ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第4章「美しき羽の蝶」

テンクストウ・ザ・トランプーその⑥

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「マズイッ!あのトランプから衝撃波が放たれるッ!」
クウニャウマは自身が突っ込んでいた地点から右に逸れることによって飛んでくる最初の衝撃波を交わした。
「ふん、ベラベラとお得意そうに喋っていたようだがよぉ?オレはまだまだトランプを出していなかったってことを忘れちゃあ困るぜ」
ハンスは第二波を発射させた。
「マズイッ!どうにかしないと…」
クウニャウマは今いる地点から更に左に逸れた。すると背後からカツンカツンというブーツの足音が聞こえてきた。
「忘れていたのかぁ~J・Kよぉ~オレはあいつの契約者ってことを忘れちゃあ困るぜぇ~さぁトドメを刺しなッ!」
「…分かったよ、わたしもギャングだ…こうなった時の備えは出来ている…だから一つ喋らせてくれないか?その間だけ死神を止めてはくれないだろうか?」
クウニャウマは必死そうな目で懇願した。
「ダメだね、そうなったら逃げる気だろう?」
ハンスは最もな意見を述べた。
「いいや、逃げはしない…もし仮にわたしが逃げ出しとしたら翌日には自分の首を切って自害しよう」
ハンスはそう言われると弱った。暫く悩んだ後に結論を下した。
「分かったぜ、言ってみなその正論とやらを…」
ハンスは喋る許可を出すとクウニャウマの要望通りに迫ってくる死神を停止させた。
「…ありがとう、それでは喋らせてもらう、いや喋らせてもらうわ」
ワザワザ女性言葉に訂正してクウニャウマは語り始めた。
「わたしいやあたしがこのギャング『シュヴァルツバルト』に入ったのは16歳の時今から11年も前のことよ、その時あたしはある男に酷いことをされていたの…でもそれを救い出してくれたのはこの組織の人間だったの…だからその時あたしは決意したの…いつかこの組織に入団してその人に恩を返そうと思って…」
そこまで聞いたところでハンスは顔色を変えた。
「…まさかッ!お前はあの時の女の子か…オレが助けたあの…」
それを聞いた瞬間にクウニャウマもまた顔色を変えた。
「…まさか、あなたがあの時あたしを助けれくれたギャング…」
クウニャウマは確認のためにハンスの元へと駆け寄ろうとすると突如銃声が放たれた。銃弾を受けたハンスはその場に倒れた。恐らく即死だったのだろうその証拠に彼が操っていた死神が姿を消したのだから…
「誰なのッ!この人を撃ったのはッ!」
クウニャウマが涙目で銃声が放たれた方向を確認すると手に持っている銃をガタガタと震わせていたのは自身のメンバーであったエドガー・ゲルラッハであった。
「…ご無事でしたか?J・K!ダニエルが心配をしていたから追いかけて…それから銃を持って近くで爆発音がしている場所に行ってみたら、あなたがいてそこに傷ついているあなたと同じく傷ついているスイパーチームのメンバーを見つけたので、だからぼくはこいつがあなたを襲っている敵だと判断して発砲しました…もし敵でないのならばどんな事でも覚悟いたします!」
「どうしてそんな事を言うの?」
「…だって、あなたがポロポロと泣いていたから」
エドガーは震える声で言った。怯えているから震えているのでない、彼は敬愛する上司であるJ・Kの知り合いを撃ってしまったのかもしれないという罪悪感から震えていたのだ。
「いいえ、この人は敵よ、敵だったのよ…ありがとうエドガーあなたが撃ってくれなかったらあたしは撃たれて死んでいたわ」
そうは言っもののクウニャウマは瞳から溢れ落ちる涙を止められなかった。
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