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49. 親子のうた
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「お母さん!」
パタパタと足音を立てて駆け寄る小さな子供。洗濯物を畳んでいる女性の背中に乗っかって、ご機嫌な様子でお喋りをしている
「ねぇ、お母さん!おうた、うたって!」
「おうた?仕方ないなぁ……」
畳んだ洗濯物を一緒に片付けて、綺麗になったリビングに、優しいうた声が聞こえる。すると、絵本がバサバサと音をたてて、鳥のように飛び回り、コップが二つカチャカチャと、うたと共にリズムを刻んでいる。女の子がブランケットをマントに見立てて、部屋の中をフワフラ浮いている
「お母さんのうた、素敵!私もいつか、うたえるかな?」
女性に笑顔で抱きつく女の子。その言葉を聞いて抱きしめ返す女性は、どこか哀し気な表情
「……カエデなら、私以上に素敵で幸せになれる、うたを唄えるに決まってるわ」
「ミオリちゃん。久し振り」
ある日、カエデと手を繋いで来た場所は、今ツミキがいる施設。今よりも建物が新しく感じる施設の中に、一人部屋でテレビを見ていたミオリがいた
「カエデ。お母さんちょっと用事があるから、ミオリちゃんと遊んでてね」
カエデを置いて、パタンと扉が閉まると初対面の二人、会話も、振り向かず顔を見ないミオリ。カエデは部屋の端に座って、一緒にテレビを見ていく
「……あなたは、どんなうたを唄うの?」
見ていた番組が終わり、テレビを消してカエデに話しかけるミオリ。挨拶もなく話し始めたミオリに、戸惑うカエデ
「ここに来たんだったら、うたえるんでしょ?」
振り向いて近づいていくミオリ。雰囲気に押されつつ首を小さく横に振る
「私は何も……」
後ずさりするカエデ。睨み近づくミオリ。力がないと否定しているのが本当か怪しんでいる。しばらく睨みあう二人。そして、言っていることが本当だと思ったミオリはカエデの腕をつかんで、二人で部屋を出ていった
バンッと勢いよく扉を開けて来たのは、昔あった検査室。カエデが息を切らしているのも気にせず、手を引っ張り部屋の中へと入っていく
「ミオリ君、ここに来たらダメじゃないか。早く出て……」
今よりちょっと若いゼフドが二人を部屋から出そうとする
「この子は、何も力がないと言っています。早く帰してあげてください」
嫌がるミオリが、ゼフドに詰め寄っているとスピーカーから女性のうたが聞こえてきた。隣の部屋が部屋のガラス越しから見えて、そのうた声の主がいた。その姿を見つけたカエデが、嬉しそうな顔になる
「お母さんだ!」
「えっ、ちょっと……」
カエデが、ミオリの手を振り切り、ゼフドの横を通り走りって、隣の部屋へと繋がる扉を勝手に開けたカエデ。うたは、カエデの知らないうたを唄っている
「このうた……」
いつもとは違う。けど優しいうた声につられて、ゆっくりと近づいていく
「……なんだ?」
突然、ガタガタと窓や機材が音をたて始めた検査室。隣の部屋からの強い風と、地面の揺れに検査室にいる人たちが動けずにいた
「誰か、あの子を止めて!」
ルモカが慌てて止めるように指示をする
「ミオリ君!早く部屋から出るんだ!」
ゼフドが荒れ狂う検査室からミオリを出そうとしても、嫌がるミオリを追い出せずにいた
「お母さん……」
その頃。隣の部屋では、カナデに近づいていくカエデに気づかないまま、カナデはうたい続いていた
「カナデ君!中止だ!カエデ君が!」
ゼフドが叫んでも聞こえていないのか、うたは続く。ゆっくり、ゆっくり近づいてカナデの隣に来たカエデ
「あら?カエデ。どうしてここに?」
やっと気づいてうたを止めると、カエデの違う雰囲気に戸惑っていると、カエデが顔を上げ少しボーッとした様子でカナデを見つめる
「……お母さん」
小さく呟いた後、うたい始めたカエデ。そのうたは、さっきカナデが唄っていたうた。それに気づいたカナデが叫ぶ
「カエデ!ダメよ、あなたはうたってはダメ!」
パタパタと足音を立てて駆け寄る小さな子供。洗濯物を畳んでいる女性の背中に乗っかって、ご機嫌な様子でお喋りをしている
「ねぇ、お母さん!おうた、うたって!」
「おうた?仕方ないなぁ……」
畳んだ洗濯物を一緒に片付けて、綺麗になったリビングに、優しいうた声が聞こえる。すると、絵本がバサバサと音をたてて、鳥のように飛び回り、コップが二つカチャカチャと、うたと共にリズムを刻んでいる。女の子がブランケットをマントに見立てて、部屋の中をフワフラ浮いている
「お母さんのうた、素敵!私もいつか、うたえるかな?」
女性に笑顔で抱きつく女の子。その言葉を聞いて抱きしめ返す女性は、どこか哀し気な表情
「……カエデなら、私以上に素敵で幸せになれる、うたを唄えるに決まってるわ」
「ミオリちゃん。久し振り」
ある日、カエデと手を繋いで来た場所は、今ツミキがいる施設。今よりも建物が新しく感じる施設の中に、一人部屋でテレビを見ていたミオリがいた
「カエデ。お母さんちょっと用事があるから、ミオリちゃんと遊んでてね」
カエデを置いて、パタンと扉が閉まると初対面の二人、会話も、振り向かず顔を見ないミオリ。カエデは部屋の端に座って、一緒にテレビを見ていく
「……あなたは、どんなうたを唄うの?」
見ていた番組が終わり、テレビを消してカエデに話しかけるミオリ。挨拶もなく話し始めたミオリに、戸惑うカエデ
「ここに来たんだったら、うたえるんでしょ?」
振り向いて近づいていくミオリ。雰囲気に押されつつ首を小さく横に振る
「私は何も……」
後ずさりするカエデ。睨み近づくミオリ。力がないと否定しているのが本当か怪しんでいる。しばらく睨みあう二人。そして、言っていることが本当だと思ったミオリはカエデの腕をつかんで、二人で部屋を出ていった
バンッと勢いよく扉を開けて来たのは、昔あった検査室。カエデが息を切らしているのも気にせず、手を引っ張り部屋の中へと入っていく
「ミオリ君、ここに来たらダメじゃないか。早く出て……」
今よりちょっと若いゼフドが二人を部屋から出そうとする
「この子は、何も力がないと言っています。早く帰してあげてください」
嫌がるミオリが、ゼフドに詰め寄っているとスピーカーから女性のうたが聞こえてきた。隣の部屋が部屋のガラス越しから見えて、そのうた声の主がいた。その姿を見つけたカエデが、嬉しそうな顔になる
「お母さんだ!」
「えっ、ちょっと……」
カエデが、ミオリの手を振り切り、ゼフドの横を通り走りって、隣の部屋へと繋がる扉を勝手に開けたカエデ。うたは、カエデの知らないうたを唄っている
「このうた……」
いつもとは違う。けど優しいうた声につられて、ゆっくりと近づいていく
「……なんだ?」
突然、ガタガタと窓や機材が音をたて始めた検査室。隣の部屋からの強い風と、地面の揺れに検査室にいる人たちが動けずにいた
「誰か、あの子を止めて!」
ルモカが慌てて止めるように指示をする
「ミオリ君!早く部屋から出るんだ!」
ゼフドが荒れ狂う検査室からミオリを出そうとしても、嫌がるミオリを追い出せずにいた
「お母さん……」
その頃。隣の部屋では、カナデに近づいていくカエデに気づかないまま、カナデはうたい続いていた
「カナデ君!中止だ!カエデ君が!」
ゼフドが叫んでも聞こえていないのか、うたは続く。ゆっくり、ゆっくり近づいてカナデの隣に来たカエデ
「あら?カエデ。どうしてここに?」
やっと気づいてうたを止めると、カエデの違う雰囲気に戸惑っていると、カエデが顔を上げ少しボーッとした様子でカナデを見つめる
「……お母さん」
小さく呟いた後、うたい始めたカエデ。そのうたは、さっきカナデが唄っていたうた。それに気づいたカナデが叫ぶ
「カエデ!ダメよ、あなたはうたってはダメ!」
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