42 / 439
第41話 官能作業といってもエロくない
しおりを挟む
「こんなの箸にも棒にもかからないな」
「何だと!」
「こいつはグルタミン酸ナトリウムじゃないか」
「グルタミン酸ナトリウム?それって化学調味料じゃない」
「こいつは化学調味料の味しかしない、お茶の旨味はテアニンだ」
「サイパン島の隣の島ね。日本軍が玉砕した」
「それはテニアン」
「山岡~」
脳内美味しんぼ会議を開くくらいにお茶が不味かった。
今日も暇なので、お茶を美味しく淹れる練習をしているのだが、どうにも上手くいかない。
やはり飲み物はコーヒーに限る。
お茶なんてブランデーを入れないと飲めない。
まあ、美味しくない原因の大半は、俺が美味しく淹れるのが面倒で、適当に淹れているからなのだが。
「あら、アルトにしてはマシな味になっているわね」
俺の飲みかけのカップを取って、お茶を飲んだ感想を言うのはシルビアだ。
飲みかけとか気にしないのか?
それはそうと、俺は飲めたもんじゃないと思っていたが、シルビアはこれを飲めるのか。
味覚が絶望的に合わないな。
まだ残っているお茶をどう処分しようかと悩んでいたら相談者がやって来た。
「相談に乗って欲しいのですが」
「どんなことでしょうか」
「実は……」
相談者の名前はカイエン。
最近出来たばかりのパーティー『カイエン隊』のリーダーだ。
ジョブは格闘家であり、前衛として迷宮で冒険をしている。
冒険者の等級は木だな。
そんな彼の相談内容は迷宮ダイオウヤンマの目の色の見分けがつかないというのだ。
迷宮ダイオウヤンマは迷宮の見張り番。
外見はトンボのモンスターで、自分達の群れの縄張りを飛んでいる。
その目の色が赤い時に、攻撃を受けると仲間を呼ぶ。
赤みがかったオレンジなら、仲間を呼ぶことはない。
つまり、オレンジの目の色を確認して攻撃しなければならないのだ。
暖色系の色を見分けるので、慣れていないと見間違う。
これは難しいな。
色の見分け方は所謂官能作業だ。
個人の感覚に依存するので、どうしても個人差が出てしまう。
「君たちカイエン隊に贈る言葉は無い」
「そんな~」
カイエンが泣きそうな表情で、情けない声を出す。
「冗談だ」
贈る言葉と言いたかっただけなので、情けない声を出させてしまった事をお詫びしたい。
すまぬ。
しかし、迷宮内では光量が十分とは謂えず、色見本による判断は難しいな。
すぐには解決方法が思いつかない。
こういう時はシルビアさんに相談だ。
「という訳なんですが、どうしたらいいでしょうか」
「そんなもん、覚えるまで戦えばいいのよ」
「それもそうか」
妙に納得してしまった。
というのも、数値化出来ないような官能作業は、作業者を繰り返し教育することでしか対応が出来ないのだ。
後は間違いやすい環境を取り除いてやることだが、迷宮にLEDライトを設置することは出来ないので、今回は繰り返しで覚えてもらうしかない。
ここは指導員のシルビアに、つきっきりでしごいてもらうしか無いな。
「この目の色が攻撃していい色よ。この時に三擊までで倒すこと」
「はい」
そんなわけで、今カイエン隊と俺とシルビアは迷宮にいる。
シルビアの解説に従って、カイエン隊が迷宮ダイオウヤンマを攻撃する。
慣れたところでノーヒントで判断させ、その判定の確からしさを確認する。
全員の指でも足りないくらい、迷宮ダイオウヤンマを倒した辺りで、カイエンの判断は全て正解となった。
「あとはこれを忘れないように、繰り返し戦うことね」
「わかりました」
迷宮ダイオウヤンマの目の色を見分けられるようになったことで、今回の冒険は終了となった。
今後は繰り返しと、体調が悪いときの冒険をしないことで、この感覚を維持できるだろう。
感覚に頼った判断だから、体調は重要だぞ。
翌日、冒険者ギルドの給湯室にて。
「こんな苦いもの飲むなら、お茶の方がいいわ」
「どうしてコーヒーの旨さがわからないんだよ」
「苦いからよ」
俺はシルビアとお茶とコーヒーの飲み比べをしていた。
二人の味覚が全く違うため、お互いの意見が合わない。
JISもよく官能評価の規格なんて作ったな。
シルビアに無理矢理お茶を飲まされながら、そんなことを考えていた。
※作者の独り言
官能検査を無くしたい。
割と切実。
「何だと!」
「こいつはグルタミン酸ナトリウムじゃないか」
「グルタミン酸ナトリウム?それって化学調味料じゃない」
「こいつは化学調味料の味しかしない、お茶の旨味はテアニンだ」
「サイパン島の隣の島ね。日本軍が玉砕した」
「それはテニアン」
「山岡~」
脳内美味しんぼ会議を開くくらいにお茶が不味かった。
今日も暇なので、お茶を美味しく淹れる練習をしているのだが、どうにも上手くいかない。
やはり飲み物はコーヒーに限る。
お茶なんてブランデーを入れないと飲めない。
まあ、美味しくない原因の大半は、俺が美味しく淹れるのが面倒で、適当に淹れているからなのだが。
「あら、アルトにしてはマシな味になっているわね」
俺の飲みかけのカップを取って、お茶を飲んだ感想を言うのはシルビアだ。
飲みかけとか気にしないのか?
それはそうと、俺は飲めたもんじゃないと思っていたが、シルビアはこれを飲めるのか。
味覚が絶望的に合わないな。
まだ残っているお茶をどう処分しようかと悩んでいたら相談者がやって来た。
「相談に乗って欲しいのですが」
「どんなことでしょうか」
「実は……」
相談者の名前はカイエン。
最近出来たばかりのパーティー『カイエン隊』のリーダーだ。
ジョブは格闘家であり、前衛として迷宮で冒険をしている。
冒険者の等級は木だな。
そんな彼の相談内容は迷宮ダイオウヤンマの目の色の見分けがつかないというのだ。
迷宮ダイオウヤンマは迷宮の見張り番。
外見はトンボのモンスターで、自分達の群れの縄張りを飛んでいる。
その目の色が赤い時に、攻撃を受けると仲間を呼ぶ。
赤みがかったオレンジなら、仲間を呼ぶことはない。
つまり、オレンジの目の色を確認して攻撃しなければならないのだ。
暖色系の色を見分けるので、慣れていないと見間違う。
これは難しいな。
色の見分け方は所謂官能作業だ。
個人の感覚に依存するので、どうしても個人差が出てしまう。
「君たちカイエン隊に贈る言葉は無い」
「そんな~」
カイエンが泣きそうな表情で、情けない声を出す。
「冗談だ」
贈る言葉と言いたかっただけなので、情けない声を出させてしまった事をお詫びしたい。
すまぬ。
しかし、迷宮内では光量が十分とは謂えず、色見本による判断は難しいな。
すぐには解決方法が思いつかない。
こういう時はシルビアさんに相談だ。
「という訳なんですが、どうしたらいいでしょうか」
「そんなもん、覚えるまで戦えばいいのよ」
「それもそうか」
妙に納得してしまった。
というのも、数値化出来ないような官能作業は、作業者を繰り返し教育することでしか対応が出来ないのだ。
後は間違いやすい環境を取り除いてやることだが、迷宮にLEDライトを設置することは出来ないので、今回は繰り返しで覚えてもらうしかない。
ここは指導員のシルビアに、つきっきりでしごいてもらうしか無いな。
「この目の色が攻撃していい色よ。この時に三擊までで倒すこと」
「はい」
そんなわけで、今カイエン隊と俺とシルビアは迷宮にいる。
シルビアの解説に従って、カイエン隊が迷宮ダイオウヤンマを攻撃する。
慣れたところでノーヒントで判断させ、その判定の確からしさを確認する。
全員の指でも足りないくらい、迷宮ダイオウヤンマを倒した辺りで、カイエンの判断は全て正解となった。
「あとはこれを忘れないように、繰り返し戦うことね」
「わかりました」
迷宮ダイオウヤンマの目の色を見分けられるようになったことで、今回の冒険は終了となった。
今後は繰り返しと、体調が悪いときの冒険をしないことで、この感覚を維持できるだろう。
感覚に頼った判断だから、体調は重要だぞ。
翌日、冒険者ギルドの給湯室にて。
「こんな苦いもの飲むなら、お茶の方がいいわ」
「どうしてコーヒーの旨さがわからないんだよ」
「苦いからよ」
俺はシルビアとお茶とコーヒーの飲み比べをしていた。
二人の味覚が全く違うため、お互いの意見が合わない。
JISもよく官能評価の規格なんて作ったな。
シルビアに無理矢理お茶を飲まされながら、そんなことを考えていた。
※作者の独り言
官能検査を無くしたい。
割と切実。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる