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第1章 神社幻影隊
3.講習開始
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翌日、咲希は学校帰りに高島平駅からスクールバスに乗って、ドリームモータースクールに向かった。
そして、事務所に入ると受付で入校手続きをし、クレジットカードを使って教習費用を支払った。
「指導員は女性の方がいいですか?」
視力検査を終えると、四十代の男性事務員が訊ねてきた。学校帰りなので制服姿の咲希に、気を遣ってくれたようだった。
「どちらでも構いませんが、できれば優しい方をお願いします」
「当スクールの指導員はみんな優しく指導しますから、心配ないですよ。でも、できるだけ評判がいい指導員でスケジュールを組んでみます。あまり大きな声では言えませんが……」
笑いながらそう告げると、その男性事務員は咲希が提出した「技能予約申込用紙」に沿ってスケジュール組みをしてくれた。父親と同年代くらいのためか、咲希を自分の娘と重ねて見ているようだった。
教習所が定休日の月曜以外は、咲希は十八時以降の十時限と十一時限に毎日技能講習を入れた。そして、土曜と日曜は技能講習の受講を優先し、空き時間に学科を受けることにした。教習所で受けきれない学科は、自宅のPCで受講するつもりだった。
技能講習は第一段階で九時間、第二段階で十時間の合計十九時間だ。咲希は第一段階を五日、第二段階を六日でスケジュールを組んだ。卒業検定を含めて、最短で十二日間の予定だ。途中で休校日が二日あるので、実際には十四日かかる予定だった。
(免許試験場って、平日しかやってないんだ……)
卒業検定に合格した後、運転免許試験場で適性試験と学科試験を受ける必要があった。高島平の自宅から一番近いのは、地下鉄東西線の東陽町駅にある江東試験場だ。だが、土曜、祝休日は休みのため、平日に学校を休んで行く必要があった。
(せっかく、高校一年から皆勤賞だったのに、残念……)
苦笑いを浮かべると、咲希は仮病を使う決心をした。
(もう一つの問題は、着替えね……)
二輪の技術講習はスカートでの受講が認められていなかった。だが、自宅に戻ると講習時間に間に合わないため、駅でジーンズなどに履き替えなければならないのだ。
(半袖もダメだから、上も着替えないと……。大変だな……)
どうやら毎日、着替えを入れたバッグを持ち運ぶ必要があるようだ。ヘルメットは借りることも可能だったが、誰が被ったか分からないヘルメットを着用する気にはなれなかった。将成に買ってもらったヘルメットも持っていくとなると、大荷物になりそうだった。
(グローブもすぐにネットで注文しないと……。思ったより、大変だわ……)
今夜にでも注文すれば、明日中には届くはずだ。明日の講習には間に合わないので、一日だけ冬用の毛糸の手袋を嵌めようと咲希は決心した。
入校手続きをすべて終えると、咲希はスクールバス乗り場に向かおうと出口を目指した。その時に、ふわりと芳しい香りが前方から流れてきた。
「こんばんは、神守さん……。少し、時間をいただけないかしら?」
亜麻色の髪を揺らしながら、目の前に天城色葉が立っていた。
「何で、こんなところに……?」
驚きに見開いた黒曜石の瞳で色葉の美貌を見つめると、咲希が茫然としながら呟いた。
「オートバイの免許を取るんですってね? 思っていたよりも行動的なのね?」
咲希の質問を無視すると、色葉が嬉しそうに微笑を浮かべながら告げた。知性に裏付けられた積極性は、神社幻影隊に必要な資質のため、色葉としては大歓迎だった。
「あたしをつけたんですか?」
自分の後をつけて来たのかと思い、咲希が厳しい視線で色葉を睨んだ。その視線を平然と受け止めると、色葉が笑顔を浮かべながら告げた
「違うわよ。すでに、あなたは神社幻影隊の監視対象なの。あなたの行動は、二十四時間監視されているのよ」
「なッ……! 監視って……?」
色葉の言葉に驚愕して、思わず咲希が大声を上げた。
「監視というと聞こえが悪いわね。護衛といった方がいいかしら? 全部説明するから、お茶でも飲みながら話しましょう。手続きはもう終わったんでしょ?」
ロビーに隣接した喫茶室の方を見つめながら、色葉が言った。その洗練された仕草に頷くと、咲希は色葉の後に続いて喫茶室に向かった。
「神社本庁については、もう調べた?」
「はい……」
注文した飲み物を置いてウェイトレスが立ち去ると、色葉が話しかけてきた。色葉にはダージリン、咲希の目の前にはアイスミルクティーが置かれていた。
「あたしたち神社幻影隊……略して、S.A.P.と呼んでいるのだけれど……は、神社本庁の中でも特別な部署なの」
色葉に渡された名刺には、「神社本庁 神宮特別対策部 神社幻影隊 主任宮司」と書かれていたことを咲希は思い出した。
「神宮特別対策部と言うのは、平たく言うと魔に対応する部署……。そして、S.A.P.は魔を殲滅する実戦部隊なのよ」
初めて会った時、色葉は自分のことを「実戦部隊のリーダー」だと告げていた。まさかそれが、妖魔を殲滅する部隊のことを指していたとは咲希は思いもしなかった。
(あんな化け物を倒すなんて、普通の人間には不可能だわ。やはり、この人は強い神気を持っている……)
実際に戦った鬼族の強さを思い出して、咲希は目の前に座る美女の顔を改めて見つめた。だが、ハリウッドスターのような美貌と存在感を持つ色葉が、妖魔と戦っている姿を想像することは難しかった。
「魔というのは、いったい何なんですか?」
思わず口をついた咲希の質問に、色葉はニヤリと口元を綻ばせた。咲希が魔を知っていることを確信したのだ。
「魔がいつから存在していて、どこから来るのか、実際のところ何も分かっていないわ。ただ一つだけ言えることは、魔は私たち人間と相容れない存在であるということだけよ」
そう告げると、色葉はティーカップを手に取ってダージリンを一口飲んだ。
「魔の痕跡は日本だけでなく、世界中の神話や伝承に残されているわ。吸血鬼、雪男、クラーケン、妖怪、鬼……。全部とは言わないけど、少なくてもその一部が魔であることは間違いないわ」
実際に鬼族と戦った咲希は、色葉の言葉が正しいことをその身を持って実感した。
「百鬼夜行という言葉があるように、日本には様々な妖怪の逸話が伝えられている。また、素戔嗚尊による八岐大蛇退治や、大江山の酒呑童子伝説など、魔を倒したと思われる話も語り継がれているわ」
ダージリンが入ったティーカップをテーブルに戻すと、色葉が咲希の瞳を真っ直ぐに見つめながら告げた。
「天城さん、あなた方は魔を殲滅する実戦部隊だと言われました……。魔が実在するとして、そんな化け物をどうやって倒すんですか?」
色葉が神気を持っているかを探るため、咲希が訊ねた。
「魔には物理攻撃が効かないのは知っているでしょう? 銃弾を撃ち込んでも効果がないし、たぶん核攻撃をしても意味がないわ。魔を倒すのは、精神攻撃しかない……」
「精神攻撃……」
言い方は異なるが、それが神気を指すものであることが咲希には分かった。
「精神力の強さを測定する手段を、あたしたちは持っているの。精神評価係数……略して、SA係数と呼んでいるのだけど、それはある機械で数値化できるのよ。あたしたち神社幻影隊は、SA係数が高い者だけを集めた部隊なの」
「SA係数……」
初めて耳にする言葉に、咲希は興味を持った。精神力……神気が数値化可能であれば、相手の強弱を測る大きな目安になるはずだった。
「普通の人間のSA係数は、百前後よ。でも、S.A.P.では、SA係数百五十以上の者だけを集めて訓練しているの。その訓練によって、精神武器を発動できるようになった者も何人かいるわ……」
「サイコ・ウェポン……?」
<咲耶刀>のようなものかと思いながら、咲希が訊ねた。
「そう……。人によって、使えるようになるサイコ・ウェポンは様々よ。剣であったり、弓だったりとね……。あたしの場合は、扇だけどね」
「扇……?」
笑いながら告げた色葉の言葉に、咲希が驚いた。扇が武器になるとは、とても思えなかったのだ。
「話を戻すと、あなたのSA係数はずば抜けているわ。SA測定器で測定可能な上限値の九九九なのよ。実際にはそれ以上かも知れない。あたしがあなたをS.A.P.にスカウトしに来た理由が分かったかしら……?」
色葉は楽しそうにそう告げると、再びダージリンが入ったティーカップに口をつけた。
「九九九以上って……」
(咲耶の神気って、やっぱり凄かったんだ……。でも、その数値を出したのがあたしじゃないって、どうやって説明したらいいんだろう?)
このままでは完全に誤解され、色葉が咲希を追い回すことは目に見えていた。だが、仮に咲耶の存在を信じてくれたとしても、咲耶が自分の中にいる以上は色葉が咲希を追う状況は変わらないかも知れないと咲希は思った。
「S.A.P.の中で、最もSA係数が高いのはあたしよ。あなたのSA係数は、そのあたしの三倍近くあるのよ。もしかしたら、それ以上かも知れないわ……」
ブラウンがかった美しい黒瞳で、色葉が真っ直ぐに咲希を見つめながら告げた。その瞳が期待と希望の光に輝いていることに気づき、咲希は心の中で大きなため息を付いた。
(この眼……絶対にあたしを手に入れようっていう眼だ。でも、学校や剣道もあるし、教習所にも通い始めたばかりだし……。S.A.P.の仕事を手伝う時間なんて、絶対にないわ。それ以前に、あんな怖い眼に遭うなんて二度とゴメンだ……)
鬼との戦闘を思い出して、咲希はブルッと体を震わせた。
「天城さんの言いたいことは、だいたい分かりました。でも、あたしにはS.A.P.の仕事を手伝うなんて無理ですし、何よりもそのSA係数九九九というのだって何かの間違いです」
咲希は残ったアイスミルクティーを飲み干すと、横に置いた鞄を手に取った。これ以上、泥沼に嵌まる前に席を立とうと考えたのだ。
「SA測定器の精度は、信頼が置けるものよ。それも三回も測定したのだから、測定ミスなんてありえないわ。あなたのSA係数は九九九以上……。紛れもなく、S.A.P.の中でトップの数値なのよ!」
(だから、それが間違いなんだってば……! あれは咲耶の神気で、あたしのじゃないのに……)
今度は本当にため息を付くと、咲希は席を立って色葉に告げた。
「とにかく、あたしには無理です。諦めてください……」
「すぐに承諾してもらえるとは思っていないわ。これからも会いに来るから、よく考えてみて……。車で来ているから、家まで送るわよ」
伝票を掴むと、色葉が笑顔で告げた。慌ててお金を払おうとした咲希を制して、色葉は伝票を持ってレジに向かった。
「スクールバスで帰りますから、ここで失礼します。ご馳走さまでした……」
「そう……。気をつけてね。それじゃあ、またね……」
長い漆黒の髪を揺らしながら頭を下げた咲希に向かって、色葉が手を振った。颯爽と喫茶店から出て行く美女の後ろ姿を見つめながら、咲希は気が重くなった。
(まったく……。プリンを奢るどころか、こっちが奢ってもらいたいくらいよ。起きたら覚えてなさいよ、咲耶……)
自分の中で熟睡しているはずの女神に向かって文句を垂れると、咲希は再び大きなため息を付いた。
ドリームモータースクールに通い始めてから、咲希の日常は多忙を極めた。スクールでの技能講習や学科講習だけでなく、来月中旬には中間試験があるため学校の勉強も手を抜くわけにはいかなかった。咲希は剣道部を休部した自分の判断を、心から褒めた。
(これで剣道までやったら、間違いなく過労死するわ……)
原付免許も持っていない咲希にとっては、学科講習だけでも覚えることが山ほどあったのだ。
最初の技能講習は、バイクに乗るときの安全確認のやり方や、倒れたバイクの起こし方だった。咲希は400ccのバイクがこれほど重いことを、身をもって体験した。講習に使われるバイクは、咲希が買おうと思ったCB400SFだった。中型バイクの中では癖がなく、乗りやすいモデルだからだ。
だが、剣道で鍛えているとは言え、体重五十㎏に満たない咲希が二百㎏を超えるバイクを起こすことは大変な作業だった。
「腕の力で起こそうとしても無理です。脚の力を使って、斜め上に向かって立ち上がるイメージでバイクを引き起こしてください。バイクが少し持ち上がったら、自分の体重を預けるようにバイクに胸からお腹を密着させて、体全体の力を使って引き起こします。タイヤを支点にバイクを反対側に倒すくらいのイメージで……」
女性教官に手本を見せてもらいながら、咲希は何とかCB400SFを起こすことができた。
(剣道の稽古よりも疲れた……)
全身にビッショリと汗をかきながら、咲希が起こしたバイクにサイドスタンドをかけた。
次は乗り方だった。まずは車体の周囲を目視し、後方からの車の接近やバイクの周辺に障害物がないことを確認するのだ。この時点では、バイクにはまだ触れてはならなかった。
(安全確認をしないと、減点になるらしいし……。まあ、実際の道路では必ず必要なことだからね……)
安全確認を終えると、右手でブレーキレバーを握りながらハンドルを真っ直ぐにして車体を起こした。ブレーキレバーを握り忘れると、坂道だったらバイクが動き出してしまうのだ。
そして、右足を使って車体後方へサイドスタンドを払った。うっかりサイドスタンドを出したまま跨がらないように注意しないと、これも減点対象らしい。
(跨がる前に、もう一度後方確認だったわね……)
バイクは背後からの追突事故も多いため、特に後方を注意して目視する必要があった。
膝を曲げて素早くシートを跨ぎ、右足はステップに置いた。フロントブレーキは、まだ握ったままにしておき、ステップに置いた右足でリヤブレーキをかけた。これで、前後ブレーキがかかった状態になるのだ。
(ふう……。バイクって、乗るだけで一苦労なんだ……。次は確か……)
教官の言葉を思い出しながら、咲希はミラーの角度を調整した。
「右脚をブレーキから離さないでください。それと、ミラーの調整が不要な場合でも、必ずミラーに手を添えてください。ミラー調整をしなかった場合は、減点になります」
「はい……」
教習所の卒業検定は、持ち点百点からの減点方式だ。合格ラインは七十点以上だが、減点が続くとあっという間に不合格になるのだ。
(よし、エンジン始動っと……)
咲希はメインキーをオンにして、メーター灯が点灯していることを確認した。『N』と表示されたニュートラルランプが点灯していれば、ギアが入っていない状態だ。そのままクラッチレバーを握り、セルスターターボタンを押した。
腹の底に響く振動とともに、CB400SFのエンジンが稼働した。
咲希はゆっくりクラッチレバーを離して、フロントブレーキをかけたまま後方を確認した。乗車前から数えると三回目の後方確認だ。
ブレーキペダルから右足を離し、今度は左足をステップに乗せた。このとき、フロントブレーキを握っておかないと、車体が前進してしまうのだ。
(発進するだけで、こんなに覚えることがあるなんて……)
そう思いながらも、初めて自分で運転するバイクに咲希は昂揚感を抑えきれなかった。
クレッチレバーを握ったままで左足のチェンジペダルを踏み込むと、ニュートラルから1速にギアが切り替わった。咲希はNマークが消えていることを確認すると、右手のブレーキレバーを離してアクセルを回した。
回転数の目安は二千回転だ。回転数が低いとエンストしてしまう可能性があった。
(ここまではOK……)
アクセル開度を保ったまま、咲希はクラッチレバーをゆっくりと戻した。エンジンの駆動が全身に伝わり始めた。この半クラ状態を維持し、エンジンの回転数を保ちながら後輪ブレーキを緩めた。そして、クラッチレバーを徐々に開放していった。
(動いたッ……!)
バイクがゆっくりと前方に進んでいった。咲希は喜びに黒曜石の瞳を輝かせながら、右手のアクセルを一気に開いた。
次の瞬間、CB400SFは凄まじい勢いで加速していき、前方に置かれている事故防止用のクッション材に激突した。
駆けつけた教官に助け起こされながらも、咲希は生まれて初めてバイクを運転した感動に満面の笑みを浮かべた。
「どうだった……?」
「凄か……った……わ……」
ビクンッ、ビクンッと白い裸身を痙攣させながら、天城色葉は官能に蕩けきった表情で国城大和を見つめた。白いシーツの上に横たわる裸身は赤く染まり、全身を駆け巡る甘い愉悦で指先まで痺れきっていた。美しい瞳から溢れた涙は頬を伝い、熱い喘ぎを漏らす唇からは涎が糸を引いて垂れ落ちた。
久しぶりの大和との営みは、我を忘れるほど色葉を狂わせ、何度も恍惚の頂点へと誘った。歓悦の極みを告げる言葉を幾度も口にしながら、色葉は本気で許しを乞うた。全身を蕩かせるような快絶に、色葉は意識まで真っ白に灼き尽くされた。
「ばか……。そっちじゃない。今日も会いに行ったんだろう、あの娘に……?」
頬にかかった亜麻色の髪を優しく掻き上げながら、大和が告げた。その言葉が、神守咲希のことを指していることに気づき、色葉はムッとして大和を睨んだ。
(こんなときに、そんな話することないじゃない……)
「気になるの……? 凄く綺麗な娘だからね……」
自分を愛した直後に他の女のことを訊ねる大和に、色葉は嫉妬さえ覚えながら訊ねた。
「そんなんじゃないさ……。だが、SA係数九九九なんて、興味を持たない方がおかしいだろう? 味方に付くかどうかで、神社幻影隊の戦力が大きく変わるからな……」
S.A.P.の副主任宮司としては、当然の意見だった。欲情の炎を吐き出すように大きくため息を付くと、色葉はダウンケットを胸元に引き寄せて半身を起こした。
「あの娘、魔の存在を当然のように受け入れたわ。あれは間違いなく魔と対峙したか、戦ったことがあるわね……」
情事の名残に浸る女の顔から、一瞬でS.A.P.の主任宮司の顔に戻ると色葉が告げた。
「やはり、そうか……。それで、S.A.P.に入ってくれそうな手応えはあったか?」
「まだ、何とも言えないわね。でも、どんな手を使っても引き入れてみせるわ。あれほどの才能を遊ばせておく余裕なんて、S.A.P.にはないもの……」
「そうだな……。明日にでもゆっくりと作戦を練ろう。それよりも、あんまりそんな格好で挑発するなよ」
ダウンケットで隠しきれない豊かな胸元に視線を這わすと、大和が色葉の体を引き寄せた。
「何を言って……んッ……」
抗議の言葉を唇で塞がれ、色葉は再びシーツの上に押し倒された。
「まだ、時間はあるんだろう、色葉……?」
細い唾液の糸を引きながら唇を離すと、大和がニヤリと微笑みを浮かべて告げた。窓から差し込む月明かりで、二人の唇を繋ぐ糸がキラリと煌めきを放った。
「ばか……。何回するつもりなの、この絶倫……」
色葉の言葉は再び唇で塞がれた。濃厚に舌を絡められながら白い乳房を揉みしだかれ、色葉が熱い喘ぎを漏らし始めた。
月詠尊が照らす光の下で、二つの影が激しく重なり合った。
そして、事務所に入ると受付で入校手続きをし、クレジットカードを使って教習費用を支払った。
「指導員は女性の方がいいですか?」
視力検査を終えると、四十代の男性事務員が訊ねてきた。学校帰りなので制服姿の咲希に、気を遣ってくれたようだった。
「どちらでも構いませんが、できれば優しい方をお願いします」
「当スクールの指導員はみんな優しく指導しますから、心配ないですよ。でも、できるだけ評判がいい指導員でスケジュールを組んでみます。あまり大きな声では言えませんが……」
笑いながらそう告げると、その男性事務員は咲希が提出した「技能予約申込用紙」に沿ってスケジュール組みをしてくれた。父親と同年代くらいのためか、咲希を自分の娘と重ねて見ているようだった。
教習所が定休日の月曜以外は、咲希は十八時以降の十時限と十一時限に毎日技能講習を入れた。そして、土曜と日曜は技能講習の受講を優先し、空き時間に学科を受けることにした。教習所で受けきれない学科は、自宅のPCで受講するつもりだった。
技能講習は第一段階で九時間、第二段階で十時間の合計十九時間だ。咲希は第一段階を五日、第二段階を六日でスケジュールを組んだ。卒業検定を含めて、最短で十二日間の予定だ。途中で休校日が二日あるので、実際には十四日かかる予定だった。
(免許試験場って、平日しかやってないんだ……)
卒業検定に合格した後、運転免許試験場で適性試験と学科試験を受ける必要があった。高島平の自宅から一番近いのは、地下鉄東西線の東陽町駅にある江東試験場だ。だが、土曜、祝休日は休みのため、平日に学校を休んで行く必要があった。
(せっかく、高校一年から皆勤賞だったのに、残念……)
苦笑いを浮かべると、咲希は仮病を使う決心をした。
(もう一つの問題は、着替えね……)
二輪の技術講習はスカートでの受講が認められていなかった。だが、自宅に戻ると講習時間に間に合わないため、駅でジーンズなどに履き替えなければならないのだ。
(半袖もダメだから、上も着替えないと……。大変だな……)
どうやら毎日、着替えを入れたバッグを持ち運ぶ必要があるようだ。ヘルメットは借りることも可能だったが、誰が被ったか分からないヘルメットを着用する気にはなれなかった。将成に買ってもらったヘルメットも持っていくとなると、大荷物になりそうだった。
(グローブもすぐにネットで注文しないと……。思ったより、大変だわ……)
今夜にでも注文すれば、明日中には届くはずだ。明日の講習には間に合わないので、一日だけ冬用の毛糸の手袋を嵌めようと咲希は決心した。
入校手続きをすべて終えると、咲希はスクールバス乗り場に向かおうと出口を目指した。その時に、ふわりと芳しい香りが前方から流れてきた。
「こんばんは、神守さん……。少し、時間をいただけないかしら?」
亜麻色の髪を揺らしながら、目の前に天城色葉が立っていた。
「何で、こんなところに……?」
驚きに見開いた黒曜石の瞳で色葉の美貌を見つめると、咲希が茫然としながら呟いた。
「オートバイの免許を取るんですってね? 思っていたよりも行動的なのね?」
咲希の質問を無視すると、色葉が嬉しそうに微笑を浮かべながら告げた。知性に裏付けられた積極性は、神社幻影隊に必要な資質のため、色葉としては大歓迎だった。
「あたしをつけたんですか?」
自分の後をつけて来たのかと思い、咲希が厳しい視線で色葉を睨んだ。その視線を平然と受け止めると、色葉が笑顔を浮かべながら告げた
「違うわよ。すでに、あなたは神社幻影隊の監視対象なの。あなたの行動は、二十四時間監視されているのよ」
「なッ……! 監視って……?」
色葉の言葉に驚愕して、思わず咲希が大声を上げた。
「監視というと聞こえが悪いわね。護衛といった方がいいかしら? 全部説明するから、お茶でも飲みながら話しましょう。手続きはもう終わったんでしょ?」
ロビーに隣接した喫茶室の方を見つめながら、色葉が言った。その洗練された仕草に頷くと、咲希は色葉の後に続いて喫茶室に向かった。
「神社本庁については、もう調べた?」
「はい……」
注文した飲み物を置いてウェイトレスが立ち去ると、色葉が話しかけてきた。色葉にはダージリン、咲希の目の前にはアイスミルクティーが置かれていた。
「あたしたち神社幻影隊……略して、S.A.P.と呼んでいるのだけれど……は、神社本庁の中でも特別な部署なの」
色葉に渡された名刺には、「神社本庁 神宮特別対策部 神社幻影隊 主任宮司」と書かれていたことを咲希は思い出した。
「神宮特別対策部と言うのは、平たく言うと魔に対応する部署……。そして、S.A.P.は魔を殲滅する実戦部隊なのよ」
初めて会った時、色葉は自分のことを「実戦部隊のリーダー」だと告げていた。まさかそれが、妖魔を殲滅する部隊のことを指していたとは咲希は思いもしなかった。
(あんな化け物を倒すなんて、普通の人間には不可能だわ。やはり、この人は強い神気を持っている……)
実際に戦った鬼族の強さを思い出して、咲希は目の前に座る美女の顔を改めて見つめた。だが、ハリウッドスターのような美貌と存在感を持つ色葉が、妖魔と戦っている姿を想像することは難しかった。
「魔というのは、いったい何なんですか?」
思わず口をついた咲希の質問に、色葉はニヤリと口元を綻ばせた。咲希が魔を知っていることを確信したのだ。
「魔がいつから存在していて、どこから来るのか、実際のところ何も分かっていないわ。ただ一つだけ言えることは、魔は私たち人間と相容れない存在であるということだけよ」
そう告げると、色葉はティーカップを手に取ってダージリンを一口飲んだ。
「魔の痕跡は日本だけでなく、世界中の神話や伝承に残されているわ。吸血鬼、雪男、クラーケン、妖怪、鬼……。全部とは言わないけど、少なくてもその一部が魔であることは間違いないわ」
実際に鬼族と戦った咲希は、色葉の言葉が正しいことをその身を持って実感した。
「百鬼夜行という言葉があるように、日本には様々な妖怪の逸話が伝えられている。また、素戔嗚尊による八岐大蛇退治や、大江山の酒呑童子伝説など、魔を倒したと思われる話も語り継がれているわ」
ダージリンが入ったティーカップをテーブルに戻すと、色葉が咲希の瞳を真っ直ぐに見つめながら告げた。
「天城さん、あなた方は魔を殲滅する実戦部隊だと言われました……。魔が実在するとして、そんな化け物をどうやって倒すんですか?」
色葉が神気を持っているかを探るため、咲希が訊ねた。
「魔には物理攻撃が効かないのは知っているでしょう? 銃弾を撃ち込んでも効果がないし、たぶん核攻撃をしても意味がないわ。魔を倒すのは、精神攻撃しかない……」
「精神攻撃……」
言い方は異なるが、それが神気を指すものであることが咲希には分かった。
「精神力の強さを測定する手段を、あたしたちは持っているの。精神評価係数……略して、SA係数と呼んでいるのだけど、それはある機械で数値化できるのよ。あたしたち神社幻影隊は、SA係数が高い者だけを集めた部隊なの」
「SA係数……」
初めて耳にする言葉に、咲希は興味を持った。精神力……神気が数値化可能であれば、相手の強弱を測る大きな目安になるはずだった。
「普通の人間のSA係数は、百前後よ。でも、S.A.P.では、SA係数百五十以上の者だけを集めて訓練しているの。その訓練によって、精神武器を発動できるようになった者も何人かいるわ……」
「サイコ・ウェポン……?」
<咲耶刀>のようなものかと思いながら、咲希が訊ねた。
「そう……。人によって、使えるようになるサイコ・ウェポンは様々よ。剣であったり、弓だったりとね……。あたしの場合は、扇だけどね」
「扇……?」
笑いながら告げた色葉の言葉に、咲希が驚いた。扇が武器になるとは、とても思えなかったのだ。
「話を戻すと、あなたのSA係数はずば抜けているわ。SA測定器で測定可能な上限値の九九九なのよ。実際にはそれ以上かも知れない。あたしがあなたをS.A.P.にスカウトしに来た理由が分かったかしら……?」
色葉は楽しそうにそう告げると、再びダージリンが入ったティーカップに口をつけた。
「九九九以上って……」
(咲耶の神気って、やっぱり凄かったんだ……。でも、その数値を出したのがあたしじゃないって、どうやって説明したらいいんだろう?)
このままでは完全に誤解され、色葉が咲希を追い回すことは目に見えていた。だが、仮に咲耶の存在を信じてくれたとしても、咲耶が自分の中にいる以上は色葉が咲希を追う状況は変わらないかも知れないと咲希は思った。
「S.A.P.の中で、最もSA係数が高いのはあたしよ。あなたのSA係数は、そのあたしの三倍近くあるのよ。もしかしたら、それ以上かも知れないわ……」
ブラウンがかった美しい黒瞳で、色葉が真っ直ぐに咲希を見つめながら告げた。その瞳が期待と希望の光に輝いていることに気づき、咲希は心の中で大きなため息を付いた。
(この眼……絶対にあたしを手に入れようっていう眼だ。でも、学校や剣道もあるし、教習所にも通い始めたばかりだし……。S.A.P.の仕事を手伝う時間なんて、絶対にないわ。それ以前に、あんな怖い眼に遭うなんて二度とゴメンだ……)
鬼との戦闘を思い出して、咲希はブルッと体を震わせた。
「天城さんの言いたいことは、だいたい分かりました。でも、あたしにはS.A.P.の仕事を手伝うなんて無理ですし、何よりもそのSA係数九九九というのだって何かの間違いです」
咲希は残ったアイスミルクティーを飲み干すと、横に置いた鞄を手に取った。これ以上、泥沼に嵌まる前に席を立とうと考えたのだ。
「SA測定器の精度は、信頼が置けるものよ。それも三回も測定したのだから、測定ミスなんてありえないわ。あなたのSA係数は九九九以上……。紛れもなく、S.A.P.の中でトップの数値なのよ!」
(だから、それが間違いなんだってば……! あれは咲耶の神気で、あたしのじゃないのに……)
今度は本当にため息を付くと、咲希は席を立って色葉に告げた。
「とにかく、あたしには無理です。諦めてください……」
「すぐに承諾してもらえるとは思っていないわ。これからも会いに来るから、よく考えてみて……。車で来ているから、家まで送るわよ」
伝票を掴むと、色葉が笑顔で告げた。慌ててお金を払おうとした咲希を制して、色葉は伝票を持ってレジに向かった。
「スクールバスで帰りますから、ここで失礼します。ご馳走さまでした……」
「そう……。気をつけてね。それじゃあ、またね……」
長い漆黒の髪を揺らしながら頭を下げた咲希に向かって、色葉が手を振った。颯爽と喫茶店から出て行く美女の後ろ姿を見つめながら、咲希は気が重くなった。
(まったく……。プリンを奢るどころか、こっちが奢ってもらいたいくらいよ。起きたら覚えてなさいよ、咲耶……)
自分の中で熟睡しているはずの女神に向かって文句を垂れると、咲希は再び大きなため息を付いた。
ドリームモータースクールに通い始めてから、咲希の日常は多忙を極めた。スクールでの技能講習や学科講習だけでなく、来月中旬には中間試験があるため学校の勉強も手を抜くわけにはいかなかった。咲希は剣道部を休部した自分の判断を、心から褒めた。
(これで剣道までやったら、間違いなく過労死するわ……)
原付免許も持っていない咲希にとっては、学科講習だけでも覚えることが山ほどあったのだ。
最初の技能講習は、バイクに乗るときの安全確認のやり方や、倒れたバイクの起こし方だった。咲希は400ccのバイクがこれほど重いことを、身をもって体験した。講習に使われるバイクは、咲希が買おうと思ったCB400SFだった。中型バイクの中では癖がなく、乗りやすいモデルだからだ。
だが、剣道で鍛えているとは言え、体重五十㎏に満たない咲希が二百㎏を超えるバイクを起こすことは大変な作業だった。
「腕の力で起こそうとしても無理です。脚の力を使って、斜め上に向かって立ち上がるイメージでバイクを引き起こしてください。バイクが少し持ち上がったら、自分の体重を預けるようにバイクに胸からお腹を密着させて、体全体の力を使って引き起こします。タイヤを支点にバイクを反対側に倒すくらいのイメージで……」
女性教官に手本を見せてもらいながら、咲希は何とかCB400SFを起こすことができた。
(剣道の稽古よりも疲れた……)
全身にビッショリと汗をかきながら、咲希が起こしたバイクにサイドスタンドをかけた。
次は乗り方だった。まずは車体の周囲を目視し、後方からの車の接近やバイクの周辺に障害物がないことを確認するのだ。この時点では、バイクにはまだ触れてはならなかった。
(安全確認をしないと、減点になるらしいし……。まあ、実際の道路では必ず必要なことだからね……)
安全確認を終えると、右手でブレーキレバーを握りながらハンドルを真っ直ぐにして車体を起こした。ブレーキレバーを握り忘れると、坂道だったらバイクが動き出してしまうのだ。
そして、右足を使って車体後方へサイドスタンドを払った。うっかりサイドスタンドを出したまま跨がらないように注意しないと、これも減点対象らしい。
(跨がる前に、もう一度後方確認だったわね……)
バイクは背後からの追突事故も多いため、特に後方を注意して目視する必要があった。
膝を曲げて素早くシートを跨ぎ、右足はステップに置いた。フロントブレーキは、まだ握ったままにしておき、ステップに置いた右足でリヤブレーキをかけた。これで、前後ブレーキがかかった状態になるのだ。
(ふう……。バイクって、乗るだけで一苦労なんだ……。次は確か……)
教官の言葉を思い出しながら、咲希はミラーの角度を調整した。
「右脚をブレーキから離さないでください。それと、ミラーの調整が不要な場合でも、必ずミラーに手を添えてください。ミラー調整をしなかった場合は、減点になります」
「はい……」
教習所の卒業検定は、持ち点百点からの減点方式だ。合格ラインは七十点以上だが、減点が続くとあっという間に不合格になるのだ。
(よし、エンジン始動っと……)
咲希はメインキーをオンにして、メーター灯が点灯していることを確認した。『N』と表示されたニュートラルランプが点灯していれば、ギアが入っていない状態だ。そのままクラッチレバーを握り、セルスターターボタンを押した。
腹の底に響く振動とともに、CB400SFのエンジンが稼働した。
咲希はゆっくりクラッチレバーを離して、フロントブレーキをかけたまま後方を確認した。乗車前から数えると三回目の後方確認だ。
ブレーキペダルから右足を離し、今度は左足をステップに乗せた。このとき、フロントブレーキを握っておかないと、車体が前進してしまうのだ。
(発進するだけで、こんなに覚えることがあるなんて……)
そう思いながらも、初めて自分で運転するバイクに咲希は昂揚感を抑えきれなかった。
クレッチレバーを握ったままで左足のチェンジペダルを踏み込むと、ニュートラルから1速にギアが切り替わった。咲希はNマークが消えていることを確認すると、右手のブレーキレバーを離してアクセルを回した。
回転数の目安は二千回転だ。回転数が低いとエンストしてしまう可能性があった。
(ここまではOK……)
アクセル開度を保ったまま、咲希はクラッチレバーをゆっくりと戻した。エンジンの駆動が全身に伝わり始めた。この半クラ状態を維持し、エンジンの回転数を保ちながら後輪ブレーキを緩めた。そして、クラッチレバーを徐々に開放していった。
(動いたッ……!)
バイクがゆっくりと前方に進んでいった。咲希は喜びに黒曜石の瞳を輝かせながら、右手のアクセルを一気に開いた。
次の瞬間、CB400SFは凄まじい勢いで加速していき、前方に置かれている事故防止用のクッション材に激突した。
駆けつけた教官に助け起こされながらも、咲希は生まれて初めてバイクを運転した感動に満面の笑みを浮かべた。
「どうだった……?」
「凄か……った……わ……」
ビクンッ、ビクンッと白い裸身を痙攣させながら、天城色葉は官能に蕩けきった表情で国城大和を見つめた。白いシーツの上に横たわる裸身は赤く染まり、全身を駆け巡る甘い愉悦で指先まで痺れきっていた。美しい瞳から溢れた涙は頬を伝い、熱い喘ぎを漏らす唇からは涎が糸を引いて垂れ落ちた。
久しぶりの大和との営みは、我を忘れるほど色葉を狂わせ、何度も恍惚の頂点へと誘った。歓悦の極みを告げる言葉を幾度も口にしながら、色葉は本気で許しを乞うた。全身を蕩かせるような快絶に、色葉は意識まで真っ白に灼き尽くされた。
「ばか……。そっちじゃない。今日も会いに行ったんだろう、あの娘に……?」
頬にかかった亜麻色の髪を優しく掻き上げながら、大和が告げた。その言葉が、神守咲希のことを指していることに気づき、色葉はムッとして大和を睨んだ。
(こんなときに、そんな話することないじゃない……)
「気になるの……? 凄く綺麗な娘だからね……」
自分を愛した直後に他の女のことを訊ねる大和に、色葉は嫉妬さえ覚えながら訊ねた。
「そんなんじゃないさ……。だが、SA係数九九九なんて、興味を持たない方がおかしいだろう? 味方に付くかどうかで、神社幻影隊の戦力が大きく変わるからな……」
S.A.P.の副主任宮司としては、当然の意見だった。欲情の炎を吐き出すように大きくため息を付くと、色葉はダウンケットを胸元に引き寄せて半身を起こした。
「あの娘、魔の存在を当然のように受け入れたわ。あれは間違いなく魔と対峙したか、戦ったことがあるわね……」
情事の名残に浸る女の顔から、一瞬でS.A.P.の主任宮司の顔に戻ると色葉が告げた。
「やはり、そうか……。それで、S.A.P.に入ってくれそうな手応えはあったか?」
「まだ、何とも言えないわね。でも、どんな手を使っても引き入れてみせるわ。あれほどの才能を遊ばせておく余裕なんて、S.A.P.にはないもの……」
「そうだな……。明日にでもゆっくりと作戦を練ろう。それよりも、あんまりそんな格好で挑発するなよ」
ダウンケットで隠しきれない豊かな胸元に視線を這わすと、大和が色葉の体を引き寄せた。
「何を言って……んッ……」
抗議の言葉を唇で塞がれ、色葉は再びシーツの上に押し倒された。
「まだ、時間はあるんだろう、色葉……?」
細い唾液の糸を引きながら唇を離すと、大和がニヤリと微笑みを浮かべて告げた。窓から差し込む月明かりで、二人の唇を繋ぐ糸がキラリと煌めきを放った。
「ばか……。何回するつもりなの、この絶倫……」
色葉の言葉は再び唇で塞がれた。濃厚に舌を絡められながら白い乳房を揉みしだかれ、色葉が熱い喘ぎを漏らし始めた。
月詠尊が照らす光の下で、二つの影が激しく重なり合った。
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