蒙古を倒したのに恩賞がない!?故に1人の女と出会い、帝王が支配する異世界へと赴く。

オオカミ

文字の大きさ
35 / 65

35 バートの親友

しおりを挟む
「何だと?」

「バートどのを殺して、次の海賊の大物になりたいのだろう?大物ならば、某との一騎打ちなどに臆したりはせぬだろう?なぁ小魚」

 ダァン!

 キッドが筒をこちらに向けて弾を飛ばした。
 某は躱した。

「なめやがって。やってやるよ!」

 キッドの黄褐色の身体に濃褐色の斑紋が現れ、ギザギザの刃になった刀にまで及んだ。
 双剣を振り回し始めた。

「その肉体をバラバラにしてやる!」

 ブラック・キッドが乱舞するかのごとく武器を振り回した。
 その覇気がまるで無数の顎が襲ってくるかのように某を攻撃してきた。

「ふん!」

 某が一振りするとそれらは消え失せた。
 キッドの覇気はそれほどではない。

 その攻撃を躱して懐に入ろうとした。

 瞬間、振り下ろされた刃が某の胸めがけて突いてきた。それを読んでいた某はそれも躱して、キッドの武器を切り落とそうとした。

「!?」

 キッドから3本目の攻撃がきた。
 それは武器からでは無くキッドの口の中からだった。

「俺の顎は強力だぜ。俺の顎に一度でも噛まれてみろ。死ぬぜ」

 奴の口の中からもう一つ顎が長い舌のように飛び出してきた。

 ガンッ!

 キッドが双剣で攻撃してきた。
 メタルタートルの太刀で双剣を止めた。

 バッ!

 キッドが顎を飛ばしてきた。まるで海戦で見た、筒から鉄の塊が飛び出したように顎を近距離から飛ばしてくる。

「よく躱せるな。だが、いつまでもつかな?」

 ダン!

 キッドが側にあった岩を顎を飛ばして粉々に砕いた。

(・・・ならば!)

 某は太刀を鞘に収めた。

 一呼吸。

 【疾風迅雷(ラピッドサンダーストーム)】の力がみなぎってくる。

「降参か?だが俺は許さねぇぞ!」

 キッドが双剣を乱舞させる。
 キッドの2つの刃の斑紋が最も濃くなった。
 
 2本の刃が4本に錯覚するほどの激しい攻撃を繰り出してきた。

 それを紙一重で躱し続けた。

 ガッ!

 躱し、抜いた某の太刀を二刀で受け止め、横に長し某の喉をキッドが切ろうとした。

 だが、刹那に抜いた脇差しでキッドの刃を止めた。

 バン!

 二刀で敵の二刀を飛ばした。

 すかさずキッドが顎を飛ばそうとした。
 
 ザス!

 ブラックキッドの顎を切り落とし、首筋を斬った。

「俺は・・・・・・ビッグな存在に・・・」

 ブラックキッドは濃褐色の斑紋が入った黄褐色の素石に変わった。

「卑怯なことしか出来ない奴はビッグになれねぇんだよ」

 バートはキッドの無数に散らばる素石の1つを、海の方へと蹴っ飛ばした。

「オーシャン、騒がしてすまねぇ」

 バートどのが突然、誰かと話し出した。
 しかし話しかけた先は暗い穴が見えるだけだった。

「!?」

 その奥からあの赤い尻尾を持ったハサルトが現れた。
 眼に圧倒された。

 深い海のようにそしてなんと透き通った優しい蒼い眼だ。
 
「小さき者よ・・・」

 ハサルトがしゃべり出した。

「しゃべれるのか?」

「我を単なるモンスターだと思ったか?」

「い、いやそんなことはない」

 何だこの感覚は。
 このハサルトの前に立っていると、まるで深い歴史の中にいるかのような錯覚に陥る。

「我は1万ネン生きてるんだよ」

「1万ネン?」

 戸惑った。
 
 某程度の人生では1万ネンという長さが分からない。

「1つ尋ねたい。先ほど某とルナどのは死にそうだった。そのとき貴方は龍を引き連れて我らを救った。間違いないか?」

 ハサルトは頷いた。

「何故?」

「その首飾りだよ。それは昔、我がバートの父親にあげ、幼かったころのバートはそれを父から受け継ぎそして娘に身につけ我に見せに来た。その首飾りを身につけているのならば、そなた達はバートの友達なのであろう。助けねば」

 ハサルトが笑みを浮かべた。
 何とも優しい、平和な笑みだった。

「まこと、かたじけない」

 イーミーの時に感じた聖獣の命がさらに重く感じた。
 某には貴方の素石が必要だ。

 だが、貴方の命は某の願いなど遙かに及ばぬほど貴重な命だ。

「素石ならば、もうすぐ手に入る・・・」

「知っていたのか?」

「1万ネンも生きていれば、その者の心が分かったりするんだよ。そなたはよほど大切なもののために我の素石が必要なようだね。良いよ。持ってお行き・・・」

「良いのか?」

 ハサルトは頷いた。

「オーシャン・・・」

 バートがオーシャンに話しかけた。

「バート、我の大切な友」

「俺がまだ、小さなガキだった頃、オーシャンはすでに大きな存在だった。大きくて、優しくて・・・俺は・・・オーシャンに・・・」

 バートが涙を流し始めた。

「寂しいよ、オーシャン。出会った頃から今でもずっと一番の友達なんだ」

 涙ぐむバートにオーシャンは深い海の色をした瞳で答えた。

「バート、そなたにオーシャンと名をつけてもらったこと昨日の事のように覚えているよ。そなたがまだ小さく可愛い笑顔を見せていたね」

「オーシャン、俺が海が大好きなのは。オーシャンがいてくれたからなんだ。オーシャンがいなくなった海は寂しくて、好きになれない」

「バート、我らにも新しい時代がくる。そこら辺を見てごらん」

 我らは周りを見た。
 周りに数百の卵があった。

「我らは1000年に一度、1万の卵を産む。そこから生まれた子供は海へと向かう。そしてその中から再び子孫を残せるものは20匹しかいない」

「1万匹中、20匹か!?」

 某は驚いた。
 ほとんどが死ぬというのか。

 ハサルトは優しく頷いた。

「1つ尋ねたい」

「何だい?」

「貴公から見て、某はどう見える。・・・やはり小さいか?」

 この問いにハサルトは笑みを浮かべて答えた。

「我は1万年の人生で他の生き物たちの人生も見てきた。全て価値のある命だよ」

「そうか・・・」

「バート、名前をつけてくれてありがとう。楽しかったよ・・・」

「友よ。さらばだ!」

 ハサルトのオーシャンどのが光に包まれた。
 オーシャンどのが消え、深い蒼に赤い模様が走った素石がいくつも現れた。
 その亡骸ともいえる素石をバートどのは手にした。

 バキッ・・・ピキッ。

 卵にひびが入り、中から小さなハサルトの子供が現れた。

「なんて小さいんだ・・・」

 大人なハサルトに比べて遙かに小さなその命達は海に向かって進み出した。
 この中のほとんどは、オーシャンどののように1万年も生きられない。
 それでも彼らは海へと向かっていた。

 ザアアアア!

 我らは光に包まれた。

「もとの海に戻るぞ。シークイーンに乗れ!」

 我らは急いでシークイーンに戻った。
 シークイーンは光と共に海の中に沈みだした。

 ダン!

「戻ってきたか?」

 もとの海に戻ったとき上空から4代目が小竜から飛び降りてきた。

 バートは直立不動で頭を下げた。

「バートに伝える。ブラックキッドなる者は海を荒らし、海の安全を脅かし、帝国が治める平和に泥を塗った。従って余自ら鎮圧に出向いた。だが、これはお主の失態でもあるぞ」

「申し訳ない・・・」

「このことはホリー国にも伝える。そして帝国で対処を考える。後日それを伝える」

 4代目はバートにそう言うと某を見た。
 そして何も言わず小竜に飛び乗り、いずこへと去って行った。

 綺麗な海の音だけが聞こえる。

「ふん、聞くところによると今4代目は、ああやって問題が起きてる場所に自らが赴いて、自ら事を収めて世界に己の帝王の威厳というのを知らしめているらしい」

 バートが鼻で笑っていた。

「俺は小さい頃、初代帝王の話を聞いた。それならば俺は海賊として海を支配したいと思った。そして俺は最高の海賊と呼ばれ、ついには街1つを手に入れた。だがオーシャンは俺が生まれる遙か昔から広い海を泳いでいた。・・・ただそれだけだった・・・」

 バートどのがオーシャンの素石を某にわたした。

「これを使って良い武器を作って、お前自身ももっと強くなれ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...