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揺れ動く心
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その次の朝。
昨夜の事を考えて中々寝付けなかった俺が寝る事が出来たのは夜明けごろで。
ズキズキする頭を押さえながら、スーツに着替えてリビングへ行くと。
瑞紀がいつもと同じ様にご飯を作っていて。
俺がリビングに入って来たのに気がつくと、瑞紀は眉を寄せて持っていたフライパンを置き、ゆっくりと火を止めた。
それから、その様子を見ていた俺に対して瑞紀は頭を下げて
「…昨日は、すみませんでした。」
「別に。」
俺がそう言って、瑞紀の隣に立ってコーヒーを入れようと引き出しから粉を出していると。
「…あ、の、知哉さん…」
「…何。」
電気ケトルに入っていたお湯を注ぎながら。
瑞紀の方を見ずにそう答えると。
「廊下の電気は、消さないで欲しいんです…」
「何で。」
粉を入れてくるくるとそばに置いてあったスプーンでかき回す。
「…お願いします。」
瑞紀が頭を下げる。
その姿を一瞥しながら。
…
「理由を聞かないと返事出来ない。」
「…」
「電気代を払ってるのは君じゃない。俺だよ。」
「…っ私が寝たら消して頂いて結構ですので…」
そんな瑞紀の言葉をかき消す様に言葉を紡ぐ。
「とにかく、早く言いなよ。」
コーヒーを口に一口含んでからそう言うと。
瑞紀は、眉を寄せて。
ゆっくりと、話し出す。
「…嫌な事を思い出すんです。」
「…」
「知哉さんと結婚する前に住んでた家でも、部屋のドアを少し開けて廊下の電気がドアの隙間から入る様にして寝てました。」
瑞紀は、手を握りしめながら。
「…じゃないと、寝られないんです。最初は、寝られないだけだったのに、段々と真っ暗だと過呼吸が起きる様になって。暗闇だけじゃなくて、ショックな事とかがあると、すぐ…」
…
「…学校でも起きるの。」
俺がそう聞くと。
瑞紀は顔を振りながら。
「いえ。一人の時とかです…」
「…そう。」
「どうしようもなくて。自分では。すみません、迷惑なの、分かってるんですけど…」
「…」
見下ろした握り締められた瑞紀の手は、微かに震えていて。
「…だから、「良いよ。君が寝てるのを確認したら、俺が電気を消して置く。それで良いね。」
過呼吸を起こして倒れられたら迷惑だ。
俺がそう言うと。
瑞紀はゆっくりと、頷いた。
その顔にはまだ、不安が残っている。
…
「前もってそう言ってくれれば、昨日も電気は消さなかった。」
俺がそう言うと瑞紀は言いにくそうにしながらも口を開く。
「…そう言うと、知哉さんにまたいろいろ聞かれると思ったんです。」
「…」
俺は恐る恐るといった感じで俺を見上げた瑞紀と目線を合わせて。
「…無理して聞かない事にしたよ。」
「…え。」
瑞紀が軽く目を見開く。
「言いたくない事聞いても、言わないだろうしね。それを聞こうとする時間が無駄。」
俺がそう言うと。
瑞紀は安心したように笑って。
「…ありがとうございます。」
と言った。
昨夜の事を考えて中々寝付けなかった俺が寝る事が出来たのは夜明けごろで。
ズキズキする頭を押さえながら、スーツに着替えてリビングへ行くと。
瑞紀がいつもと同じ様にご飯を作っていて。
俺がリビングに入って来たのに気がつくと、瑞紀は眉を寄せて持っていたフライパンを置き、ゆっくりと火を止めた。
それから、その様子を見ていた俺に対して瑞紀は頭を下げて
「…昨日は、すみませんでした。」
「別に。」
俺がそう言って、瑞紀の隣に立ってコーヒーを入れようと引き出しから粉を出していると。
「…あ、の、知哉さん…」
「…何。」
電気ケトルに入っていたお湯を注ぎながら。
瑞紀の方を見ずにそう答えると。
「廊下の電気は、消さないで欲しいんです…」
「何で。」
粉を入れてくるくるとそばに置いてあったスプーンでかき回す。
「…お願いします。」
瑞紀が頭を下げる。
その姿を一瞥しながら。
…
「理由を聞かないと返事出来ない。」
「…」
「電気代を払ってるのは君じゃない。俺だよ。」
「…っ私が寝たら消して頂いて結構ですので…」
そんな瑞紀の言葉をかき消す様に言葉を紡ぐ。
「とにかく、早く言いなよ。」
コーヒーを口に一口含んでからそう言うと。
瑞紀は、眉を寄せて。
ゆっくりと、話し出す。
「…嫌な事を思い出すんです。」
「…」
「知哉さんと結婚する前に住んでた家でも、部屋のドアを少し開けて廊下の電気がドアの隙間から入る様にして寝てました。」
瑞紀は、手を握りしめながら。
「…じゃないと、寝られないんです。最初は、寝られないだけだったのに、段々と真っ暗だと過呼吸が起きる様になって。暗闇だけじゃなくて、ショックな事とかがあると、すぐ…」
…
「…学校でも起きるの。」
俺がそう聞くと。
瑞紀は顔を振りながら。
「いえ。一人の時とかです…」
「…そう。」
「どうしようもなくて。自分では。すみません、迷惑なの、分かってるんですけど…」
「…」
見下ろした握り締められた瑞紀の手は、微かに震えていて。
「…だから、「良いよ。君が寝てるのを確認したら、俺が電気を消して置く。それで良いね。」
過呼吸を起こして倒れられたら迷惑だ。
俺がそう言うと。
瑞紀はゆっくりと、頷いた。
その顔にはまだ、不安が残っている。
…
「前もってそう言ってくれれば、昨日も電気は消さなかった。」
俺がそう言うと瑞紀は言いにくそうにしながらも口を開く。
「…そう言うと、知哉さんにまたいろいろ聞かれると思ったんです。」
「…」
俺は恐る恐るといった感じで俺を見上げた瑞紀と目線を合わせて。
「…無理して聞かない事にしたよ。」
「…え。」
瑞紀が軽く目を見開く。
「言いたくない事聞いても、言わないだろうしね。それを聞こうとする時間が無駄。」
俺がそう言うと。
瑞紀は安心したように笑って。
「…ありがとうございます。」
と言った。
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