ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第4章「美しき羽の蝶」

ローエングラムは倒れたーその⑤

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クウニャウマが向かってくるロケットを咄嗟に右に交わして避けることによって難を逃れたものの、彼女は新たに飛んでくる一本のナイフの存在に気がつかなかった。
「しっ…しまった!」
クウニャウマは体がうずいた。やられる…このままじゃあ、あのナイフに体が貫かれてヒルダのように胸に穴を開けて死んでしまうと。なんとかしようとクウニャウマはブルーバタフライを出したものの、どんな生き物を出せば対処できるのだろうと考えることに手間を取り、結果ナイフが目の前に迫ってくるところまで来てしまった。
「ウォォォォォォォ~~」
クウニャウマはそう叫ぶと本当にナイフが胸を貫くか貫かないかの瀬戸際で、クウニャウマはインドゾウを出した。そうインドゾウの巨体によってナイフを防いだのだった。だがインドゾウはナイフが当たった痛みのために暴れ出した。像が槍や剣などの刃物によって痛みをつけられた場合は像を操る人間がいくら宥めても言う事を聞かなくなるのは古代ローマの時代から既に証明されていた事実であった。
「マズイ…像を元に戻さなくては…」
クウニャウマが像が暴れてニュルンベルクの街を滅茶苦茶にするという事実を恐れて、像を戻すと次の瞬間には、もうトートが大量の小型ロケットを出していた。
「シュテルベン…」
トートは何の感情も込めずに無表情にそれだけ呟くと、大量の小型ロケットをクウニャウマはに向けて発射させた。
「やばいことになってしまったな…どんな生き物を出したらこれを回避できるんだ…」
クウニャウマが対処策を考えている間にもロケットはクウニャウマの目と鼻の先にまで迫ったてきた。クウニャウマはやむを得ずに、また何か巨大な動物を出して盾にしようかと思案していると、迫ってくるロケットを炎が消した。クウニャウマが炎が放たれた方向を確認すると、そこには自身の仲間であるマルク・シュトックハウゼンが立っていた。
「マルク…」
「J・K!無事か!」
マルクは慌てて駆け寄ってきた。
「おやおや、戦いの最中にお互いを心配するとはな…随分と余裕がありそうじゃあないか?フロイライン?」
トートは嫌味ったらしく言った。
「黙りな!J・Kあいつがおれたちの敵なんですか?」
マルクが怒りを秘めた言い方で尋ねると、クウニャウマは黙って頷いた。
「よーし!お前がマインシェフとやらか…待ってろよ!おれがてめえをブッ殺してやるぜ!」
マルクは炎の魔人を背中から出して自信たっぷりに叫んだ。
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