ハプロック神話

アンジェロ岩井

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第5章 クローズイング・ユア

リビング・デイ・ライツーその③

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そう思っていると、イーサカはバックミラーに映った先程の車に気がついた。
「後ろだッ!イクバヤッ!」
イクバヤは慌ててハンドルを切る。
「ヒューこいつはヤベッースよ!教授…いやイーサカさん…いつもこんな危ねぇ最強にイカれた野郎を相手にしてるんッスか?」
イクバヤは冷や汗をかきながら、尋ねた。
「…確かに危ねぇ野郎ばかり相手にしていたんだが…ガードゴースト所持者とこんなガチでやり合ったのは5年ぶりだぜ…」
するとバックミラーに映っている車がなんと機関銃を出した。
「イクバヤ!急いで右折しろッ!」
イクバヤは冷や汗で濡れた手で必死に右方向に旋回した。すると、その僅か3秒ほど後にイーサカとイクバヤが右折する前の位置に後ろの方角から軽機関銃の弾が何十発も発射されたのだ。
「イカれてるッスよ!こんな街の中でマシンガンぶっ放すって!」
イクバヤはそんな事は考えられないとばかりに、運転している手と正反対の方角の手で口を覆った。
「……お前の言う通りだ…これ以上ニュルンベルクの街で野郎にあんな乱暴な事をさせるわけにはいかねぇからな…」
すると、イーサカは助手席を離れて後部座席へと向かった。
「どうする気なんすか?」
「……確かに野郎のガードゴーストは強力だが…運転席に居ると思われる本体はどうだ?車と同じように頑丈なのか?」
イーサカはイクバヤがその質問に対する答えが分かっているのを知った上で、イクバヤに尋ねる。
「…いいや、そうとは限らないッスけど」
イクバヤはぎごちなく呟く。
「そうだよな…なら本体つまり契約者を直接殺るに限るな…」
イクバヤはイーサカのその後の行動を予測して、唖然となる。
「まっ…まさか…イーサカさん!」
「お前の予想としている通りさ…野郎に散弾銃の弾を浴びせる…」
イーサカは後部座席に辿り着くや、いなや後ろの方に置いてあった、まるで熊でも狩れるかのような巨大な散弾銃を取り出した。そして銃尻で後部のガラスを破壊すると、そこから後ろの車に散弾銃を発射した。1発、2発とデカイ音が夜のニュルンベルクの街に響いた。車は流石に耐えきれなかったのか、その場に停止した。
「やったか!」
イーサカは契約者を叩くために、停止した車の元へと駆け寄った。だが、それは罠だった。車は再起不能になどなっていなかったのだッ!
「何ィ!」
すぐ側にまで寄ったのが、不運だったのか、車はイーサカと目と鼻の先にまで迫ってきた。
「ちくしょう!こいつでもくらいな…ウラッ!ウラッ!ウラッ!ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラッ!」
車はイーサカのラッシュの前で少しだけ後退した。
「やるねぇ~イーサカくぅ~ん!でもこれは交わせるかなァァ~~」
何とリビング・デイ・ライツの契約者の男は車を再び作動したイーサカを轢き殺そうとした上に、更に機関銃まで剥けてきたのだった。
「やれやれ、同時攻撃って奴か…こいつはちいっとばっかし、骨が折れそうだぜ」
イーサカは自分の呼吸が荒くなってくるのを感じた。
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