22 / 52
Karte5: 提携しましょう!
第23話 ハンスさんからの手紙
しおりを挟む
それは10月も終わりに差し掛かったとある午後のことです。
「――親愛なるソフィア・ローレン殿。秋も深まり夜寒を覚えるこの頃。季節柄、体調を崩されていないか気に掛けております……」
バートさんがセント・ジョーズ・ワートで預かってきてくれた手紙の差出人はハンスさん。超絶丁寧な文体に最初は戸惑ったけど、慣れると別に読み難いとは感じないかな。
「えっと、今回は――」
――今回はソフィア殿にお願いがありペンを執った次第です。
実は麻酔薬や痛み止めなどを仕入れていた薬師がこの度廃業することになりました。突然このような話をして申し訳ありません。しかし、薬師が調薬する薬は私たち医師にとっても必要不可欠なものです……
「……つきましては貴女との提携を前提に交渉の場を設けたいと考え、急ではありますがお手紙を差し上げた次第です……え?」
どういうこと? ウチと業務提携?
「これってパートナーシップ契約を結ぶってこと、だよね?」
手紙を読む限り、ハンスさんがウチから薬を仕入れたいと思っているのは間違いない。医師は基本的に自ら調薬をしないから薬師と契約して薬を仕入れるのはよくある話です。師匠の薬局も数件の診療所と提携しています。それにしてもなぜウチなんだろう。
確かに私は薬師だけど医師と提携できるほどの経験値は持ち合わせてはいません。なにより、普通に考えればセント・ジョーズ・ワートにある薬局と組んだ方が都合は良いはず。考えれば考えるほど頭の上に疑問符が増えていきます。
「これは私だけで決めることじゃないよね」
本当は師匠と相談するべきなのだろうけど、王都までは往復するだけで1カ月近く掛かるし、手紙もまた然り。
「一先ずこれは後回しにして、二人が戻ってくるのを待ってようかな」
この件はエドたちと決めよう。二人は薬草採集に出ているけど時間的にそろそろ帰ってくるはず。いつものようにお茶しながら話そうかな。
エドたちが戻ってきたのはそれからすぐのことです。採ってきてくれた薬草の鑑別は後回しにして二人に紅茶を振舞い、私もレモンティーを飲みながらハンスさんからの手紙ついて意見を求めました。
「ウチを提携先に選んでもらえたのは嬉しいです。でも『なんでウチなんだろう』って」
「それはハンスさんしか分からないだろ」
「そうかもしれないけど、普通ならベテランを選ぶでしょ?」
「ソフィー殿の意見に同感だ。医師が使う薬は麻酔薬など俗に精密薬と言われる類のものだ。経験の浅い薬師が作ったものよりも経験豊かな薬師が作った薬の方がより安心して使える」
「経験の浅い薬師、か……」
「す、すまん! 別にソフィー殿の薬が信頼できないとかではなくてだな――」
「わかってますよ。正直、私だって新人とベテラン、どちらの薬を選ぶか問われれば恐らく後者を選択します」
いくら技術のある新人でも経験値の差を埋めることは出来ません。他人の命を預かる仕事である以上、経験がものを言うのは当然だよね。
「――これはアタシの経験談なのだが」
「なんですか?」
「薬師の中にはアタシがしていたような“流し”の採集者から薬草を買い叩く者もいるんだ。質が悪いやら量が少ないやらと難癖をつけてな」
「そんな人が……」
「つまりソフィーが経験の少ない薬師だからって薬を買い叩こうとしているってことですか」
「そんなっ⁉」
「あくまで可能性の一つだ。本当にソフィー殿の腕を見込んでいるかもしれないし、真意を探るためにも会って話を聞いてみてはどうだ?」
アリサさんの意見には一理あると思います。ハンスさんを疑う訳じゃないけど直接会って話を聞きたい。そう感じました。
「私、セント・ジョーズ・ワートに行ってみます。エド、一緒に来てくれる?」
「え、俺? アリサさんじゃなくて?」
「アリサさんに護衛はお願いできないよ」
「そういうことかよ。まぁ、盗賊が出ないとは限らないからな」
「だからしっかりエスコートしてね? アリサさん、留守中のことはお願いしても大丈夫ですか」
「心配ない。ソフィー殿もしっかり話し合って決めてくるのだぞ」
「分かってますよ。少なくとも、ウチが損するような取引はしてきませんよ」
そう。目先の利益に負け、最終的に損をするなどあってはダメ。不利な取引にならないことが絶対条件だよね。
「――親愛なるソフィア・ローレン殿。秋も深まり夜寒を覚えるこの頃。季節柄、体調を崩されていないか気に掛けております……」
バートさんがセント・ジョーズ・ワートで預かってきてくれた手紙の差出人はハンスさん。超絶丁寧な文体に最初は戸惑ったけど、慣れると別に読み難いとは感じないかな。
「えっと、今回は――」
――今回はソフィア殿にお願いがありペンを執った次第です。
実は麻酔薬や痛み止めなどを仕入れていた薬師がこの度廃業することになりました。突然このような話をして申し訳ありません。しかし、薬師が調薬する薬は私たち医師にとっても必要不可欠なものです……
「……つきましては貴女との提携を前提に交渉の場を設けたいと考え、急ではありますがお手紙を差し上げた次第です……え?」
どういうこと? ウチと業務提携?
「これってパートナーシップ契約を結ぶってこと、だよね?」
手紙を読む限り、ハンスさんがウチから薬を仕入れたいと思っているのは間違いない。医師は基本的に自ら調薬をしないから薬師と契約して薬を仕入れるのはよくある話です。師匠の薬局も数件の診療所と提携しています。それにしてもなぜウチなんだろう。
確かに私は薬師だけど医師と提携できるほどの経験値は持ち合わせてはいません。なにより、普通に考えればセント・ジョーズ・ワートにある薬局と組んだ方が都合は良いはず。考えれば考えるほど頭の上に疑問符が増えていきます。
「これは私だけで決めることじゃないよね」
本当は師匠と相談するべきなのだろうけど、王都までは往復するだけで1カ月近く掛かるし、手紙もまた然り。
「一先ずこれは後回しにして、二人が戻ってくるのを待ってようかな」
この件はエドたちと決めよう。二人は薬草採集に出ているけど時間的にそろそろ帰ってくるはず。いつものようにお茶しながら話そうかな。
エドたちが戻ってきたのはそれからすぐのことです。採ってきてくれた薬草の鑑別は後回しにして二人に紅茶を振舞い、私もレモンティーを飲みながらハンスさんからの手紙ついて意見を求めました。
「ウチを提携先に選んでもらえたのは嬉しいです。でも『なんでウチなんだろう』って」
「それはハンスさんしか分からないだろ」
「そうかもしれないけど、普通ならベテランを選ぶでしょ?」
「ソフィー殿の意見に同感だ。医師が使う薬は麻酔薬など俗に精密薬と言われる類のものだ。経験の浅い薬師が作ったものよりも経験豊かな薬師が作った薬の方がより安心して使える」
「経験の浅い薬師、か……」
「す、すまん! 別にソフィー殿の薬が信頼できないとかではなくてだな――」
「わかってますよ。正直、私だって新人とベテラン、どちらの薬を選ぶか問われれば恐らく後者を選択します」
いくら技術のある新人でも経験値の差を埋めることは出来ません。他人の命を預かる仕事である以上、経験がものを言うのは当然だよね。
「――これはアタシの経験談なのだが」
「なんですか?」
「薬師の中にはアタシがしていたような“流し”の採集者から薬草を買い叩く者もいるんだ。質が悪いやら量が少ないやらと難癖をつけてな」
「そんな人が……」
「つまりソフィーが経験の少ない薬師だからって薬を買い叩こうとしているってことですか」
「そんなっ⁉」
「あくまで可能性の一つだ。本当にソフィー殿の腕を見込んでいるかもしれないし、真意を探るためにも会って話を聞いてみてはどうだ?」
アリサさんの意見には一理あると思います。ハンスさんを疑う訳じゃないけど直接会って話を聞きたい。そう感じました。
「私、セント・ジョーズ・ワートに行ってみます。エド、一緒に来てくれる?」
「え、俺? アリサさんじゃなくて?」
「アリサさんに護衛はお願いできないよ」
「そういうことかよ。まぁ、盗賊が出ないとは限らないからな」
「だからしっかりエスコートしてね? アリサさん、留守中のことはお願いしても大丈夫ですか」
「心配ない。ソフィー殿もしっかり話し合って決めてくるのだぞ」
「分かってますよ。少なくとも、ウチが損するような取引はしてきませんよ」
そう。目先の利益に負け、最終的に損をするなどあってはダメ。不利な取引にならないことが絶対条件だよね。
10
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる