ハプロック神話

アンジェロ岩井

文字の大きさ
上 下
366 / 526
第5章 クローズイング・ユア

イクバヤの長い夜ーその③

しおりを挟む
「成る程ねぇ~完璧な攻撃を行うっ気っスねぇ~凄いっすよ、あんた…ただし一つだけ残念な事があるんスよねぇ~」
イクバヤは自身の発言に対し頭を垂れる。
それから、顎を高く上げた。
「それは絶対に成功しない作戦って事をよぉ~!」
イクバヤはアイス・レイジの拳を思いっきりマシュー目掛けて振り上げる。
「ヨラァァァァ~」
「ぐっ…フィッシャーズ!」
アイス・レイジの拳目掛けてピラニアが噛み付く。
「成る程やりますねぇ~おれのガードゴーストの拳にピラニアをくっ付けるなんてよぉ~」
「へん!そうかい…なら、もっともっと喰らいやがれッ!」
マシューの命令に従い、複数のピラニアがアイス・レイジの拳に噛み付くままだった。
「マジでヤベェな…これは」
「このまま死にやがれェェェェェ」
マシューはこの後のイクバヤの惨状を考え、薄ら気味悪い笑顔を浮かべる。
だが、イクバヤはマシューの考えとは正反対に片手で笑顔を隠すのに必死だとばかりの満足気な顔だった。
「何ィ!」
「マシューさんよぉ~あんたこんな事感じた事ない?学校の授業の時に予め予習してた内容の問題を当てられた時とか、映画とか見る前に得た知識でどんな内容かを事前に知ってたみたいな時…つまり事前に考えてた事がちゃーんと当たってた時の事…覚えてない?」
「テメェ…何が言いたいんだ?」
「覚えるかなぁ~おれのガードゴーストって右の拳を振り上げて、もう片方の拳はスタンバイのままって事を…」
マシューは自分のこれからの事を考えて少しだけ身震いする。
「テメェ…もう片方の腕でおれをブッ殺すつもりか!?」
「そんなつもりは毛頭ないって…おれはこのツララをてめえにぶつけることだけ考えてたんだぜェェェェェ」
イクバヤは左の拳で持っていた半分の数のツララをマシュー目掛けて投げつけた。
ツララは空気を切り。マシューの脳天目掛けて一目散に我先にと突っ込む。
マシューは体を全体的に左の脇に逸らす。
そのためか、ツララはマシューの頭を水平によぎる。
「危ねぇ~~!死ぬところだったぜ…」
だが、またマシューにツララが襲い掛かる。
ツララはマシューの左足に一直線上に五本のツララが刺さる。
「グァァァア~~おれのッ!おれのッ!足がァァァァァァァァ~~!」
マシューの顔の血の気が引くのがイクバヤからも感じられた。
「よぉ~し、今のお前ならおれにも殺す事が出来るかもしれねぇぜ!エイモスミラー事件の吸血UFO見てぇによぉ~お前を容易く殺せるかもしれねぇんだぜ!」
イクバヤは美術コンクールに入賞した作品を見た美大生のように自信満々な顔を浮かべる。
しおりを挟む

処理中です...