政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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二人の間にある距離

5

女の顔が

声が

仕草が

頭にこびりつく。

気持ち悪い。

こいつを選ぶんじゃなかった。


「…っ、「口…っ、開けて。」

かぶりつく様なキスをして。

「…悠河さ…っ」

声を聞きたくない。

何も考えたくない。














次の日、仕事に行くと。

隣の瀬川が厳しい顔つきで、来いよ、と言った。

うるさいな。

面倒くさい。

昨日の情事で、夜はほぼ眠れなくて疲れてるのに。

そんな事を思いつつ。

でもここで騒いで問題になって、仕事を回されなくなるのはもっと困る。

そう思い直して。

黙って机に荷物を置いて、歩き出す瀬川に付いて行くと。

人気の無いロビーに連れてこられて。

「…何。」

「お前、昨日とスーツ同じだけどどうした。」

何言ってるんだ、こいつ。

「知ってるでしょ。」

「…家に帰ってないのか、昨日。」

そう言いながら、瀬川の表情はどんどん険しくなっていく。

「そうだよ。」

そう言うと、瀬川はガッと俺のネクタイを持って引っ張る。

「奥さん、知ってんのかよ?!」

「…知るはずないでしょ。家に帰ってないんだから。それに、家に帰っても話さないから関係無いよ。」

「お前、好い加減にしろよ…っ!!これじゃ、奥さんがあんまりだ!」

俺はそんな瀬川を睨みつけて、その手からネクタイをひったくる。

「高校生相手にする話じゃないから。」

そう言うと。

目の前にいた瀬川は。

目を見開いた。

「…お前」

そんな事をぼやいている瀬川を冷たく見て、席に戻る、と言ってネクタイを結び直しながら歩き出した。
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