ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第6章 ディスピアランス・サーガ

ウィーアー・ザ・ワールドーその⑩

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「ウラウラウラウラウラァァァァ~~」
アロは雷のガードゴーストを携え、マリア・ローズマルドの懐に飛び込む。
「ラッシュの打ち合いなら……」
マリアはノンビリと前置きしてから、ラッシュを叫ぶ。
「負けないのよォォォォ~~」
数十発のガードゴーストの拳が無人のラスベガスの街でぶつかり合う。
「圧巻だ……」
「ハァハァ……すごい勢いだよ、見ているだけしかできないんなんて……」
「アロ……お願い勝ってッ!」
三人の仲間はアロをその光景に唖然とし、応援したり、感想を述べたりする事できなかったが、たった一人アロに対し三人とは別の事を呟いた人物がいた。
「……成長したな、アロ……いや、おれの息子よ」
イーサカだった。彼は8年くらい離れている息子を最初は役に立たない、ローズマルド家を倒すための力やハプロック族の戦士としての誇りなど持っていない情けない奴だと思っていたのは確かだ。
自分がマフィア組織の中枢メンバーだったというのもあり、キツい言葉を彼に浴びせてしまったが、こうして立派に成長した姿を見ていると、彼もハプロック族の戦士なんだと思うしかなかった。
「ウラァァァァ~~」
その時だった。アロのサンダースピリッツの拳が初めてマリアの体に当たったのだ。マリアは拳を受けた衝撃により、三メートル吹き飛ばされ、近くにあったゴミ箱に体がのしかかる。
「グハッ……このッ!汚らしいアホんだらがァァァァァァァ~~」
ゴミ箱から起き上がり、マリアがアロに叫んだセリフはおおよそ聖職者らしかねぬであった。
「言葉遣いも悪くなってきたね……よっぽどぼくに押されたのが悔しかったみたいだね?」
アロは倒れ込んだマリアを労わる気持ちなど湧かず更に追い打ちをかけるために毒を吐く。
「ハァハァ……見てなさいよッ!今から見せてあげるわッ!私のガードゴースト『ウィーアー・ザ・ワールド』の恐ろしさはあんたが想像した物だけじゃあないのよッ!」
ウィーアー・ザ・ワールドの体が神々しく光る。その姿はまるでバチカン市国にあるようなキリスト像のようだった。
「なっ……一体何がッ!」
(聖なる主よ、私にお命じ下さい……私たちが目指す天国を目指す事を邪魔する悪魔たちを取り除く力を与え、私たち人類を天国に行かせて給えと……)
全員が漠然としていると、突然マリアとウィーアー・ザ・ワールドの動きがとても早く、いやそんな表現すら生温い程の動きを見せているのだった。
(どういう事だ……ガードゴーストが持てる能力はだッ!死者の能力を自由に操ったり、会ったことのある人間のガードゴーストを使う事ができても、それはだからだッ!あんな殆ど別の能力を使う事なんてできない筈……)
アロが考察していると、イーサカが助け舟を出す。
「恐らく奴の能力は能力の無効化……これは変えようのない事実だ……だが、かつてのハプロック族の宿敵カール・ジェームズは無数の能力を使えた……これは何故かッ!簡単さ……能力の進化なんだよ、進化させ奴は人工物を自在に出せる能力を能力を自在に使える能力に……おれはこう考察している」
アロはその瞬間に頭の中である事実を組み立てる。
(つまり……奴の能力でさせたというのかッ!それであんなにスピードを出せるのかッ!)
何て恐ろしい能力なんだと、アロは思った。あのスピードに自分たちが追いつけるのか不安になった。
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