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Karte6:熱発疹
第27話 備えは必要
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親愛なるソフィア・ローレン殿
暮秋と言うのにふさわしい季節となりまた。ソフィア殿をはじめ、薬局の皆様におかれましては一層ご活躍のことと存じます。
先日は早速の薬手配、誠にありがとうございました。早々のご対応に感謝しております。
さて、今回お手紙差し上げたのはセント・ジョーズ・ワートで熱発疹の流行の気配があるのをお知らせするためです。医師という仕事柄、熱発疹の患者と直接接する機会は少ないのですが、知り合いの薬師から熱発疹の患者が増えていると聞いております。
晩秋から冬に流行する病であることはソフィア殿もご存じかと思います。職業柄、感染しやすい環境とは存じますがくれぐれもご自愛頂きたくお手紙を差し上げた次第です。
「――追伸 薬の注文書を同封しておりますのでご対応の程、よろしくお願いします――えっと、痛み止めが10本か。今回は少ないね」
お昼休みの話。ハンスさんから届いた手紙に私は難しい顔をしてしまいます。同封されていた薬の注文書が理由じゃありません。問題はセント・ジョーズ・ワートで流行っているという病の方です。
「ソフィー、なに難しい顔してるんだ。注文が少ないからか?」
「違うよ。熱発疹の話だよ」
「熱発疹? なんだそれ」
「聞いたことない?」
「ないな。アリサさんは知ってますか」
「ニキビ風邪のことだな」
「さすがアリサさん。その通りです」
「なんだニキビ風邪か。それなら俺もなったことあるぞ。あれ、結構つらいよな」
「罹ったことあるならわかると思うけど、最初は微熱や咳が出るけどすぐに収まるの。でも数日後に高熱と顔中に赤い発疹が出来る風邪の一種だよ」
ハンスさんの手紙の通り、熱発疹は秋から冬に流行する感染症。季節的にそろそろ出始めるかなと思っていたけど、村で感染者が出ると一気に広がる可能性もあるよね。
「命に関わるほど重症化することはほぼ無いけど、その代わり特効薬がないんだよね」
「え、薬がないのか?」
「熱が出たら解熱薬、咳が酷ければ咳止めって感じの対症療法が基本かな。そもそも安静にしていれば命に関わるようなことはない病気だからね」
王都やセント・ジョーズ・ワートのような都市では大騒ぎするほどでもない一般的な病だけど、小さな村だし感染の動向には注意しておいた方が良いかもしれないな。
「なぁ、ソフィー?」
「なに?」
「もし熱発疹が村で流行ったらどうなるんだ?」
「うーん。死者は出ないと思うけど、一気に広がったら私一人じゃとても診きれないかな」
「やっぱりそうなるのか」
「心配ないよ。熱が出て苦しい思いはするけど、安静にしていれば命に関わるほど深刻になることはないから。だとしても備えは必要だよね」
「備え? ソフィー殿、なにか良い考えがあるのか?」
「とりあえす、解熱薬に必要な薬草の備蓄をしようと思います」
「なるほど。熱発疹で一番きついのは高熱だからな。しかし解熱薬なら“クロガネソウ”が必要になるな。だがあれは――」
「そうなんですよね。寒さに弱い薬草だからこの季節は市場で乾燥させたやつを仕入れた方が早いんですよねぇ」
「なんか乗る気じゃねぇな」
「うん。ちょっとね」
この時期“クロガネソウ”や“ミナミヒイログサ”のような風邪薬の材料になる薬草は高騰します。問屋から仕入れるのは簡単だけど必然と薬価も上げないといけないから市場から仕入れるのは避けたいんだよね。
「薬草はとりあえず保管している分を使うかな。足りなくなったら市場で仕入れるってことで」
「ああ。それが良いと思う。暖かくなれば採りに行けるからな」
「その時はお願いしますね」
「任せろ。他にアタシたちで出来ることはないか」
「そうですね……そうだ。村の人たちに熱発疹が流行ってると注意喚起をお願いできますか」
「わかった。エド、それ食べ終わったら早速出掛けるぞ」
「ソフィー、スープお替りある?」
「おい、そうやって時間稼ぎするつもりか」
「大丈夫ですよ。サボった分、エドのお給金は減るので。私としてサボってくれた方がありがたいです」
エドからスープ皿を受け取りながらニコッと笑う私にアリサさんも同調する。さぁ、エド。これでもまだサボるつもりかな?
「わかったよ。ソフィー、お替りは止めとく」
「素直でよろしい。帰ってきたら温かいお茶煎れるから。アリサさんも外は寒いので風邪ひかないようにしてくださいね」
「おまえ、俺とアリサさんじゃ扱い違うよな」
またエドがなにか言ってるけどそれは無視しよ。言っとくけど、口にしないだけでアリサさんと同じくらいエドのことも大事に思ってるんだよ。
「あんまり遅くなっちゃだめですよ」
「わかっている。それじゃ行ってくる」
「はい。エドも気を付けてね」
「お、おう」
「その顔なによ」
もう。エドがアリサさんと扱いが違うって言うから気に掛けてあげたのになんで拍子抜けするかな
暮秋と言うのにふさわしい季節となりまた。ソフィア殿をはじめ、薬局の皆様におかれましては一層ご活躍のことと存じます。
先日は早速の薬手配、誠にありがとうございました。早々のご対応に感謝しております。
さて、今回お手紙差し上げたのはセント・ジョーズ・ワートで熱発疹の流行の気配があるのをお知らせするためです。医師という仕事柄、熱発疹の患者と直接接する機会は少ないのですが、知り合いの薬師から熱発疹の患者が増えていると聞いております。
晩秋から冬に流行する病であることはソフィア殿もご存じかと思います。職業柄、感染しやすい環境とは存じますがくれぐれもご自愛頂きたくお手紙を差し上げた次第です。
「――追伸 薬の注文書を同封しておりますのでご対応の程、よろしくお願いします――えっと、痛み止めが10本か。今回は少ないね」
お昼休みの話。ハンスさんから届いた手紙に私は難しい顔をしてしまいます。同封されていた薬の注文書が理由じゃありません。問題はセント・ジョーズ・ワートで流行っているという病の方です。
「ソフィー、なに難しい顔してるんだ。注文が少ないからか?」
「違うよ。熱発疹の話だよ」
「熱発疹? なんだそれ」
「聞いたことない?」
「ないな。アリサさんは知ってますか」
「ニキビ風邪のことだな」
「さすがアリサさん。その通りです」
「なんだニキビ風邪か。それなら俺もなったことあるぞ。あれ、結構つらいよな」
「罹ったことあるならわかると思うけど、最初は微熱や咳が出るけどすぐに収まるの。でも数日後に高熱と顔中に赤い発疹が出来る風邪の一種だよ」
ハンスさんの手紙の通り、熱発疹は秋から冬に流行する感染症。季節的にそろそろ出始めるかなと思っていたけど、村で感染者が出ると一気に広がる可能性もあるよね。
「命に関わるほど重症化することはほぼ無いけど、その代わり特効薬がないんだよね」
「え、薬がないのか?」
「熱が出たら解熱薬、咳が酷ければ咳止めって感じの対症療法が基本かな。そもそも安静にしていれば命に関わるようなことはない病気だからね」
王都やセント・ジョーズ・ワートのような都市では大騒ぎするほどでもない一般的な病だけど、小さな村だし感染の動向には注意しておいた方が良いかもしれないな。
「なぁ、ソフィー?」
「なに?」
「もし熱発疹が村で流行ったらどうなるんだ?」
「うーん。死者は出ないと思うけど、一気に広がったら私一人じゃとても診きれないかな」
「やっぱりそうなるのか」
「心配ないよ。熱が出て苦しい思いはするけど、安静にしていれば命に関わるほど深刻になることはないから。だとしても備えは必要だよね」
「備え? ソフィー殿、なにか良い考えがあるのか?」
「とりあえす、解熱薬に必要な薬草の備蓄をしようと思います」
「なるほど。熱発疹で一番きついのは高熱だからな。しかし解熱薬なら“クロガネソウ”が必要になるな。だがあれは――」
「そうなんですよね。寒さに弱い薬草だからこの季節は市場で乾燥させたやつを仕入れた方が早いんですよねぇ」
「なんか乗る気じゃねぇな」
「うん。ちょっとね」
この時期“クロガネソウ”や“ミナミヒイログサ”のような風邪薬の材料になる薬草は高騰します。問屋から仕入れるのは簡単だけど必然と薬価も上げないといけないから市場から仕入れるのは避けたいんだよね。
「薬草はとりあえず保管している分を使うかな。足りなくなったら市場で仕入れるってことで」
「ああ。それが良いと思う。暖かくなれば採りに行けるからな」
「その時はお願いしますね」
「任せろ。他にアタシたちで出来ることはないか」
「そうですね……そうだ。村の人たちに熱発疹が流行ってると注意喚起をお願いできますか」
「わかった。エド、それ食べ終わったら早速出掛けるぞ」
「ソフィー、スープお替りある?」
「おい、そうやって時間稼ぎするつもりか」
「大丈夫ですよ。サボった分、エドのお給金は減るので。私としてサボってくれた方がありがたいです」
エドからスープ皿を受け取りながらニコッと笑う私にアリサさんも同調する。さぁ、エド。これでもまだサボるつもりかな?
「わかったよ。ソフィー、お替りは止めとく」
「素直でよろしい。帰ってきたら温かいお茶煎れるから。アリサさんも外は寒いので風邪ひかないようにしてくださいね」
「おまえ、俺とアリサさんじゃ扱い違うよな」
またエドがなにか言ってるけどそれは無視しよ。言っとくけど、口にしないだけでアリサさんと同じくらいエドのことも大事に思ってるんだよ。
「あんまり遅くなっちゃだめですよ」
「わかっている。それじゃ行ってくる」
「はい。エドも気を付けてね」
「お、おう」
「その顔なによ」
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