107 / 439
第106話 製缶業者になろう
しおりを挟む
グレイスのリンスは相変わらずの売れ行きだ。
最近では噂を聞きつけた行商人たちが仕入れにきている。
他の街でも次第に認知されてきたようで、液体という運ぶにはリスクの高い商品でも仕入れているようだ。
俺のほうもグレイスの手伝いが忙しく、冒険者ギルドの相談窓口には御用の方はエッセのへと案内を出している。
そうしたら久々に相談者が工房までやってきた。
「相談に乗ってほしいのですけど」
「おや、カイエン隊じゃないか」
俺の所にやってきたのはカイエン隊のメンバー達だった。
「で、どんな相談なんだ?」
「実は最近この工房で売り出したリンスを運ぶ商隊の護衛の仕事が多いんですよ。で、商人達も無事に運搬できた商品の分だけ追加でボーナスを出してくれるという契約になっているので、なんとかしてこぼさずに運べないものかと思いましてね」
「成程」
聞けば、護衛契約の追加ボーナスは運搬できたリンスの量で決まるのだとか。
盗賊やモンスターの襲撃以外でも、リンスがこぼれて売り物にならなくなったらボーナスを減額されるとあって、そういった事故を無くすことができないかという相談だ。
「こういうのは実際に商品を運んでいる人に聞くのがいい。商業ギルドに行って、どんなことで運搬が失敗するのか訊いてみないと、対策は立てられないよな。今から行ってみるか?」
「わかりました」
こうしてグレイスの手伝いを一時中止して商業ギルドに向かった。
――カララン
商業ギルドのドアを開けるとドアベルが鳴った。
その音で中にいた人達がこちらを見るが、すぐに興味を失って視線を元に戻した。
俺もそんな彼らを気にせずに、受付へと向かった。
ここの受付は冒険者ギルドと違って美女ではなくおっさんだ。
「どんな御用で?」
あれ、「儲かりまっか?」って挨拶じゃないのか。
まあいい。
気を取り直して、要件を単刀直入に言う。
「液体の運搬について聞きたいんだが」
「運搬の依頼ですか?」
「いやそうじゃない。後ろの奴が行商人の護衛を受けたんだが、今話題のリンスを無事に運べたら追加のボーナスが出るっていうんで、失敗する原因を聞いて対策をしようと思いましてね」
「そういうことですか。でもそれって冒険者の腕次第ですよね」
そうきたか。
受付は自分で行商をしたことがないのだろう。
何も冒険者の腕だけで成功が決まるわけではないだろう。
「まあ、そうでもないと思いますよ」
何とか説得して行商人を紹介してもらうことになった。
待つこと数分。
目の前にやってきたのは漫画に出てくるような太った中年の商人だ。
「初めまして。私の名前は――」
「フトルネコ!」
「いえ、アトムと申します」
フトルネコじゃないのか。
アトムねぇ。
10万馬力でポロニウムちゃんって妹がいるのかな?
あれ、劣化ウランちゃんだっけ?
いかんいかん、話が進まないな。
「初めまして、アルトです。今日はリンスの運搬失敗例を伺いにきました」
「失敗例ですか」
アトムに訳を話すと色々と教えてくれた。
リンスは甕に入れて運ぶのが一般的だそうだ。
甕は土を焼いたもので、衝撃に弱い。
盗賊の放った矢が当たって割れることもあれば、馬車の揺れで割れてしまうこともあるというのだ。
何も倒れたり、盗られたりするばかりではないということだな。
これをなぜなぜ分析風にやるならば、
運搬失敗 > リンスがこぼれた > 甕が割れた > 衝撃が加わった
となるのだろうか。
対策としては衝撃が加わらないようにするか、衝撃でも割れないようにするかだろう。
衝撃級取材がないので、実際には衝撃でも割れないようにするしかないが。
「鉄の入れ物にするわけにはいきませんかね?」
「荷馬車だからね。あんまり重いと馬が引けないよ。それに、リンスは酸だろ。鉄が錆びて穴があくんだよ」
「そうか」
鉄がだめならステンレスがあるじゃない、マリー。
ペール缶作ってくれば売れそうだな。
「じゃあ、軽くて腐食しない入れ物があったら買ってくれますか?」
「使ってみないと何とも言えないな。そんなものが簡単に作れるならもうすでに流通しているだろ。それがないってことは、この話は詐欺の可能性が高い。今日会ったばかりの奴にそんなことを言われてもねぇ」
「もちろん試用期間有りで。駄目ならお金はいりません」
「それならいいよ。いつできる?」
「2時間後でどうでしょうか」
「そんなに早いのか」
「ええ」
そんなわけで、アトムと別れてエッセの工房に戻る。
ここでカイエン隊とも別れた。
彼らには結果を報告するだけでいい。
俺はステンレスの薄い板を作り出すと、ホーマーにお願いして溶接してもらった。
ちょっと不格好だけど、一斗缶っぽいものが出来上がる。
これなら衝撃にも強くて、酸にも強い。
5個ほど作るとそれをもって急いで商業ギルドに向かった。
「持ってきました」
「早っ」
アトムは俺がすぐに戻ってきたので驚いた。
しかし、俺が持っている缶を見てもっと驚いた。
「なんだいこれは?」
「缶です」
「缶?」
元の世界でも19世紀にならないと缶は誕生しないんだっけ?
たしか最初はブリキだったはずだ。
「約束通り使ってください。後で使用した感想を聞かせてもらえば改善します」
「わかったよ」
そうしてアトムと別れた。
ペール缶を作った話をグレイスにしたら
「割れて運搬失敗したほうが沢山売れるのに」
って言われた。
割れるよりも使用してくれる人が増えるほうがいいと思うんだけどね。
そして、俺がペール缶を作ったのを忘れたころ、冒険者ギルドに商業ギルドの使いの人がやってきた。
そして俺が連れ出される。
なんと馬車でのお迎えだ。
随分と待遇がいいな。
商業ギルドに到着すると応接室ではなく、ギルド長の部屋へと案内された。
そこには白髪の初老の男性がいる。
商人って感じがしないな。
どこかの貴族の執事って感じで、体形がシュッと引き締まっている。
「商業ギルドのギルド長をしているシャレードだ。話はアトムから聞いているよ」
「アルトです。てっきりアトムからの呼び出しだと思ったのですけどね」
「あれは商売が忙しいらしいな。何せ運搬の失敗が極端に減ったから、今が稼ぎ時だとばかりに飛び回っている」
「じゃあ、缶は成功ってことですか」
「ああ。あれを是非とも我が商業ギルドに売ってくれ。できれば他の支部にも売りたい」
「缶を商売にするってことですか」
「ああ。何も商品だけじゃない。移動時に水も必要なんだ。その水を入れた甕が割れたら命の危険もある。だからあれは必需品になるだろう。できれば製法込みで売ってくれるといいんだが……」
俺から買うよりも自分たちで作ったほうが利益率がいいからな。
だが、俺とホーマーがいなければ無理だ。
作り方を知ったところで、スキルが無ければ何もできない。
そんな製法を売って後で恨まれても嫌なので、製法の販売は断った。
その後商業ギルドからの正式注文ということで、ペール缶の受注が確定した。
俺とホーマーはひっきりなしにくる追加注文で過労死寸前まで働くことになったのだが、それはここで語るのはやめておこう。
「あ、中身が酸じゃなければアルミ缶でもいいのか」
ホーマーにアルミのMIG溶接でも教えるか。
最近では噂を聞きつけた行商人たちが仕入れにきている。
他の街でも次第に認知されてきたようで、液体という運ぶにはリスクの高い商品でも仕入れているようだ。
俺のほうもグレイスの手伝いが忙しく、冒険者ギルドの相談窓口には御用の方はエッセのへと案内を出している。
そうしたら久々に相談者が工房までやってきた。
「相談に乗ってほしいのですけど」
「おや、カイエン隊じゃないか」
俺の所にやってきたのはカイエン隊のメンバー達だった。
「で、どんな相談なんだ?」
「実は最近この工房で売り出したリンスを運ぶ商隊の護衛の仕事が多いんですよ。で、商人達も無事に運搬できた商品の分だけ追加でボーナスを出してくれるという契約になっているので、なんとかしてこぼさずに運べないものかと思いましてね」
「成程」
聞けば、護衛契約の追加ボーナスは運搬できたリンスの量で決まるのだとか。
盗賊やモンスターの襲撃以外でも、リンスがこぼれて売り物にならなくなったらボーナスを減額されるとあって、そういった事故を無くすことができないかという相談だ。
「こういうのは実際に商品を運んでいる人に聞くのがいい。商業ギルドに行って、どんなことで運搬が失敗するのか訊いてみないと、対策は立てられないよな。今から行ってみるか?」
「わかりました」
こうしてグレイスの手伝いを一時中止して商業ギルドに向かった。
――カララン
商業ギルドのドアを開けるとドアベルが鳴った。
その音で中にいた人達がこちらを見るが、すぐに興味を失って視線を元に戻した。
俺もそんな彼らを気にせずに、受付へと向かった。
ここの受付は冒険者ギルドと違って美女ではなくおっさんだ。
「どんな御用で?」
あれ、「儲かりまっか?」って挨拶じゃないのか。
まあいい。
気を取り直して、要件を単刀直入に言う。
「液体の運搬について聞きたいんだが」
「運搬の依頼ですか?」
「いやそうじゃない。後ろの奴が行商人の護衛を受けたんだが、今話題のリンスを無事に運べたら追加のボーナスが出るっていうんで、失敗する原因を聞いて対策をしようと思いましてね」
「そういうことですか。でもそれって冒険者の腕次第ですよね」
そうきたか。
受付は自分で行商をしたことがないのだろう。
何も冒険者の腕だけで成功が決まるわけではないだろう。
「まあ、そうでもないと思いますよ」
何とか説得して行商人を紹介してもらうことになった。
待つこと数分。
目の前にやってきたのは漫画に出てくるような太った中年の商人だ。
「初めまして。私の名前は――」
「フトルネコ!」
「いえ、アトムと申します」
フトルネコじゃないのか。
アトムねぇ。
10万馬力でポロニウムちゃんって妹がいるのかな?
あれ、劣化ウランちゃんだっけ?
いかんいかん、話が進まないな。
「初めまして、アルトです。今日はリンスの運搬失敗例を伺いにきました」
「失敗例ですか」
アトムに訳を話すと色々と教えてくれた。
リンスは甕に入れて運ぶのが一般的だそうだ。
甕は土を焼いたもので、衝撃に弱い。
盗賊の放った矢が当たって割れることもあれば、馬車の揺れで割れてしまうこともあるというのだ。
何も倒れたり、盗られたりするばかりではないということだな。
これをなぜなぜ分析風にやるならば、
運搬失敗 > リンスがこぼれた > 甕が割れた > 衝撃が加わった
となるのだろうか。
対策としては衝撃が加わらないようにするか、衝撃でも割れないようにするかだろう。
衝撃級取材がないので、実際には衝撃でも割れないようにするしかないが。
「鉄の入れ物にするわけにはいきませんかね?」
「荷馬車だからね。あんまり重いと馬が引けないよ。それに、リンスは酸だろ。鉄が錆びて穴があくんだよ」
「そうか」
鉄がだめならステンレスがあるじゃない、マリー。
ペール缶作ってくれば売れそうだな。
「じゃあ、軽くて腐食しない入れ物があったら買ってくれますか?」
「使ってみないと何とも言えないな。そんなものが簡単に作れるならもうすでに流通しているだろ。それがないってことは、この話は詐欺の可能性が高い。今日会ったばかりの奴にそんなことを言われてもねぇ」
「もちろん試用期間有りで。駄目ならお金はいりません」
「それならいいよ。いつできる?」
「2時間後でどうでしょうか」
「そんなに早いのか」
「ええ」
そんなわけで、アトムと別れてエッセの工房に戻る。
ここでカイエン隊とも別れた。
彼らには結果を報告するだけでいい。
俺はステンレスの薄い板を作り出すと、ホーマーにお願いして溶接してもらった。
ちょっと不格好だけど、一斗缶っぽいものが出来上がる。
これなら衝撃にも強くて、酸にも強い。
5個ほど作るとそれをもって急いで商業ギルドに向かった。
「持ってきました」
「早っ」
アトムは俺がすぐに戻ってきたので驚いた。
しかし、俺が持っている缶を見てもっと驚いた。
「なんだいこれは?」
「缶です」
「缶?」
元の世界でも19世紀にならないと缶は誕生しないんだっけ?
たしか最初はブリキだったはずだ。
「約束通り使ってください。後で使用した感想を聞かせてもらえば改善します」
「わかったよ」
そうしてアトムと別れた。
ペール缶を作った話をグレイスにしたら
「割れて運搬失敗したほうが沢山売れるのに」
って言われた。
割れるよりも使用してくれる人が増えるほうがいいと思うんだけどね。
そして、俺がペール缶を作ったのを忘れたころ、冒険者ギルドに商業ギルドの使いの人がやってきた。
そして俺が連れ出される。
なんと馬車でのお迎えだ。
随分と待遇がいいな。
商業ギルドに到着すると応接室ではなく、ギルド長の部屋へと案内された。
そこには白髪の初老の男性がいる。
商人って感じがしないな。
どこかの貴族の執事って感じで、体形がシュッと引き締まっている。
「商業ギルドのギルド長をしているシャレードだ。話はアトムから聞いているよ」
「アルトです。てっきりアトムからの呼び出しだと思ったのですけどね」
「あれは商売が忙しいらしいな。何せ運搬の失敗が極端に減ったから、今が稼ぎ時だとばかりに飛び回っている」
「じゃあ、缶は成功ってことですか」
「ああ。あれを是非とも我が商業ギルドに売ってくれ。できれば他の支部にも売りたい」
「缶を商売にするってことですか」
「ああ。何も商品だけじゃない。移動時に水も必要なんだ。その水を入れた甕が割れたら命の危険もある。だからあれは必需品になるだろう。できれば製法込みで売ってくれるといいんだが……」
俺から買うよりも自分たちで作ったほうが利益率がいいからな。
だが、俺とホーマーがいなければ無理だ。
作り方を知ったところで、スキルが無ければ何もできない。
そんな製法を売って後で恨まれても嫌なので、製法の販売は断った。
その後商業ギルドからの正式注文ということで、ペール缶の受注が確定した。
俺とホーマーはひっきりなしにくる追加注文で過労死寸前まで働くことになったのだが、それはここで語るのはやめておこう。
「あ、中身が酸じゃなければアルミ缶でもいいのか」
ホーマーにアルミのMIG溶接でも教えるか。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる