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テクニカル戦争
56 婚約披露
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大叔母様の支援を多大な犠牲を払って得たあと、僕はヨーナスB商会に足を運んだ。
ヨーナスB商会とは、大父様と数々の相場を張ったヨーナス商会の子孫であり、ローエンシュタイン家が大母様ごとに別れたときに、やはり商会を三つにわけたのだ。
そして、それぞれが大母様の頭文字をつけることを許されている。
商会に行くと応接室に案内され、会頭のヨーナス7世がすぐにやって来た。
年齢は確か50を過ぎていたはずだ。
禿げ上がった頭に、ポコンと出っ張ったお腹。
そんなおじさんがニコニコと愛想よく笑っている。
「ようこそおいでいただきました。呼んでいただければ伺いましたのに」
「ゲン担ぎだよ。大父様も大きな相場を張るときは、ヨーナス商会に自分から出向いていたそうじゃないか」
それを聞いたヨーナスの目がキランと光った。
「なにかやるつもりですか」
「勿論だよ。マルガレータの連中をギャフンと言わせてやるんだ。ヨーナスは親戚と争うのを躊躇うかい?」
挑発するように言ってみたが、ヨーナスは首を横に振った。
「元はと言えば親戚ですが、今では商売敵ですからね。奴らが損したところで心は痛みませんよ」
「良い答えだ。僕が狙うのはマルガレータ・ローエンシュタイン銀行だよ」
「それはまた随分と大物ですね」
ヨーナスは驚いて目を見開く。
それもそのはずだ。
マルガレータ・ローエンシュタイン銀行はマルガレータ・ローエンシュタイン家が作る財閥の中核企業だ。
その銀行の資金を使って他の会社を運営している。
上場してはいるが、大株主にはマルガレータ一門が名を連ね、時価総額は2兆マルクを超えている。
「僕のデビュー戦だからね。派手にいこうと思うんだ。調味料の売上とうちの預けた証拠金で先ずはひっそりと買い集めてほしい」
ヨーナスは僕の依頼にコクリと頷いた。
基本的な売買のタイミングは仲買人のヨーナスに任せる。
今はまだそれでいい。
「よろしくね」
「かしこまりました」
株の売買の話が終わると、僕はヨーナスに頼まれて色々なスパイスを魔法で作って彼に渡した。
今ではこれが貴重な収入源であり、小麦購入代金の穴埋めになっている。
辺境の開拓で地下資源の収入もあるのだが、そちらは価格が低位で安定しており旨味が減っている。
価格が低いのもマルガレータ・ローエンシュタイン家の仕業だが、供給量を絞ったところで急騰するとも思えない。
多分外国から安く輸入されてしまうだろう。
ローエンシュタイン家同士なのに狙ってくる理由は、大父様の残した秘伝の書が欲しいからではないかと生前父が言っていた。
うちよりも領地からの収入が少ないエリーゼ・ローエンシュタイン家も、既に青息吐息であると聞いている。
三冊の秘伝の書が揃えば、大父様のような市場の完全支配が出来るという算段なのだろう。
そのためには庶民が苦しむのも構わないという姿勢は許せない。
大父様の投資哲学の否定ではないか。
そんな奴に秘伝の書は絶対に渡せない。
なんとしてもここで叩いておかねば。
僕はヨーナス商会から帰ると、直ぐにブリュンヒルデ一門に書簡を書いて送った。
名目は僕とジークフリーデの婚約発表だ。
5日後に集まれる者だけでよいので、王都の僕の屋敷に来るようにという内容だ。
そして5日後、集まった一門を前に僕はジークフリーデを紹介する。
というか、ジークフリーデとブリュンヒルデ大叔母様が物凄い存在感で中央に構えており、僕なんかお飾りにもなってない気がする。
「僕の婚約者となったフロイライン、ジークフリーデだ。っていうのは表向きで、小麦の買い占めで大父様の名を汚すマルガレータ一門を叩くために集まってもらった。僕はこれから連中の資金の源である、マルガレータ・ローエンシュタイン銀行の株を買い集めていく。みんなにも手伝ってほしい。経営権を握ってしまえばこちらのものだ。連中は小麦を買い占める資金が使えなくなるからね」
集まった者たちからどよめきが起こる。
そりゃそうか。
お祝いムードでやってきたら、これから戦争だっていうのだから。
「だまし討みたいな形で集まってもらったのはすまないと思っている。だけど、買い集めの段階で勘付かれる訳にはいかなかったからね。帰ってすぐにでも株を買い始めてもらいたい。僕が本尊として名乗りを上げるのはもう少し先になるからね」
と言ったところで、僕の前に大叔母様が出る。
「気合いを入れて買いなさい。この戦いにはシェーレンベルク家も参加するのよ」
ひと睨みすると、みな固まってしまった。
僕なんかよりも大叔母様が指揮を取ればいいのにね。
大叔母様の言葉を聞いた一門の皆は、そのまま直ぐにヨーナス商会に駆け込み、マルガレータ・ローエンシュタイン銀行の株を買う注文を出した。
この日、いつもより出来高が膨らみながら株価が上がったことで、目ざとい相場師たちはこの銘柄に目をつけることになった事を後に知る。
人が居なくなった大広間で、僕は大叔母様とジークフリーデの三人となった。
「僕達は既に仕込んでいるから、あとは一門が買いを入れてくれたら種株が育って、信用余力が増えるから更に買いを入れていけますね」
と言うと、大叔母様が頷いた。
株の信用取引は資金の3倍まで出来る。
現金以外にも株を担保にすることも出来るが、掛け目が単価の8割となる。
そして、それは毎日の値洗いで計算し直されるので、株価が上がれば余力が増えていくことになるのだ。
増えた余力で株を買い、また利益が乗ってくることでさらなる買い増しが可能になっていく。
「一門の者にもそこそこの利益を与え、本尊として一番の利益を上げる。これが出来てこそ、大父様に近づけるというもの」
大叔母様はうっとりとした表情になる。
どうも、この人は大父様と大母様への思い入れが強すぎる。
が、突然真顔になった。
「ジークフリーデ、早くマクシミリアンの子を産みなさい。ブリュンヒルデの血を絶やすわけにはいきません。マクシミリアンは一人っ子なのだから、何かあってからでは遅いわよ」
「ちょっと、大叔母様こんなところで言わなくても」
僕は恥ずかしさから顔が真っ赤になった。
知識として子作りは知っているが、バッキンバッキンの童貞なので、そういうことに耐性はない。
家を継続させる大切さはわかるけど、もう少し遠回しに言ってほしかった。
隣を見ればジークフリーデも顔が真っ赤だ。
おや?
彼女もこちらを見たので目が合う。
「婚約したからって簡単に体を許さないわよ!」
と強めに拒絶されてしまった。
それを聞いて大叔母様は大きなため息をついた。
「婚約者とはいえ将来は妻。それが体を許さなくてどうするというのですか」
「でも…………」
ジークフリーデは明確な反論ができずにいた。
そうしたら、大叔母様は何かを感じ取ったらしい。
「ジークフリーデ、あなたまさか男性が怖いの?」
そう訊かれて、ジークフリーデは小さく頷いた。
「わかったわ。マクシミリアン、女装してきなさい。それで、寝室に移動します」
「はい」
僕は教会に行ったときの聖下の格好に着替えて寝室に行く。
寝室に入った僕を見た大叔母様はウットリとした表情になった。
「マクシーネ様の肖像画と寸分ぬ違わぬ姿ね」
またも大父様を重ねているようだ。
因みに教会には聖下の肖像画が飾られている。
歴代教皇よりも豪華な額縁に入れられており、ついでに教皇がその御御足に口付けをしているシーンの銅像まである。
僕はそれを見るたびに悪寒が走るのだが、他の人は肖像画や銅像の前で深々と頭を下げる。
因みに、大叔母様は嫁入りの時に実家からマクシーネ様の肖像画を持っていったそうだ。
筋金入りだよね。
「ジークフリーデ、これでもまだ怖いかしら?」
「はい、まだ少し怖さが残っております」
「そう、それじゃあもう少し手を加えようかしら」
そう言うと、大叔母様は魔法で水を作り出して僕を拘束した。
目にも水の帯が巻き付けられ、視界を奪われる。
大叔母様は水属性の魔法使いなのだ。
「大叔母様、僕も怖いんですけど」
視界を奪われ、体の自由も奪われるのはちょっと怖い。
「あら、名前で呼ぶように教育しないと」
僕の言うことを全く聞いてくれない。
というか、教育って何?
そう思ったら、ベッドの上でよつん這いにさせられ、スカートをまくられてお尻が丸出しになってしまった。
そこに平手打ちが飛んでくる。
痛い。
「さあ、私の名前を呼んでみなさい」
「申し訳ございませんでした、ブリュンヒルデ様」
「あら、おかしいわね?マクシーネ様は叩かれると反省の態度を見せずに、とても興奮したと伝わっているのに、まるで本当に反省しているかのような態度ね」
僕の知らない新情報が出てきた。
というか、大父様のイメージがこの短時間でかなり崩壊した。
「まあ初めてだから仕方ないわね」
結局、大叔母様にマクシーネとしての仕草を叩き込まれ、ジークフリーデがそれを真似て復習するというのが朝まで続いた。
僕の色々な初めては散った。
ヨーナスB商会とは、大父様と数々の相場を張ったヨーナス商会の子孫であり、ローエンシュタイン家が大母様ごとに別れたときに、やはり商会を三つにわけたのだ。
そして、それぞれが大母様の頭文字をつけることを許されている。
商会に行くと応接室に案内され、会頭のヨーナス7世がすぐにやって来た。
年齢は確か50を過ぎていたはずだ。
禿げ上がった頭に、ポコンと出っ張ったお腹。
そんなおじさんがニコニコと愛想よく笑っている。
「ようこそおいでいただきました。呼んでいただければ伺いましたのに」
「ゲン担ぎだよ。大父様も大きな相場を張るときは、ヨーナス商会に自分から出向いていたそうじゃないか」
それを聞いたヨーナスの目がキランと光った。
「なにかやるつもりですか」
「勿論だよ。マルガレータの連中をギャフンと言わせてやるんだ。ヨーナスは親戚と争うのを躊躇うかい?」
挑発するように言ってみたが、ヨーナスは首を横に振った。
「元はと言えば親戚ですが、今では商売敵ですからね。奴らが損したところで心は痛みませんよ」
「良い答えだ。僕が狙うのはマルガレータ・ローエンシュタイン銀行だよ」
「それはまた随分と大物ですね」
ヨーナスは驚いて目を見開く。
それもそのはずだ。
マルガレータ・ローエンシュタイン銀行はマルガレータ・ローエンシュタイン家が作る財閥の中核企業だ。
その銀行の資金を使って他の会社を運営している。
上場してはいるが、大株主にはマルガレータ一門が名を連ね、時価総額は2兆マルクを超えている。
「僕のデビュー戦だからね。派手にいこうと思うんだ。調味料の売上とうちの預けた証拠金で先ずはひっそりと買い集めてほしい」
ヨーナスは僕の依頼にコクリと頷いた。
基本的な売買のタイミングは仲買人のヨーナスに任せる。
今はまだそれでいい。
「よろしくね」
「かしこまりました」
株の売買の話が終わると、僕はヨーナスに頼まれて色々なスパイスを魔法で作って彼に渡した。
今ではこれが貴重な収入源であり、小麦購入代金の穴埋めになっている。
辺境の開拓で地下資源の収入もあるのだが、そちらは価格が低位で安定しており旨味が減っている。
価格が低いのもマルガレータ・ローエンシュタイン家の仕業だが、供給量を絞ったところで急騰するとも思えない。
多分外国から安く輸入されてしまうだろう。
ローエンシュタイン家同士なのに狙ってくる理由は、大父様の残した秘伝の書が欲しいからではないかと生前父が言っていた。
うちよりも領地からの収入が少ないエリーゼ・ローエンシュタイン家も、既に青息吐息であると聞いている。
三冊の秘伝の書が揃えば、大父様のような市場の完全支配が出来るという算段なのだろう。
そのためには庶民が苦しむのも構わないという姿勢は許せない。
大父様の投資哲学の否定ではないか。
そんな奴に秘伝の書は絶対に渡せない。
なんとしてもここで叩いておかねば。
僕はヨーナス商会から帰ると、直ぐにブリュンヒルデ一門に書簡を書いて送った。
名目は僕とジークフリーデの婚約発表だ。
5日後に集まれる者だけでよいので、王都の僕の屋敷に来るようにという内容だ。
そして5日後、集まった一門を前に僕はジークフリーデを紹介する。
というか、ジークフリーデとブリュンヒルデ大叔母様が物凄い存在感で中央に構えており、僕なんかお飾りにもなってない気がする。
「僕の婚約者となったフロイライン、ジークフリーデだ。っていうのは表向きで、小麦の買い占めで大父様の名を汚すマルガレータ一門を叩くために集まってもらった。僕はこれから連中の資金の源である、マルガレータ・ローエンシュタイン銀行の株を買い集めていく。みんなにも手伝ってほしい。経営権を握ってしまえばこちらのものだ。連中は小麦を買い占める資金が使えなくなるからね」
集まった者たちからどよめきが起こる。
そりゃそうか。
お祝いムードでやってきたら、これから戦争だっていうのだから。
「だまし討みたいな形で集まってもらったのはすまないと思っている。だけど、買い集めの段階で勘付かれる訳にはいかなかったからね。帰ってすぐにでも株を買い始めてもらいたい。僕が本尊として名乗りを上げるのはもう少し先になるからね」
と言ったところで、僕の前に大叔母様が出る。
「気合いを入れて買いなさい。この戦いにはシェーレンベルク家も参加するのよ」
ひと睨みすると、みな固まってしまった。
僕なんかよりも大叔母様が指揮を取ればいいのにね。
大叔母様の言葉を聞いた一門の皆は、そのまま直ぐにヨーナス商会に駆け込み、マルガレータ・ローエンシュタイン銀行の株を買う注文を出した。
この日、いつもより出来高が膨らみながら株価が上がったことで、目ざとい相場師たちはこの銘柄に目をつけることになった事を後に知る。
人が居なくなった大広間で、僕は大叔母様とジークフリーデの三人となった。
「僕達は既に仕込んでいるから、あとは一門が買いを入れてくれたら種株が育って、信用余力が増えるから更に買いを入れていけますね」
と言うと、大叔母様が頷いた。
株の信用取引は資金の3倍まで出来る。
現金以外にも株を担保にすることも出来るが、掛け目が単価の8割となる。
そして、それは毎日の値洗いで計算し直されるので、株価が上がれば余力が増えていくことになるのだ。
増えた余力で株を買い、また利益が乗ってくることでさらなる買い増しが可能になっていく。
「一門の者にもそこそこの利益を与え、本尊として一番の利益を上げる。これが出来てこそ、大父様に近づけるというもの」
大叔母様はうっとりとした表情になる。
どうも、この人は大父様と大母様への思い入れが強すぎる。
が、突然真顔になった。
「ジークフリーデ、早くマクシミリアンの子を産みなさい。ブリュンヒルデの血を絶やすわけにはいきません。マクシミリアンは一人っ子なのだから、何かあってからでは遅いわよ」
「ちょっと、大叔母様こんなところで言わなくても」
僕は恥ずかしさから顔が真っ赤になった。
知識として子作りは知っているが、バッキンバッキンの童貞なので、そういうことに耐性はない。
家を継続させる大切さはわかるけど、もう少し遠回しに言ってほしかった。
隣を見ればジークフリーデも顔が真っ赤だ。
おや?
彼女もこちらを見たので目が合う。
「婚約したからって簡単に体を許さないわよ!」
と強めに拒絶されてしまった。
それを聞いて大叔母様は大きなため息をついた。
「婚約者とはいえ将来は妻。それが体を許さなくてどうするというのですか」
「でも…………」
ジークフリーデは明確な反論ができずにいた。
そうしたら、大叔母様は何かを感じ取ったらしい。
「ジークフリーデ、あなたまさか男性が怖いの?」
そう訊かれて、ジークフリーデは小さく頷いた。
「わかったわ。マクシミリアン、女装してきなさい。それで、寝室に移動します」
「はい」
僕は教会に行ったときの聖下の格好に着替えて寝室に行く。
寝室に入った僕を見た大叔母様はウットリとした表情になった。
「マクシーネ様の肖像画と寸分ぬ違わぬ姿ね」
またも大父様を重ねているようだ。
因みに教会には聖下の肖像画が飾られている。
歴代教皇よりも豪華な額縁に入れられており、ついでに教皇がその御御足に口付けをしているシーンの銅像まである。
僕はそれを見るたびに悪寒が走るのだが、他の人は肖像画や銅像の前で深々と頭を下げる。
因みに、大叔母様は嫁入りの時に実家からマクシーネ様の肖像画を持っていったそうだ。
筋金入りだよね。
「ジークフリーデ、これでもまだ怖いかしら?」
「はい、まだ少し怖さが残っております」
「そう、それじゃあもう少し手を加えようかしら」
そう言うと、大叔母様は魔法で水を作り出して僕を拘束した。
目にも水の帯が巻き付けられ、視界を奪われる。
大叔母様は水属性の魔法使いなのだ。
「大叔母様、僕も怖いんですけど」
視界を奪われ、体の自由も奪われるのはちょっと怖い。
「あら、名前で呼ぶように教育しないと」
僕の言うことを全く聞いてくれない。
というか、教育って何?
そう思ったら、ベッドの上でよつん這いにさせられ、スカートをまくられてお尻が丸出しになってしまった。
そこに平手打ちが飛んでくる。
痛い。
「さあ、私の名前を呼んでみなさい」
「申し訳ございませんでした、ブリュンヒルデ様」
「あら、おかしいわね?マクシーネ様は叩かれると反省の態度を見せずに、とても興奮したと伝わっているのに、まるで本当に反省しているかのような態度ね」
僕の知らない新情報が出てきた。
というか、大父様のイメージがこの短時間でかなり崩壊した。
「まあ初めてだから仕方ないわね」
結局、大叔母様にマクシーネとしての仕草を叩き込まれ、ジークフリーデがそれを真似て復習するというのが朝まで続いた。
僕の色々な初めては散った。
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