婚約破棄された悪役令嬢の巻き返し!〜『血吸い姫』と呼ばれた少女は復讐のためにその刃を尖らせる〜

アンジェロ岩井

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第四章『この私が狼の牙をへし折ってご覧にいれますわ』

『ヘリオス』の魔の手が伸びる時

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郊外。強い風が吹き荒れる中カーラは『ジャッカル』に所属する刺客と対峙していた。
相手は鎖鎌と呼ばれる武器を扱う強敵である。油断はできない。
カーラは針を構えながら必死になって相手の出方を窺っていた。

相手は鎖をブンブンと振り回し、こちらがどう出るのかを待っていた。
恐らく先に動けばあの鎖鎌の餌食になってしまうのだろう。カーラの額を冷や汗が伝う。緊張からいつも以上に冷や汗が流れているような気がする。
だが、気を抜けば命を奪われるのはこちらだ。カーラは目の前の相手に意識を集中させていた。

しばらくの間自分の元に襲い掛かってきた男は鎖を振り回していたが、やがて我慢ができなくなったのか、先に鎖を飛ばしてきた。
カーラは身を捻ることで鎖を交わし、その鎖を逆に掴んだのである。

だが、相手の目的としては鎖をわざと握らせることでカーラの腕に鎖を巻き付けようとしているのだろう。このまま掴んでしまっては相手の思う壺である。
ここで、カーラは敢えて自らの武器を手放すという方法に打って出たのである。

カーラは正確に狙いを定めた上で針を飛ばし、相手の心臓を貫こうと試みた。
鎖を掴んでいるので動きは固定されている。後は絶対的な集中力を持って眉間に投げ付けるだけだ。
カーラは頭の中で即座に計算を行い、どの位置で投げ付ければ命中するのかと思案した上で針を投げ付けたのである。
カーラの手から放たれた針は相手の心臓を見事に貫き、相手を仕留めることに成功した。

全てが終わると、カーラは力を抜いてその場に倒れ込む。このまま疲れがとれるまでこの場に居たという思いが心の内で強く湧き上がったが、あまりのんびりともしていられない。
早くこの場所から去らなくてはならないのだ。いくらここが郊外。王都の外れで人が誰も来ない場所だとはいえ人にこのような場面が見られてしまっては自分の命運は終わったも同然だ。
カーラは慌てて男の胸元から針を引っ張り出すと、その場を立ち去った。

養母であるレキシーに今日起きたことを報告し、カーラは部屋に戻ると、締切が迫っていたドレスを縫うべく糸車の上に腰をかけて糸を紡いでいく。糸車から降り、細かい作業を行うためにカーラは駆除に用いた針を利用して生地を紡いでいく。
表にしろ、裏にしろカーラにとって針を使う作業は命懸けだ。
どちらも神経を研ぎ澄ませ、集中させねば成果を上げることなどできないのだ。

ようやくドレスが仕立て上がったのは夜の闇が随分と濃くなってからだ。
既にレキシーは眠りについている。カーラはレキシーを起こさぬようにこっそりと部屋を出て、風呂場へと向かう。
家を出て新たに風呂を沸かせねばならなかったが、これも仕事が遅くなった自分のせいだ。文句は言えまい。

カーラは火を起こし、湯船の中に入ると思わず両目を閉じてしまった。
両目を閉じると、瞼の裏に今日一日の思い出が蘇っていく。本当に今日は色々なことが起きた。休日だったということもあり、久し振りの外出をしたのだ。ちょうど新作の菓子が出たというので馴染みの菓子店に出掛けたのだ。

そこで菓子を味わい、優雅なひと時を過ごしたのだが、帰る時に背後から自分をつけている気がして振り返ると、そこに不気味な笑顔を浮かべた男がいた。
なんらかの目的があって自分の後をつけていたに違いない。
『ジャッカル』からの刺客だと認定したカーラはわざと自宅の方向には帰らず、人目につかない場所で仕留めるために郊外の誰もいないような場所にまで相手を誘い出したのである。

そこで男はようやく本性を現したのだ。鎖鎌を懐から取り出し、自らの命を狙ってきた。
夢中になって相手を倒し、一日の最後に副業として受けている仕事を仕上げたのだ。

思い出すほど濃い一日である。カーラは風呂から上がり、火を消し終えるとそのまま自室で眠りについた。
翌日は疲れが残っていたのか、全身がどこか気怠かったが看護の仕事を休むわけにはいくまい。
大変な状況ではあったものの、なんとか仕事をこなし終え、家に帰る前に仕上げたドレスを服飾店に持って行った。
その帰り道のことだ。

「カーラさん、少しいいですか?」

ヒューゴが珍しく声を掛けてきたのだ。

「あら、どうなさいましたの?ヒューゴさん」

「仕事の話ですよ。厄介な依頼がきましてね」

「おあいにく様ですけれども、私も昨日厄介な目に遭いましたの」

カーラはヒューゴに向かって何が起こったのかを語っていく。
話を聞くにつれてヒューゴの顔色が青くなっていくのが見えた。
どうやら自分の発言が何か不味いことであったのだろう。カーラはヒューゴの袖を強く引っ張って詳細を問い掛ける。
ヒューゴはどこか疲れた顔をしながら答えた。

「今回の駆除なんですが、どうやら昨日のカーラさんの襲撃にも関連するみたいなんですよ」

「なんですって!?」

カーラは普段ならば上げないような大きな声を上げて問い掛けた。ヒューゴの小刻みに動かく首を見るに嘘ではないのだろう。
カーラは詳細を聞くために駆除人ギルドが存在する酒場へと足を踏み入れた。
酒場にはどこか落ち着かない様子でグラスを拭くヴァイオレットとしかめ面のギルドマスターの姿が見えた。

ギルドマスターはヒューゴがカーラを連れて戻ってくるのを観て、無言でカーラの前に酒を置く。
酒の名前は『ブラッディプリンセス』。駆除人ギルドを訪れた依頼人たちが駆除の依頼を行う際にギルドマスターに頼む酒である。

通常であるのならば駆除人に出されることはないのであるが、今回は特別であるらしい。
カーラは目の前に差し出された酒を一気に飲み干すと、鋭い目付きでギルドマスターを見つめた。

「わざわざこのお酒を出されるところを見るに相手は余程の大物と見て間違いないみたいですわ」

「その通りだ。といっても相手は門閥貴族ではないのだよ」

「では、どなたですの?」

門閥貴族が相手でないというのならばこのような酒を出すはずがない。
カーラが黙ってギルドマスターの目を見つめていると、無言の探り合いに耐えきれなくなったのか、ヴァイオレットが代わりに答えた。

「し、刺客です!それも相当に腕の立つ刺客なんですッ!」

「刺客?」

カーラは両眉を上げながら問い掛ける。

「つい最近になって、宮廷に仕える大蔵大臣の方がわざわざこのこの場所に来られてな」

ギルドマスターはカウンターの下に隠していたと思われる大金が入った大きな白い袋を置く。
それからなんの躊躇いもなく袋を解いていく。中には大量の金貨が所狭しとばかりに詰め込まれていた。これだけの報酬があれば表稼業に精を出さなくても10年は楽をして暮らせるだろう。

思わず夢中になって金貨の入った袋を見つめていたので、ギルドマスターは空咳を行なってカーラの意識を金貨の入った袋から自分へと向けさせた。
夢中になっていた自分を恥じて頬を赤く染めたカーラは慌てて居住まいを正してギルドマスターへと向かい直ったのである。

カーラの意識がこちらに向いていることを改めて確認を行ってからギルドマスターは話を続けていく。

「多くの伝手を辿ってここを訪れた大蔵大臣の話によればこれと同額の身代金を刺客とそれに結託した『ヘリオス』という馬車屋の主人に譲り取られたらしくてな。どうせ強請り取られるならと駆除人ギルドに依頼したんだそうだ」

ギルドマスターの話によれば刺客ばかりではなく、馬車屋までも付いているらしい。
ギルドマスターは昨晩になってその依頼を受けたのだが、既にクイントンを潜り込ませようとしていたらしい。

だが、クイントンの話によれば門前払いを喰らってギルドに帰らざるをえなかったのだそうだ。
同じく偵察として繰り出したヴァイオレットも同じ結果であった。

『ヘリオス』の奉公人たちは乗り気であったらしいが、『ヘリオス』に腰を下ろす例の刺客が難色を示したらしい。
どうやら見抜かれてしまったのだろう。
そのため『ヘリオス』という馬車屋の内情はわからないというのが現状である。
その他にも刺客の正体もわからないからこちらも八方塞がりの状況にあるらしい。

一応敵がこちらのことをわかっていないというのは不幸中の幸いというべきだろうが、もしその刺客というのが昨日に自分を襲ってきた男と同様に『ジャッカル』の構成員であったのならば話は違う。現に昨日カーラのことを割り出し、襲ってきたのがその証拠だ。
もし『ジャッカル』の構成員であるのならばどこかで自分たちの情報を手に入れた上で昨日の戦いを参照にして何らかの対策を練っているはずだ。
ヒューゴが自分を連れ出す時に言っていた言葉もわかるような気がする。

そうだとすればかなり不利な戦いになってしまったというべきだ。
しかし、罪のない少女が犠牲になろうとしているのを看過することはできない。
カーラが依頼を受けようとした時だ。ギルドマスターがいつもより真剣な顔を浮かべて言った。

「今回の依頼は少し込み入った事情もあるんだ。どうしてもお前さんに受けてもらいたいんだよ」

ギルドマスターは3日ほど前にマチルダが尋ねてきた時に語った話を元に自分が何を考えたのかを語っていく。
クリストフによる王位簒奪の話を聞くと、カーラの両目が鋭くなり、白い光が宿っていた。
そして確信したのだ。今回の大蔵大臣の娘を誘拐したという話が現在の王政に対する揺さぶりであるということを。

もし、大蔵大臣に万が一のことがあれば王政の屋台骨にヒビが入るのは確実である。そこにクリストフは付けいる算段だということをギルドマスターは語った。
更にギルドマスターは昨日の襲撃が国王襲撃のために準備していた刺客をレキシーと二人で葬ったことに対する報復だと考えればおかしくないということを告げたのである。
そのため否応なしにカーラもこの計画に関わってしまったということを説明したのだ。

確かに筋は通っている。カーラは元より依頼を受けるつもりであったが、その話を聞いて断る気をすっかりとなくしてしまった。
ギルドマスターが大袋の中を掻き分け、更に小袋の中に金貨を詰め替えて渡す。
カーラはそれを受け取り、最終的に依頼を受諾したのであった。
レキシーも話の概要を聞くと、貴族が気に入らないということはあれども幼い子どもの危機が迫っていることを知ると、今回の駆除には前向きの姿勢になった。
翌日よりは仕事を終えてからの情報収集に奔走した。

ギルドマスターから聞いた『ヘリオス』の場所を訪れ、そこで人々が出入りする姿を見たり、噂を集めたりしていた。
従業員の表情や周囲の人々から集めた噂話を元にすると『ヘリオス』の主人は街を歩く人々や客には丁寧な応対を見せるくせに従業員に対する扱いは酷くぞんざいであるのだという。

親子で経営しているその馬車屋から怒声が聞こえぬ日はないのだという。
そればかりではない。これまで長らく勤め上げてきた奉公人でさえ親子の気まぐれによって容赦なく降格の処分を言い渡されたり、場合によっては首を切られることもあるのだそうだ。

その矛先は奉公人のみならず顧客にも向けられる。馬車屋というのは馬の蹄鉄を交換したり、馬車の売買を取り扱い人々に馬車を提供したり、その修理を請け負う役回りである。
そのために馬車を入用とする人々に対して馬車屋というのは欠かせない存在であるのだが、『ヘリオス』はそんな人たちに対して前述の通り表向きは愛想よく接するのだが、修理の際にわざと馬車のガラスを割ったり、タイヤを破損させたりしているそうだ。

そのために何度も修理のために『ヘリオス』を訪れなければならないというシステムになっており、顧客だけが泣きを見る羽目になっているのだ。そのくせ門閥貴族などが相手となった場合には徹底的な修理を行なって自分たちの仕事ぶりを見せつけるのだという。

しかし、前述の通りこれはあくまでも単なる噂に過ぎない。人々の訴えに対して親子は知らぬ存ぜぬを突き通し、更には警備隊や自警団にまで手を伸ばしてこうした噂話の揉み消しを図ったのだ。お陰で王都の中でも一二を争うような大きな馬車へと変身を遂げたのである。
いわゆる悪徳業者と呼ばれる類の馬車屋であることには違いあるまい。
それでも悪名は無名に勝るという言葉の通りか、はたまた噂を知らぬ人々が良い評判だけを聞いて訪れるのか、店舗兼住居となっている馬車屋の前には今日も大勢の人が馬車や馬に関する相談のために訪れていた。

どのみち表の仕事があるため動けないが、夜まで人々が行き交う店舗で『ヘリオス』経営者の親子を仕留めることは難しいだろう。
また、まだ姿は見えていないが『ヘリウオス』経営者の親子が手を組んでいるという『ジャッカル』からきたと思われる刺客までもいる。夜ならば可能かと思うと、それも違うのだ。

レキシーもカーラも現在のところは現状を打破すべきいい手段が思い浮かばなかった。
つまるところ打つ手なしの状況にある。
そんなことを考えていると『ヘリオス』の店舗から胸を張った偉そうな二人連れが出てきたのを見た。
恐らくこの二人が『ヘリオス』経営者の親子であるに違いない。

父親の方は既に後退し、白くなった髪が目立つ壮年の男であった。
でっぷりと弛んだ腹を見るにこれまで相当美食や美酒に励んできたことがわかる。フラフラと危なそうにランプを持っている様からも自身の体というものは体重に支配されっぱなしであるらしい。

息子の方は中年であった。台所に出てくる小鼠を思わせるような顔つきをした男で、いやらしい目は常にキョロキョロと動いていた。父親とは異なり、その身は痩せていたが、特別筋肉があるというわけではない。
単に父親とは異なりそこまで美食に励んでいないから相対的に痩せているだけに過ぎないのだ。よく見ればお腹が目立っていた。

そんな息子はランプを持つ父親の後を媚を売るように手を握り締めながら付いていっている。
レキシーとカーラは二人の後をつけることにした。物陰に隠れながらの尾行というものは駆除人として当然身に付けておくべきものである。

プロの駆除人である二人は難なく闇と物陰の二つを活用しながら親子の後を追い掛けた。
親子が足を踏み入れたのはレストランである。名前は『ベルゼード』。
神話における暴食の神に由来する名前だ。美食に溺れた父親には相応しい場所ともいえた。

二人は意気揚々と『ベルゼード』の中に入っていく。カーラとレキシーも後をつけて『ベルゼード』の中へと足を踏み入れた。
二人の近くの椅子に腰を下ろし、親子の会話に耳を澄ませていた。

「お父さん、いつまであのガキを預かっておくつもりですか?」

「これ、滅多なことをいうものではない」

父親の方が慌てて息子を窘めた。それから警戒するように周囲を見渡す。
問題はレキシーとカーラであるが、二人はメニュー表を見ている風を装いその場をやり過ごすことに成功したのであった。
父親は誰にも聞かれていないと安堵したらしい。小さく溜息を吐いてから愚かな発言した息子を咎めた。

「愚か者め。もし、我々の計画が他所に漏れるようなことがあればお仕舞いだぞ。我々は国家転覆罪と大逆罪の二つで咎められ絞首刑だ。全部お前の不始末のせいだぞ」

「も、申し訳ありません」

息子はいつも以上にキョロキョロと両目を動かしていた。どうやら不用意な発言をしてしまったことに後ろめたさを感じて視線を逸らしたいのだろう。
そんな息子を安心させるように父親は落ち着いた口調で言った。

「まぁ、いい。以後気をつけろ。もし、先生の耳にお前の発言が入れば処刑の前に先生がお前さんの首をーー」

「オレの耳がどうだって?」

新しい声が聞こえた。若い男の声だ。カーラがこっそりとメニュー表から顔を上げて、声がした方向を振り返ると、そこには長い黒髪をたなびかせた色白の美男子が立っていた。
眉目秀麗や容姿端麗という美しさを表す言葉はその男のために用意されているのではないかと思うほどの美しさであった。

しかも、中年の男とは異なり体を念入りに鍛えているためか体のどこにも隙が見えない。
まさしく生きて生まれた彫刻像と称してもいいかもしれない。
そんな立派な美男子は不適な笑みを浮かべながら空いていた椅子の上に腰を下ろしたのであった。
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