魔法刑事たちの事件簿

アンジェロ岩井

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第4部 皇帝の帰還

レストラン襲撃

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孝太郎が店を出ようと、立ち上がろうとした時。
「どうした?アイツら……何やら慌てて店を出ようとしているようだが……」
ヴィトの一言で、孝太郎は汗をぬぐいながら、退出する二人の男を見つめる。
(まさかな……)
孝太郎の脳裏に嫌な光景が思い浮かぶ。確か、映画で見たような気がする。敵対するマフィアのボスを襲撃するためにレストランに出かけた時に……。
ここまで結論が出たら、もう後は体が勝手に動いてくれた。
他の人々に伏せるように叫ぶ。全員が呆気に取られた顔をしている時だ。
レストランの窓から黒色フォード・サンダバードの姿が見える。しかも、窓からは銃口らしき物が……。
孝太郎は慌てて、店にいる全員にこの場で伏せるように指示を出す。
幸いな事に車から銃弾が放たれたのは、全員が床に伏せてからであった。
無数とも言える銃弾が飛び交ったが、孝太郎の指示により、全員が難を逃れる事ができた。それに弾切れを起こしたのだろう。銃弾は飛んでこない。
ヴィトはホッと溜息を吐いてから、
「危ない所だったな、おれはあの野郎に報復する、おれを殺すためだけに無関係のカタギの人間を巻き込むような野郎は許せないからな」
孝太郎は何を偽善者ぶっていると突っ込みたくなってしまう。結局はこの店が襲撃されたのも、彼がマフィア組織のNo.2だったからだ。彼がマフィアの人間でなければ、人々は巻き込まれずには済んだのではないか。
孝太郎はそんな辛辣な言葉を唾とともに飲み込み、ヴィトの言葉に同調する。
「分かった。オレもあんたの報復とやらに同意してやる事にするよ、だがな、一つだけ条件を言わせてもらうぞ」
「何だ?」
ヴィトは怪訝そうな様子で尋ねる。
「なるべく人は殺すなよ、あいつらには生きて罪を償わせたいんだ」
「……時と場合によるな、とにかく気を付けてくれ……」
ヴィトは裏口を使い、表の連中に報復を加えに行くらしい。孝太郎はヴィトに付いて行くべく、同じように裏口に向かおうとしたのだが、ここで何かを思い出したかのように机に裏に隠れている仲間たちの方に向き直る。
「姉貴……」
「ど、どうしたの孝ちゃん?」
「まさか、過去の世界に来てまで、逮捕劇に巻き込まれるとは思わなかったよ、申し訳ない、オレが昌原が死んだ時にあんなに落ち込まなけりゃあ、こんな事態には巻き込まれなかったのにな」
「……」
「すまないな、姉貴。周りの人たちを頼むぞ、この人たちはマフィアの抗争に巻き込まれた被害者なんだ。読み書きはともかく、例の翻訳機があるから、警察を呼ぶ事はできるだろ?」
絵里子は黙って首を縦に動かす。
「よし、オレは行ってくるぜ、こんな事件を引き起こした、張本人たちを締めにな……」
孝太郎は人差し指と中指をくっ付け、絵里子の方に向かって振ってみせる。
「任せておいて、孝ちゃん……」
絵里子は戦いへと向かう弟を涙目で見送る。
「そうだ、電話は何処なんですか?」
明美は床に伏せていたウェイターに尋ねる。
「レジカウンターの方さ、そこから警察に掛けてくれ」
絵里子は創造神クリエティブ・ゴッドを使って、機動隊が使うような盾を使用し、這い蹲るながらレジカウンターへと向かう。



孝太郎は裏口から襲撃してきた連中が載っている車に向かう途中で、マフィアの人間と思われる男性たちの死体があるのを発見する。
ヴィト・プロテッツオーネは孝太郎が絵里子と話し込んでいた、僅かな時間の間にこんなに人を撃ち殺していたのだろうか。
孝太郎は空恐ろしくなってしまう。
通路と店の敷地との狭間で、銃弾が飛び交う音が聞こえる。
ヴィトは物陰に隠れて、銃撃戦に臨んでいるようだ。
孝太郎はこれ以上犯人グループを殺させないためにも、ヴィトに加勢し、相手の脚やら肩を撃ち、戦闘不能にする事を考えた。
魚のを入れる木製の箱に隠れながら、銃弾を入れているヴィトの姿を確認する。
孝太郎は慌てて、同じ場所に潜り込み、銃撃戦に応じる。
いいや、この場では自身の魔法鋼鉄の将軍ジェネラル・オブ・スティールを使って、相手の所にまで向かう方が良いだろうと判断して、見えない鎧を身に纏い、銃を相手の肩やら脚に向かって撃っていく。
男たちは次々と戦闘不能になっていく。
孝太郎は得意げな表情で、リーダー格と思われる緑色のハッシュ帽を被った男性に銃口を構える。
「街のファミリーのNo.2を狙ったのはいいが、No.2がこんなに強いとは思わなかった。更にあんたらの受難は続いたな、そのNo.2は実績のある魔法師と喋っていた。つまり、あんたらは二枚ものジョーカーを引いていたと言う訳かな?」
緑色のハッシュ帽を被った男は何やら口をパクパクと動かしている。
自分を囲っている手下が殆ど倒されてしまい、どうしようもない状況だ。
助けを求めようにも街の人々は助けてくれないだろうし、仮に助けてくれたとしてもそれは警察という彼のようなマフィアが最も忌み嫌う存在だ。
緑色のハッシュ帽を被ったリーダー格の男はこの僅かな間に一体何匹の苦虫を噛み潰した事だろう。
だが、そんな男に孝太郎は情けをかけるつもりは毛頭ない。
犯した罪は大人しく償うべきだ。特に23世紀の日本共和国においては禁忌とされ、孝太郎も昔から警戒していた、一般人への銃乱射。
これを過去世界とはいえ、引き起こした人間がいるのだ。許せるわけがない。
孝太郎は軽蔑するような目を男に向けるばかりだ。
「分かった。オレの負けさ、だかせめてその物騒なもんを下ろしてくれよ、オレはもう何もしないさ」
「凶悪犯はみんなそう言うのさ」
孝太郎は男の申し出を一蹴する。
だが、男は食い下がる。
「見たところ、あんたはカヴァリエーレ・ファミリーの人間じゃあなさそうだな、何者だ?」
「襲われたから、対処しただけの単なる一般人だよ、何か問題でもあるのか?」
「あるね、どうしてマフィアでもないのに銃を持ちあるていたんだと警察でも話題になるね、あんたは身の破滅さ」
男は面白そうに笑うが、男の不愉快な笑いはヴィトが歩いてくる音にかき消される。
「心配はいらないさ、彼はカヴァリエーレ・ファミリーの人間だ。今日は運転手と護衛がたまたま屋敷にいて、一構成員の彼が、おれの護衛に付いてくれたんだ」
ヴィトはそう言って、孝太郎の肩に手を置く。孝太郎は誰がと反発しそうになったが、ここはヴィトの言うことに従った方が得策だろうと口を紡ぐ。
「そういう事だ、精々お廻りにしごかれてくるんだな」
ヴィトはそう言って、フンと鼻を鳴らす。
男は何かを諦めたかのようにうなだれる。
数分後に警察がやって来て、レストランの襲撃に関与したグループは一人残らずに警察に捕まったが、ヴィトと孝太郎は正当防衛という事で釈放された。
「じゃあな、ヴィト。あんたと会えて良かったよ、おれはこの街を去るよ。達者でな」
孝太郎がレストランの入り口の前で、立っている三人とともに街を去ろうとした、まさにその時。
「まあ、待てよ、お前のような奴を黙って、去らせるのには惜しいんだ。幹部兼用心棒の三人不在でな、その穴埋めが欲しいんだ。幹部にはさせんがな、用心棒が欲しいと思っていた時なんだ。ウチに来てくれ、それともだ……お前さんたちに戸籍はあるのか?身分を証明するものはあるのか?無いんだろ?だが、ファミリーにさえ来れば、どんな手を使っても、手に入れてやるよ、偽の身分書でもな……」
孝太郎にとってこれ以上ないほどの魅力的な提案だ。従うべきなのだろうか。
孝太郎は決断を迫られた。
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