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脱プラトニックラブ
しおりを挟む「もう少しこっちへおいで」
「や、…やです」
「どうして?」
「恥ずかしい……から」
彼が笑う。
彼の部屋のベッド。
私は彼に背を向けて
ベッドの縁
ギリギリのところを陣取っている。
【脱プラトニックラブ】
「一緒に、寝よっか」
「え!?」
「お風呂に入っておいで」
それまで、キスだけ。
何年も、それだけの関係。
彼はプラトニック派なのだと
勝手に思っていたのに。
そんな事、突然言い出されて
私の心臓、跳ねっぱなし。
言われた通り
お風呂に入って
あがってくると
彼はもうベッドの中で
手招きをしていた。
「ね、ねえ!」
思い余って
背中で笑い声をあげる彼に
声をかけた。
「ん?」
「あのぅー…私たちって、つ、付き合ってるんですかね!」
「付き合ってなければキスはしませんよ」
「……今、まで、こういうこと、なかったのにっ、ど、どうししして」
焦って噛みっぱなし。
もー、私ってばかっこわるい。
彼はそんな私に、一頻り笑って
シーツをすすっと擦りながら
静かに近づいてきた。
しまった。
ベッドの縁で逃げ場はない。
私はあっという間に
彼に後ろから抱き着かれた。
抱き締められることは
はじめてではないけれど
薄暗い部屋に
ライトがひとつ
クラッシックの音楽が
心地いい室内。
雰囲気に圧倒されて
心臓が苦しいくらい高鳴る…。
彼が私の首筋に
鼻をうずめてきた。
彼の熱い息が
私の体を震わせる。
「あ。の」
「ん…?」
「わた。わたし、あなたはこういう事しない人なのかとおも、思ってた」
彼は首の辺りで息をつきながら笑う。
や、やめてほしい。
心臓が、破れちゃう。
「俺も、そう思ってたよ」
彼はゆっくりと紡ぎ出す。
「君と付き合う前からずっと、そういう欲みたいなもの薄くてね」
「うん」
今ではとっくに諦めているけれど
彼が好きでやっと付き合い始めた頃
体の触れ合いが
無いことに本気で悩んだ事がある。
それでも彼は
愛情を示してくれるし
私も体の触れ合いがないからといって
彼を嫌いにはならなかった。
こういう付き合い方も
あるんだとそう思ってきた。
「なのに…この状況、って」
彼は、私の首筋に口付ける。
頭から指先まで
優しい電流が駆け抜けた。
「今日…ヤキモチ妬いたんだ」
「え…?」
「君、羽賀と笑い合ってた」
羽賀というのは、職場の同期の男の子。
職場の上司にあたる彼
同じフロア内。
羽賀と私が話をする姿なんて
ちょくちょく見るだろうに。
「今日に限ったことじゃないでしょう?」
「……羽賀は君狙いって聞いたから」
「えー?ないよ、だって彼、彼女いるもの」
「……そうなのかい?」
泣き出しそうな声。
いつもは恐い上司のくせにね。
私は、彼に向き直る。
恥ずかしいけれど
泣きそうな彼を放っておけない。
私は彼と額を合わせて
彼のサラサラな髪を撫でて言う。
「私はあなたが好きなんですよ」
「俺も君だけが好きだよ」
自然と、唇が繋がった。
プラトニックも悪くない。
キスだけでこんなに満たされる。
脳天から安らぎが落ちてくる。
息継ぎの為にあいた隙間から
彼の声が震った。
「君が……欲しい」
「……どうぞ?」
なんて、私はおどけて笑い
さっきまでより少し激しいキスに
戯れていった。
プラトニックでも
そうでなくても
やっぱり私には
彼しかいないのです。
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