ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第3章「ホリィ・ソルジャーズ」

第83話「子孫と先祖の罪と」

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イーサカは、あの店を出てから、ヤングとメアリーの2人がずっと、何かを考えているかのように、黙っているのが気になった。一体どうしたのだろう…いつもの2人らしくない…そう考えていると、イーサカの代わりにコチーズが、2人に何があったのかを尋ねた。
「失礼…何かあったんでしょうか?あの店を出てから、2人ともずっと黙っていますが…」
「ごめんなさい、コチーズ…何にもないわよ…」
メアリーは、そう言っていたが、明らかに何かありそうな表情であった。コチーズは、しつこく食い下がろうと、更に質問しようとしたが、それを見ていたのか、ヤングがメアリーに口を出した。
「何でもないってこと、ないだろう?メアリー?」
「そっ…それはそうだけど…」
「一体お前さんらに、何があったんじゃ?その…両親の死以外のことで…」
助手席に座っていた、イーグルが会話に入ってきた。そのイーグルの質問にメアリーは相変わらず、黙っていたが、その代わりにヤングがそれに答えた。
「…簡単に言いますとね…イジメですよ…おれ達兄妹は、街のみんなから嫌われて育ってきたんすよ…」
「一体どうゆうことだ!嫌われた…?イジメ…?全く理解できないぜ…」
ヤングの隣の席に座っていた、イーサカが、苦言した。それにヤングは、暗い表情を浮かべた後に微笑した。
「はは、にわかには信じられねえだろうな…だがこれは、事実なんだ…ある男…いや…おれ達の両親を殺したヤローのせいでな…」
「ちょっと待ってくれ…どうしてその冤罪で殺した奴が、てめえらを追い込んだんだ?」
「奴が西部劇のヒーローアープの子孫で街の保安官だからさ…だから冤罪でも有罪に変えたし…おれ達は殺人犯の一家になったのさ…それにおれ達は嫌われ者…クラントン一家の子孫…それもあるんだろうな…」
ヤングの暗い答えに、イーサカは、やれやれと思いながら、こう返した。
「確かにな…お前らの先祖は悪いことをしたかもしれねぇ…だがよ…そいつは過去の話だし…今のお前らには関係ないんじゃあねえのか…」
イーサカの、答えにヤングとメアリーは、涙した。そして、2人はこれまで溜めていた涙を一気に出したのか…ずっとポロポロと泣いていた。そして、その後もイーサカ達の車は走り続けていた。そして暫くすると、1人の男がヒッチハイクしようとしていた。そのヒッチハイカーを気の毒に思ったのか、イーグルが声をかけた。
「どうしたんじゃ、お前さん、車が壊れたなら乗っけてやってもいいぞ」
イーサカは、おいじじいと意見したらしいが、イーサカは、イーサカの意見を無視し、更にハイカーに問いた。
「どうするんじゃ、乗るのか?乗らんのか?」
ハイカーは、暫く沈黙した後に答えた。
「はい…喜んで!」
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