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5章 花畑で告白、からの初夜
【ジブ】R18 執着と計画にまみれた愛は、愛と呼べるのか
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食事を取った後、ジブはホテルの自室で過ごしていた。ベッドに寝転んで天井に下げられた魔法灯をぼんやりと見つめる。
「早く来ないかな」
食事の後でまた話そうと伝えていたから、そろそろトニーが来るはずだ。
ジブは寝転んでいた体を起こし、洗面室に向かう。入ると自動的に魔法灯が点灯し、清潔感のある光沢のある石造りの壁と美しい調度品がジブを迎えた。
水栓に手をかざし、湯で顔を流す。タオルで顔を拭いて体を起こすと大きな鏡に自身が写った。そこには薄桃色の垂れた瞳の奥をギラつかせた自分がいる。
「怖ぇ顔。そんなんじゃトニーがビビるぞ」
一言呟いてから、タオルで顔を覆い深呼吸をする。
ーー次にトニーに会う時の俺は、純粋でかわいい弟分でなければならない。
ジブはタオルを下ろして、鏡に向かって笑顔を作る。人懐っこく緩い笑顔の”弟”が鏡に現れた。
その時、呼び鈴が鳴った。トニーが来たのだと、ジブは急いでタオルを簡単に畳んで扉へと向かった。
「ジブ、邪魔するぞ」
開いた扉に断りを入れたトニーを出迎えたのは、ジブの厚い胸板だった。ぎゅっと音がするくらいに強く抱かれ肺の空気が押し出される。
「良かった! 来てくれないかと思った」
耳元で聞こえた大声に苦笑しながら、トニーはジブの背中を叩く。
「あ……ごめん」
ジブはぱっと体を離して一瞬だけ視線を泳がせながら気まずそうに謝罪した。
「告白した後に急に抱きつくとか、駄目だよな。でも、トニーが約束守ってちゃんと来てくれたことが嬉しくて」
頭を掻きながら苦笑いするジブは、悪いことを嗜められた幼い頃のジブそのものだった。
「いや、別にいい」
本来なら警戒すべきところなのだろうが、いつも通りの素直に甘えたジブの姿にトニーはほっとした。
難しいことは言わないただのジブ。そう思うと、自然と肩の力が抜けた。告白云々は置いておくとしても、トニーにとってはジブは昔なじみの弟分で、″神秘″とは関係のない数少ない人間だ。
神秘が顕現したことでトニーを取り巻く環境は大きく変わった。育ちの地であるコーソム修道院には金で売られ、騎士団内にも神秘を利用しようとする者がいて、誰を信用すればいいのかもわからない。
そんな中で、昔から気の知れたジブがいることはトニーにとっては救いでもあった。
「こんなところで突っ立ててもしょうがないか。トニー、どうぞ」
部屋の奥のテーブルに案内され、トニーは言われるまま席に向かう。
ーーその背中を見るジブの瞳が冷たく光る。抱きついても拒否されない距離感、緊張の解れたトニーの顔。計算した全てがここで再現されている。
唇がゆるやかに持ち上がるのを抑えながら、ジブはトニーの待つテーブルに向かう。
「ジブ。告白の答えなんだが、俺は……」
ジブがテーブルに着くと、トニーはさっそく本題に入った。だがジブは勢いよく手を上げて、それを制する。
「ちょっと待った!」
トニーは一瞬目を丸くしたが、すぐに怪訝そうな表情を浮かべた。若干、むっとした顔付きになったがジブは物怖じせず口を挟む。
「トニー。その答えの前に、ちょっといいかな」
首を傾げるトニーに対し、ジブは挙げた手をすっと下ろし、もぞもぞと揉む。
「今は、昔みたいに……修道院にいた頃みたいに甘えたい」
弟分の控えめな願いをトニーはいじらしく思った。
「そうだな。答えを急ぐわけでもないなら……」
トニーは腕を伸ばしてくしゃくしゃとジブの頭を撫でる。えへへと声を出して喜ぶジブにトニーも笑い返した。
「じゃあ、こっち来て」
トニーの手のひらの感触を堪能した後、ジブは彼の手を引いてベッドの前まで移動する。そこで、ニッと悪戯っぽく笑ったジブは、突進する勢いでトニーに抱き、ベッドに押し倒した。
「うわっ!」
倒れ込んだトニーの小さな声とベッドが大きく軋む音が部屋に響く。二人はベッドの中央でスプリングに揺られた。
「何するんだよ。ジブ」
「昔はこんな風に二人でクッキーみたいな薄いベッドに飛び込んで遊んでただろ? 大部屋でみんなで雑魚寝してさ」
驚き咎めるようなトニーの声を無視してジブはごろりと仰向けになった。大の字を作って柔らかい布の感触を背中いっぱいに感じていると、隣にいるトニーが小さく笑った。
「ったく。何歳の時の話だよ」
「トニーが15歳の時まで! ……くらい、だった。……かな?」
語気強めに言い切ったジブの言葉にトニーの目が大きく見開かれた。しかしすぐに、よく覚えてるなと感心した様子で返した。
ーー良かった。トニーが鈍感で、本当に。
ジブはトニーに関することは全て覚えている自負があり、咄嗟に答えてしまった。思い出した風を付け足して取り繕ったが、不信感を与えたかと心配した。しかしジブの心配を余所に、トニーはただ感心するばかりで何も疑ってはいない。
トニーの鈍感さにもどかしさを感じることもあったが、今はそれが有り難く、そしてかわいらしく感じた。
「何を笑ってんだよ、ジブ」
「何でもない!」
ジブはトニーの脇腹をくすぐって、話をはぐらかした。
「わっ、あっはは!」
トニーはくすぐりに弱い。外では表情をあまり崩すことはない彼がこんな風に大笑するのを見られるのは世界で俺だけだ。ジブはうっとりとトニーを眺める。
ーーそろそろ仕掛けるか。
今だにくすぐったさで暴れるトニーを、足を絡めて止める。指先が冷たい。ひやりとする足先も愛おしい。
「ほら、逃げない」
「う、いや、っはは」
今度はトニーに抱きついた。体を太ももで挟み、逃さぬようにして首元に顔をうずめる。胸いっぱいにトニーの匂いを吸い込んで、幸せのため息をついた。もちろんトニーにはバレないように。
「俺、今すごい幸せ」
ジブが頭を擦るようにして身を寄せると、赤い髪に首筋をくすぐられたトニーの肩がびくりと震えた。
「お前は大げさだな」
ジブの腕をトニーはぽんぽんと叩く。子供をあやすような優しい手に対して、ジブは熱っぽく指を絡めた。
「大げさじゃない。俺にとってトニーは、昔から憧れで、今は……」
燃えるような視線に気付き、トニーは、はっとジブを見返した。大きな体に抱き寄せられ、足には鍛えられたジブの太ももが絡まっているーー逃げ場が、ない。
「ジブ、あの」
トニーはおろおろ目線を泳がせることしかできなかった。幼い頃のように転げ回っていたはずなのに、目の前の″弟″は気付けば男の顔になっている。
戸惑うトニーの様子を見て、ジブは悲しそうに眉を寄せた。そして再びトニーの首筋に顔をうずめる。
「ごめん、でも、こうやってくっつけるのも今日が最後になるかもしれないだろ」
しがみ付くように体を寄せるジブに何と言えばいいのだろうか。
トニーの頭には様々な言葉が浮かんでは消えていく。その間にもジブの腕の力は強くなっていて、緊張と気まずさで景色がぐるぐるを歪むような気さえしてきた。
「トニー」
もぞもぞとジブが動いた。さらに腰が近くなる。
「……ごめん」
太ももに硬く熱い感触がある。トニーには見なくてもそれが何を意味するのかは分かっていた。
ジブも主張するようにそれを押し付けて、熱い吐息を耳元に吹きかける。
「トニー、こっち見て」
問いかけるジブに、いつもの明るい様子は一切ない。
「嫌なら拒否してほしい。俺からトニーを拒否することはできないから」
みるみるうちにジブの目が潤む。赤い眉が寄って、垂れぎみの目が更に下がって、目尻にうっすらと涙が浮かぶ。
トニーの顔から血の気が引いた。
彼はジブのーー″弟″の悲しみを堪えた顔を見るのが嫌いだった。それは修道院で年下を泣かすなときつく言われたからかもしれない。″兄″なのだから、年上なのだから、治療魔法の使い手なのだからーー誰かが泣いている状況がトニーにとってはストレスだった。
何も言葉にできない。
湿った黒い霧の中を歩くような息苦しさと不安感がトニーの心を包む。息を吸っているはずなのに、空気が入らず、胸の奥に重い鉛を付けられたようだった。その重みから逃げることができず、ジブの腕だけが道しるべのように、トニーの思考を引っ張り上げる。
ジブが嫌いかと問われれば、違うと即答できる。好きかと問われると、正直答えは出ない。
ただ一つ確実に言えることは、ここで拒否をしたらジブが確実に傷つくということだけ。
そして、トニーはその瞬間を見たくなかった。
「ジブ、俺は……お前を拒否しない」
トニーはジブの髪をそっと撫でた。赤い髪に指を絡ませていると、向かい合ったジブの瞳から一筋の涙が零れる。トニーの手が動揺で止まったが、ジブはその手を引いてトニーを強く抱きしめた。
「……嬉しい」
ジブの小さな声と、震える肩、抱き寄せる腕は強く、息もできない程だったがトニーはそれを受け入れ、ジブの背中に腕を回す。
「ジブが泣くところを見たくない」
「違うんだ。これは嬉し涙だよ。本当に嬉しすぎて、自分でもびっくりしてて……」
強く抱きしめられたトニーからはジブの顔は見えない。しかし、小刻みに揺れる体と、時折、首筋に流れる温かい雫が、ジブの落涙をはっきりと理解させた。相変わらず何と言葉をかけていいかは分からなかったが、トニーは震えが落ち着くまでジブの背中を擦り続けた。
どれくらい経ったのだろうか。しゃくりあげる体の震えが止み、大きく深呼吸を繰り返した後、ジブは体を離して微笑んだ。
「俺。今、すごい幸せ」
ジブの目は赤かったが、いつもの明るい彼が返ってきたような気がして、トニーはやっと深く息が吸えるようになった。大きく胸が動き口角が緩くなっていく様を、ジブは微笑んだまま見届ける。
「本当、ジブは大げさだな」
トニーは身が軽くなった感覚を覚え、ふっと笑った。気づけば胸の暗い重みもなくなっている。
ーー自分の一言にこんなに真剣に笑って、泣いてくれる存在がいる。そんな存在を大切にしたいと思うのは、好いている証拠なのかもしれない。
今はジブと同じ熱量で愛してるとは言えないが、きっといつか、言えるようになるきがする。
体の大きなジブに包まれ、伝わる体温を受け止めながらトニーは静かに微笑む。
※※
ジブにとってーー。
細められたトニーの緑色の瞳に自分が写ることは、何にも代えられない悦びだ。途中、感極まって自然と涙が出たのは自分でも意外だったが、事態の好転に役立った。
「トニーの笑った顔、すげぇ好き」
ぽろりと出た言葉に、腕に収まったままのトニーの顔が赤らむ。ふいと顔を背けて恥ずかしそうに黙った彼がかわいらしくて、いますぐにでも欲をぶつけたい衝動に駆られたが、ジブは堪えた。
あくまでトニーに選ばせなければならない。沼に引きずり込むのではなく、自ら飛び込ませなければ。選択肢を出しつつ、「自らがジブを求める選択肢を採った」という事実をトニーに受け止めさせなければ意味がない。
そのためには段階を踏んで、事を運ばなければいけない。
ジブは改めて自身の腰をトニーの太ももに擦り付けた。トニーの目線が咄嗟に下に向かったのをジブはしっかりと確認してから言った。
「ごめん、ムードがなくて。でも両想いだと思ったら、やっぱり。その」
逃げられないようにトニーを抱え込んで、ずりずりと押し当てる。身じろぎさえも許さない強い抱擁の中で欲をぶつけられたトニーだったが、意を決したように手でそれを撫でた。
「大丈夫。恥ずかしい事じゃない」
そう言うトニーの顔はかなり恥ずかしそうだったが、指はしっかりと触れていて、嫌々触っているわけではないのが伝わってくる。
形に沿って、下からなぞるように指が這う。親指が裏筋とカリの付け根を何度も撫で、指が擦れる小さな振動が根元にまで伝わり、じれったく腰に響く。
「気持ちいい……」
そう言いながらジブが腰を前に出すと、優しく撫でていた手は服越しに陰茎を握って上下に扱いた。
自分より細い指が肉付きの良いカリを弾くように通る度、ぞわぞわとした背中に走り、ジブは甘い息を漏らす。
するすると布の擦れる音が二人の間で小さく流れる。
ジブは呼吸が早まるのを感じながら、トニーを見ていた。唇を少しはんだ恥ずかそうな顔で、目元も少し赤い。ただ、視線は自らが触る興奮に落ちていて、一生懸命に手を動かしている様子が見て取れる。
ジブはトニーの唇に目配せをしてゆっくりと近づいた。彼はジブの視線に気付くと、緩く開いていた唇をちらりと舌先で湿らせた。それを見て、ジブも自らの口を舐め、唇を重ねた。
「ん……」
茶色い髪を撫でてつつ首筋に手を這わせると、トニーの肩がビクついた。ジブが角度を変えて唇の端を舐めると、合わさった唇が薄く開いたので、そこから舌を差し込んだ。
「……っ」
唾液を奪うように唇を重ね、舌を絡める。最初は拒むように緊張していたトニーの舌は、次第に柔らかくなりジブの舌に応えるようになっていった。
「トニー、ここも」
キスの合間に止まっていたトニーの手を下着の中に招く。硬く勃ちあがった陰茎を握らせ、手を重ねて何度か上下に動かすのを促すと、彼の手はそのままジブを攻めた。
擦られる度に腰に甘く痺れが走る。絞られるように竿を触られたり、手のひらで柔らかく亀頭を撫でられたり、根元から先端までを手の輪で弄ばれたりと、意外にも手段も豊かに攻められた。止められない興奮でジブの陰茎からは先走りが滲み、トニーの手を汚していった。
「トニーの手、温かい。すげー良い……」
やはりというか、トニーも男として良いポイントを押さえている。
修道院や騎士団では少し浮いた存在だった彼も、ひとりの夜はこんな風に触って自分を慰めているのかもしれない。ジブは彼の自慰行為を想像して、より興奮を深めていった。
先走りがトニーの手に絡み取られ、またジブ自身に塗りつけられる。ぐちゅぐちゅと湿っぽい音がした。
夢に見た瞬間。
日焼けの少ないトニーの白い手が、俺のを触って、擦って。腕の中にいる。
その光景はジブを必要以上に興奮させた。
「トニー、俺、もう……っ」
ジブはトニーの肩を押して仰向けに寝転ばせる。転がるトニーを尻目に、勢いつけて下着を脱ぎ捨て、シャツを捲りあげて噛んで押さえる。
起き上がろうとするトニーの肩を跨いで、片手で壁に手を付き、もう片方の手はトニーの眼前で自らを扱いた。
「は、えっ?! ジブ、お前……!」
眼前に迫ったそれに困惑しながらトニーは抗議の声を上げた。同時にジブの太ももを叩くが、ペチペチと頼りなく音を立てるだけだ。
その間にもジブはお構いなしに何度も陰茎を擦り上げている。
「トニー、あの、さ。口、閉じてた方が……っ、いいんじゃない? 俺はっ、どっちでもいい、けど……」
そう言うとトニーの口がぎゅっと締まった。いつ精液がかかるかと、おそらく恐れの気持ち目を離せずにいるトニーを見ていると、ジブの征服欲が満たされて興奮が加速する。
「ううっ、ヤバ、い。イく……!」
ジブはカリ首を弄んでいた指を根元に下ろして絞る。上り詰めた快感が頭から腰を伝わり、先端から吐き出される。
「ぅっ、あ……」
脈動しながら吐精を繰り返すのと一緒に、ジブの口から声が漏れる。何度も扱いて竿に凝る一滴まで絞り出すと、腰がぶるりと震えた。
快感の波が少し引いた頃、恐る恐るジブは声をかけた。
「トニー、あの。どうしても我慢できなくて……」
トニーは黙り続けていたーーというよりは、そうするしかなかった。
ジブの精液はトニーの右側の目蓋と口元を盛大に汚している。唇の溝にもたっぷりと白濁液が溜まり、口を開ければ腔内への侵入を許してしまいそうだったからだ。
トニーの顔は恥と怒りの入り混じった表情だった。
ジブは慌てて体を退ける。ただそれは罪悪感からではなく、煽情的な見た目にまた体が反応してしまいそう、という邪な理由だった。
「ごめん。ちゃんと拭くから」
形だけの謝罪をしつつ、ジブはトニーの服を掴んで捲って彼の顔に近づけた。
「んんっ、んー!」
俺の服で拭うなとトニーは拒絶の意味で唸るが、ベッドに垂れることを懸念して碌に動くことはできない。トニーのささやかな抵抗は無駄に終わり、そのまま着ている服でごしごしと精液を拭われた。
ーー拒否しない。
そうは言ったがここまでされるとは思わず、トニーは茫然としていた。目の前には上だけ服を着た間抜けな恰好で特徴的なたれ目の目尻をさらに下げているジブ。ぬめりの取れない顔。そして独特な臭いの染みが付いた服。
それらを見ていると、ふつふつと怒りが湧いてくる。
「おい」
トニーは低い声で話しかける。
「ん?」
「お前、これどうするんだよ」
汚れた服を見せつけて睨んだが、ジブはにこにこ笑うばかりでトニーの怒りを意に介していない。
「あー。汚れちゃっし、脱ごうか」
「は……っ!?」
止める間もなく服を脱がされ、上半身が露わになる。ジブは食べ物を目の前にした時のようにぺろりと唇の端から舌を出し、機嫌良くトニーの胸の突起に吸い付いた。
「ひっ……」
片方は舌で転がされ、もう片方は指で摘まれた。自分でも驚くくらい背中が跳ね、恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
「うぅ、ジブ。いやだ、それ……」
トニーの声は、ジブがちゅ、と音を立てついばむように乳首をはんだ音で掻き消される。むずがゆい刺激にトニーが大きく身をよじると、胸から赤色の髪が退いた。
「ごめんごめん。ここ、皮膚が薄いもんね」
唾液で濡れた乳首をぐいと親指で拭われる。トニーは改めて抗議の声を出した。
「ジブ。お前、調子に乗りすぎだぞ」
「ごめん、でも俺、トニーの事が好きだから」
満面の笑みを見せてからジブはトニーに抱きついた。あまりにも幸せそうな笑顔だったので、トニーは何も言う事も出来なかった。
「ごめんのついでじゃないけど……」
ジブが顔を上げてトニーの顔を覗き込んだ。その顔は自信に満ち溢れていて、邪気がない。
「俺、トニーにも気持ちよくなってほしい」
「……は?」
トニーが事態を飲み込むよりも早く、ジブの手が下着を掴み勢いよく脱がせていく。ぱさりとベッドの下から布の落ちる音を聞いてトニーはやっとジブの言うお返しの意味を理解した。
「いや、俺はいい!」
足を動かしバタバタと抵抗するが、体格が一回り違うジブに太ももに乗られては満足に動く事も出来ない。それならばとトニーは下に移動しつつある赤毛の髪を両腕を伸ばして止めようとするも逆にその手を盗られ、指を絡められる。
「よくないよ。俺たち両想いだし、俺もトニーがイくところ見たいしイかせたい」
「そんなの今日じゃなくてもいいだろ!」
「嫌だ。人生で経験出来る回数が1回でも減るのは許せない」
一転して低い声で断言するジブの目が冷たく光ったかと思うと、彼はトニーの陰部を口に含んだ。萎えたそれは簡単に口の中に収まりジブの大きな腔内では舌で弄ぶ余裕すらある。
「う、あっ……!」
生暖かい腔内に包まれ、トニーの腰がびくりと震えた。ジブが根本まで咥えながら、そのままもごもごと口の中で転がすと、次第に腔内で存在感が増してくる。
「んん、うっ」
まだ柔らかい陰茎を吸い上げる強い刺激に、トニーの口からは悲鳴に似た短い嬌声が溢れる。背を仰け反らせながら耐えている姿はやたらにいやらしく、もっと与えたいというジブの欲求を駆り立てた。
「んあっ、あ、吸うな……!」
トニーの声は無視して、ジブは音を立ててそれを舐める。重なる刺激で十分に硬くなった陰茎を、唾液を含みながら舌を這わせながら口をすぼめて啜ると、大きな水音が部屋に響いた。
「ジブ。やめろ、その音っ……!」
「なんで? こういうものでしょ」
じゅぼ、とわざとらしく音を立てて口を離してからジブは答えた。目の前にいるトニーの顔が恥で歪み、絡めた指に力が入って手のひらが密着する。
ジブはその表情に多幸感を覚えながら、迎え舌で見せつけるように再度口に含む。
「……っ!」
声にならない叫びがトニーの喉の奥でひくつく。
喘ぎ声を出さないように努力している様はいじらしいが、口の中でびくびくと震える素直な欲望に従えばいいのにとジブは裏筋をねぶりながら思う。
それでも無理やり声を聞きたいと考えることはなかった。これから先、何回も機会があるのだから、今後の楽しみにとっておいてもいいし、恥じらう姿もーー下品な言い方をすれば下半身に響く。
しつこく啜って、上下に顔を動かして舐める。
亀頭と竿の段差を埋めるようにたっぷり唾液を付けて舌先で転がす。ジブの上から、ふ、ふ、とトニーが息を漏らすのが聞こえた。
ーー恥じらう姿もいいけどもっと声が聞きたいと思うのは、わがままじゃないよな?
誰に言い訳するわけでもないが、ジブは少しだけ欲張って、口にある存在を強く吸いあげた。
「んんっ!」
甲高いトニーの声がジブの意地悪心を満たす。
「あっ! ジブ、もうっ……」
余裕のない声とともに、口の中で竿はち切れんばかりに膨れてきた。ジブが腕で込んでいる足がびくりと震える。
「ひぅっ、んぅ!」
カリから亀頭を重点的に責めると、物欲しそうに陰茎はぴくぴくと震えて舌を押した。トニーは絡めとられた手を引き剥がすように腕を振るが、力の差は歴然だった。むしろジブはより力強く指を絡めてトニーの抵抗を妨げる。
口の中の陰茎は小刻みに脈動し、ジブの上あごを何度も叩いている。限界が近いのは明らかだった。
「あっ、やめろ。もう、出る……!」
「いいよ、出して」
口に含んだままもごもごとジブが話す。このまま果てさせようとするジブの意向は伝わっていたらしく、トニーの手足が力み、再び暴れ始めた。
「ジブ、くち……! 離せっ」
「ん? ふふ」
絶対に離すものか。
口いっぱいに彼を感じて、恥ずかしさに打ちひしがれる姿を見たいのに。ジブは適当に笑って、そのまま口でストロークを強めた。
「い、ああっ! だめ、だめだっ」
トニーの切ない上ずった声とじゅぼじゅぼという艶めかしい音だけが二人の鼓膜を刺激する。
「んん、あ、っあ……!」
ビクンと腰が大きく跳ね、絡めた手が力強く握られる。口の中で震えたトニーの陰茎から生臭い粘り気のある液体が腔内いっぱいに広がる。
ジブは飲み込まないように口で受けとめる。搾り取ることも忘れず、竿に残る残余の一滴まで逃さぬように、勃起したそれを腹にくっつけるように舌で押しながら何度も扱いた。
口を離したジブに、トニーは眉間にしわを寄せながら緩慢な動きで体を起こした。
「ジブ、飲んで……ないよな?」
頬を膨らませたジブは顔を左右に振る。トニーは少しホッとしたような顔でベッドサイドを見回したが、やがてはっとしたような顔になった。
「ジブ、ティッシュをどこに置いた? 取ってくるから……」
慌てて離すトニーに対し、ジブは見せつけるようにして口をうっすら開けた。精液が絡んだ舌を唇のきわまで押し出すとトニーは目を剥いて焦り出した。
「おいおいおい!」
咄嗟に両手を杯のようにして差し出したトニーに、ジブは口の中のものを吐き出した。
「うぅ……」
だらりと糸を引いた唾液混じりの白濁液が垂れる。生暖かく、粘り気のある感触を神経の多い両の手のひらいっぱいに感じる。
口の中のものを吐き出しながらジブは、ちらりと視線を上げた。
困って下がりきった眉と泳いで揺れる瞳。口角も思い切り下がっていて、苦々しい顔をしている。
こんなことをされるのは初めてだろう。ジブはその瞬間を自身の手で起こし、立ち会えたことにまた心が満たされた。
「いっぱい出たね」
吐き出しきったジブの一言に、トニーの顔が一気に赤く染まる。
「……」
今度は恥ずかしさで目を潤ませたトニーが鋭い視線をジブに浴びせるが、結局は両手に溜めた白濁液を前に動くに動けず居心地悪く座り込む姿に、ジブは思わずニヤけた。
「トニー。ごめん、口の中がいっぱいで。すぐ出さないと飲み込みそうだったから……それに、気持ちよかった、よな?」
それらしく言ってからジブはベッドから降り、洗面室にあるティッシュを取って戻り、トニーの手を拭う。
「お前、性的倒錯が過ぎるぞ」
手を拭われながら、眉間にしわを寄せたトニーが責めるような口調で言った。
「なんで?」
きょとんと子供のように目を丸くしながらジブが聞くと、トニーは少し声を荒げた。
「だから! ……顔にかけたり、見せつけるようにして手を出したりっ」
「顔にかけるのなんて、人気のプレイの一種だろ? 手に出したのだってトニーが飲むなって言ったからじゃんか」
「それは……。そうかもしれないが、本来的じゃないだろ。お前のは愉しむためだけのプレイであって、そんなの初めての時にするもんじゃ……」
恥ずかしさを誤魔化すように講釈を垂れるトニーは、しきりに視線を泳がせており瞬きも多い。ジブを責めようにも直接的な言葉を使えずに口ごもるトニーがジブにとっては妙に可愛くて、またじわじわと腹の底が熱くなる。
――こんな調子で説教されるのも悪くないけど、正直、続きがしたい。
むくりと欲望が浮き立つのを感じながら、ジブは唇の端を舐める。
「じゃあ、本来的なこと、しよう」
ジブは座り込んだトニーの下腹部をつついた。そのまま、ツツ、と指を下に滑らせる。
「は、何?!」
「穴に棒を挿れて精液を出す。本来的だろ」
体重をかけてトニーの肩を押す。驚きすぎて禄に抵抗しなかったトニーの背がたっぷりの綿の詰められたマットレスに沈んでいく。洗いたての清潔なリネンの香りがぽふんと空に舞う。
「……え、はぁっ?」
ついに耳まで赤くしたトニーは、はっとして、のしかかるジブを腕で押し返そうとするが、みっちりと筋肉のついたジブの体はそんな抵抗がないかのように微動だにしない。
「ジブ、そういう意味じゃなくて」
「これからは純然たる本来的な性行為で、愉しむための遊びじゃないから」
ジブは足でトニーを押さえつつ、ベッドのサイドチェストから出したローションを手に出した。たっぷりと指に乗せ、トニーの秘部に塗りつける。
「ジブ、待って、待てよ……!」
名前を読んですがってくるトニーは愛らしいが、ジブは手を止める気は毛頭なかった。
つぷ、と穴に指が入りトニーの体がビクリと動いて強張る。
「緊張しないで。そんなんじゃ入らないよ」
ジブの声に、トニーはふるふると首を振って、恥から一転、恐怖の面持ちでジブを見上げる。だが対面する赤毛の男は、にこりと微笑んで恋人の頭を撫でたーーやめないからな? とトニーに諦めを促している。
「トニー、力抜いて。治療魔法かける時はそう患者に言うだろ?」
落ち着かせるように語りかけ、茶色い髪を指に絡ませる。
「止めるという選択肢……」
「は、ないかな。首都騎士団に戻ったらいつ出来るかわかんないし」
こうなったらジブは考えを曲げない。
そして確かに、とトニーの腑に落ちることもあった。この視察が終わったら、集団生活に戻る。秘密裏に神秘周りの調査をしたいとも思っていたから、首都に帰ったらなかなか行為はできないだろう。ジブの気持ちも分からないでもない。
「……分かった」
トニーは覚悟を決めてジブの希望に応えた。
ーーまあ、なんとかなるだろう。
そんな楽観的な思いもあった。
「ありがと」
頷いたトニーを見て、ジブは頬が緩んだ。
ーーこういう、強情っぽいのに流されるところ、好きだなぁとジブは改めて思う。トニーは自ら選んだつもりだろうが、トニーが納得しやすい理由を選んで方向性を定めているのはジブだ。結局のところ、トニーはジブの編んだ檻の中で呼吸している依存性の高い関係ではあるがーー気づかないのはトニーばかりである。
「じゃあ、いいよね?」
ジブがくしゃりと髪を撫でると、トニーは少し目を伏せた。羞恥が滲む顔も、こうして大人しくいるのも、全部ひっくるめて愛おしかった。
ジブは早る気持ちを抑えながら、指をじわじわと押し入れる。力みを逃す小さなため息とともに強張りが解けて、指が中に入っていく。トニーは得も言われぬ顔をしていたが、治療に携わる経験からか意識してその部位を弛緩しているようだった。
ただーージブが中のしこりをなぞると肩がビクリと跳ねた。トニーの体に一気に緊張が走り、指に圧がかかった。
あからさまな反応にジブは口角を上げる。
「ここ? 気持ちいい?」
「違、うぁっ、ぁっ……」
声をかけながら、中を押すように擦るとトニーの口から嬌声が漏れた。指を押し返すしこりは小さいが、それが及ぼす快感は大きいようで、ごしごしと擦ったり、突くように押し上げたりすると、トニーは面白いように反応を返してきた。やや内股になった太ももがかすかに震えている。
「いいね。かわいい」
「んあぁっ! いやだ、ジブ。待って……!」
「待つ必要ないだろ。気持ち良くなっていいんだから」
「あっ、んあ、あっ!」
ついに背を仰け反らせながら喘ぎだしたトニーを見ていると、ジブの気持ちと昂りが下半身に集まるのを感じた。
長年、妄想の中で散々に彼を犯してきたが実際の反応はより艶っぽくてーー良い。
「指、増やすね」
悶えながら喘ぐトニーには聞こえていないかも知れないが、ジブは一応声をかけてから二本目を挿れる。
「ひ、……ぅうっ、ん」
声が漏れる度に中が収縮し、指を締め付ける。動かしづらくなるほどの圧力だったが、ジブは休まずに攻め続けた。
部屋には、粘度の高いローションがぐちゃぐちゃとかき回される音と、大きな快感に堪えきれずに零れるトニーの声が絶え間なく響く。折を見て増やした指はもう三本になり、ばらばらに動かしても受け止めるほど柔らかくなっていた。
「は、んっ、あ、ああっ」
腰を持ち上げるように強く何度も擦ると嬌声の間隔が短くなり、浮いたトニーの足先が伸びる。中の収縮も強く、限界が近いことが分かる。
「すごい体がビクついてる。イきそう?」
「あぅ、あ……!」
ジブの問いかけに、トニーは切なげに寄せた眉と潤んだ瞳でもって小さく頷く。それを確認して、ジブは指を引き抜いた。
「あ、え?」
突然、指の感触がなくなったことに驚いたトニーは、ぱちぱちと瞬きをした。
「指じゃないくてさ。……ね?」
膝立ちしたジブが手際よく陰茎にゴムを着ける。そして獣が舌なめずりするように笑ったのを見て、トニーはその後の展開を理解した。
「こういうことになるのは分かってただろ?」
トニーが口を開くよりも早く、ジブは声をかける。トニーの緑色の瞳がジブの顔と下半身を交互に見ている。本人の自覚はないだろうが、いつもはハーフネックの制服に隠された小さめの喉ぼとけがゆっくりと上下していて、それすらもジブには愛らしかった。
「いや、でも。ジブ……」
制止したいのか小さく抵抗するトニーだったが、ジブがその欲望を眼前に突きつけると、唇をはんでおろおろと視線を下げる。
ーーなんでこんなに心にくるんだろう。
欲望を当てつけられてたじたじになるトニーの姿を今晩何度も見た。何度も見たのに、その度に胸の奥が熱くなる。
物心ついた時から一緒にいたはずなのに、思い出の中にはいつもトニーがいるのに。
彼への執着は止まることを知らない。
正直、最後にトニーが幸せなら別の誰かと結ばれてもいいーーどんな立場でも俺がトニーの隣に居られれば。幸せそうな顔が見られるなら、それでもいいと思っていた。
でも今は。すべてが欲しい。
「いいよね」
ジブが手を置くと、ベッドがぎしりと音を立てる。後ろの穴に興奮したそれを当てがうと、トニーは大きく薄く息を吐いて目を閉じた。弛緩した体に向かってジブが腰を進めると、狭い輪をくぐって先端がぬくもりに包まれた。
「うう……」
トニーの顔は少し歪んだが、時間をかけて解したおかげか思ったよりすんなり受け入れられた。とは言っても、トニーが上手くいきみを逃がしていることも大いにあるのだが、たった一部分だけでもトニーと繋がれた実感がジブを昂揚させる。
その昂揚がより深い繋がりを求めるのは当然のことだった。
「ジブ。あの、ゆっくり」
「ごめん。無理」
「え、あっ……!」
ジブは思いのままに腰を進めて最奥まで突いた。
「……っ!」
トニーの背中が反り、足指は極限まで丸まる。自身を突いたジブの陰茎を中でぎゅうぎゅうと締め付けながら、体全体を小刻みに震えさせて耐える。
「ごめんね。でも解してたから痛くないでしょ。今度は一緒にイこうね」
「ひっ、う……あ、あ」
中の感触を堪能しながらジブがトニーを抱きしめると、トニーは耐え切れない快感から、もがき逃げるようにジブに縋りく。下から強く抱き留められ、ジブは思わずニヤけた。
「もう。かわいいな」
「いや……ジブ。待ってくれ、まだ動くなよ」
「無理だって。もう待てない」
「ひっ、ああっ!」
ばちゅばちゅと音を立てながら突くと、トニーは耐え切れず喘ぎ声を溢す。上からのしかかるようにすれば、トニーも逃げられず、ジブは思い切り奥まで攻めることができた。
カリで内壁を擦り、指で触っていた前立腺の辺りも叩くように刺激する。引き抜く時よりも太い部分で押し進めるときの方が快感が強いようで、甘い嬌声がジブの耳をくすぐった。
浅いところで動かして焦らしたり、奥をだけ攻めたり、味わうようにゆっくりと抜き差しながらトニーの反応を楽しむ。
「んん、んっ」
反り返った硬い形のままにトニーの臍の裏を突くと、喉を絞ったトニーのくぐもった声がした。部屋には二人の肌の重なる音が休むことなく響いている。
「っは、トニー。……めっちゃ感じてるじゃん」
「ぁあッ、ぁうっ」
次第にトニーの声に余裕がなくなり、中が強く収縮を始めた。ジブも早打ちする鼓動に合わせて打ちつける腰を強めると、トニーがジブの腕を掴んだ。
「いやだ、やだ……!」
「いやじゃないだろ? 中、すごい締め付けてくる、イキしそう?」
「う、ああっ!」
ぱんぱんと音を立てて揺さぶると、中の締め付けがより強くなる。トニーの体のすべてに力が入り、ジブを掴む指先が白くなっていく。
「あっ、ああっ、んぅ、う……!」
抉るように突く。肌のぶつかる音の間隔が短くなり、二人は息を切らしながら互いを求めあった。
「んあっ、あ、ああ! ジブ、だめだっ」
「何がだめなんだよ、たくさん……イケばいいじゃん。明日も休みなんだからさ」
「ちが、う。んっ! んんっ」
ジブは身をかがめトニーの口を塞いだ。その間もジブは腰の動きは止めず、沸き上がる欲望のままに中を犯す。
「んっ、ふっ、んぁ……」
唇を重ね、舌で絡めると、鼻息交じりの嬌声が漏れるトニーの中が収縮する。
腰の奥からじわじわと上り詰めた快感が、ジブに射精しろと促す。これ以上ないほどに勃ち上がり、竿もカリもぱんぱんに膨らんでいる。動く度にトニーの中はうねって反応し、全方向からジブの陰茎を絞って快感を与えた。
「……んっ、俺も、イキそうっ」
「んっ、あ!」
ジブは寝そべるトニーの肩に腕を回し、体を密着させた。射精したい一心の動きは遠慮を知らない。亀頭ギリギリまで引き抜き、根元まで一気に挿れる。
「ああっ、も、うっ、だ……めっ、ジブ……!」
「うん、俺も、俺もイクから……!」
トニーはジブにしがみつきながら、時折飛びそうになる意識を何とか保っていた。中をかき回されたり、最奥を突かれたり、足先から頭までを電流が走るような快感に満たされる。
「ひっ、うう!」
絶頂を促されるように前立腺をカリで押しつぶされるように擦られ、トニーの体は無意識にびくびくと跳ねた。それは秘部も同じで、中にいるジブも大きく脈動した。
「あ、う。トニー、もう出っ……!」
言葉の途中でジブの体が硬直し、トニーを強く抱きしめた。それと同時に、硬くなった亀頭に抉るように最奥まで突かれトニーも体を痙攣させた。
「いっ、あっ、あああっ!」
トニーの目の前にはチカチカと光が煌めき、指先まで甘くしびれるような強烈な性感が全身を覆う。無意識にガクガクと体が震え、ジブの射精を悦ぶように中がうねる。
うねりを一身に感じながらジブも昂った欲望を流し込む。抱き締めたトニーの体の震えなど気にできる余裕もなく、ジブは先端を最奥に擦りつけて長い射精を味わう。歯を食いしばらないと声が漏れてしまいそうなくらい、気持ちよく、性感がジブを満たしていった。
長い射精を終えて、ジブは止まっていた呼吸を取り戻す。
汗ばんだ体を離しながらゴムを外したジブの目に飛び込んできたのは、とろんとした虚ろな目をして、荒い息を繰り返すトニーの姿だった。
「トニー? おーい」
強い快感に意識にほとんどを奪われているのか、くたりと力なく横たわるトニーは呼びかけに反応しない。
「最初だし、手加減したんだけどな」
ジブは苦笑いしながら、トニーの頬に触れる。汗ばんでぺたりとした頬を撫でると、トニーの肩がぴくりと上がったが、それは単なる反射であって受け入れも拒否でもない。
終わった後は互いに枕を抱えて甘い恋人の時間を過ごしたかったが、これはこれで悪くない。ジブは小さくため息をついてトニーの頬を少し強めに叩く。
「ほら、トニー。シャワー浴びよ。汗だくだよ」
ぺちぺちと叩かれたトニーは、しばらくぼんやりとしていたが、やがてその瞳にジブを捉えた。
薄い胸が上下し、ゆっくりと瞬きをする。飛びかけた意識が戻ってきたようで、トニーは軽く咳払いをしてから口を開いた。
「わかった……」
掠れた声で答え、のろのろと体を起こす。手伝おうかジブが手を出したが、トニーは一人で立ち上がって若干ふらつきながらも洗面室に向かった。
ーー良かった。終わった後に一人で歩けるくらいなら、次はもっと激しくしても問題ないな。
ジブは立ち上がって、洗面室に入っていったトニーを追いかけた。
「早く来ないかな」
食事の後でまた話そうと伝えていたから、そろそろトニーが来るはずだ。
ジブは寝転んでいた体を起こし、洗面室に向かう。入ると自動的に魔法灯が点灯し、清潔感のある光沢のある石造りの壁と美しい調度品がジブを迎えた。
水栓に手をかざし、湯で顔を流す。タオルで顔を拭いて体を起こすと大きな鏡に自身が写った。そこには薄桃色の垂れた瞳の奥をギラつかせた自分がいる。
「怖ぇ顔。そんなんじゃトニーがビビるぞ」
一言呟いてから、タオルで顔を覆い深呼吸をする。
ーー次にトニーに会う時の俺は、純粋でかわいい弟分でなければならない。
ジブはタオルを下ろして、鏡に向かって笑顔を作る。人懐っこく緩い笑顔の”弟”が鏡に現れた。
その時、呼び鈴が鳴った。トニーが来たのだと、ジブは急いでタオルを簡単に畳んで扉へと向かった。
「ジブ、邪魔するぞ」
開いた扉に断りを入れたトニーを出迎えたのは、ジブの厚い胸板だった。ぎゅっと音がするくらいに強く抱かれ肺の空気が押し出される。
「良かった! 来てくれないかと思った」
耳元で聞こえた大声に苦笑しながら、トニーはジブの背中を叩く。
「あ……ごめん」
ジブはぱっと体を離して一瞬だけ視線を泳がせながら気まずそうに謝罪した。
「告白した後に急に抱きつくとか、駄目だよな。でも、トニーが約束守ってちゃんと来てくれたことが嬉しくて」
頭を掻きながら苦笑いするジブは、悪いことを嗜められた幼い頃のジブそのものだった。
「いや、別にいい」
本来なら警戒すべきところなのだろうが、いつも通りの素直に甘えたジブの姿にトニーはほっとした。
難しいことは言わないただのジブ。そう思うと、自然と肩の力が抜けた。告白云々は置いておくとしても、トニーにとってはジブは昔なじみの弟分で、″神秘″とは関係のない数少ない人間だ。
神秘が顕現したことでトニーを取り巻く環境は大きく変わった。育ちの地であるコーソム修道院には金で売られ、騎士団内にも神秘を利用しようとする者がいて、誰を信用すればいいのかもわからない。
そんな中で、昔から気の知れたジブがいることはトニーにとっては救いでもあった。
「こんなところで突っ立ててもしょうがないか。トニー、どうぞ」
部屋の奥のテーブルに案内され、トニーは言われるまま席に向かう。
ーーその背中を見るジブの瞳が冷たく光る。抱きついても拒否されない距離感、緊張の解れたトニーの顔。計算した全てがここで再現されている。
唇がゆるやかに持ち上がるのを抑えながら、ジブはトニーの待つテーブルに向かう。
「ジブ。告白の答えなんだが、俺は……」
ジブがテーブルに着くと、トニーはさっそく本題に入った。だがジブは勢いよく手を上げて、それを制する。
「ちょっと待った!」
トニーは一瞬目を丸くしたが、すぐに怪訝そうな表情を浮かべた。若干、むっとした顔付きになったがジブは物怖じせず口を挟む。
「トニー。その答えの前に、ちょっといいかな」
首を傾げるトニーに対し、ジブは挙げた手をすっと下ろし、もぞもぞと揉む。
「今は、昔みたいに……修道院にいた頃みたいに甘えたい」
弟分の控えめな願いをトニーはいじらしく思った。
「そうだな。答えを急ぐわけでもないなら……」
トニーは腕を伸ばしてくしゃくしゃとジブの頭を撫でる。えへへと声を出して喜ぶジブにトニーも笑い返した。
「じゃあ、こっち来て」
トニーの手のひらの感触を堪能した後、ジブは彼の手を引いてベッドの前まで移動する。そこで、ニッと悪戯っぽく笑ったジブは、突進する勢いでトニーに抱き、ベッドに押し倒した。
「うわっ!」
倒れ込んだトニーの小さな声とベッドが大きく軋む音が部屋に響く。二人はベッドの中央でスプリングに揺られた。
「何するんだよ。ジブ」
「昔はこんな風に二人でクッキーみたいな薄いベッドに飛び込んで遊んでただろ? 大部屋でみんなで雑魚寝してさ」
驚き咎めるようなトニーの声を無視してジブはごろりと仰向けになった。大の字を作って柔らかい布の感触を背中いっぱいに感じていると、隣にいるトニーが小さく笑った。
「ったく。何歳の時の話だよ」
「トニーが15歳の時まで! ……くらい、だった。……かな?」
語気強めに言い切ったジブの言葉にトニーの目が大きく見開かれた。しかしすぐに、よく覚えてるなと感心した様子で返した。
ーー良かった。トニーが鈍感で、本当に。
ジブはトニーに関することは全て覚えている自負があり、咄嗟に答えてしまった。思い出した風を付け足して取り繕ったが、不信感を与えたかと心配した。しかしジブの心配を余所に、トニーはただ感心するばかりで何も疑ってはいない。
トニーの鈍感さにもどかしさを感じることもあったが、今はそれが有り難く、そしてかわいらしく感じた。
「何を笑ってんだよ、ジブ」
「何でもない!」
ジブはトニーの脇腹をくすぐって、話をはぐらかした。
「わっ、あっはは!」
トニーはくすぐりに弱い。外では表情をあまり崩すことはない彼がこんな風に大笑するのを見られるのは世界で俺だけだ。ジブはうっとりとトニーを眺める。
ーーそろそろ仕掛けるか。
今だにくすぐったさで暴れるトニーを、足を絡めて止める。指先が冷たい。ひやりとする足先も愛おしい。
「ほら、逃げない」
「う、いや、っはは」
今度はトニーに抱きついた。体を太ももで挟み、逃さぬようにして首元に顔をうずめる。胸いっぱいにトニーの匂いを吸い込んで、幸せのため息をついた。もちろんトニーにはバレないように。
「俺、今すごい幸せ」
ジブが頭を擦るようにして身を寄せると、赤い髪に首筋をくすぐられたトニーの肩がびくりと震えた。
「お前は大げさだな」
ジブの腕をトニーはぽんぽんと叩く。子供をあやすような優しい手に対して、ジブは熱っぽく指を絡めた。
「大げさじゃない。俺にとってトニーは、昔から憧れで、今は……」
燃えるような視線に気付き、トニーは、はっとジブを見返した。大きな体に抱き寄せられ、足には鍛えられたジブの太ももが絡まっているーー逃げ場が、ない。
「ジブ、あの」
トニーはおろおろ目線を泳がせることしかできなかった。幼い頃のように転げ回っていたはずなのに、目の前の″弟″は気付けば男の顔になっている。
戸惑うトニーの様子を見て、ジブは悲しそうに眉を寄せた。そして再びトニーの首筋に顔をうずめる。
「ごめん、でも、こうやってくっつけるのも今日が最後になるかもしれないだろ」
しがみ付くように体を寄せるジブに何と言えばいいのだろうか。
トニーの頭には様々な言葉が浮かんでは消えていく。その間にもジブの腕の力は強くなっていて、緊張と気まずさで景色がぐるぐるを歪むような気さえしてきた。
「トニー」
もぞもぞとジブが動いた。さらに腰が近くなる。
「……ごめん」
太ももに硬く熱い感触がある。トニーには見なくてもそれが何を意味するのかは分かっていた。
ジブも主張するようにそれを押し付けて、熱い吐息を耳元に吹きかける。
「トニー、こっち見て」
問いかけるジブに、いつもの明るい様子は一切ない。
「嫌なら拒否してほしい。俺からトニーを拒否することはできないから」
みるみるうちにジブの目が潤む。赤い眉が寄って、垂れぎみの目が更に下がって、目尻にうっすらと涙が浮かぶ。
トニーの顔から血の気が引いた。
彼はジブのーー″弟″の悲しみを堪えた顔を見るのが嫌いだった。それは修道院で年下を泣かすなときつく言われたからかもしれない。″兄″なのだから、年上なのだから、治療魔法の使い手なのだからーー誰かが泣いている状況がトニーにとってはストレスだった。
何も言葉にできない。
湿った黒い霧の中を歩くような息苦しさと不安感がトニーの心を包む。息を吸っているはずなのに、空気が入らず、胸の奥に重い鉛を付けられたようだった。その重みから逃げることができず、ジブの腕だけが道しるべのように、トニーの思考を引っ張り上げる。
ジブが嫌いかと問われれば、違うと即答できる。好きかと問われると、正直答えは出ない。
ただ一つ確実に言えることは、ここで拒否をしたらジブが確実に傷つくということだけ。
そして、トニーはその瞬間を見たくなかった。
「ジブ、俺は……お前を拒否しない」
トニーはジブの髪をそっと撫でた。赤い髪に指を絡ませていると、向かい合ったジブの瞳から一筋の涙が零れる。トニーの手が動揺で止まったが、ジブはその手を引いてトニーを強く抱きしめた。
「……嬉しい」
ジブの小さな声と、震える肩、抱き寄せる腕は強く、息もできない程だったがトニーはそれを受け入れ、ジブの背中に腕を回す。
「ジブが泣くところを見たくない」
「違うんだ。これは嬉し涙だよ。本当に嬉しすぎて、自分でもびっくりしてて……」
強く抱きしめられたトニーからはジブの顔は見えない。しかし、小刻みに揺れる体と、時折、首筋に流れる温かい雫が、ジブの落涙をはっきりと理解させた。相変わらず何と言葉をかけていいかは分からなかったが、トニーは震えが落ち着くまでジブの背中を擦り続けた。
どれくらい経ったのだろうか。しゃくりあげる体の震えが止み、大きく深呼吸を繰り返した後、ジブは体を離して微笑んだ。
「俺。今、すごい幸せ」
ジブの目は赤かったが、いつもの明るい彼が返ってきたような気がして、トニーはやっと深く息が吸えるようになった。大きく胸が動き口角が緩くなっていく様を、ジブは微笑んだまま見届ける。
「本当、ジブは大げさだな」
トニーは身が軽くなった感覚を覚え、ふっと笑った。気づけば胸の暗い重みもなくなっている。
ーー自分の一言にこんなに真剣に笑って、泣いてくれる存在がいる。そんな存在を大切にしたいと思うのは、好いている証拠なのかもしれない。
今はジブと同じ熱量で愛してるとは言えないが、きっといつか、言えるようになるきがする。
体の大きなジブに包まれ、伝わる体温を受け止めながらトニーは静かに微笑む。
※※
ジブにとってーー。
細められたトニーの緑色の瞳に自分が写ることは、何にも代えられない悦びだ。途中、感極まって自然と涙が出たのは自分でも意外だったが、事態の好転に役立った。
「トニーの笑った顔、すげぇ好き」
ぽろりと出た言葉に、腕に収まったままのトニーの顔が赤らむ。ふいと顔を背けて恥ずかしそうに黙った彼がかわいらしくて、いますぐにでも欲をぶつけたい衝動に駆られたが、ジブは堪えた。
あくまでトニーに選ばせなければならない。沼に引きずり込むのではなく、自ら飛び込ませなければ。選択肢を出しつつ、「自らがジブを求める選択肢を採った」という事実をトニーに受け止めさせなければ意味がない。
そのためには段階を踏んで、事を運ばなければいけない。
ジブは改めて自身の腰をトニーの太ももに擦り付けた。トニーの目線が咄嗟に下に向かったのをジブはしっかりと確認してから言った。
「ごめん、ムードがなくて。でも両想いだと思ったら、やっぱり。その」
逃げられないようにトニーを抱え込んで、ずりずりと押し当てる。身じろぎさえも許さない強い抱擁の中で欲をぶつけられたトニーだったが、意を決したように手でそれを撫でた。
「大丈夫。恥ずかしい事じゃない」
そう言うトニーの顔はかなり恥ずかしそうだったが、指はしっかりと触れていて、嫌々触っているわけではないのが伝わってくる。
形に沿って、下からなぞるように指が這う。親指が裏筋とカリの付け根を何度も撫で、指が擦れる小さな振動が根元にまで伝わり、じれったく腰に響く。
「気持ちいい……」
そう言いながらジブが腰を前に出すと、優しく撫でていた手は服越しに陰茎を握って上下に扱いた。
自分より細い指が肉付きの良いカリを弾くように通る度、ぞわぞわとした背中に走り、ジブは甘い息を漏らす。
するすると布の擦れる音が二人の間で小さく流れる。
ジブは呼吸が早まるのを感じながら、トニーを見ていた。唇を少しはんだ恥ずかそうな顔で、目元も少し赤い。ただ、視線は自らが触る興奮に落ちていて、一生懸命に手を動かしている様子が見て取れる。
ジブはトニーの唇に目配せをしてゆっくりと近づいた。彼はジブの視線に気付くと、緩く開いていた唇をちらりと舌先で湿らせた。それを見て、ジブも自らの口を舐め、唇を重ねた。
「ん……」
茶色い髪を撫でてつつ首筋に手を這わせると、トニーの肩がビクついた。ジブが角度を変えて唇の端を舐めると、合わさった唇が薄く開いたので、そこから舌を差し込んだ。
「……っ」
唾液を奪うように唇を重ね、舌を絡める。最初は拒むように緊張していたトニーの舌は、次第に柔らかくなりジブの舌に応えるようになっていった。
「トニー、ここも」
キスの合間に止まっていたトニーの手を下着の中に招く。硬く勃ちあがった陰茎を握らせ、手を重ねて何度か上下に動かすのを促すと、彼の手はそのままジブを攻めた。
擦られる度に腰に甘く痺れが走る。絞られるように竿を触られたり、手のひらで柔らかく亀頭を撫でられたり、根元から先端までを手の輪で弄ばれたりと、意外にも手段も豊かに攻められた。止められない興奮でジブの陰茎からは先走りが滲み、トニーの手を汚していった。
「トニーの手、温かい。すげー良い……」
やはりというか、トニーも男として良いポイントを押さえている。
修道院や騎士団では少し浮いた存在だった彼も、ひとりの夜はこんな風に触って自分を慰めているのかもしれない。ジブは彼の自慰行為を想像して、より興奮を深めていった。
先走りがトニーの手に絡み取られ、またジブ自身に塗りつけられる。ぐちゅぐちゅと湿っぽい音がした。
夢に見た瞬間。
日焼けの少ないトニーの白い手が、俺のを触って、擦って。腕の中にいる。
その光景はジブを必要以上に興奮させた。
「トニー、俺、もう……っ」
ジブはトニーの肩を押して仰向けに寝転ばせる。転がるトニーを尻目に、勢いつけて下着を脱ぎ捨て、シャツを捲りあげて噛んで押さえる。
起き上がろうとするトニーの肩を跨いで、片手で壁に手を付き、もう片方の手はトニーの眼前で自らを扱いた。
「は、えっ?! ジブ、お前……!」
眼前に迫ったそれに困惑しながらトニーは抗議の声を上げた。同時にジブの太ももを叩くが、ペチペチと頼りなく音を立てるだけだ。
その間にもジブはお構いなしに何度も陰茎を擦り上げている。
「トニー、あの、さ。口、閉じてた方が……っ、いいんじゃない? 俺はっ、どっちでもいい、けど……」
そう言うとトニーの口がぎゅっと締まった。いつ精液がかかるかと、おそらく恐れの気持ち目を離せずにいるトニーを見ていると、ジブの征服欲が満たされて興奮が加速する。
「ううっ、ヤバ、い。イく……!」
ジブはカリ首を弄んでいた指を根元に下ろして絞る。上り詰めた快感が頭から腰を伝わり、先端から吐き出される。
「ぅっ、あ……」
脈動しながら吐精を繰り返すのと一緒に、ジブの口から声が漏れる。何度も扱いて竿に凝る一滴まで絞り出すと、腰がぶるりと震えた。
快感の波が少し引いた頃、恐る恐るジブは声をかけた。
「トニー、あの。どうしても我慢できなくて……」
トニーは黙り続けていたーーというよりは、そうするしかなかった。
ジブの精液はトニーの右側の目蓋と口元を盛大に汚している。唇の溝にもたっぷりと白濁液が溜まり、口を開ければ腔内への侵入を許してしまいそうだったからだ。
トニーの顔は恥と怒りの入り混じった表情だった。
ジブは慌てて体を退ける。ただそれは罪悪感からではなく、煽情的な見た目にまた体が反応してしまいそう、という邪な理由だった。
「ごめん。ちゃんと拭くから」
形だけの謝罪をしつつ、ジブはトニーの服を掴んで捲って彼の顔に近づけた。
「んんっ、んー!」
俺の服で拭うなとトニーは拒絶の意味で唸るが、ベッドに垂れることを懸念して碌に動くことはできない。トニーのささやかな抵抗は無駄に終わり、そのまま着ている服でごしごしと精液を拭われた。
ーー拒否しない。
そうは言ったがここまでされるとは思わず、トニーは茫然としていた。目の前には上だけ服を着た間抜けな恰好で特徴的なたれ目の目尻をさらに下げているジブ。ぬめりの取れない顔。そして独特な臭いの染みが付いた服。
それらを見ていると、ふつふつと怒りが湧いてくる。
「おい」
トニーは低い声で話しかける。
「ん?」
「お前、これどうするんだよ」
汚れた服を見せつけて睨んだが、ジブはにこにこ笑うばかりでトニーの怒りを意に介していない。
「あー。汚れちゃっし、脱ごうか」
「は……っ!?」
止める間もなく服を脱がされ、上半身が露わになる。ジブは食べ物を目の前にした時のようにぺろりと唇の端から舌を出し、機嫌良くトニーの胸の突起に吸い付いた。
「ひっ……」
片方は舌で転がされ、もう片方は指で摘まれた。自分でも驚くくらい背中が跳ね、恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
「うぅ、ジブ。いやだ、それ……」
トニーの声は、ジブがちゅ、と音を立てついばむように乳首をはんだ音で掻き消される。むずがゆい刺激にトニーが大きく身をよじると、胸から赤色の髪が退いた。
「ごめんごめん。ここ、皮膚が薄いもんね」
唾液で濡れた乳首をぐいと親指で拭われる。トニーは改めて抗議の声を出した。
「ジブ。お前、調子に乗りすぎだぞ」
「ごめん、でも俺、トニーの事が好きだから」
満面の笑みを見せてからジブはトニーに抱きついた。あまりにも幸せそうな笑顔だったので、トニーは何も言う事も出来なかった。
「ごめんのついでじゃないけど……」
ジブが顔を上げてトニーの顔を覗き込んだ。その顔は自信に満ち溢れていて、邪気がない。
「俺、トニーにも気持ちよくなってほしい」
「……は?」
トニーが事態を飲み込むよりも早く、ジブの手が下着を掴み勢いよく脱がせていく。ぱさりとベッドの下から布の落ちる音を聞いてトニーはやっとジブの言うお返しの意味を理解した。
「いや、俺はいい!」
足を動かしバタバタと抵抗するが、体格が一回り違うジブに太ももに乗られては満足に動く事も出来ない。それならばとトニーは下に移動しつつある赤毛の髪を両腕を伸ばして止めようとするも逆にその手を盗られ、指を絡められる。
「よくないよ。俺たち両想いだし、俺もトニーがイくところ見たいしイかせたい」
「そんなの今日じゃなくてもいいだろ!」
「嫌だ。人生で経験出来る回数が1回でも減るのは許せない」
一転して低い声で断言するジブの目が冷たく光ったかと思うと、彼はトニーの陰部を口に含んだ。萎えたそれは簡単に口の中に収まりジブの大きな腔内では舌で弄ぶ余裕すらある。
「う、あっ……!」
生暖かい腔内に包まれ、トニーの腰がびくりと震えた。ジブが根本まで咥えながら、そのままもごもごと口の中で転がすと、次第に腔内で存在感が増してくる。
「んん、うっ」
まだ柔らかい陰茎を吸い上げる強い刺激に、トニーの口からは悲鳴に似た短い嬌声が溢れる。背を仰け反らせながら耐えている姿はやたらにいやらしく、もっと与えたいというジブの欲求を駆り立てた。
「んあっ、あ、吸うな……!」
トニーの声は無視して、ジブは音を立ててそれを舐める。重なる刺激で十分に硬くなった陰茎を、唾液を含みながら舌を這わせながら口をすぼめて啜ると、大きな水音が部屋に響いた。
「ジブ。やめろ、その音っ……!」
「なんで? こういうものでしょ」
じゅぼ、とわざとらしく音を立てて口を離してからジブは答えた。目の前にいるトニーの顔が恥で歪み、絡めた指に力が入って手のひらが密着する。
ジブはその表情に多幸感を覚えながら、迎え舌で見せつけるように再度口に含む。
「……っ!」
声にならない叫びがトニーの喉の奥でひくつく。
喘ぎ声を出さないように努力している様はいじらしいが、口の中でびくびくと震える素直な欲望に従えばいいのにとジブは裏筋をねぶりながら思う。
それでも無理やり声を聞きたいと考えることはなかった。これから先、何回も機会があるのだから、今後の楽しみにとっておいてもいいし、恥じらう姿もーー下品な言い方をすれば下半身に響く。
しつこく啜って、上下に顔を動かして舐める。
亀頭と竿の段差を埋めるようにたっぷり唾液を付けて舌先で転がす。ジブの上から、ふ、ふ、とトニーが息を漏らすのが聞こえた。
ーー恥じらう姿もいいけどもっと声が聞きたいと思うのは、わがままじゃないよな?
誰に言い訳するわけでもないが、ジブは少しだけ欲張って、口にある存在を強く吸いあげた。
「んんっ!」
甲高いトニーの声がジブの意地悪心を満たす。
「あっ! ジブ、もうっ……」
余裕のない声とともに、口の中で竿はち切れんばかりに膨れてきた。ジブが腕で込んでいる足がびくりと震える。
「ひぅっ、んぅ!」
カリから亀頭を重点的に責めると、物欲しそうに陰茎はぴくぴくと震えて舌を押した。トニーは絡めとられた手を引き剥がすように腕を振るが、力の差は歴然だった。むしろジブはより力強く指を絡めてトニーの抵抗を妨げる。
口の中の陰茎は小刻みに脈動し、ジブの上あごを何度も叩いている。限界が近いのは明らかだった。
「あっ、やめろ。もう、出る……!」
「いいよ、出して」
口に含んだままもごもごとジブが話す。このまま果てさせようとするジブの意向は伝わっていたらしく、トニーの手足が力み、再び暴れ始めた。
「ジブ、くち……! 離せっ」
「ん? ふふ」
絶対に離すものか。
口いっぱいに彼を感じて、恥ずかしさに打ちひしがれる姿を見たいのに。ジブは適当に笑って、そのまま口でストロークを強めた。
「い、ああっ! だめ、だめだっ」
トニーの切ない上ずった声とじゅぼじゅぼという艶めかしい音だけが二人の鼓膜を刺激する。
「んん、あ、っあ……!」
ビクンと腰が大きく跳ね、絡めた手が力強く握られる。口の中で震えたトニーの陰茎から生臭い粘り気のある液体が腔内いっぱいに広がる。
ジブは飲み込まないように口で受けとめる。搾り取ることも忘れず、竿に残る残余の一滴まで逃さぬように、勃起したそれを腹にくっつけるように舌で押しながら何度も扱いた。
口を離したジブに、トニーは眉間にしわを寄せながら緩慢な動きで体を起こした。
「ジブ、飲んで……ないよな?」
頬を膨らませたジブは顔を左右に振る。トニーは少しホッとしたような顔でベッドサイドを見回したが、やがてはっとしたような顔になった。
「ジブ、ティッシュをどこに置いた? 取ってくるから……」
慌てて離すトニーに対し、ジブは見せつけるようにして口をうっすら開けた。精液が絡んだ舌を唇のきわまで押し出すとトニーは目を剥いて焦り出した。
「おいおいおい!」
咄嗟に両手を杯のようにして差し出したトニーに、ジブは口の中のものを吐き出した。
「うぅ……」
だらりと糸を引いた唾液混じりの白濁液が垂れる。生暖かく、粘り気のある感触を神経の多い両の手のひらいっぱいに感じる。
口の中のものを吐き出しながらジブは、ちらりと視線を上げた。
困って下がりきった眉と泳いで揺れる瞳。口角も思い切り下がっていて、苦々しい顔をしている。
こんなことをされるのは初めてだろう。ジブはその瞬間を自身の手で起こし、立ち会えたことにまた心が満たされた。
「いっぱい出たね」
吐き出しきったジブの一言に、トニーの顔が一気に赤く染まる。
「……」
今度は恥ずかしさで目を潤ませたトニーが鋭い視線をジブに浴びせるが、結局は両手に溜めた白濁液を前に動くに動けず居心地悪く座り込む姿に、ジブは思わずニヤけた。
「トニー。ごめん、口の中がいっぱいで。すぐ出さないと飲み込みそうだったから……それに、気持ちよかった、よな?」
それらしく言ってからジブはベッドから降り、洗面室にあるティッシュを取って戻り、トニーの手を拭う。
「お前、性的倒錯が過ぎるぞ」
手を拭われながら、眉間にしわを寄せたトニーが責めるような口調で言った。
「なんで?」
きょとんと子供のように目を丸くしながらジブが聞くと、トニーは少し声を荒げた。
「だから! ……顔にかけたり、見せつけるようにして手を出したりっ」
「顔にかけるのなんて、人気のプレイの一種だろ? 手に出したのだってトニーが飲むなって言ったからじゃんか」
「それは……。そうかもしれないが、本来的じゃないだろ。お前のは愉しむためだけのプレイであって、そんなの初めての時にするもんじゃ……」
恥ずかしさを誤魔化すように講釈を垂れるトニーは、しきりに視線を泳がせており瞬きも多い。ジブを責めようにも直接的な言葉を使えずに口ごもるトニーがジブにとっては妙に可愛くて、またじわじわと腹の底が熱くなる。
――こんな調子で説教されるのも悪くないけど、正直、続きがしたい。
むくりと欲望が浮き立つのを感じながら、ジブは唇の端を舐める。
「じゃあ、本来的なこと、しよう」
ジブは座り込んだトニーの下腹部をつついた。そのまま、ツツ、と指を下に滑らせる。
「は、何?!」
「穴に棒を挿れて精液を出す。本来的だろ」
体重をかけてトニーの肩を押す。驚きすぎて禄に抵抗しなかったトニーの背がたっぷりの綿の詰められたマットレスに沈んでいく。洗いたての清潔なリネンの香りがぽふんと空に舞う。
「……え、はぁっ?」
ついに耳まで赤くしたトニーは、はっとして、のしかかるジブを腕で押し返そうとするが、みっちりと筋肉のついたジブの体はそんな抵抗がないかのように微動だにしない。
「ジブ、そういう意味じゃなくて」
「これからは純然たる本来的な性行為で、愉しむための遊びじゃないから」
ジブは足でトニーを押さえつつ、ベッドのサイドチェストから出したローションを手に出した。たっぷりと指に乗せ、トニーの秘部に塗りつける。
「ジブ、待って、待てよ……!」
名前を読んですがってくるトニーは愛らしいが、ジブは手を止める気は毛頭なかった。
つぷ、と穴に指が入りトニーの体がビクリと動いて強張る。
「緊張しないで。そんなんじゃ入らないよ」
ジブの声に、トニーはふるふると首を振って、恥から一転、恐怖の面持ちでジブを見上げる。だが対面する赤毛の男は、にこりと微笑んで恋人の頭を撫でたーーやめないからな? とトニーに諦めを促している。
「トニー、力抜いて。治療魔法かける時はそう患者に言うだろ?」
落ち着かせるように語りかけ、茶色い髪を指に絡ませる。
「止めるという選択肢……」
「は、ないかな。首都騎士団に戻ったらいつ出来るかわかんないし」
こうなったらジブは考えを曲げない。
そして確かに、とトニーの腑に落ちることもあった。この視察が終わったら、集団生活に戻る。秘密裏に神秘周りの調査をしたいとも思っていたから、首都に帰ったらなかなか行為はできないだろう。ジブの気持ちも分からないでもない。
「……分かった」
トニーは覚悟を決めてジブの希望に応えた。
ーーまあ、なんとかなるだろう。
そんな楽観的な思いもあった。
「ありがと」
頷いたトニーを見て、ジブは頬が緩んだ。
ーーこういう、強情っぽいのに流されるところ、好きだなぁとジブは改めて思う。トニーは自ら選んだつもりだろうが、トニーが納得しやすい理由を選んで方向性を定めているのはジブだ。結局のところ、トニーはジブの編んだ檻の中で呼吸している依存性の高い関係ではあるがーー気づかないのはトニーばかりである。
「じゃあ、いいよね?」
ジブがくしゃりと髪を撫でると、トニーは少し目を伏せた。羞恥が滲む顔も、こうして大人しくいるのも、全部ひっくるめて愛おしかった。
ジブは早る気持ちを抑えながら、指をじわじわと押し入れる。力みを逃す小さなため息とともに強張りが解けて、指が中に入っていく。トニーは得も言われぬ顔をしていたが、治療に携わる経験からか意識してその部位を弛緩しているようだった。
ただーージブが中のしこりをなぞると肩がビクリと跳ねた。トニーの体に一気に緊張が走り、指に圧がかかった。
あからさまな反応にジブは口角を上げる。
「ここ? 気持ちいい?」
「違、うぁっ、ぁっ……」
声をかけながら、中を押すように擦るとトニーの口から嬌声が漏れた。指を押し返すしこりは小さいが、それが及ぼす快感は大きいようで、ごしごしと擦ったり、突くように押し上げたりすると、トニーは面白いように反応を返してきた。やや内股になった太ももがかすかに震えている。
「いいね。かわいい」
「んあぁっ! いやだ、ジブ。待って……!」
「待つ必要ないだろ。気持ち良くなっていいんだから」
「あっ、んあ、あっ!」
ついに背を仰け反らせながら喘ぎだしたトニーを見ていると、ジブの気持ちと昂りが下半身に集まるのを感じた。
長年、妄想の中で散々に彼を犯してきたが実際の反応はより艶っぽくてーー良い。
「指、増やすね」
悶えながら喘ぐトニーには聞こえていないかも知れないが、ジブは一応声をかけてから二本目を挿れる。
「ひ、……ぅうっ、ん」
声が漏れる度に中が収縮し、指を締め付ける。動かしづらくなるほどの圧力だったが、ジブは休まずに攻め続けた。
部屋には、粘度の高いローションがぐちゃぐちゃとかき回される音と、大きな快感に堪えきれずに零れるトニーの声が絶え間なく響く。折を見て増やした指はもう三本になり、ばらばらに動かしても受け止めるほど柔らかくなっていた。
「は、んっ、あ、ああっ」
腰を持ち上げるように強く何度も擦ると嬌声の間隔が短くなり、浮いたトニーの足先が伸びる。中の収縮も強く、限界が近いことが分かる。
「すごい体がビクついてる。イきそう?」
「あぅ、あ……!」
ジブの問いかけに、トニーは切なげに寄せた眉と潤んだ瞳でもって小さく頷く。それを確認して、ジブは指を引き抜いた。
「あ、え?」
突然、指の感触がなくなったことに驚いたトニーは、ぱちぱちと瞬きをした。
「指じゃないくてさ。……ね?」
膝立ちしたジブが手際よく陰茎にゴムを着ける。そして獣が舌なめずりするように笑ったのを見て、トニーはその後の展開を理解した。
「こういうことになるのは分かってただろ?」
トニーが口を開くよりも早く、ジブは声をかける。トニーの緑色の瞳がジブの顔と下半身を交互に見ている。本人の自覚はないだろうが、いつもはハーフネックの制服に隠された小さめの喉ぼとけがゆっくりと上下していて、それすらもジブには愛らしかった。
「いや、でも。ジブ……」
制止したいのか小さく抵抗するトニーだったが、ジブがその欲望を眼前に突きつけると、唇をはんでおろおろと視線を下げる。
ーーなんでこんなに心にくるんだろう。
欲望を当てつけられてたじたじになるトニーの姿を今晩何度も見た。何度も見たのに、その度に胸の奥が熱くなる。
物心ついた時から一緒にいたはずなのに、思い出の中にはいつもトニーがいるのに。
彼への執着は止まることを知らない。
正直、最後にトニーが幸せなら別の誰かと結ばれてもいいーーどんな立場でも俺がトニーの隣に居られれば。幸せそうな顔が見られるなら、それでもいいと思っていた。
でも今は。すべてが欲しい。
「いいよね」
ジブが手を置くと、ベッドがぎしりと音を立てる。後ろの穴に興奮したそれを当てがうと、トニーは大きく薄く息を吐いて目を閉じた。弛緩した体に向かってジブが腰を進めると、狭い輪をくぐって先端がぬくもりに包まれた。
「うう……」
トニーの顔は少し歪んだが、時間をかけて解したおかげか思ったよりすんなり受け入れられた。とは言っても、トニーが上手くいきみを逃がしていることも大いにあるのだが、たった一部分だけでもトニーと繋がれた実感がジブを昂揚させる。
その昂揚がより深い繋がりを求めるのは当然のことだった。
「ジブ。あの、ゆっくり」
「ごめん。無理」
「え、あっ……!」
ジブは思いのままに腰を進めて最奥まで突いた。
「……っ!」
トニーの背中が反り、足指は極限まで丸まる。自身を突いたジブの陰茎を中でぎゅうぎゅうと締め付けながら、体全体を小刻みに震えさせて耐える。
「ごめんね。でも解してたから痛くないでしょ。今度は一緒にイこうね」
「ひっ、う……あ、あ」
中の感触を堪能しながらジブがトニーを抱きしめると、トニーは耐え切れない快感から、もがき逃げるようにジブに縋りく。下から強く抱き留められ、ジブは思わずニヤけた。
「もう。かわいいな」
「いや……ジブ。待ってくれ、まだ動くなよ」
「無理だって。もう待てない」
「ひっ、ああっ!」
ばちゅばちゅと音を立てながら突くと、トニーは耐え切れず喘ぎ声を溢す。上からのしかかるようにすれば、トニーも逃げられず、ジブは思い切り奥まで攻めることができた。
カリで内壁を擦り、指で触っていた前立腺の辺りも叩くように刺激する。引き抜く時よりも太い部分で押し進めるときの方が快感が強いようで、甘い嬌声がジブの耳をくすぐった。
浅いところで動かして焦らしたり、奥をだけ攻めたり、味わうようにゆっくりと抜き差しながらトニーの反応を楽しむ。
「んん、んっ」
反り返った硬い形のままにトニーの臍の裏を突くと、喉を絞ったトニーのくぐもった声がした。部屋には二人の肌の重なる音が休むことなく響いている。
「っは、トニー。……めっちゃ感じてるじゃん」
「ぁあッ、ぁうっ」
次第にトニーの声に余裕がなくなり、中が強く収縮を始めた。ジブも早打ちする鼓動に合わせて打ちつける腰を強めると、トニーがジブの腕を掴んだ。
「いやだ、やだ……!」
「いやじゃないだろ? 中、すごい締め付けてくる、イキしそう?」
「う、ああっ!」
ぱんぱんと音を立てて揺さぶると、中の締め付けがより強くなる。トニーの体のすべてに力が入り、ジブを掴む指先が白くなっていく。
「あっ、ああっ、んぅ、う……!」
抉るように突く。肌のぶつかる音の間隔が短くなり、二人は息を切らしながら互いを求めあった。
「んあっ、あ、ああ! ジブ、だめだっ」
「何がだめなんだよ、たくさん……イケばいいじゃん。明日も休みなんだからさ」
「ちが、う。んっ! んんっ」
ジブは身をかがめトニーの口を塞いだ。その間もジブは腰の動きは止めず、沸き上がる欲望のままに中を犯す。
「んっ、ふっ、んぁ……」
唇を重ね、舌で絡めると、鼻息交じりの嬌声が漏れるトニーの中が収縮する。
腰の奥からじわじわと上り詰めた快感が、ジブに射精しろと促す。これ以上ないほどに勃ち上がり、竿もカリもぱんぱんに膨らんでいる。動く度にトニーの中はうねって反応し、全方向からジブの陰茎を絞って快感を与えた。
「……んっ、俺も、イキそうっ」
「んっ、あ!」
ジブは寝そべるトニーの肩に腕を回し、体を密着させた。射精したい一心の動きは遠慮を知らない。亀頭ギリギリまで引き抜き、根元まで一気に挿れる。
「ああっ、も、うっ、だ……めっ、ジブ……!」
「うん、俺も、俺もイクから……!」
トニーはジブにしがみつきながら、時折飛びそうになる意識を何とか保っていた。中をかき回されたり、最奥を突かれたり、足先から頭までを電流が走るような快感に満たされる。
「ひっ、うう!」
絶頂を促されるように前立腺をカリで押しつぶされるように擦られ、トニーの体は無意識にびくびくと跳ねた。それは秘部も同じで、中にいるジブも大きく脈動した。
「あ、う。トニー、もう出っ……!」
言葉の途中でジブの体が硬直し、トニーを強く抱きしめた。それと同時に、硬くなった亀頭に抉るように最奥まで突かれトニーも体を痙攣させた。
「いっ、あっ、あああっ!」
トニーの目の前にはチカチカと光が煌めき、指先まで甘くしびれるような強烈な性感が全身を覆う。無意識にガクガクと体が震え、ジブの射精を悦ぶように中がうねる。
うねりを一身に感じながらジブも昂った欲望を流し込む。抱き締めたトニーの体の震えなど気にできる余裕もなく、ジブは先端を最奥に擦りつけて長い射精を味わう。歯を食いしばらないと声が漏れてしまいそうなくらい、気持ちよく、性感がジブを満たしていった。
長い射精を終えて、ジブは止まっていた呼吸を取り戻す。
汗ばんだ体を離しながらゴムを外したジブの目に飛び込んできたのは、とろんとした虚ろな目をして、荒い息を繰り返すトニーの姿だった。
「トニー? おーい」
強い快感に意識にほとんどを奪われているのか、くたりと力なく横たわるトニーは呼びかけに反応しない。
「最初だし、手加減したんだけどな」
ジブは苦笑いしながら、トニーの頬に触れる。汗ばんでぺたりとした頬を撫でると、トニーの肩がぴくりと上がったが、それは単なる反射であって受け入れも拒否でもない。
終わった後は互いに枕を抱えて甘い恋人の時間を過ごしたかったが、これはこれで悪くない。ジブは小さくため息をついてトニーの頬を少し強めに叩く。
「ほら、トニー。シャワー浴びよ。汗だくだよ」
ぺちぺちと叩かれたトニーは、しばらくぼんやりとしていたが、やがてその瞳にジブを捉えた。
薄い胸が上下し、ゆっくりと瞬きをする。飛びかけた意識が戻ってきたようで、トニーは軽く咳払いをしてから口を開いた。
「わかった……」
掠れた声で答え、のろのろと体を起こす。手伝おうかジブが手を出したが、トニーは一人で立ち上がって若干ふらつきながらも洗面室に向かった。
ーー良かった。終わった後に一人で歩けるくらいなら、次はもっと激しくしても問題ないな。
ジブは立ち上がって、洗面室に入っていったトニーを追いかけた。
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