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3章 戦士の心は
【ジブ】今夜は俺だけのぬくもりを抱いて<祝勝会後>
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「トニー」
浮かれた肩を誰かが叩いた。そこに立っていたのは、ジブだった。
トニーは固まった。
「これは……その、お礼で貰ったものだ。決して別に今から飲もうしているわけじゃ……」
隠すように酒瓶を胸に抱くトニー。それを見下ろすジブの目は冷ややかだった。じりじりとトニーが後退りすると、ジブは大きくため息をついて酒瓶を奪う。
あぁ、と情けない声を出したトニーをジブは笑った。
「いいよ、別に。俺の部屋でなら飲んでも。祝宴なんだから。あ、この前トニーが好きな酒が市場にあったから買っておいたんだ。せっかくだし開けてもいいよ」
そう言うとトニーの顔色が明るくなった。実際はかすかに目を大きく開き、こくこくと頷くだけだったが彼の背後にははっきりと『嬉しい』と書いてある。
「じゃあ決まり。早く行こう!」
ジブはトニーの手を引いて部屋に急いだ。奪った酒が瓶の中でちゃぷちゃぷ音を立ててた。
「あんまり急かすなよ」
はしゃぐ弟をたしなめる兄の気分なのだろう、大型犬に引っ張られた飼い主のように歩調を乱しながらも、トニーの声は柔らかかった。
「トニーだって、早く酒飲みたいだろ?」
ジブが振り向くと、トニーは眉を少し下げた。声は出していないが、小さく動いた口は「やれやれ」と呟いている。酔いの少し回った唇はほんのり色づき、艶やかだ。薄いながらもふっくらとして、なめらかそうでーー。
そこでジブは前を向き直った。早く部屋に行くべきだ。そうすれば二人きりになれるのだから。
ジブは乾いた唇の端を舐めた。
トニーがグラスを傾ける。
もう何杯目か、ジブは数えていなかった。
ゆるく開いた唇、上気した頬、重そうな目蓋から見える緑色の瞳。にじみ出る多幸感を伴ったトニーの顔はいつもより幼く見える。
そしてそれをーー自分しか見ていない。
この状況にジブは心が躍った。
「これ、どうぞ」
ジブはトニーには際限なく酒を注いで、自分は水を飲んでいる。酔ってしまってはトニーの姿を覚えていられない。だからジブは酒はほとんど飲まない。
「ほら、トニー。これも美味いよ」
ん、と短い返事が聞こえた。中身は度数が強いだけの安酒だ。だが酔いの回ったトニーの舌は味わう暇もなく、すぐさま喉に酒を注ぎ込む。
こんな飲み方で翌日に響かないのだから、トニーは一般的に酒に強いと言えるだろう。それでもジブは彼の特徴を知っていた。
トニーは酒を注がれれば何杯でも飲むが、あるところで寝てしまい、朝まで起きない。
「トニー。さすがに水、飲もう。あとは寝る準備して」
「んん……」
眠そうな声を漏らすのに、トニーの手は正確に注いだコップを掴んで水を飲んだ。そのまま半分眠りかけているトニーを誘導して寝支度させる。こくり、こくりと舟を漕ぎ出すつむじを見るのもトニーと酒を飲む楽しみの一つだ。
ジブは肩車してトニーを移動させ、ベッドに寝かせた。二人部屋の相方は、今晩は別部屋に泊まると言っていた。規律の厳しい騎士団でもそこは暗黙的に融通が利く。
眠りに入るトニーの健やかな吐息。ジブの目には膨らんではし萎む薄布団さえも、今晩は特別なものに見えた。
ジブがベッドの際に腰掛けると、振動からかトニーがうっすらと目を開けた。
「ジブ……寝ないのか?」
「もう寝るよ。俺も眠いし」
はっきりと告げるジブの声には眠そうな気配は一切ないが、トニーは気付かない。瞬きとともに頷いて、自身の手をジブの手に重ねた。
「女神の導きに……良い夢、を」
それは修道士だけが使う、眠りの祈りだ。
「うん、おやすみ」
同じ祈りを返すのが習わしだが、ジブにとって修道士としての矜持はない。ただ昔のように挨拶をしてくれるのが嬉しくて、ジブはトニーのゆっくりとまぶたが落ちていくのを見ていた。
ジブにとって修道院は、トニーと出会った場所でしかない。
少年のジブにとってーー大切なのは場所ではなく人。中でも、トニーは憧れの存在だった。孤児の中で唯一、治療魔法の才に恵まれ、甘えれば不器用ながら愛情を返してくれる。
そんな彼の隣に立ちたい一心で、ジブはとにかく努力した。
憧れが変わったのは、トニーの弱さを見た時。
懲罰室。泣いて震える肩。
ーーお前は強くなれ。
抱きしめられ、耳元で聞こえた涙声。
その姿に、ジブは体の芯が熱くなる感覚を覚えた。
理由は解らない。けれど初めて彼が泣く瞬間を見て、ぞわぞわとした黒い何かが心に植わって芽吹いたのをジブははっきりと感じたのだ。
そこから、ジブの執着は始まっている。ジブ自身も歪んだ思いであるとは理解してるが、好きで、好きで、好きで、たまらなくなった。
「んん……」
ベッドに横たわるトニーが寝返りを打った。仰向けになり、右腕を額に乗せている。ジブは馬乗りになってゆっくりとトニーの体を撫でた。反応はない。熟睡しているようだった。
「トニー。俺、強くなったよ。体も大きくなった。一人で戦わなくていい。俺に頼っていいんだよ」
優しい声はどこにも届かず、泡のように消えていくだけだった。
あの日からトニーの泣き顔は見ていない。翌日から普段通り、頼れる兄に戻り、それは今でも続いている。
ただーー酒を飲めるようになってからはトニーの特性を知った。だから他人とは飲ませなかった。寝ている無防備なトニーを誰かに見られるのは嫌だ。
酒で寝入っているトニーは本当に起きない。体を触っても、抱き寄せて匂いを嗅いでも……彼の目の前でジブが自身を慰めても。
もちろん、騎士団に入ってからはしていない。だからこそ今回の機会を逃したくなかった。
ジブは服の上から乳首を擦った。親指の腹で押しつぶすように執拗に擦ると、トニーの足がピクリと揺れる。刺激に反応して固くなった突起を指で掻くと、はあと震える吐息がジブの耳に届いた。その反応に、ジブも興奮を隠さず息を吐いた。湿らすようにじっくりと押したり、つまんだり緩急を付けて弄ぶ。
「は……うう」
トニーの眉間に皺が寄ったが、手を離せばすぐさま表情は和らいだ。トニーの股間に触ると、緩いながらも芯を持ち始めていた。ジブは舌なめずりしてトニーのズボンのベルトを緩め陰茎を優しく引っ張り出した。柔らかく上下に扱くと、トニーの足にびくりと力が入る。
ジブは手のひらを舐め唾液を全体にまんべんなくつけた。ぬめった指をカリ首に絡める。ちゅくちゅくと音を立てて亀頭を攻めたり、裏筋に親指の腹を擦り当てて執拗に攻めると、トニーのそれは完全に勃ちあがった
「う、あ……」
絞り足すような声が聞こえるとジブはさらに興奮した。
足元に移動し、唾液と先走りで光るそれを口に含む。
音を立てないように吸いながら顔を動かすと、あっと小さな声が聞こえた。無意識に逃げる腰を掴んで亀頭を吸い上げると膝がびくりと浮いて、布ずれの音が響いた。
「はは。気持ちよさそう」
ジブは改めて陰茎を口いっぱいにほおばって、舌を絡めながら顔を動かした。あ、あ、と断続的な声がして、それがさらに興奮を加速させた。一度腰が大きく震えたので口を離した。
「トニー、いっしょにイこう」
ジブはベルトを緩めて自分のものを取り出した。そしてトニーの服を薄い腹が見えるまでずらした。
「う……」
両手でそれぞれの陰茎を握って手を動かす。にゅちにゅちと独特の粘りのある音が耳に届いて、やたらにいやらしく感じた。興奮で頭がくらくらとしていたが、刺激を受けてかすかに顔を歪ませるトニーの表情をしっかりと見ていた。
「あ、……ん、ん」
トニーの腰がびくびくと断続的に跳ねてきて、限界が近いことを悟った。ジブは先端をトニーの太もも擦りつけながら、速度を速めていく。
「う……出る……」
腰にまとわりついた甘い痺れをジブは吐き出した。トニーの陰茎もびくびくと大きく震えて、ジブの精液とともに自らの腹を汚していった。ジブは二人が出した精液をじっくりと眺めて満足気に笑いながら息を整えた。
サイドテーブルに置いたちり紙でトニーの腹と陰茎をぬぐってやった。まだ快感が収まりきっていないのか、拭うたびに小さく反応が返ってきて愛らしい。
ジブは一度大きく息を吐いてから、トニーの服を元通りに戻した。まだ芯のあるそれをしっかりと下着の中に入れて、ズボンを履かせる。ジブ自身も服の乱れを直して、ベッドに寝転ぶ。
横たわるトニーは何も知らないで、すうすうと寝息を立てている。
ーートニー。好きだよ。ずっとずっと前から……。
言葉に出したい思いをしまい込み、ジブはトニーを抱き寄せる。もともと一人用のベッドなのでかなり狭かったが、それはジブが密着できる理由にしかならなかった。
浮かれた肩を誰かが叩いた。そこに立っていたのは、ジブだった。
トニーは固まった。
「これは……その、お礼で貰ったものだ。決して別に今から飲もうしているわけじゃ……」
隠すように酒瓶を胸に抱くトニー。それを見下ろすジブの目は冷ややかだった。じりじりとトニーが後退りすると、ジブは大きくため息をついて酒瓶を奪う。
あぁ、と情けない声を出したトニーをジブは笑った。
「いいよ、別に。俺の部屋でなら飲んでも。祝宴なんだから。あ、この前トニーが好きな酒が市場にあったから買っておいたんだ。せっかくだし開けてもいいよ」
そう言うとトニーの顔色が明るくなった。実際はかすかに目を大きく開き、こくこくと頷くだけだったが彼の背後にははっきりと『嬉しい』と書いてある。
「じゃあ決まり。早く行こう!」
ジブはトニーの手を引いて部屋に急いだ。奪った酒が瓶の中でちゃぷちゃぷ音を立ててた。
「あんまり急かすなよ」
はしゃぐ弟をたしなめる兄の気分なのだろう、大型犬に引っ張られた飼い主のように歩調を乱しながらも、トニーの声は柔らかかった。
「トニーだって、早く酒飲みたいだろ?」
ジブが振り向くと、トニーは眉を少し下げた。声は出していないが、小さく動いた口は「やれやれ」と呟いている。酔いの少し回った唇はほんのり色づき、艶やかだ。薄いながらもふっくらとして、なめらかそうでーー。
そこでジブは前を向き直った。早く部屋に行くべきだ。そうすれば二人きりになれるのだから。
ジブは乾いた唇の端を舐めた。
トニーがグラスを傾ける。
もう何杯目か、ジブは数えていなかった。
ゆるく開いた唇、上気した頬、重そうな目蓋から見える緑色の瞳。にじみ出る多幸感を伴ったトニーの顔はいつもより幼く見える。
そしてそれをーー自分しか見ていない。
この状況にジブは心が躍った。
「これ、どうぞ」
ジブはトニーには際限なく酒を注いで、自分は水を飲んでいる。酔ってしまってはトニーの姿を覚えていられない。だからジブは酒はほとんど飲まない。
「ほら、トニー。これも美味いよ」
ん、と短い返事が聞こえた。中身は度数が強いだけの安酒だ。だが酔いの回ったトニーの舌は味わう暇もなく、すぐさま喉に酒を注ぎ込む。
こんな飲み方で翌日に響かないのだから、トニーは一般的に酒に強いと言えるだろう。それでもジブは彼の特徴を知っていた。
トニーは酒を注がれれば何杯でも飲むが、あるところで寝てしまい、朝まで起きない。
「トニー。さすがに水、飲もう。あとは寝る準備して」
「んん……」
眠そうな声を漏らすのに、トニーの手は正確に注いだコップを掴んで水を飲んだ。そのまま半分眠りかけているトニーを誘導して寝支度させる。こくり、こくりと舟を漕ぎ出すつむじを見るのもトニーと酒を飲む楽しみの一つだ。
ジブは肩車してトニーを移動させ、ベッドに寝かせた。二人部屋の相方は、今晩は別部屋に泊まると言っていた。規律の厳しい騎士団でもそこは暗黙的に融通が利く。
眠りに入るトニーの健やかな吐息。ジブの目には膨らんではし萎む薄布団さえも、今晩は特別なものに見えた。
ジブがベッドの際に腰掛けると、振動からかトニーがうっすらと目を開けた。
「ジブ……寝ないのか?」
「もう寝るよ。俺も眠いし」
はっきりと告げるジブの声には眠そうな気配は一切ないが、トニーは気付かない。瞬きとともに頷いて、自身の手をジブの手に重ねた。
「女神の導きに……良い夢、を」
それは修道士だけが使う、眠りの祈りだ。
「うん、おやすみ」
同じ祈りを返すのが習わしだが、ジブにとって修道士としての矜持はない。ただ昔のように挨拶をしてくれるのが嬉しくて、ジブはトニーのゆっくりとまぶたが落ちていくのを見ていた。
ジブにとって修道院は、トニーと出会った場所でしかない。
少年のジブにとってーー大切なのは場所ではなく人。中でも、トニーは憧れの存在だった。孤児の中で唯一、治療魔法の才に恵まれ、甘えれば不器用ながら愛情を返してくれる。
そんな彼の隣に立ちたい一心で、ジブはとにかく努力した。
憧れが変わったのは、トニーの弱さを見た時。
懲罰室。泣いて震える肩。
ーーお前は強くなれ。
抱きしめられ、耳元で聞こえた涙声。
その姿に、ジブは体の芯が熱くなる感覚を覚えた。
理由は解らない。けれど初めて彼が泣く瞬間を見て、ぞわぞわとした黒い何かが心に植わって芽吹いたのをジブははっきりと感じたのだ。
そこから、ジブの執着は始まっている。ジブ自身も歪んだ思いであるとは理解してるが、好きで、好きで、好きで、たまらなくなった。
「んん……」
ベッドに横たわるトニーが寝返りを打った。仰向けになり、右腕を額に乗せている。ジブは馬乗りになってゆっくりとトニーの体を撫でた。反応はない。熟睡しているようだった。
「トニー。俺、強くなったよ。体も大きくなった。一人で戦わなくていい。俺に頼っていいんだよ」
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酒で寝入っているトニーは本当に起きない。体を触っても、抱き寄せて匂いを嗅いでも……彼の目の前でジブが自身を慰めても。
もちろん、騎士団に入ってからはしていない。だからこそ今回の機会を逃したくなかった。
ジブは服の上から乳首を擦った。親指の腹で押しつぶすように執拗に擦ると、トニーの足がピクリと揺れる。刺激に反応して固くなった突起を指で掻くと、はあと震える吐息がジブの耳に届いた。その反応に、ジブも興奮を隠さず息を吐いた。湿らすようにじっくりと押したり、つまんだり緩急を付けて弄ぶ。
「は……うう」
トニーの眉間に皺が寄ったが、手を離せばすぐさま表情は和らいだ。トニーの股間に触ると、緩いながらも芯を持ち始めていた。ジブは舌なめずりしてトニーのズボンのベルトを緩め陰茎を優しく引っ張り出した。柔らかく上下に扱くと、トニーの足にびくりと力が入る。
ジブは手のひらを舐め唾液を全体にまんべんなくつけた。ぬめった指をカリ首に絡める。ちゅくちゅくと音を立てて亀頭を攻めたり、裏筋に親指の腹を擦り当てて執拗に攻めると、トニーのそれは完全に勃ちあがった
「う、あ……」
絞り足すような声が聞こえるとジブはさらに興奮した。
足元に移動し、唾液と先走りで光るそれを口に含む。
音を立てないように吸いながら顔を動かすと、あっと小さな声が聞こえた。無意識に逃げる腰を掴んで亀頭を吸い上げると膝がびくりと浮いて、布ずれの音が響いた。
「はは。気持ちよさそう」
ジブは改めて陰茎を口いっぱいにほおばって、舌を絡めながら顔を動かした。あ、あ、と断続的な声がして、それがさらに興奮を加速させた。一度腰が大きく震えたので口を離した。
「トニー、いっしょにイこう」
ジブはベルトを緩めて自分のものを取り出した。そしてトニーの服を薄い腹が見えるまでずらした。
「う……」
両手でそれぞれの陰茎を握って手を動かす。にゅちにゅちと独特の粘りのある音が耳に届いて、やたらにいやらしく感じた。興奮で頭がくらくらとしていたが、刺激を受けてかすかに顔を歪ませるトニーの表情をしっかりと見ていた。
「あ、……ん、ん」
トニーの腰がびくびくと断続的に跳ねてきて、限界が近いことを悟った。ジブは先端をトニーの太もも擦りつけながら、速度を速めていく。
「う……出る……」
腰にまとわりついた甘い痺れをジブは吐き出した。トニーの陰茎もびくびくと大きく震えて、ジブの精液とともに自らの腹を汚していった。ジブは二人が出した精液をじっくりと眺めて満足気に笑いながら息を整えた。
サイドテーブルに置いたちり紙でトニーの腹と陰茎をぬぐってやった。まだ快感が収まりきっていないのか、拭うたびに小さく反応が返ってきて愛らしい。
ジブは一度大きく息を吐いてから、トニーの服を元通りに戻した。まだ芯のあるそれをしっかりと下着の中に入れて、ズボンを履かせる。ジブ自身も服の乱れを直して、ベッドに寝転ぶ。
横たわるトニーは何も知らないで、すうすうと寝息を立てている。
ーートニー。好きだよ。ずっとずっと前から……。
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