(アルファ版)新米薬師の診療録

織姫みかん

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Karte11:誰かを助ける為に

第50話 突然の来局者②

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(……この人、依存症だ)
 充血した目はうまく視線を保てていない。それに異常ともいえる発汗に全身の痙攣。明らかに“アヤカシキャロット”の禁断症状だよね。
「えっと、なにか御用ですか」
「薬をくれ」
「どこか具合が悪いのですか? まずは診察を――」
「あるんだろ。アレをくれ」
「アレと言われましても――村の方ではないですよね。旅の方ですか? なにか持病をお持ちですか?」
 バートさんよりも若い、たぶん師匠と同じくらいの男性に普段通り対応をする私。見た目から禁断症状はかなり進行しているはず。薬を得ようと強引な手段に出ることもあるから下手に刺激は出来ません。
「初診の方には診察なしで薬の処方はしていないんです。まずは診察をさせてください」
「薬だ。アレをくれ」
「ウチでは診察なしで処方はしておりません。ですので――」
「……その部屋か」
「え?」
「その部屋にあるのか」
「――っ⁉」
 しまった。開けっ放しだった調薬室のドアを閉めようと一歩横に移動しただけで気付かれた。私は慌ててドアを閉めると扉の前に立ち塞がり、威嚇するように男性を睨みつけました。
「これより先への立ち入りはご遠慮願います!」
「そこにあるのか」
「ありません! あなたの様な人に出す薬はありません!」
「よこせ……」
 身体を揺らしながらゆっくりと近づいてくる男性。その姿は血に飢えた獣の様。怖い。凄く怖い。でも逃げる訳にはいかない。
「それ以上近付くなら本当に許しませんよ!」
「薬……よこせ」
「ダメ!」
「よこせ!」
「だめぇぇぇ!」
 ドアの前に立ち塞がる私に向かってくる男性に叫び声をあげ、反射的に顔の前に手を出して身を守ろうとしました。
「離れてください! あなたにあげる薬はありません!」
「……よこせ。薬よこせ」
「ありません! 薬なんかありませんっ」
「……薬」
「お願い離れて!」
 ダメだ。声が届いていない。私の言葉が耳に届かずドアを押し開けようとする男性。薬物患者と言っても相手は男性。私の肩を押す力は強くドアノブが腰に当たって痛い。
(ドアが壊れちゃう!)
 待合室と調薬室を隔てるドアはギシギシと軋み壊れそうになるけど、扉くらい壊れたって構わない。薬さえ守れるのならその程度の損害は大したことありません。けれど男性の目的が薬だとしても迫る姿には恐怖しかなく、思わず目を瞑る私は心の中で助けを呼びました。
(……エド、助けてよ)
 エドの名を呼ぶ私は限界でした。もうダメ。これ以上は耐えれない。薬がどうとか関係ない。
(お願い、エド。助けてっ)
 一生のお願いだと神様に誓っても構いません。エドじゃなくても良い。誰かに助けてほしい。そう願った時でした。
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