ストラグルガールズ

28. 笑って誤魔化した秘密

　ふぅ。と一つ深呼吸をして、開いていた本をパタンと閉じ、ミコトがボーッと見つめていると、ふと部屋の入り口の方から視線を感じて見てみると、ノエルがノックもせず、少し扉を開けてミコトを見ていた
「あの……。ご飯食べる？私、お腹空いちゃって……」
「うん、私も食べる。ご飯、お願いしてもいい？」
「分かった。その間休んでて」
　微笑み返事をしながらパタンと扉を閉じるノエル。パタパタとキッチンへと歩く足音が聞こえて、ミコトがクスッと微笑む
「やっぱり変わんないね、魔力も優しさも……」
　そう呟くと、持っている本を本棚に置こうとベッドから降りた
「あれ？ここに置いてた本が……」
　隙間のなく本がたくさん入っていたはずの本棚に、一冊本が抜かれたような僅かな隙間が空いていてた
「ない……どこに」
　慌てて本棚や机、ベッドの周りを探していると、キッチンの方からガチャンと何かが割れた音が聞こえてきた


「ノエル、大丈夫？」
「うん、大丈夫。ゴメンね、お皿割っちゃった」
　キッチンに着くと、ノエルがエヘヘと笑って床に割れて落ちた食器を拾っていた。ミコトも近くに落ちていた破片を拾い集めシンクに置き、ノエルもミコトが破片を置いた場所に重ねるように食器を置くと、カチャと小さく食器の重なる音が鳴ると、割れていたはずの食器が元の形に戻っていた
「直してくれたの？ありがとう」
「えっ、ううん、私は……」
　お皿が元に戻りホッとしているノエルに対し、何にもしていないミコトは、そのお皿を見て戸惑っている。それに気づかないノエルは、その戻ったお皿におかずを盛り付けはじめた
「もうすぐご飯出来るから、リビングで待ってて」
「手伝うよ。またお皿割っちゃうかもしれないもん」
「えー、もう大丈夫だよ」
　ミコトの言葉に、またエヘヘと笑いながら返事をするノエルに、ミコトもクスッと微笑み、ノエルが持っていたお皿を受け取りリビングへと運んでいく







「そうだ。モナカ、お家帰る前に学園に寄ろっか。今日の授業のこと聞いておかなきゃ」
　その頃、ミコトの家からの帰り道で、モカがモナカに話しかけていた。すぐに帰ると思っていたモナカが、その言葉を聞いて不満そうな顔をしている
「帰りにモナカの好きなお菓子買って帰るから」
　それに気づいたモカが、ぎゅっとモナカを抱きしめてそう言うと、機嫌を取り戻したのかバサッと翼を広げると速度を上げて、学園の方へと飛びはじめた

「あれ？ノアとナギ……とクリス先生だ。どうしたんだろ」
　学園から近くの林の中を、ふと見たモカがノア達の姿を見つけ、モナカに立ち止まるようにポンッと軽く背中を叩いて、翼の音をたてないようにしながら、そーっと近づいてく

「本は残念ながら、渡すことは出来ません。他の学園の本をお借りしてください」
「なんで？」
「色々訳ありで……」
　ナギが不満げに問いかけると、クリスがニコッと微笑み言い返す。それにムッとしたナギが隣にいるノアの顔を見た
「行こう、ナギ。これ以上は話す必要ないし、夜になる前に、また学園に戻らないと」
「でも……　」
　とクリスを見つめたままナギに話しかけるノアを見て、ナギの表情が今度は不安そうな顔になった

「ミコトとノエルは……」
「数日は大丈夫と思いますよ、多分ですが」
　ノアの質問にもクリスがニコッと微笑み返事をすると、それを聞いてノアがくるりと背を向けナギを残して空を飛び帰りだした
「ノア待って！」
　離れてくノア見て慌てて追いかけ帰るナギ。そんな二人の後ろ姿を見届けたクリスが、モカがいる場所に振り向く。それに気づいたモカが慌ててモナカの背中をポンッと軽く叩いて、逃げるように去っていく。その様子も見届けたクリスが、クスッと笑って一人呟く
「さてと、僕もそろそろ帰りましょうか。夜が更ける前に」