ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第6章 ディスピアランス・サーガ

ウィーアー・ザ・ワールドーその18

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だが、マリアは最速のスピードでアロとサラにおい迫って来た。恐らく新幹線や人工衛星なんかは比較にならない早さだろう。アロは少なくともそう感じた。
「恋人を連れて逃げる気なの?」
マリアはアロの目の前に立ち塞がって言う。
「それが悪いかッ!お前から逃げるのが何故悪いんだッ!もう戦意を喪失してしまったんだ !!勝てる気がしないんだよ !」
「ハプロック族の戦士らしかねない、戦士らしくない言葉ねアロ……」
「悪いかよッ!」
アロは雷の剣をサンダースピリッツに創らせ、動こうとしたが、それをサラに阻止させる。
「サラ……」
「アロ……逃げて、時間ならあたしが稼ぐわ !!」
「でも……」
「いいから行って !!!」
サラのその剣幕の前にアロは逆らえずに引き下がる。
「聞いてね、アロ……あたし初めてあなたに出会った時にすごくステキな子に出会ったと神様に感謝したのよ、これまでのを忘れられるくらいの想い人に出会えたと自分を元気付けられたの」
サラは眩いばかりの笑顔を見せる。
「それからあたしいつかあなたと一緒に暮らせる日を夢見て頑張ろう、そう誓ったのよ、もう無理そうだけど……」
サラはそう言うと、アロを無言で抱きしめる。
「アロ……愛してるわ」
サラはアロの唇に自分の唇を重ねた。恐らくこれが最後の口付けになるのだと感じ、二人は涙を流した。
「さようなら、アロ……あたしあなたが大好きよ !」
「ぼくもさ……」
サラはそう聞こえたのと同時にアロを突き飛ばし、マリアに挑む。
「来なさい、マリア・ローズマルドッ!あたしはお前なんかに絶対に負けはしない !!」
サラはアンサングラントを構え、マリアに斬りかかる。
「無駄だって分かってるくせに、だからバカは嫌いなのよ」
マリアはサラの剣を素早く避けると、素早く背後に回り込み、サラの脇腹を攻撃する。サラは苦痛のあまりに思わず悲鳴を上げる。
「キヤァァァァァァ~~」
そう叫ぶサラの髪を掴み、マリアはトドメの一撃とばかりに腹を貫く。マリアはサラが事切れたのを目撃すると、逃げたアロの捜索に向かう。アロは何処に逃げたのだろう、アロは……ハプロック族の戦士は今この場で殺さなければならない、マリアはラスベガスの街の中央を自由自在に歩き回る。
「あいつだけは消しておかなければ、あたしの気が済まないわ」
マリアはラスベガスの大通りをコツコツとワザと足音を立てて歩き廻る。
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