隙を突かれて殺された伝説の聖女騎士と劣等生の夫、共に手を取り、革命を起こす!

アンジェロ岩井

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入学編

魔銃士育成学園の劣等生

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「何やってんだろ?おれ」

短い髪に少しばかり高い身長をした、そばかすの残るあどけない風貌の青年が愚痴とも言える言葉を漏らす。
自分はこんな所で何をしているのだろう。蜘蛛の巣と埃に覆われた地下の墓に下り、大聖堂へと上がる石の階段の近くに、それまで担いでいた棺を開くための巨大なスコップを下ろすと、改めてもう一度溜息を吐く。
そして、埃に溢れた地面の上に尻を落とし、両膝の中に顔を埋めてここに来て、三度目の溜息を吐く。
つくづく情けない。自分はガレリア連邦共和国立魔銃士育成学園に入学できたエリートではなかったのか。

それなのに、自分は今、落ちこぼれ《獲物》のレッテルを貼られ蔑まれている。
それもこれも、入学時に簡単な基礎魔法岳が使えないという、ただそれだけの理由で……。
青年ーージードフリード・マルセルは地面の下の暗黒時代に作られたと思われる石造りの地面の下を眺めながら、ここに至るまでの経緯を、いや、自分が蔑まれている経緯を思い返していく。
入学時には結果に納得がいかずに試験官に抗議の言葉を飛ばしたのだが、それは一蹴されて結果として《獲物》のクラスに入れられたのだ。

その後の授業でも基礎魔法を扱う訓練はあったのだが、
基礎魔法を扱えない事の何が悪いのだろう。自分はそれ以上の魔法を使えるというのに……。
彼はその事を思うと、改めて悔しく感じる。自分が扱うのは竜の魔法。
既にこの世界には喪われた古の時代にこの世界を圧巻したという竜が使用していた魔法。

幼少期から、その魔法が使えていた彼は羨望の的であったというのに基礎魔法が扱えなく、学園で《獲物》の称号を与えられるのと同時に、それまで彼を崇め讃えていた両親は見向きもしなくなり、彼を首都での一人暮らしへと追い込む。
そればかりではない。故郷の友人たちはここぞとばかりに彼を煽っていく。
最悪だった。今、彼は学園近くに両親が借りてくれた安アパートに暮らしており、そこは魔銃士育成学園のエリートと呼ばれる《狩人》と呼ばれる層の同級生が溜まり場として使用している場所となっている。

彼らは自分のベッドの上に腰を掛けると、偉そうな口調でジードに言い放った。

『お前、今から、大聖堂に行って、伝説の女騎士、ルイーダ・メルテロイが生きてるか、眠ってるかを確かめてこい』

自分の部屋を大勢で占領している腐ったエリートの男は同じくエリートと思われる女を二人ベッドの上で侍らせながら言った。
顔つきがもういやらしい。だが、こんな腐った奴でもエリートはエリート。
ジードは大きく両肩を下げた後に引き攣った笑顔を浮かべながら、伝説の女騎士、ルイーダ・メルテロイが生きているのかを確認に向かう。

彼は大聖堂に勤める僧侶が四輪の車で自身のアパートに帰るのを確認してから、自身の扱える最良の魔法を使用して鍵を開き、盗掘用のスコップを引っ下げて広々とした大聖堂へと忍び込む。
大聖堂はこの国の暗黒時代に作られた由緒ある建物であるらしいが、今見ては到底、そうは言ってられない。
と、言うのも肝心の大聖堂の中が多少大きい教会という印象しか感じられないからだ。

目の前にはこの大聖堂の司祭が偉大なる神への啓示を信者に向かって伝えるための祭壇。
その側には聖歌を歌うために用意されたピアノ。
そして、司祭の声を拝聴するために信者に用意された木で作られた何の飾りもない巨大な二人掛けの椅子。

ジードは寂れた巨大な教会の中を歩いていると、ピアノの向こう側、信者からは見えない位置にそれまでの石で敷き詰められた地面とは違う色をした場所を見つける。
どうやら、ここらしい。彼は懸命に違う色の地面の場所を開けて、上の大聖堂と同じくらいに寂れた棺の集結する場所へと向かったのだった。
それまでの経緯を思い出すと、彼はもう一度大きく溜息を吐くと、手に持っていたスコップを手に持ってルイーダの墓を探す。

多くの石の棺が地下の部屋の中に並べられており、その中から伝説とされる女騎士のものを探し当てるのは困難かと思われた。
だが、彼は棺の上に名前が刻まれている事を確認し、それをヒントに一つ一つの棺をチェックしていく。
そして、ルイーダ・メルテロイの名前が刻まれた棺を探して当てる。

彼はその名前の刻まれた棺を開ける。一度、彼は棺を地面の上に下ろし、スコップと手の両方を使って棺の蓋を開ける。
重い石の棺を開けて彼の目に飛び込んだのは寝ているかの様に両目を閉ざした見た目麗しき女騎士だった。
まさしく、彼の想像通り、童話や小説の挿絵に描かれている様な静観で清潔な憧れでそれでいて伝説の女騎士の姿そのものだ。
棺の上で剣と共に横たわっている彼女は到底、死んでいる様には見えない。

まるで、眠っているかの様に穏やかだ。ここで、ジードに悪い思いが誘っていく。構うことはない。悪戯をしてしまえ。どうせ、躊躇えば奴らに酷い目に遭わされてしまうに違いない。
彼は悪魔に誘われるまま死体を揺さぶっていく。

すると、どうだろう。先程までピクリともしなかった彼女は突如、「んんんっ」という呻き声を漏らす。空耳ではない。
ジードはそれを確信した瞬間に途端に顔を青く染めていく。もしかして、この女騎士は蘇ったのではないか。
自分が妙な事をしたから、この女騎士は死後の世界から、こちらに戻って来てしまったのではないか。

そんな思いを抱えながら、棺の中を覗き込む。
すると、彼が棺の中に視線を向けるのと同時に、彼の首元が冷えている事に気が付く。
彼は自分の首が冷えている事を感じ、恐る恐る横の方向に振り向く。

彼は首元に何が当たっているのかを理解した瞬間に思わず悲鳴を上げる。
と、言うのも彼の首元に当たっていたのは鋭利な刃物。それも、数世紀前には武器としての利用が途絶え、今では国軍の将校クラスの人間がその権威を表す象徴として使用するサーベルが当たっていたのだから。
彼はそれを感じて悲鳴を上げた。だが、伝説の女騎士は青年の口を黙って塞ぎ、そばかすの青年が黙ったのを確認してから、その掌を離して尋ねる。

「おい、今は竜暦何年だ?」

ジードは当初は口が上手く動かなかったものの、息を整えてから、彼女の問いに答える。

「い、今は竜暦1000年です。竜暦1000年の春……」

「何!?竜暦1000年!?それは本当なのか!?」

騎士が彼の首元に当てていた剣を引き、その剣先を彼の首に突き付けながら再度、問い掛ける。

「は、はい……間違いありません」

ジードは真剣な声で答える。
騎士は暫く青年の目を睨んでいたのだが、やがて彼の目が怯えてはいても、嘘を吐いていない事を確認して剣を下ろす。
剣を鞘に収めてから、彼は青年の目を見つめて問う。

「青年、私が眠っている間に何があったのかを話してもらおう」

彼女の持つサーベルの様に鋭い両目で睨まれては拒否権はない。
ジードは自分がこれまでに習ったガレリア国の歴史を彼女に語っていく。
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