1 / 4
りっぷすてぃっく
しおりを挟む「は、恥ずかしぃぃぃぃ!」
「黙れって」
「や、やだって言ってんでしょっ」
「往生際悪いぞ、観念しろ」
【りっぷすてぃっく】
「美里、こっち来れるかー?」
夜八時きっかり、
約束の時間に彼の家を訪れると
片付けができない彼の家は
まあ、ひどいもので。
やれやれ、と
乱雑に放置された洗濯物を
片付けている最中
彼が、私を呼んだ。
「んー?何ー?」
「5、4、3……」
「待ってって」
いつものカウントダウン。
ゼロになるまで彼のところに
駆けつけられないと
こちょぐり地獄が待っている。
こどもみたいなことをする彼、たくやに
私は笑いながら歩み寄ると
ガサッと
紙袋がソファの上に投げ出された。
「えー?なになに?」
「プレゼント♪」
「えー!うれしっ」
中を見てみると、
リップスティックが入っていた。
「口紅なんて珍し……ん?」
パッケージをよくよく見ると
「本品は食べられます」
と、書いてある。
「食べられます!?」
彼の目を見ると
にんまり、何かを企んだ顔して
不敵な笑みを蓄えている。
「な、なに?」
「それ、チョコレート」
「は!?」
「体温でいい具合に溶けるらしいよ」
「あのぅー…まさかこれ」
嫌な予感がして上目で彼を眺めれば
あっという間に私の手の内から
リップチョコを取り上げて
パッケージの箱をポイッと放り投げた。
「あ、また!私せっかく片付け…っ」
彼の顔がずいっと近づいて
私は思わず息を飲んだ。
「黙れよ、今からメイクすんだから」
「め、メイクなら間に合ってますけど!」
「うるさい」
彼のサディスティックな一面は
いつも心地よく私を刺激する。
切れ目な彼の瞳の中に
愛を感じる瞬間。
でも、
目を閉じて互いに溺れるキスとは大違い。
彼の目は大きく開いて、嬉々とする。
唇のケア……最近そんなにしてない。
鼻の角質……やばいかも。
メイクとれてない?大丈夫かな
普段は遠目で
隠れてるアラまで目立つ至近距離に
一気に色んなところが気になり出す。
「や。ややっぱ、無理…っ、無理ーー!」
「あ、こら逃げんなっ」
彼の腕の隙間からソファの下へ
転げると、彼もソファから落ちてくる。
足の間に彼の足が潜り込み
顔の両サイドには彼の肘。
逃走失敗。
さっきより
やばい状況になってる。
必死に抵抗した。
「やだ!」
「やだじゃない」
「恥ずかしい」
「駄々こねんなガキでもあるまいし」
「…子どもみたいなのはタクヤでしょ」
「体はちゃんと男だけど?」
今にもキス、という距離まで来て
そんな事を囁く。
心臓がいくつあっても、足りない。
「恥ずかしいの」
「だめ、塗らせろ」
「塗ってどうするの」
「美里ごと食うに決まってんだろ」
「く…っ、食うとかいう露骨な表現やめてくれます!?」
にやにやと笑って
彼はリップスティックの鞘を抜き
くるくる、と
真っ赤な口紅部分を出した。
いよいよだ。
でも、やっぱり…
「は、恥ずかしぃぃぃぃ!」
「黙れって」
「や、やだって言ってんでしょっ」
「往生際悪いぞ、観念しろ」
「たくやなんか嫌いっ」
「好きにさせる」
こんな不利な状況ってないでしょう?
目の前には大好きなたくや。
今の状況を楽しめるS気質。
体は見事なまでのフォールド状態。
嫌いっていえば好きにさせるって
自信に火のついた目で見つめられながら
耳元で囁かれるなんて…。
口紅と私の距離は
じりじりと詰められて
とうとう、スーッ
私の唇にチョコレートが引かれた。
満遍なく塗ろうと
真剣になるたくやに
ちょっとだけ母性がくすぐられる。
「出来た、鏡見る?」
「い、いいよ、恥ずかしい」
「へぇ、早くキスしてくれって?」
「そんなこ……っ」
そんなこと言ってない
そう言いたかったけれど
言わせてもらえなかった。
あっという間に
唇はたくやに塞がれてしまう。
普通のキスと違って
唇についたチョコレートを
なめとろうと必死になるから
たくやの柔らかい舌先が
私の唇を多分に攻め立てた。
「んまい…、もっと塗っていい?」
「……やだ」
「塗るけどね」
何度も何度も
チョコを塗られて
キスを落とされる。
頭の中が痺れてきて
もうどうにかなりそう。
熱い息。
潤む瞳。
切ない心地良さ。
「なあ…」
「ん…?」
「…他のところにも塗っていい?」
「口紅は唇に、塗るもの、ですけど」
上目で彼を見つめる私に
たくやは、たはっ、と
白い歯を見せ笑った後で
「俺ルールじゃ、だめ?」
そう、聞いた。
普段は狼みたいなたくやも
我慢が限界になると
可愛らしい子犬に
なっちゃうんだね。
母性本能がくすぐられて
私はたくやの頭を優しく抱き締めて
「仕方ないなぁ、特別ね」
と、体の力を、抜いて笑う。
その日、たくやからもらった、
チョコレートの口紅は
一晩のうちに跡形もなく
なくなってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる