ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第6章 ディスピアランス・サーガ

ゴッドロギレンスーその⑥

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アロが絶望に酔いしているところを何とか助け起こしたのは、アロのガードゴーストであるサンダースピリッツであった。
「アロ !早く立たないか !!あいつはさっきの槍だけの能力とはまるでわけが違うんだ !お前も何かの対処をしないとやられてしまうぞ !!」
「でっ……でも」とアロは弱気な態度だった。よっぽど進化したのだが、彼にとってはショックだったのだろう。それとも"優しいおじさん"が敵に回ってしまったことが原因なのだろうか。
「いいから、私に何か言ってみろ !お前が指示しなければ、私は何もできないんだぞ !!」
いずれにせよ、弱気になっているアロにサンダースピリッツは相変わらず励まし続けていた。
「分からないよ !ぼくは……ぼくは……どうすればいい!?」
アロのその声を聞いてサンダースピリッツをクルリとアロに背を向けた。
「そのくらい自分で考えろ、生き延びたければな……」
アロはそう突き放されると、本当に絶望感に打ちひしがれた。どうすればまたぼくの守護精霊と仲直りできるんだと、そしてどうすればこの場を乗り切って無事に母親と再会できるのだろうと。
アロは決心をしてロドリゲスの二つの槍を持つ真っ白な魔人を睨みつける。
(負けちゃだめだ……負けちゃだめだ……この戦いから絶対に生き延びるんだ……)
アロはそう自分を振るい立たせると、サンダースピリッツに突撃を命令した。
サンダースピリッツは雷を纏わせた拳を真っ白な二本の槍を持つ白い魔人に向ける。
たちまち槍と拳の打ち合いが始まった。サンダースピリッツが右腕を二本の槍を持つ白い魔人ことゴッドロギレンスの体に打とうとすると、ゴッドロギレンスの左腕の槍がサンダースピリッツの右腕を防ぎ、ついで余った右腕の槍でサンダースピリッツの体を突き刺そうとするが、今度はサンダースピリッツの左腕により阻止される。
拉致の開かない戦いだった。
「中々くたばらないじゃあないか」
ロドリゲスは飽き飽きとした表情で二つのガードゴーストの打ち合いを眺めている。
アロも同じだった。だが、彼は完全に飽きているわけではなく、何処かに隙ができないのかを探っているのだった。
「ウラァ!」
一度身を引いた両者のうち先手を取ったのはサンダースピリッツだった。だが、ゴッドロギレンスの方が上手だった。彼は拳をヒラリと交わすと、彼の体を狙い槍を突き刺す。サンダースピリッツは瞬時に避けようと試みたが、間に合わずに脇腹を刺されてしまう。
「アグギャァァァァァ~~」
サンダースピリッツはまるで日本の特撮ドラマに出てくる怪獣のような悲鳴を上げて、その場でのたうち回る。
「サンダースピリッツ !そんな……」
「ふふふ、私の勝ちのようだな !」
ロドリゲスは勝利を信じた。だが、次の瞬間に彼の顔から勝者の笑みが消えた。何とサンダースピリッツが大きな悲鳴を上げながらも立ち上がり、両手の真ん中に丸の形を作り、そこから雷を精製し、その雷ができるや否や、雷の剣を作り上げたのだった。
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