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Karte5: 提携しましょう!
第23話 ハンスさんからの手紙
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それは10月も終わりに差し掛かったとある午後のことです。
「――親愛なるソフィア・ローレン殿。秋も深まり夜寒を覚えるこの頃。季節柄、体調を崩されていないか気に掛けております……」
バートさんがセント・ジョーズ・ワートで預かってきてくれた手紙の差出人はハンスさん。超絶丁寧な文体に最初は戸惑ったけど、慣れると別に読み難いとは感じないかな。
「えっと、今回は――」
――今回はソフィア殿にお願いがありペンを執った次第です。
実は麻酔薬や痛み止めなどを仕入れていた薬師がこの度廃業することになりました。突然このような話をして申し訳ありません。しかし、薬師が調薬する薬は私たち医師にとっても必要不可欠なものです……
「……つきましては貴女との提携を前提に交渉の場を設けたいと考え、急ではありますがお手紙を差し上げた次第です……え?」
どういうこと? ウチと業務提携?
「これってパートナーシップ契約を結ぶってこと、だよね?」
手紙を読む限り、ハンスさんがウチから薬を仕入れたいと思っているのは間違いない。医師は基本的に自ら調薬をしないから薬師と契約して薬を仕入れるのはよくある話です。師匠の薬局も数件の診療所と提携しています。それにしてもなぜウチなんだろう。
確かに私は薬師だけど医師と提携できるほどの経験値は持ち合わせてはいません。なにより、普通に考えればセント・ジョーズ・ワートにある薬局と組んだ方が都合は良いはず。考えれば考えるほど頭の上に疑問符が増えていきます。
「これは私だけで決めることじゃないよね」
本当は師匠と相談するべきなのだろうけど、王都までは往復するだけで1カ月近く掛かるし、手紙もまた然り。
「一先ずこれは後回しにして、二人が戻ってくるのを待ってようかな」
この件はエドたちと決めよう。二人は薬草採集に出ているけど時間的にそろそろ帰ってくるはず。いつものようにお茶しながら話そうかな。
エドたちが戻ってきたのはそれからすぐのことです。採ってきてくれた薬草の鑑別は後回しにして二人に紅茶を振舞い、私もレモンティーを飲みながらハンスさんからの手紙ついて意見を求めました。
「ウチを提携先に選んでもらえたのは嬉しいです。でも『なんでウチなんだろう』って」
「それはハンスさんしか分からないだろ」
「そうかもしれないけど、普通ならベテランを選ぶでしょ?」
「ソフィー殿の意見に同感だ。医師が使う薬は麻酔薬など俗に精密薬と言われる類のものだ。経験の浅い薬師が作ったものよりも経験豊かな薬師が作った薬の方がより安心して使える」
「経験の浅い薬師、か……」
「す、すまん! 別にソフィー殿の薬が信頼できないとかではなくてだな――」
「わかってますよ。正直、私だって新人とベテラン、どちらの薬を選ぶか問われれば恐らく後者を選択します」
いくら技術のある新人でも経験値の差を埋めることは出来ません。他人の命を預かる仕事である以上、経験がものを言うのは当然だよね。
「――これはアタシの経験談なのだが」
「なんですか?」
「薬師の中にはアタシがしていたような“流し”の採集者から薬草を買い叩く者もいるんだ。質が悪いやら量が少ないやらと難癖をつけてな」
「そんな人が……」
「つまりソフィーが経験の少ない薬師だからって薬を買い叩こうとしているってことですか」
「そんなっ⁉」
「あくまで可能性の一つだ。本当にソフィー殿の腕を見込んでいるかもしれないし、真意を探るためにも会って話を聞いてみてはどうだ?」
アリサさんの意見には一理あると思います。ハンスさんを疑う訳じゃないけど直接会って話を聞きたい。そう感じました。
「私、セント・ジョーズ・ワートに行ってみます。エド、一緒に来てくれる?」
「え、俺? アリサさんじゃなくて?」
「アリサさんに護衛はお願いできないよ」
「そういうことかよ。まぁ、盗賊が出ないとは限らないからな」
「だからしっかりエスコートしてね? アリサさん、留守中のことはお願いしても大丈夫ですか」
「心配ない。ソフィー殿もしっかり話し合って決めてくるのだぞ」
「分かってますよ。少なくとも、ウチが損するような取引はしてきませんよ」
そう。目先の利益に負け、最終的に損をするなどあってはダメ。不利な取引にならないことが絶対条件だよね。
「――親愛なるソフィア・ローレン殿。秋も深まり夜寒を覚えるこの頃。季節柄、体調を崩されていないか気に掛けております……」
バートさんがセント・ジョーズ・ワートで預かってきてくれた手紙の差出人はハンスさん。超絶丁寧な文体に最初は戸惑ったけど、慣れると別に読み難いとは感じないかな。
「えっと、今回は――」
――今回はソフィア殿にお願いがありペンを執った次第です。
実は麻酔薬や痛み止めなどを仕入れていた薬師がこの度廃業することになりました。突然このような話をして申し訳ありません。しかし、薬師が調薬する薬は私たち医師にとっても必要不可欠なものです……
「……つきましては貴女との提携を前提に交渉の場を設けたいと考え、急ではありますがお手紙を差し上げた次第です……え?」
どういうこと? ウチと業務提携?
「これってパートナーシップ契約を結ぶってこと、だよね?」
手紙を読む限り、ハンスさんがウチから薬を仕入れたいと思っているのは間違いない。医師は基本的に自ら調薬をしないから薬師と契約して薬を仕入れるのはよくある話です。師匠の薬局も数件の診療所と提携しています。それにしてもなぜウチなんだろう。
確かに私は薬師だけど医師と提携できるほどの経験値は持ち合わせてはいません。なにより、普通に考えればセント・ジョーズ・ワートにある薬局と組んだ方が都合は良いはず。考えれば考えるほど頭の上に疑問符が増えていきます。
「これは私だけで決めることじゃないよね」
本当は師匠と相談するべきなのだろうけど、王都までは往復するだけで1カ月近く掛かるし、手紙もまた然り。
「一先ずこれは後回しにして、二人が戻ってくるのを待ってようかな」
この件はエドたちと決めよう。二人は薬草採集に出ているけど時間的にそろそろ帰ってくるはず。いつものようにお茶しながら話そうかな。
エドたちが戻ってきたのはそれからすぐのことです。採ってきてくれた薬草の鑑別は後回しにして二人に紅茶を振舞い、私もレモンティーを飲みながらハンスさんからの手紙ついて意見を求めました。
「ウチを提携先に選んでもらえたのは嬉しいです。でも『なんでウチなんだろう』って」
「それはハンスさんしか分からないだろ」
「そうかもしれないけど、普通ならベテランを選ぶでしょ?」
「ソフィー殿の意見に同感だ。医師が使う薬は麻酔薬など俗に精密薬と言われる類のものだ。経験の浅い薬師が作ったものよりも経験豊かな薬師が作った薬の方がより安心して使える」
「経験の浅い薬師、か……」
「す、すまん! 別にソフィー殿の薬が信頼できないとかではなくてだな――」
「わかってますよ。正直、私だって新人とベテラン、どちらの薬を選ぶか問われれば恐らく後者を選択します」
いくら技術のある新人でも経験値の差を埋めることは出来ません。他人の命を預かる仕事である以上、経験がものを言うのは当然だよね。
「――これはアタシの経験談なのだが」
「なんですか?」
「薬師の中にはアタシがしていたような“流し”の採集者から薬草を買い叩く者もいるんだ。質が悪いやら量が少ないやらと難癖をつけてな」
「そんな人が……」
「つまりソフィーが経験の少ない薬師だからって薬を買い叩こうとしているってことですか」
「そんなっ⁉」
「あくまで可能性の一つだ。本当にソフィー殿の腕を見込んでいるかもしれないし、真意を探るためにも会って話を聞いてみてはどうだ?」
アリサさんの意見には一理あると思います。ハンスさんを疑う訳じゃないけど直接会って話を聞きたい。そう感じました。
「私、セント・ジョーズ・ワートに行ってみます。エド、一緒に来てくれる?」
「え、俺? アリサさんじゃなくて?」
「アリサさんに護衛はお願いできないよ」
「そういうことかよ。まぁ、盗賊が出ないとは限らないからな」
「だからしっかりエスコートしてね? アリサさん、留守中のことはお願いしても大丈夫ですか」
「心配ない。ソフィー殿もしっかり話し合って決めてくるのだぞ」
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