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第6章 魔法学校の章
第78話 王都で確信した
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ローウン先生によるとエル・ドアンはある日突然ドアン商会の会頭トール・ドアンが王都魔法学校に連れてきたらしい。
ドアン商会もボワール商会同様学校に多額の寄付をしていた。寄付額で言うとボワール商会が一番でドアン商会も三番目に多かった。
学校も無視できない存在であるドアン商会のトール会頭が自分の息子として10歳のエル・ドアンを連れて来て入学を依頼されれば断ることは出来なかったのだ。
ただ、ゴリ押しでドアン商会が才能もない者を入学させようとしたわけではなかった。エル・ドアンの魔法の才能は飛んでもないものだった。
10歳で入学し直ぐに卒業生の中でマナの探知魔法を使えるものが太鼓判を押した。歴代で一番の魔法使いと呼ばれるのに大して時間は掛からなかった。
エル・ドアンは11歳で上級、12歳で特級魔法士になり13歳からは教師として学校に勤めることになった。
伝説級は試験や資格ではないが、誰もが認める伝説級魔法士として認識されれば、それが条件になる。エル・ドアンは14歳のころには伝説級として王国中に知れわたっていた。
現在生存が確認されている伝説級魔法士は十人に満たない。俺はその内三人と面識があった。ヴァルドア・サンザール、ルナジェール・ミスティア、そしてエル・ドアンだ。
聞いたところによるとナーザレス・ロングウッドは魔法士として認識されていないらしい。学校では誰もその存在自体を知らなかった。
「熊だからかなぁ」
「え、何か言ったか?」
ローウン先生の話はまだ続いていたのだが、どうも有用な情報は出てきそうになかった。
「いえ、それではエル・ドアンがトール・ドアンの元にどうやって来たのか、なんてご存じないのですね」
「トール会頭の元にドアンが来た?それはどういう意味だ?」
やはりローウン先生全く情報を持っていないも同然だった。
「ああ、ごめんなさい、別に何もないです。ありがとうございました、よく判りました」
「なんだ、もういいのか。では約束通りドアン先生の動向は逐一報告してもらおうか」
「えっ、その話はもう終わっているのでは?」
「いや、念のためだ、念のため。今後何か変わるかも知れんからな」
「そういうもんですか。判りました、何か特別変わってことがあればご報告する、ということでいいでしょうか?」
「うむ、まあ、それでもよいか。ぐれぐれも裏切るなよ」
ローウン派とかに所属した覚えは無かったのだが、まあ上手く誤魔化しながら付き合っていくことが正解か。
まあ、もし派閥があるとすればローウン派よりドアン派に入るべきだろう。ドアン本人は全く気にしないだろうが。
ローウン先生との面談は結局特段の情報は得られず時間の無駄だった。まあ、あまり期待していた訳ではないが。
「それで直接聞いてみようかと思ってるんだが」
「直接ですか」
相談相手はキサラだけだ。まあ、俺がやることにほぼ反対しないので相談にはならないかもしれないが。
「簡単にドアン先生が認めますでしょうか?」
そうなのだ。若返りって何の話?と言われればそれ以上は追及する術はない。ジョン・ドゥの顔を知っているゼノン・ストラトスに面通しをしてもらおうにも若返って顔も変わっているので不可能だ。
そもそもゼノンは俺がケルンに戻ったとしても俺だと認識できないだろう。ちゃんと話せば逆に喜んでくれそうだが。
「まあ当たって砕けろっ、てことだ」
「砕けていいんですか?」
「ああ、元の世界でそんな言い方するんだよ」
「そうなんですね、勉強になります」
「いやいや、覚えなくていいって」
キサラは俺のいう事は全て有用な言葉だと勘違いしている。俺はほぼ適当に生きている存在なんだ。その適当さ加減が俺が社会人としてドロップアウトしなかった大きな要因の一つだ。
「今晩にでも聞いてみるさ」
その晩俺はエル・ドアンを食事に誘った。初めてではなかったので特段警戒されなかった。いつもはキサラも一緒だったのだが今日は二人きりだ。
「こういう大衆的な場所もいいですね」
俺はエル・ドアンに警戒されないため普通の居酒屋を選んだ。小部屋があって二人で話すには打って付けだった。
「だろ?結構美味いんだぜ」
エル・ドアンは15歳なので酒は飲めない。俺は一応見た目が二十歳なので大丈夫だ。
俺がこの世界の蒸留酒と一通りのアテなんかを頼んだ。ドアンも酒ではない飲み物と食べ物を頼んだ。
まだ少し早い時間帯だったので料理はすぐに運ばれてきた。
「僕も呑めればいいんですが」
徐にドアンが言う。俺はいきなり突っ込んでみた。
「実は呑めるんだろ?」
ドアンは「えっ」という顔をした。それは勿論若くて呑んでは駄目なんだが実は若いころから呑んでいた、なんて意味ではない。
ドアンは少し考えていたが、何かを決心したような顔になった。
「何か気づかれましたか?」
「さて、何のことかな?」
俺は一旦惚けてみた。ドアンから白状してもらう、という魂胆だ。
「いつかは、と思っていましたが、案外遅かったかも知れませんね」
その言葉は流暢な日本語だった。
ドアン商会もボワール商会同様学校に多額の寄付をしていた。寄付額で言うとボワール商会が一番でドアン商会も三番目に多かった。
学校も無視できない存在であるドアン商会のトール会頭が自分の息子として10歳のエル・ドアンを連れて来て入学を依頼されれば断ることは出来なかったのだ。
ただ、ゴリ押しでドアン商会が才能もない者を入学させようとしたわけではなかった。エル・ドアンの魔法の才能は飛んでもないものだった。
10歳で入学し直ぐに卒業生の中でマナの探知魔法を使えるものが太鼓判を押した。歴代で一番の魔法使いと呼ばれるのに大して時間は掛からなかった。
エル・ドアンは11歳で上級、12歳で特級魔法士になり13歳からは教師として学校に勤めることになった。
伝説級は試験や資格ではないが、誰もが認める伝説級魔法士として認識されれば、それが条件になる。エル・ドアンは14歳のころには伝説級として王国中に知れわたっていた。
現在生存が確認されている伝説級魔法士は十人に満たない。俺はその内三人と面識があった。ヴァルドア・サンザール、ルナジェール・ミスティア、そしてエル・ドアンだ。
聞いたところによるとナーザレス・ロングウッドは魔法士として認識されていないらしい。学校では誰もその存在自体を知らなかった。
「熊だからかなぁ」
「え、何か言ったか?」
ローウン先生の話はまだ続いていたのだが、どうも有用な情報は出てきそうになかった。
「いえ、それではエル・ドアンがトール・ドアンの元にどうやって来たのか、なんてご存じないのですね」
「トール会頭の元にドアンが来た?それはどういう意味だ?」
やはりローウン先生全く情報を持っていないも同然だった。
「ああ、ごめんなさい、別に何もないです。ありがとうございました、よく判りました」
「なんだ、もういいのか。では約束通りドアン先生の動向は逐一報告してもらおうか」
「えっ、その話はもう終わっているのでは?」
「いや、念のためだ、念のため。今後何か変わるかも知れんからな」
「そういうもんですか。判りました、何か特別変わってことがあればご報告する、ということでいいでしょうか?」
「うむ、まあ、それでもよいか。ぐれぐれも裏切るなよ」
ローウン派とかに所属した覚えは無かったのだが、まあ上手く誤魔化しながら付き合っていくことが正解か。
まあ、もし派閥があるとすればローウン派よりドアン派に入るべきだろう。ドアン本人は全く気にしないだろうが。
ローウン先生との面談は結局特段の情報は得られず時間の無駄だった。まあ、あまり期待していた訳ではないが。
「それで直接聞いてみようかと思ってるんだが」
「直接ですか」
相談相手はキサラだけだ。まあ、俺がやることにほぼ反対しないので相談にはならないかもしれないが。
「簡単にドアン先生が認めますでしょうか?」
そうなのだ。若返りって何の話?と言われればそれ以上は追及する術はない。ジョン・ドゥの顔を知っているゼノン・ストラトスに面通しをしてもらおうにも若返って顔も変わっているので不可能だ。
そもそもゼノンは俺がケルンに戻ったとしても俺だと認識できないだろう。ちゃんと話せば逆に喜んでくれそうだが。
「まあ当たって砕けろっ、てことだ」
「砕けていいんですか?」
「ああ、元の世界でそんな言い方するんだよ」
「そうなんですね、勉強になります」
「いやいや、覚えなくていいって」
キサラは俺のいう事は全て有用な言葉だと勘違いしている。俺はほぼ適当に生きている存在なんだ。その適当さ加減が俺が社会人としてドロップアウトしなかった大きな要因の一つだ。
「今晩にでも聞いてみるさ」
その晩俺はエル・ドアンを食事に誘った。初めてではなかったので特段警戒されなかった。いつもはキサラも一緒だったのだが今日は二人きりだ。
「こういう大衆的な場所もいいですね」
俺はエル・ドアンに警戒されないため普通の居酒屋を選んだ。小部屋があって二人で話すには打って付けだった。
「だろ?結構美味いんだぜ」
エル・ドアンは15歳なので酒は飲めない。俺は一応見た目が二十歳なので大丈夫だ。
俺がこの世界の蒸留酒と一通りのアテなんかを頼んだ。ドアンも酒ではない飲み物と食べ物を頼んだ。
まだ少し早い時間帯だったので料理はすぐに運ばれてきた。
「僕も呑めればいいんですが」
徐にドアンが言う。俺はいきなり突っ込んでみた。
「実は呑めるんだろ?」
ドアンは「えっ」という顔をした。それは勿論若くて呑んでは駄目なんだが実は若いころから呑んでいた、なんて意味ではない。
ドアンは少し考えていたが、何かを決心したような顔になった。
「何か気づかれましたか?」
「さて、何のことかな?」
俺は一旦惚けてみた。ドアンから白状してもらう、という魂胆だ。
「いつかは、と思っていましたが、案外遅かったかも知れませんね」
その言葉は流暢な日本語だった。
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