私はテイマーではありません!牧場主です!

黒雪

文字の大きさ
3 / 16

3、狼に助けられた

しおりを挟む
フワッと上質な手触りに歓喜の声を上げるのを必死に堪える。狼は舐めるの止めて大人しく目の前に座っている。頭、胸、背中を順に撫でる彼?彼女?は嫌がる仕草も無く、されるがままに身を任せてくれている。ゆっくり尻尾を揺らしているあたり心地いいのだろうか?時より目を細めていた。


「すごく綺麗な毛並みね、貴方は独り?とても人に慣れているようだけど、この辺に人の住む場所はあるのかな?」


動物相手にいつも独り言を呟く私にとって当たり前のように話かけていた。返答を期待している訳ではないけどなんとなく聞いてみてしまい、自分の言動に笑みを溢す。


「ふふっごめんねー何言ってるか分かんないよねーそれにしても本当に綺麗だねー」


『人里は山を二つ超えた所にある、オレはいま単独行動しているだけだ住処に戻れば仲間がいる―――人間の女、お前は何故この森で一人でいる』


「えっ山二つ!?そりゃ人の気配がまるでしないわけだ、狼で単独行動なんて珍しいね?私がひとりでいるのは・・・」


そこで私は言葉を無くす、目を大きく見開いて狼を凝視する。いま確かにこの狼から声が発せられた。私の問いに彼が(オレと言っていたので多分、オス)答えてくた、しかも人の言葉で―――
混乱して言葉を失っている私を余所に彼は怪訝そうな声で言った。


『女、ひとりでいる理由はなんだ?ここは人が滅多に立ち入らぬ森―――魔物が出たらどうするつもりだった?』


その言葉には僅かに咎めるような響きがあった、だがいまの彼女にとってそれに気づく余裕はない。


「きっきみ!しゃべっオオカミが喋って・・・えっ?えっ!」


震える声でなんとか言葉にしよとするが、言葉にならない。


『言葉が話せて当然だろうオレの種族は魔物の中で幻獣と呼ばれる高位種だ、幻獣を見たのは初めてなのか?オレを見て脅えていなかった―――意思の疎通が可能なことを知っていたからではないのか?


彼女は無言で首を激しく横に振る。


『知らずにいた?よく怯えて逃げださなかっものだな』

今度は狼が驚いたように目を見開く。


「普通の狼だと思ったから・・・もしかしたら見逃してもらえるかも?って・・・」


そう口にして落ち着きを取り戻したのか大きく息を吐き狼の目を真っ直ぐ見つめた。その瞳はどこか輝きに満ちているように見える、その瞳に狼は僅かにたじろいだ。



「あなたの名前を聞いてもいい?あっ私は蒼岸あおぎしあきらアキラって呼んでよろしく!」


そう言って彰は微笑んだ。その表情に狼は無意識に尾を揺らす。


『オレの名はヴァレリだ、よろしく頼むアキラ』


お互いの自己紹介が済んでニコニコと嬉しそうにする彰にヴァレリは何がそんなに嬉しいんだろうと不思議なものを見るような目で彰を見る。

狼と喋れることが嬉しくてついヴァレリをじっと見ていた、そうしたらヴァレリが不思議そうな目で私を見ながら首を傾げるものだから脳内で悶絶した。咄嗟に発狂するのを我慢した私を褒めて欲しい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...