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終章

7 恋敵の微笑

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「おね……がい……、もう……ゆるして……」
 ビクンッビクンッと総身を痙攣させながら、凛桜が哀願の言葉を告げた。大きな瞳からは随喜の涙が滂沱となって流れ落ち、熱い吐息をせわしなく漏らす唇からは白濁の涎が長い糸を引いて垂れ落ちていた。

(これ以上……されたら……、あたし……壊れる……)
 この二時間足らずの間に、凛桜はレオナルドによって様々な体位で犯された。絶頂オーガズムに達した回数は、両手の指では足りなかった。白い裸身は真っ赤に上気し、全身の痙攣は止まる気配さえなかった。豊かな乳房の頂では薄紅色の乳首が痛いほど屹立し、長大なレオナルドのを咥えた秘唇は失禁したかのように愛液でビッショリと濡れていた。

「口ほどにもないな、リオ……。最初のように私を睨みつけてみろ。私に逆らった気概はどこに行った?」
 ニヤリと笑みを浮かべると、レオナルドが猛りきった男根で再び凛桜を責め始めた。それも、粒だった天井部分Gスポットを三回抉ると、一気に最奥の子宮膣部ポルチオを貫いてきた。どんな女でも狂わせる三浅一深の調律リズムだった。その悪魔の律動に、凛桜は激しく首を振りながら悶え啼いた。

「あッ、あッ……それ、やぁあッ! おかしく……なっちゃうッ! だめッ、だめぇッ……!」
 両手で白いシーツを握り締めると、赤茶色の髪を振り乱しながら凛桜が大きく仰け反った。快美の火柱が腰骨を灼き溶かし、背筋を駆け上って脳天に凄まじい雷撃が襲いかかった。
「ひぃいいッ! もう、イキたくないッ! 許してぇえッ! また、イクッ! イグぅううッ!」
 プシャアッと音とともに秘唇から大量の愛液を迸らせると、凛桜は望まない絶頂オーガズムを極めた。休む間もない絶頂の連鎖は、紛れもない官能地獄に他ならなかった。

「はぁッ……はッ……はひッ……! おね……がい……もう……終わりに……して……」
 フイゴのように熱い吐息を漏らしながら、耳まで真っ赤に染め上げて凛桜は随喜の涙を流した。これほど立て続けに絶頂オーガズムを極めさせられたのは、初めてだった。頭の中が真っ白に染まり、全身の細胞すべてが溶けてしまったように感じた。
 これ以上続けられたら、間違いなく気が狂ってしまいそうだった。

「何を言っておる……? 私はまだ一度も放っていないぞ。自分ばかりイキまくって、恥ずかしくないのか?」
 その言葉通り、驚くべきことにレオナルドはまだ一度も射精していなかった。その驚異的な持続力は、凛桜にとって拷問にも等しいものだった。それは、レオナルドが熱精を放つまで、この絶頂地獄が続くということなのだ。それも、一度だけで終わるとは限らないのである。

(この男は……あ、悪魔……。こんなに……イカされ続けたら……狂っちゃう……)
 すでに、自分の体が限界を超えていることが凛桜には分かった。全身の痙攣はまったく止まる気配がなく、心臓は早鐘のようにバクバクと脈打っていた。大きく開かれた股間から溢れた愛液は、白いシーツにビッショリと淫らな染みを描き、四肢の先端まで甘く痺れて指一本動かせなかった。

(龍成……)
 愛する男の精悍な顔を瞼の裏に思い浮かべると、凛桜はこの地獄から解放されることを心から願った。憎むべき男レオナルドによって何度も絶頂オーガズムを極める自分の躰が恨めしかった。だが、自分の中のが、その壮絶な快感に悦びを感じていることも事実だった。このままでは、レオナルドのセックスの虜になって堕ちてしまいそうだった。
 凛桜は凄絶な官能の愉悦を噛みしめながら、自分が女であることを呪った。

「蕩けきった顔で涎まで垂れ流して、そんなに気持ちいいのか……?」
「気持ちよくなんて……ないわ……」
 その言葉が虚勢であることなど、誰の目にも明らかだった。レオナルドはニヤリと笑みを浮かべると、凛桜の中から猛りきった男根を引き抜き、彼女の躰を四つん這いにさせた。

「何を……、あッ……ひぃッ! あッ、あぁああッ……!」
 レオナルドが凛桜の尻を掲げると、肉襞を抉りながら一気に秘唇の最奥まで貫いてきた。子宮膣部ポルチオから響く凄絶な快感が全身を灼き溶かし、凛桜は白いシーツを握り締めながら激しく首を振った。
「だめぇえッ! それ、いやぁあッ……! 凄いの、来ちゃうッ! 許してぇえッ!」
 赤茶色の髪を大きく舞い乱しながら、凛桜は全身を激しく痙攣させて悶え啼いた。随喜の涙が滂沱となって頬を伝い、戦慄く唇からは白濁の涎が糸を引いて垂れ落ちた。

 その凄まじい痴態を楽しむかのように、レオナルドが左手で重たげに揺れる乳房を掴み、尖り勃った乳首を指先で摘まみ上げた。同時に右手で真っ赤に充血した真珠粒クリトリスを探り当てると、コリコリと扱きながら愛液を塗り込み始めた。
 その間も、三浅一深の悪魔の律動は休むことなく続き、凛桜に壮絶な快感を与えて続けた。

 乳房、乳首、真珠粒クリトリス天井部分Gスポット子宮膣部ポルチオと、女の性感帯を同時に責められたら堪ったものではなかった。全身を快美の火柱が駆け抜け、脳髄をドロドロに溶かされ、意識さえ真っ白に染まった。
「ひぃいいッ……! 狂うッ……! 死んじゃうッ! あッ、あぁああッ……!」
 背筋が折れるほど大きく仰け反ると、ビックンッビックンッと総身を激しく痙攣させて凛桜は絶頂オーガズムを極めた。いや、それは絶頂オーガズムの先にある極致感オルガスムスに他ならなかった。プシャアッという音とともに、秘唇から凄まじい勢いで愛液が迸った。

 焦点を失った瞳から滂沱の涙を流し、ガチガチと奥歯を鳴らした唇からネットリとした白濁が糸を引いて垂れ落ちた。限界を超える快絶にガクガクと総身を震わせると、凛桜はグッタリと弛緩してシーツの波間に沈むように倒れ込んだ。
(たすけて……龍成……)
 その意識を最後に、凛桜はガクリと首を折って失神した。真っ赤に上気した裸身はビクンッビックンッと痙攣を続け、羞恥の肉扉からシャアーッという音とともに黄金の潮流が噴出した。
 それは紛れもなく、超絶な官能の奔流に翻弄された女の末路そのものであった。


 神奈川県横須賀市にある海上自衛隊横須賀地方総監部に、八機のヘリコプターが集結した。陸上自衛隊木更津駐屯地所属、東部方面航空隊第四対戦車ヘリコプター隊のAH-1Zヴァイパー三機、AH-64Dアパッチ四機と、<星月夜シュテルネンナハト>の輸送ヘリコプター・シコルスキーS-110一機だった。

 瑞紀は純一郎たちとともに、横須賀地方総監部逸見庁舎の二階にある第一会議室に足を踏み入れた。水島二佐が海上自衛隊にいる知人の二等海佐に依頼をして、横須賀地方監察部の一部を一時的に今回の作戦基地ストラテジー・ベースとして借用してくれたのだ。
 <星月夜シュテルネンナハト>からはアラン、龍成、はるかの他に七名の特別捜査官エージェントがS-110に搭乗して西園寺凛桜救出作戦に参加していた。

「東部方面航空隊第四対戦車ヘリコプター隊の岸本一等陸尉です。今回の西園寺救出作戦の指揮を執らせて頂きます」
 陸上自衛隊木更津駐屯地から作戦に参加している十四名の隊員を代表して、岸本が席を立つと敬礼をしながら告げた。

「<星月夜シュテルネンナハト>の特別捜査部特別捜査官エージェント、アラン=ブライトです。この度はご協力感謝します」
 <星月夜シュテルネンナハト>を代表してアランが席を立ち、同様に敬礼をした。この第一会議室には、アラン、龍成、瑞紀、純一郎、はるかの五人と、岸本を含めた陸自の五人が向かい合わせに顔を合わせていた。

「早速ですが、ブリーフィングに入らせて頂きます。海自からの情報によると、大島方面に向かっている未確認船舶が一艘あります。AISによる航行支援情報を発信していない大型船舶です。衛星写真によると満載排水量950tのラサール級コルベットです」
 再び着席すると、岸本が手元の資料を確認しながら告げた。

 AISとは船舶自動識別装置オートマチック・アイデンティフィケーション・システムの略で、国際航海に従事する300総トン以上の全ての船舶に義務づけられている船舶情報交換システムのことだ。船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報を自動的にVHF帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設等との間で情報の交換を行うシステムである。

「コルベットって……?」
 特別捜査官エージェントになってまだ間もないはるかが、隣に座るアランに訊ねた。
「満載排水量が1000t以下の小型フリゲートのことだ。だが、小さくてもイージス・システムを搭載しているイージス艦に変わりはない。奴ら、そんなものまで用意していたとはな……」
 驚きと呆れとが混在したため息をつきながら、アランがはるかに答えた。

「AH-1ZヴァイパーとAH-64Dアパッチは、いずれもイージス艦との戦闘を予測して武装してきました。20mmガトリング砲の他に、空対地ミサイル・ヘル・ファイアに代えて70mmロケット弾ハイドラ70を搭載しています。最大射程は8kmですので、遠距離からの攻撃も可能です」
 岸本が自信を持って告げた。だが、瑞紀は鋭い声で岸本の自信を粉砕した。
「撃沈させては意味がありません、岸本一尉。今回の作戦は西園寺凛桜さんを無事に救出することです。あなた方にお願いしたいのはコルベットの対空砲を破壊して、私たちが降下するための援護です」

「分かっています。ええと、あなたは……?」
 瑞紀の指摘に鼻白んで、岸本が睨んできた。
「申し遅れました。<星月夜シュテルネンナハト>の元特別捜査官エージェントで、<ゆずりは探偵事務所>の楪瑞紀と申します」
「元特別捜査官エージェント……? 民間人がなぜ今回の作戦に同行しているのですか?」
 不審そうな視線で瑞紀を一瞥すると、岸本がアランの顔を見つめながら訊ねた。

「それは……」
「白銀龍成だ。退職したとは言え、瑞紀は<星月夜シュテルネンナハト>で最も優れた射撃手シューターだ。我々が彼女に助力を求めた」
 アランの言葉を遮るように、龍成が岸本に向かって告げた。その言葉に、岸本が驚愕の表情を浮かべながら瑞紀を見つめた。<星月夜シュテルネンナハト>の特別捜査官エージェントの戦闘練度は、陸上自衛隊の特殊部隊に勝るとも劣らない。目の前に座る瑞紀が、その中で最高の射撃手シューターであるとは信じられなかったのだ。

「瑞紀さんは五十メートルレンジの外から3点射スリー・ポイント・バーストで三十九発のマガジン一本を撃ち尽くし、標的中心円ブルズ・アイ命中率100.000パーセントでしたよ。せっかくあたしが99.487パーセントを出したのに、軽く抜き去られました」
 ニッコリと笑いながらはるかが告げた。その言葉に、岸本たちヘリコプター隊の隊員が驚愕の表情を浮かべた。

 陸自の特殊部隊でさえ、標的中心円ブルズ・アイ命中率95パーセント以上を記録した者は誰もいなかった。まして、銃口の跳ね上がりマズルジャンプが発生する3点射スリー・ポイント・バーストでは、標的中心円ブルズ・アイ命中率が70パーセントを越えることさえ困難だった。

3点射スリー・ポイント・バーストで、標的中心円ブルズ・アイ命中率100.000パーセントだと……? それに、あんたも99パーセント以上の腕前なのか……?」
「彼女は、ハルカ=ハヤセです。現在、<星月夜シュテルネンナハト>における最高射撃手トップ・シューターです」
 驚きに眼を見開いている岸本に向かって、アランが笑顔を浮かべながら告げた。

「失礼しました……。それほどの腕前ならば、<星月夜シュテルネンナハト>が協力を要請するのも当然です。楪さん、我々もあなたのご協力に感謝します」
 先ほどまでの不審さを払拭して、岸本が笑顔を見せながら瑞紀に告げた。
「いえ……。差し出がましいことを申し上げてすみませんでした。こちらこそ、よろしくお願いします」
 長い髪を揺らしながら瑞紀が岸本に頭を下げた。それに頷き、岸本が話を続けた。

「ラサール級コルベットの武装は、76mm単装砲1門、30mm機関砲2門、8連装対空ミサイル発射機1基、対艦ミサイル発射機2基です。まず、最新の探知システムを搭載しているAH-1Zヴァイパー三機で、コルベットから五キロ離れた位置からハイドラ70を撃ち込みます」
 ヴァイパーに搭載されている目標探知システムは昼夜悪天候関係なく索敵可能で、最大探知距離は三十五キロ、識別可能距離は十キロである。五キロ離れた位置からでも、コルベットの武装に照準を合わせた精密攻撃が可能だった。

「その後、四機のAH-64Dアパッチによる20mmガトリング砲で、コルベットの甲板を攻撃して制圧ます。皆さんは我々がコルベットの武装を沈黙させた後で、後方のヘリポートにS-110を着艦させてください」
「分かりました。作戦開始時刻は……?」
 アランが左腕のリスト・タブレットに視線を移しながら訊ねた。現在の時間は、二十一時十八分だった。

「夜間攻撃のリスクを考慮して、日の出と同時に攻撃を開始したいと思います。明日の日の出時刻は、五時十七分です。午前五時マルゴマルマルにこの横須賀地方総監部を離陸すれば、ちょうど日の出頃にコルベットに到着可能です」
「五時まで、あと八時間もあるわ。岸本二尉、そんな悠長なことを言ってないで、今すぐにでも作戦を開始してください。マフィアに拉致された女性がどんな眼に遭うかご存じですか?」
 実際に<狗神会《こうじんかい》>や<蛇咬会じゃこうかい>に拉致されて凄まじい凌辱を受けた体験を思い出し、瑞紀が岸本に向かって叫んだ。

「しかし……、視界の効かない夜間攻撃は……」
「岸本一尉、俺からも頼む。こうしている間にも、凛桜は奴らに非道い暴行を受けている可能性がある。一刻も早く助け出したいッ!」
 龍成がテーブルの上に置いた両手の拳を握り締めながら告げた。その真剣な様子を見て、瑞紀は龍成が深く凛桜を愛していることに気づいた。

「私は以前に中国系最大のマフィア<蛇咬会じゃこうかい>に拉致され、激しい凌辱と暴行を受けたことがあります。その悪夢から助け出してくれたのは、ここにいる龍成と凛桜さんです」
 黒曜石の瞳で真っ直ぐに岸本を見つめながら、瑞紀が真剣な表情で説得を始めた。

「今回、凛桜さんが捕まったシチリアン・マフィアは、<蛇咬会>とは比べものにならないほど巨大な組織です。<沈黙オメルタの掟>によって結ばれた彼らにとって、凛桜さんは異端児です。今この瞬間にも、凛桜さんは凌辱や暴行を受けているかも知れません。それどころか、すでに殺されている可能性さえあるんです。一分一秒たりとも躊躇している時間などありませんッ!」
 自らの体験を裏付けにした瑞紀の言葉は、説得力に溢れていた。岸本は大きく頷くと、瑞紀たちに向かって強い口調で告げた。

「分かりました。すぐに出発しましょう。作戦開始時刻は、今から十五分後の二十一時三十五分フタヒトサンゴとします。皆さんはS-110に搭乗して準備してください。我々も離陸準備に入ります。総員、搭乗だッ……!」
 隊長である岸本の号令で、隊員たちが一斉に席を立って会議室を飛び出していった。
「では、後ほど……」
 岸本も瑞紀たちに敬礼をすると、部下たちの後を追って会議室から出て行った。

「俺たちも急ごうッ! リューセイ、はるか、行くぞッ!」
「分かったッ!」
「はいッ!」
 アランの声に頷くと、龍成とはるかが彼の後に続いて会議室を飛び出していった。それを見送ると、瑞紀は横に立つ純一郎の顔を見上げて告げた。

「純は、ここに残っていてッ……! あなたは戦闘訓練を受けていないッ! それに、まだ傷が完治していないわッ!」
 万全な体調にはほど遠い純一郎を、瑞紀は危険な眼に遭わせたくなかった。だが、純一郎はそんな瑞紀の言葉を一蹴した。
「ここまで来て、何を言ってやがるッ! それに、お前を護るのはこの俺だッ! お前が凛桜を助けたいって言うのなら、それを手助けするのが俺の役目だッ!」

「純……、でもッ……!」
「俺とお前は一心同体だって言ったはずだぞ、瑞紀ッ! お前一人、危険な眼に遭わせられるかッ!」
 そう告げると、純一郎は瑞紀の体を抱き寄せて口づけをしてきた。そして、濃厚に舌を絡めてきた。頭の芯がクラクラするほどの激しい口づけだった。

「純……」
 唾液の糸を引きながら唇を離すと、瑞紀は昂ぶった官能を吐き出すように熱いため息をついた。純一郎が瑞紀の右頬に左手を添えながら告げた。
「続きは凛桜を助け出してからだ。必ず生きて帰るぞ、瑞紀……」
「うん……。愛しているわ、純……」
「俺もだ……。行くぞ、瑞紀ッ!」
「はいッ……!」

 純一郎は優しい眼差しで瑞紀を見つめると、身を翻して走り出した。その大きな背中を追いながら、瑞紀は心の中で叫んだ。
(何があっても、あなたを護るわッ……! 麗華、純のことを見守っていてッ!)
 死んだ親友であり、同じ男を愛した恋敵ライバルでもある麗華の魂に、瑞紀は誓った。亜麻色の髪を揺らしながら、麗華が頬笑んだような気がした。
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