失格勇者の剣聖無双

来栖川

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束の間の休息2

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全ての工程が終わり、妖精の森から出る為にエルドラドの船に乗っている。上空の結界外に出るのが実は最短ルートと言うことは意外と知られていないが、そもそも上空から襲撃できるものはドラゴンかファルシオンくらいのもので夕方には結界よりも上空に出たことで船はシルドの街に向けて航行する。 

「凄いものであるな。話しには聞いていたが、まるでおとぎ話の世界にいるようだ。」 

こういった船はアーティファクトと呼ばれている。昔よりも古代、人類が滅亡しかけた時代に存在したものの中の一つとされ貴重なものだ。アーティファクトは世界各地にあるダンジョンの深層にいるダンジョンボスを倒したもののみに与えられる。・・・のだが、あろうことかエルドラドはこの船を「どうせ宝の持ち腐れだし使っちゃえ。」という破天荒の中でも行き過ぎた考えで使用している。 

「意外にあっさりでしたね。妖精の村の皆さんとは名残惜しい部分もありましたが、とはいえギルティアを討伐したことを伝えに行かなくてはなりません。まあ、空間魔法陣を使用すればいいのですが、ギルド長が了承しませんでしたからね。何かあっては困りますからと笑顔で言っていましたが・・・よほどの緊急時にしか使わないということなのでしょう。」 

ルールーが奥の部屋から出てきて、話しかけてきた。甲板に出てきても大丈夫かとモグラが尋ねる。 

「私は元々旦那のアーグストと共に戦場を駆けていた仲です。標高の高い山から駆け降りるなどは日課のようにやっていましたから問題ありませんよ。」 

「そうか。それで、何用か?アーグストとファルシオンはどんちゃん騒ぎをしていたが、混ざらなくてもいいのか?」 

「ええ、私、ああいうのは嫌いでして。」 

「そ、そうか。」 

ルールーは夕暮れを見て、昼と夜の入れ替わりを見る。思い出されるのはアーグストと共に駆けた日々だった。だが、ある時ドラゴンがソードの街の付近に出現した。同僚は相当数殺され、アーグストは右腕を失った。それも避け損ねた自分を助ける為にだった。ルールーは何が起きたかわからなかったが、大量の血が顔に掛っているのだけはわかった。自分はここで死ぬ。そう思った時、アーグストが思い切り大きな剣をドラゴンに向けて投げつけた。それが決め手となり、弱ったところを一気に叩いた。アーグストは自分がドラゴンスレイヤーになったことを喜び、治療を受けながら部下と酒を飲んでいる光景を見たとき彼に惚れ込み、以来彼に近づく女性がいれば撃退してきた。そして念願かなって結婚したのであるが、メイドが彼に部屋に入るのが気に入らず、無理を通して執事となった。と言う経緯がある。 

「しかし、何故、自分に話しかけてきたでござるか?」 

「ええ、富士の霊薬の件は誠にありがとうございました。ですが、ただ貰っては気が引けるので、一つ情報と、とある権利を与えようと思いまして・・・。」 

「い、いや、別にそのような・・・。」 

「受け取っていただけるとこちらとしてはありがたく存じます。私は4大貴族の一つの家系の一員です。その義務が私にはございます。」 

「そ、そうでござるか。わかった。ありがたく受け取ろう。」 

モグラは心底いらないと思った。いらぬ関係性を生んでしまう。そう言ったものは切り捨てるのがいい。そう思っていた。 

「では、情報を一つ・・・とはいえ、とある権利と同じなのですが・・・。」 

「それは何でござろうか?」 

「ソードの街から歩いて大森林にダンジョンが出現しました。」 

「ほう。ダンジョンか。」 

ダンジョン。それは世界各地に点在する冒険者ならば踏破したいものの一つ。ただ、その踏破に必要なのは冒険者ランクだ。例えば、Aランク以上のものが一人、Eランク以下の冒険者が一人いた場合い、中層以上の攻略はギルドが禁止している。例え、事故で物品や素材を得られたとしても報酬は得られず、闇市で売るしかない。それか自分の装備として使うかのどちらかだ。単体でダンジョンに行く場合は、Bランクは中層までCランクは上層までとなっている。ちなみにエルドラドなどはSランクは制限がなく、Sランクが2人いた場合いは何人でもEランクを連れていけることになっている。・・・ちなみにFランクは論外だ。 

「だが、拙者はFランクだ、ダンジョンなど行けはしない。セレンはSランクだが、それに頼るのも気が引ける。」 

「なので、Cランクに試験なしで引き揚げます。」 

「な!それは・・・。」 

それはいいことなのだろうか?それを言われた瞬間、過去の自分の傲慢がどこから来たのか・・・それは聖剣の勇者になった時、試験や煩わしい手続きなどなくAランクになったことが原因だ。最もSランクになれたのは、ドラゴン三体を討伐したからに他ならないのだが・・・。だが、あれは自分の実力ではない。数々の偶然が重なり、パーティーにも恵まれたからに他ならない。 

「いいのでござろうか・・・。」 

素直な疑問が口に出る。すると、後方から近づいてくる人物がいた。 

「そうですね。ですが、ギルティアを討伐したのはあなた自身なのでしょう。」 

ファイゼンベルグが船長服をたなびかせて言った 

「ですが・・・。」 

「よく考えてごらんなさい。あなたが先に助けていなければ、全員死んでいました。そして、ギルティアを討伐してくれなければ私たちは今こうして生きて帰ることも出来ていません。」 

「だが、俺は・・・。」 

「モグラ君、目を覚ましなさい!今のあなたなら私は問題ないと言っています!」 

モグラは顔を挙げる。ファイゼンベルグは優しい目をしながら続けた。 

「過去のあなたは傲慢でした。何をするにつけても聖剣の勇者だからと言い、あらゆる言い訳をしながら仲間を傷つけ、置いてけぼりにし、俺だけが死ねばいいと口癖のように言いながら、魔族を恨み殺して生きていました。ですが、今のあなたは違います。魔族のダガルさんと仲良くしているところを見て、この老害は思ったのです。あなたは示した。新たな時代の到来を!」 

時代を作るのは常に若い力なのです。 

それを聞いたモグラに一筋の涙が流れる。頬を伝い、木の床に落ちる。いつぶりだろうか。本気で泣いたのは。涙など枯れていたと思っていたのに。 

「お話を戻します。」 

ルールーは気を遣わずに話し出した。 

「では、モグラ殿。私たちが提示する権利は、ダンジョンの最終下層までの踏破の権利です。通常、Aランク以上は必要とされますが、モグラ殿に限り、無制限とさせていただきます。」 

「本来はいけないんですけどね。ただ、ギルドはこれに準じます。ただし、大森林のダンジョンの制覇だけです。」 

そう言われ、モグラは黙った。暫くして考えたことを口に出す。 

「わかりました。獅子神土竜。謹んで拝命いたす。」 

ルールーは表情を変えず、ファイはニッと笑う。星々が輝きそれを祝福しているようだった。 
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