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第一章 出発(たびだち)
3-5 リュミエラの場合(前)
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「買っちゃったね」
「買ってしまったでありますな。まさかほんとうに買うとは思わなかったでありますよ」
「なにその無責任なコメント! たきつけたのはシルドラじゃん!」
「あの……」
「こめんと、とはなんでありますか? まあ、アンリ様はやはりそういう方だった、とあらためて感慨深く思っているでありますよ」
「ちがうから! 目的がちがうの、シルドラだってわかってるでしょ!」
馬車は、とりあえず街の郊外にのんびりとむかっている。郊外と言っても、五の日の夜に訪れた倉庫とは反対側にある、シルドラのねぐらのある方角である。
いかにも冒険者の装いのぼくとシルドラに、簡素とはいえドレス姿のもとご令嬢が一緒に歩いている姿、というのは相当な違和感がある。というか、見る人が見れば、愛玩奴隷を連れて歩いていると一発で見抜いてしまう。もとご令嬢がお召しになっているドレスは、そういうところの定番ドレスでもあるのだ。それもあまりよろしくないので、とりあえずどこかに落ち着こう、ということになったのである。
「ねぐら、とはいやな言い方でありますな。最近はアンリ様の寮にいることが多いでありますから、ほとんど戻っていないでありますよ。すぐに使わないものを放り込んであるだけであります」
「あの……」
「それ、胸をはって言うことじゃないから。まさか、食べかけの食料とか放置してあるんじゃないだろうね?」
「失礼でありますな。最近はあまりないと思うでありますよ」
「あのっっ!!」
もとご令嬢が何度目かになる呼びかけの声をはさみ、ぼくとシルドラは彼女のほうを見た。あれだけ強烈だった彼女の目は、いまはすこし戸惑っているような色で、すこし力を失っている。それもそうか。
「あの、わたくしはいったい、どこに向かっていて、どうなるのでしょうか?」
でたよ、一人称「わたくし」。個人的には好きな一人称で,なかなかまわりに「わたくし」娘が現れないので,そろそろシルドラにお願いしようかと思っていたところだ。
それはともかく、まあ、そろそろ不安になってくるかもしれないな。主にぼくらについて。
「ああ、ごめんなさい。なにも説明してませんよね。ざっくり言えば,愛玩奴隷として売られようとしていたあなたを、ぼくが買ったんです」
「ええ、それはわかりますけれど、わたくしは商人や見張りの男たちが、『このままでは売り物にならない』と話していたのを聞いておりまして……それがなぜ、ほかの方たちよりも早く買われることになったのか、と……」
「まずはそこ? ぼくみたいな子供が買ったことについてはいいんですか?」
「そこはもう、追い追い承知していくことにしないと頭がついていきそうにございませんので……。とりあえずは、わかりやすそうなところから理解していこうかと考えまして」
おお、戸惑っている中でもなかなか冷静な思考のできるもとご令嬢だ。しかも、あれだけ奴隷として売られるという状況に陥り、しかも激しいなにかを心にもちながら、その事情に無関係なぼくに対しては静かに話すことができている。これなら、いろいろなことが話しやすそうだ。
「それじゃ……」
言いかけたところで、シルドラが御者に止まるよう指示した。馬車を降り、戻っていく馬車が見えなくなったところで、シルドラがぼくらをまとめて、自分のアジトに転移させた。
この転移というヤツは、魔力で強引に現在地と目的地の座標を重ねてしまう、というちからワザの魔法だ。距離はそんなに稼げないが,目的地を詳細にイメージできさえすれば、かなり細かく目的地を指定することができる。というわけで、今回ぼくらはシルドラの部屋の万年床の上にいる。万年床というだけですでにまずいが、見渡すと、武器や服が乱雑に投げ捨てられている。見つけてはいないが、ぜったい食べかけとかもあると思う。
「シルドラ……これは女の子の部屋じゃない」
「アンリ様は,わたしになにを期待しているでありますか!」
予想どおり,女子力という観点では、シルドラは相当にヤバいらしい。
「あのっっ、ここはいったいっ!?」
学習の早いもとご令嬢だ。今度はスルーされないよう、かなり強く主張している。
「ごめん。いろいろダメな場所だけどガマンしてね」
「それは問題ありませんが……いったいなにが起きたのですか?」
お、こういうところも精神的にタフだね。
「ここへは、このシルドラの魔法で転移してきたんだ。そのほか、わからないことはいろいろあると思うけど、とりあえず棚上げしてぼくらの話を聞いてくれるかな?」
「……わかりました」
「わけあってぼくらの自己紹介はあとまわしにするけど、きみの名前を教えてもらえるかな?」
「はい、リュミエラと申します」
リュミエラ、リュミエラ……どこかで聞いた気がするな。
「名字は?」
「馬車で運ばれるときに、以後は家はないものと思えといわれたのですが、その前の話でよろしければ、アンドレッティ家にゆかりのあるものだったと考えていただければ」
ちょい待ち! アンドレッティって、公爵家じゃん。
「そういえば、ちょっと前にアンドレッティ公爵家の第一夫人マリアと長女リュミエラが乗った馬車が、公爵領からカルターナに向かう道中に盗賊に襲われて、第一夫人と長女は死亡した、という話があったでありますな」
あいかわらず情報通のシルドラのつぶやきに、リュミエラはわずかに身体をこわばらせた。
ふむ、それで死亡したことになっているリュミエラがここにいる、ということは、その事件はただの盗賊の襲撃ではなかったということだ。そして、復讐を誓っているからこその心の強さなのだろう。だとすると、あとは覚悟の問題かな。
「だいたい事情の想像はついたんだけど、それをリュミエラの口から詳しく聞く前に、確認しておきたいことがいくつかあるんだ」
「なんでしょうか」
「どうやって望みを果たすつもりだった? そして、望みを果たしたあと、どうするつもりなの?」
リュミエラは少しの間考えこんで、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「望みは持っていました。ですが、それをどう果たそうか、ということはまだ考えておりません。わたくしにとって、それ以前のこと、つまり、生き残ること、望みを果たす可能性を持ちつづけることがすべてでしたから」
また少し沈黙が流れた。
「ですから、望みを果たしたあとのことなど、それこそ、いっさい考えておりません」
「買われたあとはどうするつもりだった?」
「少しでもわたくしを買ったかたの気に入るように。そして、少しでもそのかたの心のスキマに入りこめるように、と」
「二日前、リュミエラは倉庫の中でなにかの気配を感じたよね。なんだと思った?」
リュミエラは少し驚いた顔をした。
「よくご存じですね。愛玩奴隷を買おうとされているかたが、下調べにだれかをよこしたのでは、と思っておりました。わたくしを選んでくだされば、と思ったのですが。あれは、あなたの手のものだったのですか?」
さすがに、当の本人があそこにいた、とは想像できなかったらしい。
このリュミエラというお嬢さまは、かんじんなところで行動が裏目に出る、という星の下に生まれているようだ。望みを果たすために愛玩奴隷として生きる覚悟をだれよりも早く持った。それを、まわりは反抗心のあらわれととった。アピールのつもりでこちらを見たが、ぼくらはそれを心の強さととった。
なんとなく、ぼくの『中途半端』と似てる気がするね。
「リュミエラの目的は復讐でまちがいないかな?」
「はい」
この答えには、リュミエラに一瞬のためらいもなかった。
「復讐はなにも生まない、ということをいう人もいるよ? そんなことをしてもお母さんは喜ばない、とかさ。それよりは、証拠を集めてリュミエラを陥れた人たちを告発する、というほうが、あとあとのリュミエラの人生のためになるんじゃない?」
歯の浮くようなことをわざといってリュミエラを見ると、それに噛みついてくるでもなく、すこし考え込んだ。
「そのようなかたもいらっしゃるかもしれません。そして、そのかたたちには、それが真実なのでしょう。わたくしにとってはそうではない、ということですね。そして、さきほども申しあげたとおり、あとあとのことなどまだ考えてもおりません。なにをすればなにを生み出せるか、ということなど、とてもとても」
なぜか、リュミエラはそこで言葉を切って微笑んだ。それは、見るものすべてを溶かすような笑顔だった。
「ですが、わたくしは自分の置かれてしまった境遇を知ったとき、わたくしにこのような仕打ちをしたものを決して許さないと心に誓いました。そして、わたくしにとって『許さない』とは、そのものたちをカケラも残さず消し去ることです。馬車が賊に襲われてから、そこは一瞬も揺らいでおりません」
リュミエラは、公爵家の長女としてなに不自由なく育てられたはずだ。そういう娘が、自分にとっての世界がひっくり返ったことを、うろたえるでもなく、身の上を嘆き悲しむでもなく、ありのままに受け止めた。そして、迷うことなく心を決めた。すごいと思う。
リュミエラは、心に強い思いを抱いた。だが、その熱さに流されることなく、自分の立っている場所を確認し、一歩一歩確実に進むことを選択した。そして、その一歩をどう踏み出すか、それを冷静に判断した。すごいと思う。
リュミエラは、ぼくらとともに取引所を出て以降、ぼくに対する言葉遣いを一度も崩していない。八歳児のぼくを侮るような言動も一度もない。ついこないだまで公爵家の令嬢だった娘が、その記憶にとらわれることなく、自分のなすべきことを瞬時に、正確に判断している。すごいと思う。
リュミエラは、自分の敵となったものをカケラも残さず消し去る、と言い放った。極上の笑顔で。すごいと思う。
結論としていえば、リュミエラはとことんまで壊れている。おそらく、不幸に見舞われるずっと前から壊れているのだ。人間は、こんなに急に壊れられるはずがない。バルデがありえない、と評したぼくがそう言うのだ。まちがいないよ。
ぼくの心は決まった。
「リュミエラ、取引をしない?」
「買ってしまったでありますな。まさかほんとうに買うとは思わなかったでありますよ」
「なにその無責任なコメント! たきつけたのはシルドラじゃん!」
「あの……」
「こめんと、とはなんでありますか? まあ、アンリ様はやはりそういう方だった、とあらためて感慨深く思っているでありますよ」
「ちがうから! 目的がちがうの、シルドラだってわかってるでしょ!」
馬車は、とりあえず街の郊外にのんびりとむかっている。郊外と言っても、五の日の夜に訪れた倉庫とは反対側にある、シルドラのねぐらのある方角である。
いかにも冒険者の装いのぼくとシルドラに、簡素とはいえドレス姿のもとご令嬢が一緒に歩いている姿、というのは相当な違和感がある。というか、見る人が見れば、愛玩奴隷を連れて歩いていると一発で見抜いてしまう。もとご令嬢がお召しになっているドレスは、そういうところの定番ドレスでもあるのだ。それもあまりよろしくないので、とりあえずどこかに落ち着こう、ということになったのである。
「ねぐら、とはいやな言い方でありますな。最近はアンリ様の寮にいることが多いでありますから、ほとんど戻っていないでありますよ。すぐに使わないものを放り込んであるだけであります」
「あの……」
「それ、胸をはって言うことじゃないから。まさか、食べかけの食料とか放置してあるんじゃないだろうね?」
「失礼でありますな。最近はあまりないと思うでありますよ」
「あのっっ!!」
もとご令嬢が何度目かになる呼びかけの声をはさみ、ぼくとシルドラは彼女のほうを見た。あれだけ強烈だった彼女の目は、いまはすこし戸惑っているような色で、すこし力を失っている。それもそうか。
「あの、わたくしはいったい、どこに向かっていて、どうなるのでしょうか?」
でたよ、一人称「わたくし」。個人的には好きな一人称で,なかなかまわりに「わたくし」娘が現れないので,そろそろシルドラにお願いしようかと思っていたところだ。
それはともかく、まあ、そろそろ不安になってくるかもしれないな。主にぼくらについて。
「ああ、ごめんなさい。なにも説明してませんよね。ざっくり言えば,愛玩奴隷として売られようとしていたあなたを、ぼくが買ったんです」
「ええ、それはわかりますけれど、わたくしは商人や見張りの男たちが、『このままでは売り物にならない』と話していたのを聞いておりまして……それがなぜ、ほかの方たちよりも早く買われることになったのか、と……」
「まずはそこ? ぼくみたいな子供が買ったことについてはいいんですか?」
「そこはもう、追い追い承知していくことにしないと頭がついていきそうにございませんので……。とりあえずは、わかりやすそうなところから理解していこうかと考えまして」
おお、戸惑っている中でもなかなか冷静な思考のできるもとご令嬢だ。しかも、あれだけ奴隷として売られるという状況に陥り、しかも激しいなにかを心にもちながら、その事情に無関係なぼくに対しては静かに話すことができている。これなら、いろいろなことが話しやすそうだ。
「それじゃ……」
言いかけたところで、シルドラが御者に止まるよう指示した。馬車を降り、戻っていく馬車が見えなくなったところで、シルドラがぼくらをまとめて、自分のアジトに転移させた。
この転移というヤツは、魔力で強引に現在地と目的地の座標を重ねてしまう、というちからワザの魔法だ。距離はそんなに稼げないが,目的地を詳細にイメージできさえすれば、かなり細かく目的地を指定することができる。というわけで、今回ぼくらはシルドラの部屋の万年床の上にいる。万年床というだけですでにまずいが、見渡すと、武器や服が乱雑に投げ捨てられている。見つけてはいないが、ぜったい食べかけとかもあると思う。
「シルドラ……これは女の子の部屋じゃない」
「アンリ様は,わたしになにを期待しているでありますか!」
予想どおり,女子力という観点では、シルドラは相当にヤバいらしい。
「あのっっ、ここはいったいっ!?」
学習の早いもとご令嬢だ。今度はスルーされないよう、かなり強く主張している。
「ごめん。いろいろダメな場所だけどガマンしてね」
「それは問題ありませんが……いったいなにが起きたのですか?」
お、こういうところも精神的にタフだね。
「ここへは、このシルドラの魔法で転移してきたんだ。そのほか、わからないことはいろいろあると思うけど、とりあえず棚上げしてぼくらの話を聞いてくれるかな?」
「……わかりました」
「わけあってぼくらの自己紹介はあとまわしにするけど、きみの名前を教えてもらえるかな?」
「はい、リュミエラと申します」
リュミエラ、リュミエラ……どこかで聞いた気がするな。
「名字は?」
「馬車で運ばれるときに、以後は家はないものと思えといわれたのですが、その前の話でよろしければ、アンドレッティ家にゆかりのあるものだったと考えていただければ」
ちょい待ち! アンドレッティって、公爵家じゃん。
「そういえば、ちょっと前にアンドレッティ公爵家の第一夫人マリアと長女リュミエラが乗った馬車が、公爵領からカルターナに向かう道中に盗賊に襲われて、第一夫人と長女は死亡した、という話があったでありますな」
あいかわらず情報通のシルドラのつぶやきに、リュミエラはわずかに身体をこわばらせた。
ふむ、それで死亡したことになっているリュミエラがここにいる、ということは、その事件はただの盗賊の襲撃ではなかったということだ。そして、復讐を誓っているからこその心の強さなのだろう。だとすると、あとは覚悟の問題かな。
「だいたい事情の想像はついたんだけど、それをリュミエラの口から詳しく聞く前に、確認しておきたいことがいくつかあるんだ」
「なんでしょうか」
「どうやって望みを果たすつもりだった? そして、望みを果たしたあと、どうするつもりなの?」
リュミエラは少しの間考えこんで、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「望みは持っていました。ですが、それをどう果たそうか、ということはまだ考えておりません。わたくしにとって、それ以前のこと、つまり、生き残ること、望みを果たす可能性を持ちつづけることがすべてでしたから」
また少し沈黙が流れた。
「ですから、望みを果たしたあとのことなど、それこそ、いっさい考えておりません」
「買われたあとはどうするつもりだった?」
「少しでもわたくしを買ったかたの気に入るように。そして、少しでもそのかたの心のスキマに入りこめるように、と」
「二日前、リュミエラは倉庫の中でなにかの気配を感じたよね。なんだと思った?」
リュミエラは少し驚いた顔をした。
「よくご存じですね。愛玩奴隷を買おうとされているかたが、下調べにだれかをよこしたのでは、と思っておりました。わたくしを選んでくだされば、と思ったのですが。あれは、あなたの手のものだったのですか?」
さすがに、当の本人があそこにいた、とは想像できなかったらしい。
このリュミエラというお嬢さまは、かんじんなところで行動が裏目に出る、という星の下に生まれているようだ。望みを果たすために愛玩奴隷として生きる覚悟をだれよりも早く持った。それを、まわりは反抗心のあらわれととった。アピールのつもりでこちらを見たが、ぼくらはそれを心の強さととった。
なんとなく、ぼくの『中途半端』と似てる気がするね。
「リュミエラの目的は復讐でまちがいないかな?」
「はい」
この答えには、リュミエラに一瞬のためらいもなかった。
「復讐はなにも生まない、ということをいう人もいるよ? そんなことをしてもお母さんは喜ばない、とかさ。それよりは、証拠を集めてリュミエラを陥れた人たちを告発する、というほうが、あとあとのリュミエラの人生のためになるんじゃない?」
歯の浮くようなことをわざといってリュミエラを見ると、それに噛みついてくるでもなく、すこし考え込んだ。
「そのようなかたもいらっしゃるかもしれません。そして、そのかたたちには、それが真実なのでしょう。わたくしにとってはそうではない、ということですね。そして、さきほども申しあげたとおり、あとあとのことなどまだ考えてもおりません。なにをすればなにを生み出せるか、ということなど、とてもとても」
なぜか、リュミエラはそこで言葉を切って微笑んだ。それは、見るものすべてを溶かすような笑顔だった。
「ですが、わたくしは自分の置かれてしまった境遇を知ったとき、わたくしにこのような仕打ちをしたものを決して許さないと心に誓いました。そして、わたくしにとって『許さない』とは、そのものたちをカケラも残さず消し去ることです。馬車が賊に襲われてから、そこは一瞬も揺らいでおりません」
リュミエラは、公爵家の長女としてなに不自由なく育てられたはずだ。そういう娘が、自分にとっての世界がひっくり返ったことを、うろたえるでもなく、身の上を嘆き悲しむでもなく、ありのままに受け止めた。そして、迷うことなく心を決めた。すごいと思う。
リュミエラは、心に強い思いを抱いた。だが、その熱さに流されることなく、自分の立っている場所を確認し、一歩一歩確実に進むことを選択した。そして、その一歩をどう踏み出すか、それを冷静に判断した。すごいと思う。
リュミエラは、ぼくらとともに取引所を出て以降、ぼくに対する言葉遣いを一度も崩していない。八歳児のぼくを侮るような言動も一度もない。ついこないだまで公爵家の令嬢だった娘が、その記憶にとらわれることなく、自分のなすべきことを瞬時に、正確に判断している。すごいと思う。
リュミエラは、自分の敵となったものをカケラも残さず消し去る、と言い放った。極上の笑顔で。すごいと思う。
結論としていえば、リュミエラはとことんまで壊れている。おそらく、不幸に見舞われるずっと前から壊れているのだ。人間は、こんなに急に壊れられるはずがない。バルデがありえない、と評したぼくがそう言うのだ。まちがいないよ。
ぼくの心は決まった。
「リュミエラ、取引をしない?」
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