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第38話 ミスをしたら会社に来なくなりました
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不良を流出させた作業者が会社を無断欠席してますが。
そんなことで無断欠勤するなら要らないよね。
それでは本編いってみましょう。
「アルト、相談があるんだけど」
俺のところに来たのはスターレットだ。
最近は俺やシルビアに連れられて冒険をしていたので、彼女は青銅等級の冒険者になっている。
俺に相談に来る程初心者でもないだろうに、どうしたと謂うのだろう。
「知り合いの冒険者が、迷宮でミスしちゃって、それ以来冒険に出られなくなっちゃったのよね」
ありがちだな。
流出不良を出した作業者が、精神的に病んでしまい、会社に来なくなる事が結構あった。
不良を出しておきながら、反省もせずにヘラヘラしているのも困り者だが、仕事が出来なくなるのも困る。
品質管理の立場としては、異常な精神状態で作業されるくらいなら、会社に来ないでもらった方がよいのだが、そうは謂っても人手不足だ。
既に新人教育を終えた作業者に、簡単に辞められても困ると謂う現場の班長の意見もあったな。
今回も、悩んで判断が鈍るくらいなら、冒険にでない方がマシだろう。
工場よりも遥かに命の危険があるのだから。
だが、折角相談に来てくれたのだ。
俺はカウンセラーではないのだが、出来る限りはやってみよう。
「知っている情報を教えてくれないか」
スターレットによれば、冒険者の名前はランディ。
何度か冒険をした程度の木等級の剣士。
最後に迷宮に潜ったときに、初めて迷宮バイパーを倒した。
迷宮バイパーの肉は美味しいと聞いていたので、休憩中に戦利品の肉を焼いて、パーティーメンバーに食べさせたが、毒の処理を知らずに、全員が食中毒になってしまった。
と、こんなところだ。
仲間は全員一命をとりとめたのだが、ランディは責任を感じてしまい、それ以来冒険に出られなくなってしまったのだと謂う。
死者が出ていないならなんとかなるかな。
「取り敢えず、迷宮バイパーのさばき方がわからないから、プロに教えてもらおうか」
俺はギャランに迷宮バイパーのさばき方を教えてもらった。
彼は買い取り部門の責任者として、迷宮バイパーの毒袋の処理を当然知っていたのだ。
それを作業標準書にまとめた。
あとは、ランディを説得する材料だな。
スターレットにも協力してもらおう。
そうして準備を整えた俺はスターレットを伴って、ランディの家に向かった。
ランディの家は、ステラの外れに近い場所にあった。
ミゼットの家に近い貧民街である。
道端には娼婦やそれを管理する裏組織の人達がおり、こちらをジロジロと見ている。
関り合いになりたくないな。
「ここか」
たどり着いたランディの家は、ミゼットの家に負けず劣らずみすぼらしい。
取り敢えずドアをノックした。
「誰だ?」
中から男の声が聞こえる。
どうやら、今日も引きこもってくれていたようで安心した。
今日に限って外出していたら、無駄足になるところだったからな。
「スターレットよ。話があるわ」
「こっちはない」
そうですね。
しかし、ここで引き下がるわけにもいかない。
「入るわよ」
スターレットは強引にドアを開けた。
中には髭がボーボーで、髪はボサボサの男がいた。
これがランディか。
「なんだよ」
ランディは不機嫌そうに言うが、俺達を追い出す素振りはない。
全てにおいて無気力だな。
「今日は迷宮バイパーのさばき方をレクチャーしに来たんだが」
俺はランディに話しかけてみた。
「俺はもう迷宮にはいかない。冒険者を辞めるんだ」
「ランディ!」
ランディの態度に、スターレットが声をあげる。
続けて何かを言おうとしたが、俺はそれを止めた。
「冒険者を辞めるのはいいが、次の仕事は決まっているのか?」
「ジョブが剣士なのに、簡単に冒険者以外の仕事が見つかるわけないだろ」
「それはそうだが、その様子だと仕事は探してないだろ」
「そうだよ。悪いか」
「悪いも悪くないも君の人生だから、それをとやかくは言うつもりはないが、次の仕事でも一度ミスをしたら逃げるのかな?」
その言葉で初めてランディの瞳に感情が見えた。
怒りだ。
「そうだよ。俺は仲間を殺しかけた。そんなところに居られるはずがない。次も仲間を殺すようなミスをしたら、俺はその仕事を辞めるんだ!」
「人は誰でもミスをする。大切なのはそのミスから学び、繰り返さないようにする事じゃないのか」
「そんなことわかっているさ!」
「いいや、わかってないね。わかっているのなら、今ここで迷宮バイパーのさばき方を教えてくれないか」
「それは……」
先程まで威勢の良かったランディが言葉に詰まる。
少し間が空き、
「今さらそれを学んだところで、使うところなんて無いだろ。もう一度仲間と迷宮に潜れる訳でもないし。奴等は俺を許さない」
と、落ち着いたトーンで喋った。
「そんなことないわ」
外から女の声がする。
ランディが驚いた顔でそちらを見た。
「――シエナ」
ランディが彼女の名前を呼んだ。
シエナと呼ばれた女性が、ドアの外に立っている。
彼女はランディのパーティーメンバーであり、今回の食中毒の患者でもある。
今日はランディを説得する為に連れてきたのだ。
シエナは家の中へと入ってくる。
「なにこんなところでウジウジしてるのよ。みんなが待ってるわ。治療にもお金がかかったんだから、早く働かないと暮らしていけないわよ」
「だって俺は皆を」
「だってじゃない」
小柄なシエナがランディを勢いで圧倒している。
「なに一人で悩んでいるのよ。悩んでいる暇があったら、知識のひとつも身に付けなさい」
「はい」
見事に押しきられたな。
その後、俺はランディとシエナに、迷宮バイパーのさばき方をレクチャーした。
それと、知らないとこは、必ず調べてから行動に移すようにとも。
特に彼らのような経験の浅い冒険者は、判断を間違いがちである。
今すぐの判断を求められる場面以外は、ベテランの意見を聞いてから判断してもらいたい。
こうして、ランディはシエナ達と再び冒険をするようになった。
「アルトのお陰ね」
冒険者ギルドの受付で、クエスト完了処理してもらっているランディ達を見ながら、スターレットが俺に言った。
「俺はなにもしていないよ。シエナの手柄さ」
「そんなことないわよ。お膳立てしたのはアルトだし、シエナの協力が無ければ、他の方法を考えたでしょ」
それはどうかな。
それで上手く解決できたかはわからない。
スターレットと話をしていたら、ランディがこちらに気がついた。
そして、こちらに歩いてくる。
「アルトさんのお陰で、知識の無いことをやって失敗することがなくなりました。これはそのお礼です」
ランディが俺に差し出したのは
「お、これは迷宮ウナギじゃないか。高く買い取ってもらえるだろ」
「いいんです。お礼なので」
「そうか、ではありがたくいただくよ」
迷宮ウナギは高級食材だ。
捕獲される数が少ないため、この世界でもウナギは高級なのである。
「俺、シエナと付き合うことになりました」
「おめでとう」
「鉄等級に上がったら結婚するんです」
それは言っちゃ駄目だろう。
アルトのステータス
品質管理レベル19
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
重量測定
温度管理 new!
蛍光X線分析
シックネスゲージ作成
ブロックゲージ作成
ピンゲージ作成
品質偽装
リコール
そんなことで無断欠勤するなら要らないよね。
それでは本編いってみましょう。
「アルト、相談があるんだけど」
俺のところに来たのはスターレットだ。
最近は俺やシルビアに連れられて冒険をしていたので、彼女は青銅等級の冒険者になっている。
俺に相談に来る程初心者でもないだろうに、どうしたと謂うのだろう。
「知り合いの冒険者が、迷宮でミスしちゃって、それ以来冒険に出られなくなっちゃったのよね」
ありがちだな。
流出不良を出した作業者が、精神的に病んでしまい、会社に来なくなる事が結構あった。
不良を出しておきながら、反省もせずにヘラヘラしているのも困り者だが、仕事が出来なくなるのも困る。
品質管理の立場としては、異常な精神状態で作業されるくらいなら、会社に来ないでもらった方がよいのだが、そうは謂っても人手不足だ。
既に新人教育を終えた作業者に、簡単に辞められても困ると謂う現場の班長の意見もあったな。
今回も、悩んで判断が鈍るくらいなら、冒険にでない方がマシだろう。
工場よりも遥かに命の危険があるのだから。
だが、折角相談に来てくれたのだ。
俺はカウンセラーではないのだが、出来る限りはやってみよう。
「知っている情報を教えてくれないか」
スターレットによれば、冒険者の名前はランディ。
何度か冒険をした程度の木等級の剣士。
最後に迷宮に潜ったときに、初めて迷宮バイパーを倒した。
迷宮バイパーの肉は美味しいと聞いていたので、休憩中に戦利品の肉を焼いて、パーティーメンバーに食べさせたが、毒の処理を知らずに、全員が食中毒になってしまった。
と、こんなところだ。
仲間は全員一命をとりとめたのだが、ランディは責任を感じてしまい、それ以来冒険に出られなくなってしまったのだと謂う。
死者が出ていないならなんとかなるかな。
「取り敢えず、迷宮バイパーのさばき方がわからないから、プロに教えてもらおうか」
俺はギャランに迷宮バイパーのさばき方を教えてもらった。
彼は買い取り部門の責任者として、迷宮バイパーの毒袋の処理を当然知っていたのだ。
それを作業標準書にまとめた。
あとは、ランディを説得する材料だな。
スターレットにも協力してもらおう。
そうして準備を整えた俺はスターレットを伴って、ランディの家に向かった。
ランディの家は、ステラの外れに近い場所にあった。
ミゼットの家に近い貧民街である。
道端には娼婦やそれを管理する裏組織の人達がおり、こちらをジロジロと見ている。
関り合いになりたくないな。
「ここか」
たどり着いたランディの家は、ミゼットの家に負けず劣らずみすぼらしい。
取り敢えずドアをノックした。
「誰だ?」
中から男の声が聞こえる。
どうやら、今日も引きこもってくれていたようで安心した。
今日に限って外出していたら、無駄足になるところだったからな。
「スターレットよ。話があるわ」
「こっちはない」
そうですね。
しかし、ここで引き下がるわけにもいかない。
「入るわよ」
スターレットは強引にドアを開けた。
中には髭がボーボーで、髪はボサボサの男がいた。
これがランディか。
「なんだよ」
ランディは不機嫌そうに言うが、俺達を追い出す素振りはない。
全てにおいて無気力だな。
「今日は迷宮バイパーのさばき方をレクチャーしに来たんだが」
俺はランディに話しかけてみた。
「俺はもう迷宮にはいかない。冒険者を辞めるんだ」
「ランディ!」
ランディの態度に、スターレットが声をあげる。
続けて何かを言おうとしたが、俺はそれを止めた。
「冒険者を辞めるのはいいが、次の仕事は決まっているのか?」
「ジョブが剣士なのに、簡単に冒険者以外の仕事が見つかるわけないだろ」
「それはそうだが、その様子だと仕事は探してないだろ」
「そうだよ。悪いか」
「悪いも悪くないも君の人生だから、それをとやかくは言うつもりはないが、次の仕事でも一度ミスをしたら逃げるのかな?」
その言葉で初めてランディの瞳に感情が見えた。
怒りだ。
「そうだよ。俺は仲間を殺しかけた。そんなところに居られるはずがない。次も仲間を殺すようなミスをしたら、俺はその仕事を辞めるんだ!」
「人は誰でもミスをする。大切なのはそのミスから学び、繰り返さないようにする事じゃないのか」
「そんなことわかっているさ!」
「いいや、わかってないね。わかっているのなら、今ここで迷宮バイパーのさばき方を教えてくれないか」
「それは……」
先程まで威勢の良かったランディが言葉に詰まる。
少し間が空き、
「今さらそれを学んだところで、使うところなんて無いだろ。もう一度仲間と迷宮に潜れる訳でもないし。奴等は俺を許さない」
と、落ち着いたトーンで喋った。
「そんなことないわ」
外から女の声がする。
ランディが驚いた顔でそちらを見た。
「――シエナ」
ランディが彼女の名前を呼んだ。
シエナと呼ばれた女性が、ドアの外に立っている。
彼女はランディのパーティーメンバーであり、今回の食中毒の患者でもある。
今日はランディを説得する為に連れてきたのだ。
シエナは家の中へと入ってくる。
「なにこんなところでウジウジしてるのよ。みんなが待ってるわ。治療にもお金がかかったんだから、早く働かないと暮らしていけないわよ」
「だって俺は皆を」
「だってじゃない」
小柄なシエナがランディを勢いで圧倒している。
「なに一人で悩んでいるのよ。悩んでいる暇があったら、知識のひとつも身に付けなさい」
「はい」
見事に押しきられたな。
その後、俺はランディとシエナに、迷宮バイパーのさばき方をレクチャーした。
それと、知らないとこは、必ず調べてから行動に移すようにとも。
特に彼らのような経験の浅い冒険者は、判断を間違いがちである。
今すぐの判断を求められる場面以外は、ベテランの意見を聞いてから判断してもらいたい。
こうして、ランディはシエナ達と再び冒険をするようになった。
「アルトのお陰ね」
冒険者ギルドの受付で、クエスト完了処理してもらっているランディ達を見ながら、スターレットが俺に言った。
「俺はなにもしていないよ。シエナの手柄さ」
「そんなことないわよ。お膳立てしたのはアルトだし、シエナの協力が無ければ、他の方法を考えたでしょ」
それはどうかな。
それで上手く解決できたかはわからない。
スターレットと話をしていたら、ランディがこちらに気がついた。
そして、こちらに歩いてくる。
「アルトさんのお陰で、知識の無いことをやって失敗することがなくなりました。これはそのお礼です」
ランディが俺に差し出したのは
「お、これは迷宮ウナギじゃないか。高く買い取ってもらえるだろ」
「いいんです。お礼なので」
「そうか、ではありがたくいただくよ」
迷宮ウナギは高級食材だ。
捕獲される数が少ないため、この世界でもウナギは高級なのである。
「俺、シエナと付き合うことになりました」
「おめでとう」
「鉄等級に上がったら結婚するんです」
それは言っちゃ駄目だろう。
アルトのステータス
品質管理レベル19
スキル
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品質偽装
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