これくしょんブック

64.再会は甘い香りと共に

「これに、シナモンをかけて……」
　朝一で買い物を終えて、ヒナタとルナが来る前に急いでお菓子を作っているアカリとルカ。ヒカリも一緒にアップルパイを作っている
「あら？二つも作るの？」
　ルカがパイ生地を二つ作っているのを見て、ヒカリが不思議な顔をしている
「ユイさん達に持ってくの。さっき連絡したら、すごく喜んでいたから」
　ルカの代わりにアカリが答えると、ユイ達に連絡した時の嬉しそうな声を思い出して、ルカがクスッと笑う
「ミナモ君、アップルパイに合いそうな紅茶買うって張りきって買いに行ったみたいだよ」
「あの子も、お菓子好きね」
「作るのも好きって言ってたね。ミナモ君もルカちゃんのお手伝い楽しいみたいだし」

　お菓子作りや話も進んで、アップルパイを焼きはじめた時、リビングのテーブルに置いていたルカの携帯が鳴った
「お母さん、もうすぐ着くって」
「じゃあ、ちょうど焼き終わる頃に来そうだね」
「出来立てのアップルパイを食べれないなんて……」
　しょんぼりするヒカリ。その落ち込みっぷりを見てヒカリをぎゅっと抱きしめた
「後で食べれるから……ゴメンね」


　片付けも終わり、リビングでヒナタとルナを待ち、アップルパイも焼き上がる頃、家の呼び鈴が鳴った
「来たかも！」
　アカリがソファーから飛び上がり、インターホンに写るルナ達を見て、慌ててアカリの部屋に戻ってくヒカリの姿を確認し終えると、アカリがそーっと玄関の扉を開けた。扉の先には、微笑むルナとヒナタがいた
「ルカ、アカリちゃん。久しぶり」
「お母さん、久しぶり」
　久しぶりの再会に、ルナがルカをちょっと強く抱きしめた。そんな二人の横を通って家の中に入ってくヒナタ。アカリの頭を撫でると、見つめ合い微笑む二人。思い思いに再会を喜んでいると、オーブンの焼き終わった合図の音が聞こえてきた
「あらあら、何を作ったの？」
「アップルパイだよ。一緒に作ったんだけど……」
　大分遅れて家に入ってきたカグヤに気づいたアカリ。気まずそうな顔をしているのを見て声をかける
「カグヤさん、こんにちは」
「……こんにちは」
　小さな声で返事をするカグヤ。二人の様子を見て、ヒナタがクスッと笑う。隣で、まだぎゅっと抱きあっていたルナとルカが離れたのを見て、ヒナタがパンっと軽く両手を叩いた

「じゃあ早くアップルパイ食べよっか。温かいうちが美味しいよね」
　ヒナタの言葉に、手を繋ぎパタパタと足音をたててキッチンに向かうアカリとルカ。二人の後ろ姿を寂しそうな表情で見ているルナに、ヒナタが声をかけた
「どう？ルカちゃんの様子」
　ヒナタの質問にルナが答えられずにいると、キッチンでは楽しそうな二人の声が聞こえてくる。その声に胸に手をあて、ぐっと息をのむルナ。玄関で動かずルナの様子を見守るヒナタとカグヤ。ふぅ。と一つ深呼吸して、やっとルナが、話はじめた
「……今はまだ。やっぱりもう少し考えさせて」