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ロックウェル一族の闘争篇
デヴィット・ロックウェルの遺言
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「天に召します。神よ、デヴィット・ロックウェルの魂を天国へと導きたまえ。アーメン」
神父と思われる男性が十字を切る真似を行うと、他の一族も神父に習い十字を切る。
そして、葬式が終了し、ロックウェル家の四代目当主デヴィット・ロックウェルJr.は実質的なロックウェル家当主のローランド・ロックウェルにある疑問を投げかける。
「笑わせるなよ、デヴィット。叔父さんの妄言だよ、この世界の他にもう一つの世界があるなんて……」
「では、これまでの世界に存在していたと思われる異世界への文書はどうなるのですか! 」
いつもは大人しいJr.なのだが、今回ばかりは引き下がらない。
「父は言っていました。異世界の力を手に入れてこそ、ロックウェル家は真の世界の覇者となれるのだとッ!」
「死ぬ間際になると、誰でもそんな妄想を言うもんだよ、デヴィット……確かに、叔父さんはロスチャイルド家、ロシア、日本、中国政府、華僑……全ての勢力を支配下に置き、ロックウェルによる世界の統一を果たした偉大な人だけれど、死ぬ間際においては、誰でも平等に狂っていくんだと叔父さんは証明してくれたんだ。叔父さんの秘書のニコラスさんだって、そう断言しているしね」
ロックウェル家の中でも一番女性受けするであろう貴公子に言われては、デヴィットJr.も観念して引き下がってしまう。
「少しいいかね?」
Jr.との論争に決着を付けたローランドに言葉を投げ掛けたのは、デヴィットの兄にして、ローランドの父親エリック・ロックウェルであった。
エリックはローランドの父親というのに相応しい美貌の持ち主であり、その顔の美しさは89歳になる今でも衰えてはいない。
「何でしょうか、父さん?」
「私はな、デヴィットの言葉は死ぬ間際の妄言とは思えんのだ。先日の事だ。ニューヨークのジャック・カルデネーロの屋敷へと警察が強制捜査に入った時だ。何が起こったと思う?我々の想像も付かん出来事が起こったのだ。この21世紀の地球において、ガーゴイルやらオークやらを見た市民の証言があるんだぞ! それでも、お前の言葉は妄言と言えるのか! 」
父の厳しい言葉に口達者の美男子は閉口してしまう。
「フン、反論できんだろ?ジャック・カルデネーロは逮捕後も異世界勢力のことを否定しておる。あれは市民がパニックとして見た幻覚だろうと……だが、私には分かる。ジャック・カルデネーロは異世界勢力と取引を行い、この世界の王になろうとしていたとな……」
「つまり、叔父さんの言葉は妄言ではないと?」
「その通りだ。まずはジャックの跡を継いだ息子のエミリオ……あいつから事情を聞く必要があるな……」
「そのためには?」
「あやつを徹底的に追い詰める必要がある」
エリックは不敵な笑いを浮かべた。
エミリオ・カルデネーロは今、自分の身に何が起こったのか理解できない。
父親の騒ぎの後に跡を継いだのはいいが、何故か自分たちの2億ドルとも言える資産が凍結されているのだ。
預金もクレジットカードも不動産も全て凍結されている。
残された財産は父親が残したこの屋敷と美術品、そして金庫の中に入っている金くらいだろうか。
エミリオは自分を苦しめている存在が分からぬ。だからこそ、今日で万を超える苦虫を噛み潰しているのだ。
「エミリオ……気の毒に」
エミリオに言葉を投げ掛けた青年を見ると、エミリオは心が落ち着く。
青年は相談役のジョニー・コロンボ。この街をすれ違えば、数人が振り向くであろう美男子は、エミリオの良き参謀であると同時に恋人でもあった。
エミリオは父親同様に同性に対しての愛が強い男であった。
だからこそ、ジョニーと出会い、ファミリーの仕事を共にしていく中で(母は父と距離を置いたつもりだったが、エミリオは父が好きで、母に内緒で、ファミリーに入っていた)彼は明確にジョニーを意識するようになっていった。
ジョニーもジョニーで、エミリオを好きなっていった。
だからこそ、あんな風に恋人の忍びない姿を見るのは耐えられない。
ジョニーは安心させるように手を握ってやる。
「大丈夫さ、これは何かの間違いだよ、ぼくらの犯罪はまだお廻りに見えていないし、ちゃんと税金だって納めているんだぜ、おれらが捕まるわけが……」
「それが捕まるんですな」
ジョニーは反射的に背後を振り向く。そこには、何処から入って来たのだろうか、高価そうなスーツを着た小太りの男性が座っていた。
「テメェは誰だ?」
エミリオは不快感を隠しきれない。机の引き出しに隠していた、オート拳銃の銃口を小太りの男に向ける。
「落ち着いてください、私はこの状況を打破しようという人間ですよ、ご主人の要請でね、ここに現れたんですよ」
小太りの男は葉巻から白い煙を立てながら見下すような視線を向けて言った。
「待てよ、エミリオ。それで、要請というのは?」
「ええ、あなた方ファミリーが現在独占していると思われる情報をご主人に提供してほしいのです。それにその話さえ提供させていただければ、ご主人はあなた方のスポンサーとなり、あなた方は五大ファミリーを全て倒し、いや、アメリカ全体の暗黒街を牛耳る事さえ可能になるでしょう」
小太りの男が意味深に笑う。その様子がジョニーは不快でしょうがなかった。
ジョニーはドンのために、愛する人のために小太りの男に苦言を呈する。
「あなたね、人にものを頼む時は態度というのがあるでしょう?そんな上からの目線で、我々が動くとでも?」
だが、ジョニーの言葉に小太りの男はフフと笑うばかり。
不気味に思った、エミリオが引き金を引こうとした時だ。
「私を撃つんですか?構いませんが、あなた方は更にキツい立場に置かれてしまいますよ。ご主人はアメリカ合衆国の大統領と知り合いなんですよ。ご主人が友人にカルデネーロ・ファミリーのことを提言すれば、一気にこの屋敷ごと殲滅されるでしょうな」
小太りの男の勝ち誇ったような顔に2人は怒りを隠しきれそうになかったが、ジョニーが何とか感情を殺し、エミリオに小太りの男に従うように提言する。
「それは素晴らしいご判断ですよ。では、早速ご主人の元へとお連れ致しますよ、表にある車でね」
小太りの男は心底楽しげな顔を浮かべていた。
神父と思われる男性が十字を切る真似を行うと、他の一族も神父に習い十字を切る。
そして、葬式が終了し、ロックウェル家の四代目当主デヴィット・ロックウェルJr.は実質的なロックウェル家当主のローランド・ロックウェルにある疑問を投げかける。
「笑わせるなよ、デヴィット。叔父さんの妄言だよ、この世界の他にもう一つの世界があるなんて……」
「では、これまでの世界に存在していたと思われる異世界への文書はどうなるのですか! 」
いつもは大人しいJr.なのだが、今回ばかりは引き下がらない。
「父は言っていました。異世界の力を手に入れてこそ、ロックウェル家は真の世界の覇者となれるのだとッ!」
「死ぬ間際になると、誰でもそんな妄想を言うもんだよ、デヴィット……確かに、叔父さんはロスチャイルド家、ロシア、日本、中国政府、華僑……全ての勢力を支配下に置き、ロックウェルによる世界の統一を果たした偉大な人だけれど、死ぬ間際においては、誰でも平等に狂っていくんだと叔父さんは証明してくれたんだ。叔父さんの秘書のニコラスさんだって、そう断言しているしね」
ロックウェル家の中でも一番女性受けするであろう貴公子に言われては、デヴィットJr.も観念して引き下がってしまう。
「少しいいかね?」
Jr.との論争に決着を付けたローランドに言葉を投げ掛けたのは、デヴィットの兄にして、ローランドの父親エリック・ロックウェルであった。
エリックはローランドの父親というのに相応しい美貌の持ち主であり、その顔の美しさは89歳になる今でも衰えてはいない。
「何でしょうか、父さん?」
「私はな、デヴィットの言葉は死ぬ間際の妄言とは思えんのだ。先日の事だ。ニューヨークのジャック・カルデネーロの屋敷へと警察が強制捜査に入った時だ。何が起こったと思う?我々の想像も付かん出来事が起こったのだ。この21世紀の地球において、ガーゴイルやらオークやらを見た市民の証言があるんだぞ! それでも、お前の言葉は妄言と言えるのか! 」
父の厳しい言葉に口達者の美男子は閉口してしまう。
「フン、反論できんだろ?ジャック・カルデネーロは逮捕後も異世界勢力のことを否定しておる。あれは市民がパニックとして見た幻覚だろうと……だが、私には分かる。ジャック・カルデネーロは異世界勢力と取引を行い、この世界の王になろうとしていたとな……」
「つまり、叔父さんの言葉は妄言ではないと?」
「その通りだ。まずはジャックの跡を継いだ息子のエミリオ……あいつから事情を聞く必要があるな……」
「そのためには?」
「あやつを徹底的に追い詰める必要がある」
エリックは不敵な笑いを浮かべた。
エミリオ・カルデネーロは今、自分の身に何が起こったのか理解できない。
父親の騒ぎの後に跡を継いだのはいいが、何故か自分たちの2億ドルとも言える資産が凍結されているのだ。
預金もクレジットカードも不動産も全て凍結されている。
残された財産は父親が残したこの屋敷と美術品、そして金庫の中に入っている金くらいだろうか。
エミリオは自分を苦しめている存在が分からぬ。だからこそ、今日で万を超える苦虫を噛み潰しているのだ。
「エミリオ……気の毒に」
エミリオに言葉を投げ掛けた青年を見ると、エミリオは心が落ち着く。
青年は相談役のジョニー・コロンボ。この街をすれ違えば、数人が振り向くであろう美男子は、エミリオの良き参謀であると同時に恋人でもあった。
エミリオは父親同様に同性に対しての愛が強い男であった。
だからこそ、ジョニーと出会い、ファミリーの仕事を共にしていく中で(母は父と距離を置いたつもりだったが、エミリオは父が好きで、母に内緒で、ファミリーに入っていた)彼は明確にジョニーを意識するようになっていった。
ジョニーもジョニーで、エミリオを好きなっていった。
だからこそ、あんな風に恋人の忍びない姿を見るのは耐えられない。
ジョニーは安心させるように手を握ってやる。
「大丈夫さ、これは何かの間違いだよ、ぼくらの犯罪はまだお廻りに見えていないし、ちゃんと税金だって納めているんだぜ、おれらが捕まるわけが……」
「それが捕まるんですな」
ジョニーは反射的に背後を振り向く。そこには、何処から入って来たのだろうか、高価そうなスーツを着た小太りの男性が座っていた。
「テメェは誰だ?」
エミリオは不快感を隠しきれない。机の引き出しに隠していた、オート拳銃の銃口を小太りの男に向ける。
「落ち着いてください、私はこの状況を打破しようという人間ですよ、ご主人の要請でね、ここに現れたんですよ」
小太りの男は葉巻から白い煙を立てながら見下すような視線を向けて言った。
「待てよ、エミリオ。それで、要請というのは?」
「ええ、あなた方ファミリーが現在独占していると思われる情報をご主人に提供してほしいのです。それにその話さえ提供させていただければ、ご主人はあなた方のスポンサーとなり、あなた方は五大ファミリーを全て倒し、いや、アメリカ全体の暗黒街を牛耳る事さえ可能になるでしょう」
小太りの男が意味深に笑う。その様子がジョニーは不快でしょうがなかった。
ジョニーはドンのために、愛する人のために小太りの男に苦言を呈する。
「あなたね、人にものを頼む時は態度というのがあるでしょう?そんな上からの目線で、我々が動くとでも?」
だが、ジョニーの言葉に小太りの男はフフと笑うばかり。
不気味に思った、エミリオが引き金を引こうとした時だ。
「私を撃つんですか?構いませんが、あなた方は更にキツい立場に置かれてしまいますよ。ご主人はアメリカ合衆国の大統領と知り合いなんですよ。ご主人が友人にカルデネーロ・ファミリーのことを提言すれば、一気にこの屋敷ごと殲滅されるでしょうな」
小太りの男の勝ち誇ったような顔に2人は怒りを隠しきれそうになかったが、ジョニーが何とか感情を殺し、エミリオに小太りの男に従うように提言する。
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