シンフォニー・レイ

98. 話はまだ、これから

「ダメよ！聞かないで！早く帰ってきて！」
「ルモカさん、どうして……」
　叫び続けるルモカの声に、返事をするツミキ
「聞いてほしくないって？それはそうだね。きっと知らないし、知らないままのほうが良かったんだ。でも、良いきっかけじゃないかな？」
　その返事に気づいてツミキに話しかける。その間もルモカの叫ぶ声と指令室の慌ただしい声が、イヤホンから聞こえてくる

「お父様……あの……」
　普段と違う話し声に恐る恐るシキが声をかける。シンクの後ろで怯えるシキに気づいて、悲しくも優しい笑みで二人を見る
「シキ、シンク……可愛い娘……。これからもお父様と呼んでくれるかい？」
「はい。私達はお二人がいてくれたから、楽しく過ごしてきましたわ。それは、これからもきっと……」

　シンク達が話している傍ら、ツミキ達も三人でヒソヒソと聞かれないように相談をしている
「カエデちゃん……どうする？」
「ミオリさん、戻りますか？」
　シキ達の様子や、ツミキとカエデの様子を見ながら、今の状況をどうするか考え込むミオリ
「一旦戻ろう……ゼフドさん、護衛の方々は？」
「今、向かっているはずなんだが……」
　ゼフドと話をしながらミオリが部屋の入り口に目線を向けた時、突然ガラガラと音をたて、廊下が崩れ落ちてしまった。帰り道が塞がれ呆然としていると、部屋の中ツミキ達の後ろで、男性のうた声が聞こえる
「待って。もうちょっと話足りないんだ。そうだ、今日の夕食はみんなで食べようじゃないか。シンク、シキ。今日も美味しい食事を頼むよ」
　帰り道を壊したその人は、二人に向けて楽しそうに話す。そんな中、帰り道を探す為ミオリがうたい始めた。うたの声に反応して、ユラユラと建物が揺れだした

「ダメだよ。ここは古くて壊れやすいんだ。これ以上の衝撃は、崩壊してしまうよ」
　その言葉に、うたうのを止め大きく深呼吸をする。建物が揺れ止まり、少し瓦礫の崩れる音が聞こえる中、キィと車椅子を押す音が微かに聞こえて、ツミキの側に少し近寄っていた
「さてと、思い出話はどこから始めようか」