親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

アンジェロ岩井

文字の大きさ
24 / 43

四人の遊園地

しおりを挟む
かくして、アミューズメントパークに行くのは俺、親父、涼子、元樹くんの四人となったのだ。
親父は俺たち四人を駐車場へと連れて行き、そこに止めてある黒塗りの軽自動車の中へと入っていく。

親父が家と共に組んだローン十数年の車。
俺が幼い頃から乗っているからか、よく見れば、車のあちこちに小さな傷がある。

俺は車に乗ると、元樹くんと共に後部座席へと座る。
親父は運転席、涼子は助手席である。
ちなみに、涼子ご自慢のサンドイッチはバスケットは彼女の前方に鎮座している。あのバスケットの中に涼子のサンドイッチが入るのかと思うと、中々に食欲がそそられていく。

そんなこんなで、親父は俺たち全員が車に乗り込むのを確認すると、扉を閉めて、車を発進させる……筈だったが、何故か、親父はアクセルから足を離し、涼子に何か耳打ちをする。

親父の問い掛けに、涼子はなぜか、耳を赤く染めていた。
そして、涼子に尋ね終えると、俺たちに向かって言った。

「なぁ、お前ら音楽は何がいい?」

どうやら、旅を盛り上げる曲が何を言いたいのかを知りたいらしい。
正直に言って、なんでもいい。そう思っていると、元樹くんが口を開いて、

「ぼくはなんでもいいです」

と、俺の考えを代弁していく。すると、親父は俺に視線をやって、

「お前は何がいいんだ?」

「あ、お、おれ?」

「お前以外に誰がいるんだ?」

ごもっともな指摘である。だが、元樹くんと同じ事を言えば、確実に親父は困るだろう。
窮地に陥った親父は親父自身が好む曲を掛ける可能性が高い。
親父が好むのは昔ながらの歌謡曲。恐らく、涼子以外の誰もが困惑する様な古い曲を流すに違いない。

だから、俺は言った。

「あの、邦ロックの曲を掛けてくれよ、あの、90年代に流行った、なんとかの……」

「あぁ、あれか、お前が中学生の頃にハマってたバンドのやつだろ?」

「そうそう、今でもそのバンドは有名な筈だろ?」

親父は車の下の収納スペースからそのバンドのメンバーが映ったアルバムを取り出し、車の中にCDを入れていく。
車の中に軽快な音楽と高い熱量で奏でられる音楽が鳴り響いていく。
二人も満更ではない表情を浮かべている。

それから後はこの音楽が関わる、俺の中学時代の話が親父の口から語られ、二人は興味津々で聞いていく。
三人の話が盛り上がる中で、俺は思わず声を荒げてしまう。
すると、俺の反応が面白かったのか、全員がくすくすと笑っていく。

その後は自然と俺の思い出話になっていく。
俺の知らない事も親父は覚えているのだから、俺は思わず赤面してしまう。
と、いうか、三歳の頃の話など覚えていなくて当然だろう。

と、いうか、三歳の頃には巨大なクマのぬいぐるみが家にあったのだという。
いや、三歳の頃ばかりではない。今も、そのぬいぐるみは物置に置いてあるらしい。

目から鱗が落ちる思いである。今度、いや、家に帰れば、二階の物置になっている部屋を探してみたい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...