魔法刑事たちの事件簿

アンジェロ岩井

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シニョリーナ・エスコート・トラベル編

ボルジア・ファミリー再始動

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総一郎は満足気であった。話は纏まりがついたし、しかも、ボルジア・ファミリーの腕利き二人を貸してくれるそうだ。
何でも、ポーリー・カルディとサム・コロンボの両名はこの世にあらざるものを使う上級クラスの魔法を扱えるらしいが……。
「それはどんなものなんですか?」
総一郎は流暢なイタリア語で問いかけた。
総一郎のとなりの席で、ガムを鳴らしていたサムはガムをガムの包装紙に捨ててから、舌を鳴らしながら答えた。
「この場じゃあ披露できないが、オレの魔法はあのトニー・クレメンテすらも、泣いて逃げ出す魔法だぜ」
「あの、トニー・クレメンテが?」
総一郎は思わず首を傾げた。自分たちのかつてのリーダー二人を追い込んだ伝説の殺し屋さえも逃げる能力とは。一体何なのだろうか。
「まぁ、楽しみにしてなって、オレが思うにあんたは好物を最初に食べる派だろ?」
「何故、分かっんたんだい?」
総一郎は幼い頃からの自分の癖を初対面の相手に当てられて、思わず口元を手で覆ってしまう。
「だって、そのうちオレらはあんたに見せると言っているのに、あんたは催促したじゃあないか、オレらはそこから、推測しただけだよ」
サムは笑いながら言った。
「参ったよ、それではウチの事務所だよ、最近はマスメディアからのバッシングが激しくてね、組の看板は隠さなけりゃあいけないんだ」
と、総一郎はそれを証明するように、看板に書いてある『刈谷商事』という文字を指差す。
「おい、オレらは日本語は読めないんだ。翻訳機は声は翻訳してくれるが、文字までは翻訳してくれないからな」
ポーリーの指摘に総一郎は苦笑してから、看板に書いてある事を教えてやる。
「分かったかな?」
「まぁ、大体分かったかな、オレらとしては、どうして、日本が暴力団に厳しいのかは分からんがね」
ポーリーは懐からタバコを取り出しながら言った。そして、ライターを取り出し、火を点けようとしたところを……。
「待ってくれ、この近くには人も大勢いるんだ。日本に禁煙法がある事は空港で知らされた筈だろ?タバコを吸うのはやめてくれよ」
総一郎の制止により、ポーリーは舌打ちこそしたものの、大人しくタバコを懐にしまう。
「取り敢えず、案内してくれや」
サムは総一郎の肩に手を置きながら、ニヤリと笑いかけながら言った。
「とにかく……入ってくれ」
総一郎は運転手に止まるように命令し、それから二人に車から降りるように言った。
二人は大人しく従い、総一郎に続いて、事務所へと向かって行く。


孝太郎の苛立ちはほぼ火山の噴火直前と言っていいほど膨らんでいた。彼はこれまでに白籠市のアンタッチャブルのメンバーの一人である石井聡子の携帯端末に何回も電話をかけているのが、一向に出ない。
真由美の話によれば、今日は翼と信介と3人で飲んでいるらしいのだが……。
「ちくしょう! いつになったら、出るんだッ!」
孝太郎は怒りのあまりに携帯端末を床に叩きつけてやろうかと考えていると……。
「ちょっと待って、なら、あたしから、翼か、信介に電話するよ」
二人の携帯アドレスを知らなかった孝太郎からすれば、二人が出ない可能性を考慮に入れても、まさに『藁をも掴む思い』であった。
「頼んだ。あの二人に早く出るように言ってくれ」
それから、真由美は3回ほど携帯端末をいじり、4回目でようやく誰かが出たらしく通話音が鳴り響く。
「もしもし、あたしだけどさぁ~」
その真由美の声から、聞こえてきたのは信介の方だった。
「あっ、あんたかッ! 今さぁ~聡子と呑んでてさ、聞いてくれよ、聡子のやつ、焼酎を二本開けても、酔わな……」
「うるさい! 早く聡子に替われ!! 孝太郎が聡子に用があるんだってよ!! 」
真由美のその怒鳴るような大きな声に怯える事もなく、翼は機嫌の良さそうな声で了承したらしい。すぐさま、酔っ払った聡子の声が聞こえてきた。
「どうも~みんなのアイドル聡子ちゃんでーす!! アハハハハハハハ~~!!! 」
そうとう酔っているらしく、機嫌の良さげな声がこちらにまで聞こえてくる。
「聡子。あんたね、孝太郎が呼んでんだけど、早く切り上げて署の方に来なよ」
「あ~はいはい、ハハハハハ~~!! 」
どこまで、酔っているのだ。真由美はいい加減ため息が吐きたくなってしまう。
そんな時だ。孝太郎がこっちに近寄り、聡子に向かって怒鳴りつけた。
「おいッ! 今からオレらは警察官としての義務を果たすんだぞ!! それなのに、酔っ払っている場合かッ!早く来やがれッ!」
いつも冷静な孝太郎の怒鳴る声に驚いたのか、聡子は慌てて来る事を了承した。
「あんなに言って、大丈夫ですか?」
不安げに尋ねたのは私服の明美だった。
「あんな酔っ払いにはあんな口調で言わなけりゃあ、来ないだろ?」
孝太郎は吐き捨てるように言った。明美はその言葉に震えてしまう。
更に追い討ちをかけるかのように明美の今日の私服は彼女の大人しさを象徴するかのようにギンガムチェックの上着に、白色の清楚なロングスカートであり、そんな風におどおどとした態度を取っていると、男としては気が弱くて、内気な女の子のように感じてしまう(実際には彼女はただの数字バカであり、言いたい事もバンバン言うタイプなのだが……)
「ともかくだ。彼女を安全な場所に連れて行く必要がある。その場所は北海道なのだが……」
「問題はそこに行くまでの間にイタリアン・マフィアが追って来ないのかが心配なのよね?」
絵里子の指摘に孝太郎は頷く。
「その通りだ。今回の反社会的組織。ロンバルディア王国のボルジアは自分たちが貴族である事をいかし、その国の警官たちに捕まえられたい事をいいことに、各国で犯罪を繰り返してはいるが……」
光太郎はここで大きく息を吸ってから、手元にあった机を叩きながら言った。
「ここは日本だ!!! 奴らが貴族だろうが、何だろうが、その場で罰を受けさせてやる! 」
孝太郎のその言葉に全員から拍手をもらう。
「流石よ! 孝ちゃん! お姉ちゃん感激したわ!! 」
絵里子は特に酔っているようだ。
「姉貴落ち着いてくれよ、とにかく、コニーさんを守る必要があるんだ」
コニーは服の裾を強く握りしめていた。
「まぁ、この街に留まるんなら、ジャック・レッドニオを一時的に復活させ、護衛に加わろうかい?最も、メンバーは3人だけだけど」
真由美は苦笑しながら言った。
「いいや、明日だ。明日は私服で行く。我々が警察官だと分からんようにな」
その時だ。白籠署公安部の扉が開く音がした。
「遅れてごめん!!! 呑んでて……」
現れたのはジーンズに長袖の縞模様のシャツの聡子だった。
「分かっているけどさ、少しくらいは電話に出てくれよ、緊急の仕事なんだぜ」
孝太郎は腰に手を当てながら、頭を抱えながら、呆れるように言った。
「ともかくだ。この人を守るのが仕事だ。明日から、北海道に行く予定だからな、忘れるなよ」
「りょーかい、うん、綺麗な人じゃん」
聡子はコニーに笑いかける。コニーの方も悪い気もしなかったのか、聡子に対し、笑い返す。


「ならば、彼らは北海道に行くのは確定だと?」
「ええ、日本の警察なら、そう対処するでしょうね、北海道は安全だし」
総一郎は事務所の中でタバコの火を灰皿に押し付けながらサムの言葉に返答した。
「で、出るのはいつなんだい?」
ポーリーの質問に笑いながら答えた。
「明日の朝だろうね、朝まだ暗いうちに、出かけるつもりだろう。だが、安心してくれ、キミらには組の武闘派を付けるから」
と、総一郎は手を叩く。総一郎の手拍子に合わせて出てきたのはまるで力士のようにガッチリとした体格の男だった。
「紹介しましょう。彼の名前は富永貫太。我々組一の武闘派です。そして、あなた方には及びませんが、かなり強い魔法を使います」
貫太はまるでこの場の支配者は自分だと言わんばかりの笑みを二人に向けた。
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