ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第6章 ディスピアランス・サーガ

ローズマルド家の会合

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ここは中国北京に存在するある豪勢な住宅の一つであった。道を歩く人ならば少しお金を稼いだ小金持ちが住んでいるのだろうと予想するのだろう、だがここに居るのはそんな"小金持ち"程度の人物ではない。
今その家に滞在しているのは世界を裏で操っているとも言われている世界的貴族ーローズマルド家の一族の人間たちであった。
その家の簡素なバー付きの大きな部屋にある円卓のテーブルの中央にいたのはローズマルド家の長男であり、アジア、中東、近東、ロシアなどを支配している大貴族のリーダー的存在の男であった。その右に位置するテーブルに座っていたのはローズマルド家の長女であり、聖職者のマリア・ローズマルドであった。
マリアは美しい女性で、そのベールに包まれた頭にはまるで古代エジプトのツタンカーメン王の棺のように輝く金髪が収められており、またその宝石に例えられるようなヘーゼルの瞳は見るもの全てを彼女の目に引き込ませ、虜にしてしまうであろう保証は容易にできる程の美しさを感じた。特有の雪のように白い肌は彼女はその自慢の瞳と大き過ぎず、小さ過ぎない形の良い唇を存分に引き立たせていた。体型もスポーツ選手のようにしなやかに引き締まっており、またその豊満な胸は見る男全てを釘告げにするくらいには魅了的であった。
だが、美しさでは先程のロベルトも負けてはいなかった。彼は全体的にスラッとした体型で、背中は引き締まった逆三角形であった。また、彼の顔は古代ギリシャの彫刻を思わせるような凛々しく、立派な顔であった。
ローズマルド家の他の身内も中々の美男子、美女揃いであったが、二人の男女の前には霞んで見えた。
すると、マリアが沈黙を破り、喋り始めた。
「本日はお集まり致しまして、誠にありがとうございます、あなた方のご厚意には感謝の意を表しますわ」
マリアがそう感謝の意を述べ終えると同時にこの会合がスタートした。
「今回は何の用なんだマリア?言っておくがな、おれは暇な聖職者のお前とは違って、世界を駆け回っているんだ !さっさとすませてほしいものだな !」
マリアはそれを聞くと、クスクスと微笑を浮かべ、それから本題に入り始めた。
「まぁまぁ、落ち着いて聞いてくださいな、わたしのこの計画を知れば、皆さまも必ず従うはずだと思いますから」
マリアはそう喋り終えると、席を立って全員に書類を配り始めた。そうして全員に書類を配り終えると、マリアは席に戻った。
全員がマリアの配った書類を眺め終えると、ある者は驚嘆した顔を、ある者はマリアへの警戒と不安の顔を見せた。
「どっ……どういうつもりだ……マリア・ローズマルド、お前は世界を……」
「うふふ、飲み込みが早いのね、そう……わたしは世界をリセットするつもりよ、かつてカール・ジェームズが考えたように」
マリアは邪気のない顔を浮かべた。
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