ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第3章「ホリィ・ソルジャーズ」

第177話「スリラーーその5」

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ジャッカルは今自分に襲いかかっている危機に唖然としていた。イーサカやヤングあるいはイーグルさんやメアリーならこんな時に自分のガードゴーストとやらを出して身を守るに違いない…だがジャッカルはガードゴーストと契約していない普通の人間であった。ガードゴーストを出すことなど不可能だった。百パーセント確実だと言っても過言ではなかった。止むを得ず隠し持っていたメスに手をかけたが、この死体に勝てるとは到底思えなかった。そう考えている間にも死体は迫っていた。
「ひゃっはっはっ、どうした早くガードゴーストを出さんかい!それともお前さん、まさかガードゴーストと契約していないって言うんじゃあないだろうね!!」
死体をまるで用心棒のように囲っている老婆の意見は正論だった。どうしようもないのでジャッカルはメスを投げようとしていると、自身がいる管理人室のドアがガターンと蹴やぶられるような音がした。何事かと思い蹴やぶられた方を見ると、そこにはイーサカが立っていた。
「…おれの見間違いなら謝るが、どうしてあんたそんなに死人をどこぞの王国の親衛隊の如く囲っているんだ?理由を教えて欲しいんだがな?」
老婆は唇を噛み締めてイーサカをまるで親の敵でも見るかのように睨みつけていた。
「余計なことをしてくれたわい!イーサカめ…折角J・Kに貴様らのメンバーの中で唯一ガードゴーストを持っていないジャッカルを狙ったというのに…まぁいいわい、貴様から先に始末してやるわ!!」
そう言うと自身を囲っていた死人たちをイーサカに向けた。
「やれやれ、死者のなくなった肉体を冒涜するようで悪いが、こちらも命がかかっているんでな…」
「ひゃっはっはっ、強がりを言いおって!やれぇ!スリラー!!」
そう言うと死体たちがイーサカに向かって来る。
「ウラァ!ウラァ!」
スティールウィンドゥの拳が向かってくる死体を倒す。
「…ッ、やはり罪悪感が湧いてくるぜ、既に人生を終えた死者達の体を破壊するのはよぉ…」
イーサカはその後に続いて死体を操る能力を持つ老婆を挑発した。
「おい、そんな所に突っ立ってないでかかって来な、それともおれとサシでやるのが怖いのか?」
だが老婆はイーサカの挑発に乗ることはなかった。
「わしがそんな物に乗ると思うか?伊達に年は喰っておらんよお若いの?」
老婆いやクレメンタインはニヤリとその欠けた歯だらけの口を開けて笑っていた。そう余裕たっぷりのクレメンタインとは正反対にイーサカは再び唇をギリっと噛み締めていた。
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