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初めての仕手戦
23 決着
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受け渡し日当日、僕はヨーナスと一緒に金融商品取引所が用意した倉庫に来ていた。
そこにはブリュンヒルデとハーバー、それに父と兄も来ている。
それどころか、商人や貴族たちが大勢詰めかけていた。
「毎回こんな感じ?」
僕はヨーナスに訊ねると、彼は首を横に振る。
「今回が特別なんですよ」
「ふーん、そうか。見世物みたいじゃない」
「ま、そういう扱いでしょうな」
僕がヨーナスと会話していると、ブリュンヒルデが勝ち誇ったように
「逃げずに現れたのは褒めてあげましょう。ですが、肝心の商品が無いのはどういうことかしら?」
と言ってきた。
「ありますよ。別に荷馬車で持ち込まなければならないという決まりは無いと思いますが」
僕は言い返した。
「どこにあると?」
ブリュンヒルデにはまだこのとき余裕があった。
が、次の瞬間僕を見て表情が引きつる。
「アイテムボックス持ちなんですよね。それも大容量の」
なにもない空間から少量の塩が出てきて、僕の手のひらを白く染めた。
「まさか、アイテムボックスの中に塩が?でも400トンもあるわけない。ローエンシュタイン辺境伯領に入ってきた塩は、そんなに沢山はないはず」
焦りの色が出てきたブリュンヒルデを見て、僕はニヤリと笑った。
さあ、いよいよマクシミリアン少年の努力が日の目を見る時だ。
目の前のブリュンヒルデを打ち負かし、ローエンシュタイン辺境伯領を公爵家から守った伝説を打ち立ててやる。
「だからお話したでしょう。我が領には塩を産出する場所があると。さて、どこにお渡しする塩を出せばよろしいかな?」
金融商品取引所の職員に訊ねると、彼は旅行カバンのような物を持ってきた。
「こちらはマジックアイテムで、アイテムボックスのようなものです。入れたものの種類と重さがわかります。容量は気にせずお入れ下さい」
「わかったよ」
そして僕は口の開いたカバンの上に塩を出していく。
塩は出現するとそのまま落下してカバンに呑み込まれる。
カバンの外にカウンターがついており、それがどんどん上がっていくのが見えて楽しい。
が、流石に400トンともなると時間がかかる。
流石に飽きてきたなという時に、やっとカウンターが400トンとなった。
自分のアイテムボックスに指示した量とも合ってるので間違いないだろう。
入れ終わるとハーバーが駆け寄ってきて、職員に矢継ぎ早に質問していく。
「本物か?重量は?混ざりものでも判別できるのか?」
職員が確認して間違いないことを証明してくれた。
そして、ハーバーはガックリとうなだれて肩を落とした。
これで一安心だな。
「では代金をいただきましょうか」
固まっているブリュンヒルデに手を差し出した。
彼女はすぐに現実に戻ってくる。
「ハーバー!」
「はい」
ブリュンヒルデの指示でハーバーが職員に現引きの金を差し出す。
職員はそれを確認して、僕に渡してくれた。
ハーバーはずっとこちらを睨んでいる。
今はその視線が気持ち良い。
「さあ、兄上も」
僕は青い顔して震えているアルノルトにも、支払いを促した。
父も気づいてアルノルトに問いかける。
「アルノルト、まさかお前先物を買っていたのか?」
アルノルトは父の質問に答えないで、逆に批難をする。
「父上、こんな筈では。何故我が領に塩の産地があると私に教えてくださらなかったのですか?」
「いや、お前も知っていたろう」
「あれはマクシミリアンのついた嘘では?」
「実際にこうして塩はあるではないか。いくら買い建てしたのだ?」
父にそう迫られると、アルノルトは矛先をこちらに変えてきた。
「マクシミリアン、私達は家族だろう。ならば支払いなどいらぬよな?家の中の金が動くだけだ」
縋るようにこちらを見るアルノルトに、僕は首を振ってそれを否定した。
「家族といえども口座は別です。それがルールですから」
「貴様」
アルノルトが青かった顔を真っ赤にして、こちらに殴りかかろうとしてくる。
それを止めたのはブリュンヒルデだった。
「無様ですわね」
「なんだと!」
アルノルトが今度はブリュンヒルデの方を向く。
「お金がないのなら私が肩代わりして差し上げますわ。その代わり、その分を返し終わるまでは奴隷として働いていただきますが」
「うるさい!貴様の施しなど受けぬ。俺を侮辱したいのならば決闘だ!」
アルノルトはブリュンヒルデに決闘を申し込む。
ブリュンヒルデは困った顔で父を見た。
父もアルノルトの行動には困っているようだ。
ならば
「兄上、お静かに」
僕はそういうと、アルノルトの体内の塩分を少し消してやった。
塩分濃度が低下したことで、アルノルトは気を失って倒れる。
このままだと生命の危険があるので、消した塩分と同量を戻してやる。
「静かになりましたね」
と周りを見回すと、みんなが呆気にとられていた。
「今のは?」
ブリュンヒルデが最初に立ち直って訊いてきた。
「血液中には塩が含まれているんだけど、一定量を下回ると気絶するんだ。だから、兄上の血液から塩を抜いて気絶させました。あんまりなくなると死んじゃうから、元に戻しておきましたけどね」
「そんな事が出来るだなんて。でも、おかげで助かりましたわ」
ブリュンヒルデは頭を下げてくれた。
「アルノルトは結局いくら買い玉を持っていたのだ?」
父がヨーナスに訊ねた。
「500枚ですので250億マルクになります」
その額を聞いて、父は額を押さえた。
「アルノルトは廃嫡して鍛え直す。支払いは私が肩代わりする、誰かヨーナスのところに金を持っていけ」
そう言った父のところにブリュンヒルデが歩み寄る。
「廃嫡のお話は本当でしょうか?」
「本気だが、それが公爵家と何か関係が?」
「はい。後日父と改めてお伺いさせていただきます」
ブリュンヒルデはそう言うと、そのまま倉庫を出ていってしまった。
彼女はそのままシェーレンベルク公爵領へと帰っていった。
そこにはブリュンヒルデとハーバー、それに父と兄も来ている。
それどころか、商人や貴族たちが大勢詰めかけていた。
「毎回こんな感じ?」
僕はヨーナスに訊ねると、彼は首を横に振る。
「今回が特別なんですよ」
「ふーん、そうか。見世物みたいじゃない」
「ま、そういう扱いでしょうな」
僕がヨーナスと会話していると、ブリュンヒルデが勝ち誇ったように
「逃げずに現れたのは褒めてあげましょう。ですが、肝心の商品が無いのはどういうことかしら?」
と言ってきた。
「ありますよ。別に荷馬車で持ち込まなければならないという決まりは無いと思いますが」
僕は言い返した。
「どこにあると?」
ブリュンヒルデにはまだこのとき余裕があった。
が、次の瞬間僕を見て表情が引きつる。
「アイテムボックス持ちなんですよね。それも大容量の」
なにもない空間から少量の塩が出てきて、僕の手のひらを白く染めた。
「まさか、アイテムボックスの中に塩が?でも400トンもあるわけない。ローエンシュタイン辺境伯領に入ってきた塩は、そんなに沢山はないはず」
焦りの色が出てきたブリュンヒルデを見て、僕はニヤリと笑った。
さあ、いよいよマクシミリアン少年の努力が日の目を見る時だ。
目の前のブリュンヒルデを打ち負かし、ローエンシュタイン辺境伯領を公爵家から守った伝説を打ち立ててやる。
「だからお話したでしょう。我が領には塩を産出する場所があると。さて、どこにお渡しする塩を出せばよろしいかな?」
金融商品取引所の職員に訊ねると、彼は旅行カバンのような物を持ってきた。
「こちらはマジックアイテムで、アイテムボックスのようなものです。入れたものの種類と重さがわかります。容量は気にせずお入れ下さい」
「わかったよ」
そして僕は口の開いたカバンの上に塩を出していく。
塩は出現するとそのまま落下してカバンに呑み込まれる。
カバンの外にカウンターがついており、それがどんどん上がっていくのが見えて楽しい。
が、流石に400トンともなると時間がかかる。
流石に飽きてきたなという時に、やっとカウンターが400トンとなった。
自分のアイテムボックスに指示した量とも合ってるので間違いないだろう。
入れ終わるとハーバーが駆け寄ってきて、職員に矢継ぎ早に質問していく。
「本物か?重量は?混ざりものでも判別できるのか?」
職員が確認して間違いないことを証明してくれた。
そして、ハーバーはガックリとうなだれて肩を落とした。
これで一安心だな。
「では代金をいただきましょうか」
固まっているブリュンヒルデに手を差し出した。
彼女はすぐに現実に戻ってくる。
「ハーバー!」
「はい」
ブリュンヒルデの指示でハーバーが職員に現引きの金を差し出す。
職員はそれを確認して、僕に渡してくれた。
ハーバーはずっとこちらを睨んでいる。
今はその視線が気持ち良い。
「さあ、兄上も」
僕は青い顔して震えているアルノルトにも、支払いを促した。
父も気づいてアルノルトに問いかける。
「アルノルト、まさかお前先物を買っていたのか?」
アルノルトは父の質問に答えないで、逆に批難をする。
「父上、こんな筈では。何故我が領に塩の産地があると私に教えてくださらなかったのですか?」
「いや、お前も知っていたろう」
「あれはマクシミリアンのついた嘘では?」
「実際にこうして塩はあるではないか。いくら買い建てしたのだ?」
父にそう迫られると、アルノルトは矛先をこちらに変えてきた。
「マクシミリアン、私達は家族だろう。ならば支払いなどいらぬよな?家の中の金が動くだけだ」
縋るようにこちらを見るアルノルトに、僕は首を振ってそれを否定した。
「家族といえども口座は別です。それがルールですから」
「貴様」
アルノルトが青かった顔を真っ赤にして、こちらに殴りかかろうとしてくる。
それを止めたのはブリュンヒルデだった。
「無様ですわね」
「なんだと!」
アルノルトが今度はブリュンヒルデの方を向く。
「お金がないのなら私が肩代わりして差し上げますわ。その代わり、その分を返し終わるまでは奴隷として働いていただきますが」
「うるさい!貴様の施しなど受けぬ。俺を侮辱したいのならば決闘だ!」
アルノルトはブリュンヒルデに決闘を申し込む。
ブリュンヒルデは困った顔で父を見た。
父もアルノルトの行動には困っているようだ。
ならば
「兄上、お静かに」
僕はそういうと、アルノルトの体内の塩分を少し消してやった。
塩分濃度が低下したことで、アルノルトは気を失って倒れる。
このままだと生命の危険があるので、消した塩分と同量を戻してやる。
「静かになりましたね」
と周りを見回すと、みんなが呆気にとられていた。
「今のは?」
ブリュンヒルデが最初に立ち直って訊いてきた。
「血液中には塩が含まれているんだけど、一定量を下回ると気絶するんだ。だから、兄上の血液から塩を抜いて気絶させました。あんまりなくなると死んじゃうから、元に戻しておきましたけどね」
「そんな事が出来るだなんて。でも、おかげで助かりましたわ」
ブリュンヒルデは頭を下げてくれた。
「アルノルトは結局いくら買い玉を持っていたのだ?」
父がヨーナスに訊ねた。
「500枚ですので250億マルクになります」
その額を聞いて、父は額を押さえた。
「アルノルトは廃嫡して鍛え直す。支払いは私が肩代わりする、誰かヨーナスのところに金を持っていけ」
そう言った父のところにブリュンヒルデが歩み寄る。
「廃嫡のお話は本当でしょうか?」
「本気だが、それが公爵家と何か関係が?」
「はい。後日父と改めてお伺いさせていただきます」
ブリュンヒルデはそう言うと、そのまま倉庫を出ていってしまった。
彼女はそのままシェーレンベルク公爵領へと帰っていった。
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