

「え?」

 元服する前の日、父上から突然言われた。

 某は赤ん坊の時に近くのお堂に捨てられていたのを母上が拾ったらしい。うるさいことは言わず父上になっていたあの人を好きでも嫌いでもなかった。
 故にハンツどのとハガネの”親子関係”というものが気になっていた。

「そうだったんですか・・・すみません」

 ルナどのが申し訳なさそうに返事した。
 
「大丈夫だよ。某は哀しくはない」

 某は笑顔で応えた。
 生活に苦しいことは無かったので不幸とは思ってはいなかった。

「宿に戻ろう」

 5日後、ハルターアーマーから一通の手紙が届いた。
 甲冑が出来たというので早速ハルタアーマーに向かった。

「これがメタルタートルでつくられた鎧か・・・なんと軽い」

 黒と青が入り交じった銅丸鎧だ。その軽さはまるで直垂をもう一枚重ねた程度の重さしか感じなかった。

「アベルどの、かたじけない!」

「こちらこそ良い仕事をさせていただき、ありがとうございます!」
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